2020年10月31日土曜日

バレエ「ドン・キホーテ」を鑑賞

 担当教員の相澤です。10月の終わりに、ゼミ生三名とともに、新国立劇場でクラシックバレエ「ドン・キホーテ」を鑑賞しました。私自身バレエ鑑賞が趣味でよく出かけます。その美しさと楽しさを知ってもらいたく、今回の課外活動を企画しました。ゼミ生は三人とも初めてのバレエ鑑賞だったそうですが、その素晴らしさを体感したようです。
以下に、感想を掲載します。

新国立劇場オペラパレス
Tさん

 私は初めてバレエを観劇しました。新国立劇場のような大きなオペラハウスも初めてで、劇場にも感動しました。

今回のバレエを観劇し、特に印象に残っているのは細かい演出です。観劇する以前は踊りが主だっているものだと思い込んでいました。その先入観はいい意味で裏切られました。最初の場面で、ドン・キホーテが屋内にいる場面が広がります。その場面の照明は十字の影がありました。その影によって窓から日が指している様子がわかります。その他、バレエを披露していないキャストも扇で大きく扇いでいたり、談笑している様子が自然でした。もちろんバレエも凄いと感じましたが、全体の演出に感動しました。次回の課外活動も楽しみです。

Iさん

初めてバレエを鑑賞してみて、まず歌詞や台詞がないという点に驚きました。当然踊りがメインとなってくるのですが、音楽伴奏であったり舞台芸術など様々な要素があり視覚と聴覚で楽しむことが出来ました。バレエの踊り自体は身体全体で表現されていて凄くダイナミックで、また音楽との融合もあり迫力がありました。物語は、比較的わかりやすいものだったと思うので、全くの初めての僕でも作品に入り込み楽しむことが出来ました。また機会があれば鑑賞してみたいと思います。

Sさん

ゼミ生的ドン・キホーテのポーズ
 私は今回初めてバレエを鑑賞しました。バレエはオーケストラの演奏と共に言葉を発さずに表現するものだと知らずに観に行きました。実際に観て思ったことは二つあります。一つ目はドン・キホーテが主人公でありながらあまり踊らないところです。むしろ踊りを観客と一緒に楽しんでいるシーンがあり驚きました。二人の男女の恋愛が主題だと思いました。二つ目は劇中でセリフがないことです。そのため表情と動作で表現していきます。その時のBGMはオーケストラの生演奏なので迫力がありました。曲の強弱や見せ場のタイミングが演者の動作とぴったり合わさっているので引き込まれました。視覚と聴覚に訴えることで観客の心に響く表現ができるのだなと感じました。

2020年10月28日水曜日

2020年度後期 第5回:新書報告

こんにちは。相澤ゼミ生四年経営学部Sです。冬のような寒さに時々なりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。私は冬用のコートを着ながらこのブログを書いています。今週は先週に引き続きオンラインで行った新書報告についてご紹介致します。

相澤教授:沢山美果子『性からよむ江戸時代―生活の現場から』(岩波新書、2020)

     藤野裕子『民衆暴力』(中公新書、2020)

相澤教授は今回二冊の本について紹介されました。『性からよむ江戸時代』は村に生きた人々のセクシュアリティーを解き明かしていく本です。特に当時の裁判記録から例を挙げて日本史を解き明かしていくという内容になっています。

 『民衆暴力』は百姓の一揆などに始まる集団で起こった事件を著者が客観的に分析した本です。例えば関東大震災の朝鮮人虐殺。勝手なイメージや偏見で民衆が動いてしまったことについて深く取り上げられていました。

 真実味の無い噂でも大人数が訴えていると本当のことのように聞こえてしまうという恐ろしさを私は改めて感じました。コロナにおいても様々なデマが飛び交いましたがただその情報を鵜呑みにするのではなく自分なりに調べることが大事だと思いました。

Tさん:大森正司『お茶の科学』(講談社ブルーバックス、2017)

 この本は紅茶やお茶についての歴史や淹れかた、種類などを説明しています。お茶の渋みが酸化すると紅茶になることやお茶の良し悪しは渋み、旨味、苦みの三つの要素で決まることなどお茶についての興味を深めるのにおすすめの本です。

Tさんはもともとお茶を飲むことは少ないと言っていましたがこの本を読んでお茶について多くの面白さを見つけることが出来たと言っていました。

Aさん:本川達雄『ウニはすごい バッタもすごい』(中公新書、2017)

 この本ではウニやバッタをはじめとする無脊椎動物の面白い特徴について説明されています。浅利の殻を閉じているキャッチ筋やナマコは危険時、内臓を吐き出して逃げることなど新しい発見に巡り合える一冊です。

