2022年6月11日土曜日

課外活動:バレエ「不思議の国のアリス」鑑賞会

本ゼミでは、芸術に触れる課外活動の機会を設けています。今年度最初の課外活動として、6月11日の晩にゼミ生たちと、新国立劇場でバレエ「不思議の国のアリス」を鑑賞しました。三時間近くにわたる壮大なパフォーマンス、幕が降りた後も鳴り止まないスタンディングオベーション。大変盛り上がった舞台でした。以下に、参加者の感想を掲載します。

Sさん:

会場の新国立劇場オペラパレス
踊りと演劇、近代技術が融合した新しい舞台作品でした。

第1幕でアリスが不思議の国に迷い込むとき、スクリーンを使って観客も一緒に吸い込まれていくような演出がありました。この演出のおかげで没入感が生まれ、作品を集中して見ることができました。第2幕で印象に残ったのは、イモ虫の登場シーンです。バレエは言葉ではなく踊りで表現しているが、イモ虫のセリフをスクリーンに映していました。これまで見たことのあるバレエではなかった表現方法だったため、驚きました。第3幕ではハートの女王のユーモアある踊りがとても面白かったです。原作で有名な女王のセリフである「首をはねろ!」が面白おかしく表現されていました。

どのキャラクターも作りこまれていて、原作と対比しながら見ても楽しむことができそうだと思いました。しかし、スクリーンやや大掛かりな舞台装置など、斬新な演出が多く、刺激的な色が使われている場面が多々あるため、好みがわかれる作品でもあると思いました。初めて見るバレエには向いていませんが、原作が好きな方、もっと刺激がある作品を見てみたいという方におすすめです。

Kさん:

今回の課外活動に参加した理由はバレエを今後自分から見に行く機会がないと思ったからです。自分が普段行わないものをこのゼミを通して行いたいと思っていたので、今回のバレエ鑑賞に参加しました。まず端的に言って、参加して良かったと思います。題目はアリスでしたが、”アリス”の世界をセットや映像を駆使し、見事に表現していました。その表現の工夫は演出家の人たちの努力を感じさせるもので、まさしく現代の”アリス”と言うことができると思います。そしてなんといってもバレエと音楽との親和性に驚きました。バレエの緩急のある動きや全身を使った表現はオーケストラが生で奏でる音色と合わさることで私たちの想像をより掻き立てていました。振り返ってみれば鑑賞後はとても疲れを感じていたと思います。しかし、その疲れがとても心地よく私の心は満たされていたので、上演後には出演者たちへ惜しみない拍手を送ることができました。バレエを鑑賞できたことで私の人生に一つ彩りが加わったと思います。

アリスの世界に迷い込むように、
会場内には様々なデコレーションが。

Nさん:

大学の課外活動は初めてなので緊張しました。

私は舞台装置の構成と、おとぎ話の文章を実際の動きにどう落とし込むのかに注目して観ていました。印象に残るのはチェシャ猫の表現です。第二幕のあらすじにはアリスのチェシャ猫への問いかけ、それに答えずとらえどころのないチェシャ猫に戸惑うアリスの場面が書かれています。舞台上では、チェシャ猫は分解された体のパーツが数人の黒子によってそれぞれ分担されていました。体の部位ごとに独立して動くので、実体がない、捉えられないことが表現されているのだと理解しました。舞台空間を大きく使ってチェシャ猫を動かせるので舞台袖の色々なところから出てくるのは視覚的に面白い工夫だと感じました。

初めてのバレエ鑑賞だったので不安もありましたが、実際に舞台を見てみると様々な工夫を見ることができて楽しく鑑賞できました。この度はこのような機会を与えていただき、ありがとうございました。

Yさん

バレエ鑑賞3回目の私は、少し変わった視点からバレエを楽しみました。私は今回、鑑賞しながら2つの違和感があると気づき、その原因を考察しました。ここでは一つだけ紹介します。

違和感の正体は「現代の多様性を尊重する文化とのギャップ」です。特に、バレエのダンサーの体型を見て「多様性とは、美しさとは何だろう」と考えました。

バレエのダンサーは全員体が鍛え上げられていて、女性はスラッとスリムで、男性は筋肉質で逞しくて、一般的には理想の体型として憧れられる存在に思えます。しかし私はそこに違和感を覚えました。バレエの舞台には太ったダンサーは登場しません。皆スリムで筋肉質で、それ以外の体型の人は出てきません。バレエの世界ではこれが「当たり前の美しさ」なのかもしれません。しかし、私たちが暮らす現実にバレエの「当たり前の美しさ」を適用させたとしたら、とても生きづらいと思います。もしかしたら、バレエのような伝統的な芸術に影響を受け、「痩せていなければいけない」「太っているのは良くない」という価値観が定着し、現代の生きづらさを作り出したのかもしれないと想像しました。

バレエを鑑賞していたはずが、いつの間にか社会問題を考察していました。本来の楽しみ方ではないかもしれませんが、芸術を題材に浮かんできた疑問について考えてみるのは結構面白いことだと思いました。

Uさん

結構長丁場。休憩時間に
感想を話すのも楽しみです。

今回、バレエ「不思議の国のアリス」を観劇していて、村上春樹の翻訳騒動を、ふと思い出した。

 村上春樹が『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を翻訳したとき、「随分と、旧訳である野崎訳と雰囲気が異なる」と話題になった。

