2021年6月30日水曜日

2021年度前期第11回:新書報告6

こんにちは。新ゼミ生2年のBです。緊急事態宣言が解除されて久々の対面授業となりました。オンライン上での活動が続いていたため、対面での新書発表はとても新鮮なものに感じました。それでは、Bグループの発表を見ていきましょう。

Mさん:山中裕美『食品表示の罠』(ちくま新書、2015年)

本書は、食品表示にはどのような落とし穴があり、また、どのような面で役立っているのかが書かれています。

食品表示は必ずしも表示されているとは限らないことを知っていたでしょうか。例えば、デパ地下で売られているお惣菜には、食品表示が記載されておらず、アレルギー源のみ記されています。これは、食品衛生法によるものです。

また、アイスクリームには適度な摂取は良いが、そのなかでもいいものとそうでない物があります。それは食品表示を見ることによって判断できます。しかし、食品表示を毎回確認しながら購入するのは大変ですよね。そんな時は、できるだけ高価な商品を購入したり、自身でアイスクリームを作ることが打開策となるそうです。

Yさん:田上孝一『はじめての動物倫理学』(集英社新書、2021年)

本書は、CAFOで動物を育てることは、環境にも倫理にも悪いため違った方法で飼育するべきであると説いています。CAFOで飼育することで、有害ガスであるメタンが発生したり、環境廃棄物が出たりするそうです。また、動物に対して残酷なものであるとも伝えていました。

本書を読んだコメントとしてYさんは、動物の福祉に配慮した飼育がなされるべきであり、そのような環境が必要であると述べていました。更に、動物の立場になり飼育していくべきと説いていました。

Kさん:原田隆之『入門 犯罪心理学』(ちくま新書、2015年)

本書は、心理学者の視点から見た犯罪はどのようなものかついて記されている。

発表では、著者が「バカじゃないの殺人」と呼ぶ事例が紹介されました。これは「バカじゃないの」と聞き間違ったことで殺人が起きてしまったというなんとも理不尽な事件です。著者はこの事例について、「もともと凶悪な性格を持っていたのではないか」「外部による影響」「育ってきた環境」など様々な観点から加害者の心理を読み解いていました。

Kさんは以前にも犯罪を違った観点から分析したものを紹介していたため、今回の報告を聞いて更に犯罪学の面白さを感じる一冊であったと思いました。

Wさん:山崎元『エコノミック恋愛術』(ちくま新書、2008年)

本書は、恋愛に沿って経済学を記している一冊です。

恋愛と経済は似た者同士である。情報を集め、戦略を練り、判断をする。この点から、恋愛と経済学は類似性があることがわかる。本書は、浮気をゲーム理論の観点から検証したりなど、恋愛にまつわる問題を経済学から解説をするものです。

恋愛は、誰もが経験する分野であり、決まりきった答えがないことが特徴と言えるかもしれません。経済好きの恋愛下手に優しい一冊になっていると思います。手に取って読むべき新書です。

長野出身のNさんから
みんなにお土産を頂きました!
Nさん:伊藤誠二『痛覚のふしぎ』(講談社ブルーバックス、2017年)

本書は、痛みが人間にとってどんな事態となっているのかが記されている一冊です。

人間はどこかにぶつけたりした際、体の一部で痛みを感じます。では、なぜ痛みは発生するのでしょうか。これには、体に異常が出ていることを本人に気づかせる役割があるのです。これ以上悪化しないように、体がブレーキをかけていると表現してもいいかもしれません。

また、痛みは心身と関連性があるそうです。これは、自身の感情がどのような状態にあるかによって感じる痛みが違うということです。

痛みに弱い人は、痛みの在り方・構造を理解することで違った自分に出会えるのではないでしょうか。

さて、次回はA班初めての対面での発表となります。オンラインでの発表とは違った感覚であると思いますが、学びを深めながら楽しく行っていきましょう。

2021年6月23日水曜日

2021年度前期第10回:新書報告5

こんにちは。新ゼミ生4年のMです。前回、前々回は新書報告をお休みしてのグループワークでした。オンライン上での活動が続いていたため、グループワークはゼミ内の交流を深める良い機会になったと感じます。今回からはまた新書報告に戻ります。それではAグループの発表を見ていきましょう。

Oさん:清水真木『友情を疑う 親しさという牢獄』(中公新書、2005年)

タイトルに驚きを感じた本書ですが、哲学者たちによる提言を交えて「友人との理想的な対人関係」について書かれている一冊です。同じ価値観を持つ人と出会うことは難しく、友情に懐疑の目を向ける必要があるということがわかりました。