Yさん:近藤雄生『旅に出よう』(岩波ジュニア新書、2010)

 この本は色々な国に旅行した著者が経験したことや驚いたことについてまとめられたものです。特にオーストラリアにあるハットリバー公国を建てた人の話がYさんの印象に残ったそうです。コロナの影響で現在は無くなってしまったそうですが、50年近く個人の国家が続いたことに驚いたそうです。

Mさん:デイビッド・T・ジョンソン『アメリカ人のみた日本の死刑』(岩波新書、2019)

 この本の著者はアメリカの人です。日本の司法は本当に慎重な制度であるのかアメリカと比較して分析していきます。日本の裁判は当日にならないと詳細がわからない秘密主義であり検討する時間が限られてしまうのに慎重な裁判になることはないだろうと批判しています。このように日本とアメリカの対比から死刑になるまでの流れを追っていく本です。

Nさん:奥田昌子『欧米人とこんなに違った日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス、2016)

 この本は国によって病気の発症率や抑え方が違うことを統計に基づき分析していくものです。例えばアメリカは肺、気管支のがんの発症率が高く、理由としては肥満と喫煙者の人数が多いことを挙げています。一方日本人は大腸がんや胃がんの発症率が高いそうです。どうすれば発症率を抑えられるかなどは書いていなかったそうですが、現状を知りたい人にとっては興味深いデータが載っている本です。

Iさん:岡本真一郎『悪意の心理学』(中公新書、2016)

 この本は言葉や会話に宿る誤解や悪意について説明しています。その誤解や悪意は故意に起こすものではなく意図せずに悪い意味になって伝わってしまうことを指しています。主に二つの要素から失言が発生しやすいと言われています。一つ目は「透明性錯覚」です。相手に自分の心の中のことを伝えようとするときに実際よりも正確に伝わっていると過大に評価しやすいことです。二つ目は「マジックミラー錯覚」です。自分の発言に対して他人は気づかないだろうと感じてしまうことです。自分も見えないから相手も見えないだろうと考えることです。以上の二つの要素から誤解や悪意は生じてしまうそうです。Iさんはそのことをふまえ、相手の視点に立って考えることの重要さを改めて感じたと言っていました。


 次週は新書報告ではなくグループワークの予定です。そこでも新書にはない新しい発見が出来ると楽しみにしています。ここまでありがとうございました。

2020年10月21日水曜日

2020年度後期 第4回:新書報告

 こんにちは、ゼミ生4年経済学部Tです。寒くなり、上着も徐々に厚手に変わりますね。ゼミは変わらずオンラインで行っています。今週は新書報告です。それぞれご紹介します。


相澤先生:小塩真司『性格とは何か より良く生きるための心理学』(中公新書、2020)

著者は心理学の研究者です。本書は性格を紐解き、人生をよりよく生きるために役立つ心理学的知見を紹介しています。

まず読者の皆さんは、性格と聞いて何をイメージしますか?温厚、優しい、真面目…すぐ思いつくだけで数多くありますね。これらを分解していくと5つの要素で表現できます。学問上、“BIG5理論”と呼ばれます。以下がその5つの要素です。

・外向性:活発さ、元気さ

・神経症傾向:心落ちつかない感じ

・開放性:外への関心、興味の強さ

・協調性:他者とうまく付き合う性質、調和性

・勤勉性:真面目、計画的、誠実性

各人の性格とはこれらの要素に濃淡がついたものになります。自己分析ツールとしても広く活用されていることで有名です。また性格に優劣はないものの、勤勉性の強い人には好印象・仕事ができる人が多い傾向があるようです。直感的に好印象は調和性の影響が強そうだったので、勤勉性の強さで好印象に感じるのは意外ですね。日々、勤勉に務めなくてはと戒められました。


Nさん:武村政春『生物はウイルスが進化させた』(ブルーバックス、2017)

本書はウイルスの特性や起源を扱う内容でした。一般にウイルスは、生物が派生してできたものだとされています。著者は反対にウイルスが派生し生物ができたと主張しています。前提、ウイルスは生き物と定義されていません。ここでウイルスと生物との差について触れます。細胞性生物の遺伝子情報はDNA、ウイルスの遺伝子情報はRNAの塩基配列に保管されています。生物は自分でタンパク質を分解し増殖でき、ウイルスはできません。ウイルスの特徴の一つは、遺伝子の平行移動をさせることです。遺伝子の平行移動とは遺伝子情報をコピーすることで、これによって種を超えた遺伝子を媒介します。最後に著者は、ウイルスは目に見えないがたしかにいる、と締めくくり、これまで目を向けていなかったものに、目を向けることがときに必要だと訴えています。