 それに対して村上はインタビューの際に、「時代が変わると、それに合わせて伝え方も変えなければいけない。何も変えないまま、"伝統だから変わらない"と述べていると、誰からも見向きをされなくなる」という趣旨の応答をしている。

 この村上のエピソードを今回の観劇で思い出した理由は、バレエが新しい試みに満ち溢れている点だった。例えば、幕間にあるゼミ生が「原作でアリスが巨大化したり小さくなったりするシーンが、舞台背景のスクリーンの映像を上手く利用して表現されていた」と感慨深げに語っていた。

 さらに演出の工夫は、スクリーンにとどまらなかった。劇場の構造を利用して、突然バレリーナが2階客席に登場して踊った。さらに、花びらが舞い散るシーンでは、実際に天井から花びらがひらひらと降り注いだ。

 バレエが世界で初めて行われたのは16世紀とも言われているが、言うまでもなくその時代はこれらの舞台装置はなかっただろう。現代の舞台スクリーンを表現するCG技術と、演出装置を上手く活用した「新しい」バレエだった。

 しかし最も印象に残ったのは、実は演出方法ではない。バレエの舞いや、タップの目を引くような技術の高さだった。

 ともするとCG演出や舞台装置のレベルが高いほど、根本のバレエがおろそかになりがちだ。しかし、今日の舞台で拍手が10分を超えるほど絶えなかったのは、その「バレエそのもの」が、とても魅力的だったからだ。

 演出に工夫がこなされつつも、あくまで主従の「主」の部分はバレエだと言わんばかりの圧倒的な実力に、目を惹きつけられた。感動を伝えたくて、拍手をし過ぎて手が痛くなった。

Oさん

バレエダンサーのピンとした姿勢と立ち振る舞いに毎回見とれてしまいます。

「不思議の国のアリス」は絵本でしか読んだことがなく、バレエではどのように不思議さを演出するのか気になっていましたが、その演出方法は終始自分の想像を超えていました。

踊りだけではなくて、花びらが上から舞い降りてきたり、客席の所までダンサーが来たりしたところが今まで見た演目とは異なり新鮮でした。

また、映像を効果的に用いてアリスの大きさが変化したり、水の中に入ったりするところを表現しており斬新で見応えがありました。ダンサーが一人で踊っているところも素敵でしたが、第3幕終盤で、大混乱に陥っている時に舞台中央の階段上にいて怒っているハートの女王を王様が翻弄されながらもなだめようとしているやりとりがあり、面白くてそちらに気を取られました。主人公たちが踊っていても、舞台上の至るところで各人たちのドラマが生まれており、どこを見ようかと目移りしてしまうほど鑑賞する楽しさに満ち溢れていました。場面によっては観客席から笑いが起こることもあり、バレエが主でありつつも、総合的なエンターテインメントショーのように感じました。

私にとってバレエの醍醐味は、バレエの踊りだけでなく音楽にもあると思います。ダンサーは台詞を口にしない分、舞台下のオーケストラピットから奏でられる音楽で状況を表現しているからです。音楽がない沈黙のシーンはほぼないため、演奏する方々も大忙しなはずなのに、寸分の狂いもなく踊りと合わせていたことに感動しました。舞台下で大役を務めているオーケストラは、まさに縁の下の力持ちと言えそうです。とても格好良かったです!

前回よりもよい席で鑑賞することができたため、気づきも多く熱中できた鑑賞会でした!


Zさん

バレエについて私はハイカルチャーとしての印象が強かった。良く言えば、伝統のある高尚なイメージ、悪く言えば、厳めしく、私のような無学な人間にとっては近寄りがた持っていた。

 今回『不思議の国のアリス』を鑑賞し、私のそういった悪いイメージは払拭された。なぜなら、この作品では、ハイカルチャー的な側面と同時に大衆娯楽的な側面を兼ね備えていたからである。バレエの繊細で優雅な踊りだけではなく、曲の雰囲気に合わせたコミカルな動きや、プロジェクションマッピングやパペットといった最新の技術が舞台の中で多用されており、鑑賞する側を飽きさせないような工夫が随所になされているのを感じた。

 今回の鑑賞でバレエの面白さの一端に触れることができた。


Dさん

私は、生まれて初めてバレエというものを鑑賞したが、こんなにも素晴らしいものだとは思いもしなかった。舞台を見る前には、「不思議の国のアリス」という原作をどのようにバレエで表現するのかと期待で胸がいっぱいだったが、この舞台は見事にその期待を超える感動を提供してくれた。

言葉が使えない分、振り付けでキャラクターの個性を鮮やかに描き出す必要があるが、今作はバレエ、ミュージカル、パントマイム、トリックアート、デジタル技術など様々な要素をふんだんに駆使して見事にそれぞれのキャラクターを表現していると感じた。さまざまなジャンルの「芸術」を融合させ、現代人に新たなエンターテイメントを提供するこの舞台を見て、表現の勉強にもなった。言葉を使わずとも、目線、身振り手振り、表情一つ一つで、その物語を語る出演者の方々の演技は、表現における神技だと感じた。他にも色々なことを学べて、色々なことを考えさせられる魅力的な舞台で、とてもタメになった。貴重な経験を得られて、本当に良かったと心から思う。