Iさん:堀井令似知『ことばの由来』(岩波新書、2005)

本書は「指切りげんまん」を始めとした、字面ではルーツが推測できないような日本語表現の由来を説明しています。

「指切りげんまん」は約束を交わすときに使う言葉ですよね。みなさんも「指切りゲンマン、嘘ついたら針千本飲まそ」を一回とは言わず何度も使ってきたことでしょう。余談ですが、私は語尾を「飲ます」と使ってきました。耳で聞いたまま使っていたからだと思います。結論、「指切りげんまん」の由来は諸説あります。今回はその一説を紹介します。「指切りげんまん」を表す略語として、ユビキリやゲンマンが使われています。略語から言葉を分解して由来を追っていきます。ユビキリとは指を切ることから来ているのではとされています。遊女が相愛客に誓いの証として小指を贈ったそうです。ゲンマンとはゲンが拳、マンが万回、嘘をつけば拳で万回打たれるという意味に由来するそうです。どちらも穏やかではありませんね。

本書では詳しく取り上げられていませんでしたが、「胡座をかく」と「ベソをかく」の「かく」という動詞は同じ使われ方をしているようです。言葉の使い方は地方によって、同じ意味でも字が異なったり、同じ熟語でも意味が異なったりします。足を組んで床に座る姿勢が胡座なので、「かく」の動詞部分が座る意味になります。「ベソをかく」の「かく」が涙を流すという動詞になるので、意味が合いませんよね。こういった共通して使われる言葉にもなぜ?と不思議になります。日本語が難しいと評判なのは、こういった由来による背景もあるからだと感じます。


Sさん:辛島昇『インド・カレー紀行』(岩波ジュニア新書、2009)

カレーの語源をご存知ですか。17世紀のインドの“カリル”というスープから始まったようです。本書にはドーサやサンバルのレシピも書かれていて、インドの食文化についても取り上げられています。今日の日本のカレーは、イギリスによって輸入されました。南インドの米と食べるカレーが日本カレーのルーツです。ルーツの違いで、イギリスでは一般にカレーのことを“カリー&ライス”、アメリカでは“カリー”と呼びます。余談ですが、私がアルバイトをしている飲食店では、“カリー”と呼称しています。

相澤先生はインドがとても好きみたいで、カレーの味について地域ごとにレビューを共有されていました。同じ国の料理でも地域によって味の付け方が全く異なる特徴を持つようでした。先日のゼミでインドのトイレ事情についても触れられていたので、一層インドに興味が深まりました。


私T:竹田いさみ『世界史をつくった海賊』(ちくま新書、2011)

本書はイギリスのエリザベス女王政権下の海賊の活躍について解説されています。総じて、教科書で学んできたよりも、実際の歴史には卑怯なことが横行しているなと感じました。決して悪い意味ではなく、世界史で学んできた内容はポジティブな側面を取り上げてるので、仕方ないのだろうと思います。正々堂々の姿勢だけでは、勝てない現実があったのでしょう。海賊のように卑怯な活動も、必要悪だったのかもしれません。

歴史に出てくるこの時期のイギリス冒険家は、概ね海賊でした。国がバックで密かに援助して、海賊行為が行われていたようです。世界周航を初めて達成したマゼラン艦隊は有名ですが、マゼランは周航を遂げず亡くなってしまいます。指揮官として艦隊の世界周航を成功させたのは、イギリスのドレークが初めてです。ドレークは英雄として当時のイギリスでも取り上げられるものの、実態は海賊でした。ドレークを始めとした海賊を後援し、影で暗躍していたのはエリザベス女王です。当時エリザベス女王はヨーロッパでの地位は低く、スペインやポルトガルに引けをとっていたため、海賊を活用したようです。

その他、海戦や貿易で海賊は活躍します。世界史の教科書には記載されないダークサイドも史実として存在し、それが支えている歴史が存在することを知って大変興味深かったです。


Mさん:中川寛子『東京格差』(ちくま新書、2018)

本書は不動産価値に注目します。2040年には日本全体で40%と不動産価値が落ちると言われる中で、企業や自治体が不動産の価値維持できる地域にスポットをあて、自助努力や企業努力により価値が維持・向上する街とそうでない街との差が、なぜ、どうして生まれるのか解説しています。

企業による地域の価値が上昇した例として、東急グループによる駅を中心とした街づくりが挙げられていました。高級住宅地は元来お手伝いさんの存在を前提に作られてきました。その結果、現在でもコンビニやスーパーが少なく、現在では不便な街となり需要が低下しています。東急グループは駅周辺に街機能を集約することで、高級住宅街で起きている弊害を取り除いています。ある種コンパクトシティに近い街づくりを行うことで、課題を解決できる取り組みです。

Mさんが企業や自治体が不動産価値を高めると話していた際、恣意的ではと疑いつつ聴いていました。しかし内容は良い意味で裏切られます。そうではなく、不動産価値は地域の改題解決の副産物的についてきたものだとわかりました。中長期的に住む場所を選ぶのに、一読したいと思います。


Aさん:島田裕巳『疫病vs神』(中公新書ラクレ、2020)

疫病の正体がわかるまでの医学は意味をなしていませんでした。疫病の正体がわからない時代の処置やその意図、背景が書かれている一冊です。

中世の黒死病では、ヨーロッパの30%の人々が亡くなりました。疫病に対し当時の医学では、悪い血を抜くという意味で100cc~1000ccほど血液を抜いて「治療」していたそうです。私のような素人でさえ、意味がないなとわかります。また待機療法で治るまで安静にするという処置法もありました。血を抜くよりは有意義ですが、これも現代では疫病にかかって病院で何も治療されないのは想像できませんね。

日本では疫病が祟りから起きていると考えられ、神仏に祈ることや改元することで疫病と戦っていました。また、疫病の蔓延に妖怪が関わっていたとの考えもあったそうです。今日のように西洋医学が発展しなければ、疫病は神様にお祈りして対処していたと思うと感慨深くもなりました。


新書報告も回数を重ね、関連する内容も増えてきました。関連する内容が増えたことで、知識や考え方が体系的に醸成されてきたなと感じています。今回のブログは以上です。次回も新書報告が続きます。

2020年10月14日水曜日

2020年度後期 第3回:新書報告

 こんにちは。ゼミ生のYです。今回のゼミでは通常通り新書発表をしました。どんな本を読んだのか、それぞれが発表した本を順番に紹介していきます。

相澤先生:佐藤大介『13億人のトイレ』、角川新書、2020年

IT革命により、ビルが立ち並び華やかなイメージもあるインド。そのインドの現状を、この本ではトイレという観点から紹介されていました。インドの人にとって、トイレは不浄なものなので、家に作らない人も少なくないそうです。自分が想像している以上に、日本と海外の、文化の違いによる生活様式の違いがあるのではないかと思いました。

Tさん:若桑みどり『お姫様とジェンダー:アニメで学ぶ男とオン案のジェンダー学入門』、ちくま新書、2003年

童話に出てくるお姫様は基本的に王子様が迎えに来るのを待っています。女性は、そのような他力本願な描写を多く見て育ち、それが無意識に女性自身のキャリア意識の低さにつながっていると述べられていました。わたしは、最近のお姫様の映画では、自分自身の力で未来を切り開くという描写が増えているような気がします。それは、この本が書かれてから20年の間に女性の立場が変わりつつある影響ではないかと考えました。

Aさん:山本博文『切腹』、光文社新書、2003年

この本では切腹の時代背景や実例などが紹介されているそうです。最初は武士の誇りを意味していた切腹は、江戸時代には懲罰の意味に変化していったそうです。それは自分の主が死んだときに殉死で切腹する人が多かったためと紹介されていました。自分の腹を自分で切るのは想像するだけでも恐ろしいので、昔の人にとって腹を切ることに大きな意味があったことが伝わってきました。

Iさん:柴田 三千雄『フランス史10講』、岩波新書、2006年

この本ではフランスの現在に至るまでの歴史について紹介されていたそうです。自由と平等どちらかに偏っている国は存続できないという言葉がとても印象に残りました。この条件を基にどのような国家が長続きするのか、また今ある国に当てはまっているかについて調べてみようと思いました。

Sさん:早坂隆『世界の日本人ジョーク集』中公新書ラクレ、2006年

この本では世界各国と日本人のジョークについて紹介されているそうです。豪華客船が沈没したとき、どのように声をかけ海に飛びこませるかという問いに、日本人には「みんな飛び込んでるぞ」と呼びかけるのが、日本の国民性を的確に表していると思い印象的でした。文化によって、ジョークや禁句の範囲は違いますが、それぞれ尊重することが必要だと述べられていました。

Sさん:海老原嗣生『年金不安の正体』、ちくま新書、2019年

年金はこれからもらえなくなるのではないか。この本ではそのような不安に対しそんなに心配しなくても大丈夫と述べられているそうです。年金に頼るのではなく、貯蓄を増やしていくことが大切だそうです。発表を聞いて、年金に限らず正しい知識を持つことが、不安にならないための一番の方法だと気づきました

以上で今週のゼミの報告を終了にします。来週も引き続き新書発表を行います。