生涯を終えるまでに数えきれない人との出会いが生まれる一方で、自分なりの友情の定義に当てはまる人とどのくらい出会うのかと考えると、ワクワクかつ不安に感じられます。アリストテレスの言葉にあった「人間らしい」とはこのことではないでしょうか。アリストテレス以外の哲学者の提言も知り、共感できる部分、できない部分を探していくのも面白いと思います。友情とは何かを考える一助となるはずです。

Tさん:竹田青嗣『ニーチェ入門』(ちくま新書、1994年)

本書は、現代に繋がる「生」「道徳」について書かれています。キリスト教には自分のためではなく人のためという考えがありますが、ニーチェによるとこれはきれいごとであり、自然に反しているそうです。つまり、「いかに生きるか」を自分自身で選択する必要があります。

マジョリティに属し、周りに流される現代人は多いと思います。このような社会であるからこそ、周りの考えを取り入れつつも、自分が大切にしたいことを疎かにしないことが吉ではないでしょうか。

初心者には難しい本書ですが、何度も読み込み、自分の現状と照らし合わせられた時に面白さを感じられると思います。

Rさん:四方田犬彦『「かわいい」論』(ちくま新書、2006年)

様々な対象に向けて「かわいい」という言葉が使われていますが、「かわいい」が持つ意味や捉え方について考えさせられる一冊です。

大学生への調査によると「かわいい」は勇気がでる言葉、または下に見られている言葉とされ、性別により捉え方が異なります。由来は「うつくし」であり、昔は対象が小さいものだったそうです。また、海外では偉大なものに対して使われ、表記は「KAWAII」となっています。つまり、「かわいい」は万能な言葉である一方で、完璧な言葉ではないのです。

現代では「エモい」という言葉が流行していますが、状況に当てはまる最適な言葉がないからこそ、使われやすいのだとわかりました。他にも、万能な言葉がないか探してみると面白いかもしれません。

Iさん:南野忠晴『シアワセなお金の使い方 新しい家庭科勉強2』(岩波ジュニア新書、2015年)

自分だけでなく、周りの人も幸せになるようなお金の使い方とはどのようなものでしょうか。本書は、社会をつくる一員としてのお金の使い方について書かれています。

Iさんはお金の使い方を説明する際、食品を例にとり説明してくれました。加工食品は安くて簡単なことから手に取りやすいですが、添加物が含まれていることもあります。フェアトレード商品を購入し、消費者と生産者のwinwinな関係を築くことで、未来のあり方が変化すると言えます。

お金を上手に使えるようになるためには、自分なりの考え方を持つことが必要になります。送料無料や1つ無料、まとめ買いという謳い文句に流されるのではなく、本当に必要なものを購入するのです。無駄をなくすことが、社会と地球環境の豊かさへと響くと考えさせられました。

今回取り上げられた4冊には、「利己と利他」というテーマが共通する部分がありました。新書報告という形で読書体験を共有するからこそ、発見できることではないでしょうか。また、報告者と質問者の2人の間でとどまることなく、ゼミメンバー全員で意見交換をすることができました。初回と比べて、積極的な参加が実感できます。

さて、次回からは久しぶりの対面授業となります。対面での新書報告は初めてとなりますが、オンライン同様、多種多様な考えを知る場にできるようにしていきましょう。


2021年6月16日水曜日

2021年度前期第9回:グループワーク「ポピュラーミュージックの歌詞を鑑賞する」

 こんにちは。ゼミ生2年のZです。第9回のゼミは、いつもの新書報告ではなく、歌詞の解釈を行いました。曲は、大瀧詠一「君は天然色」です。テレビのCMなどに使われるなどポピュラーな楽曲です。

「君は天然色」が収録されている
アルバムジャケット
最初に、アイスブレイクとして事前にゼミのSlack上にゼミ生が各自で上げていたプレイリストについて少人数のグループで雑談しました。その後に本題である歌詞の解釈に移ります。解釈ではまず、部分的な解釈から始めました。歌詞の登場人物や場面がどのようなものであるかといったあらかじめ問われていた課題を歌詞の描写から解釈します。部分的な解釈というプロセスを重ねて、徐々にストーリー全体の考察を行いました。

歌詞のストーリーについては複数の解釈が出ました。「若い男性が別れた恋人(女性)を思い、また会いたいと願う歌」、「亡くなった恋人(女性)がいる男性が恋人の思い出を懐かしんでいる歌」、「家族や友達など恋人ではない大事な人の思い出を語る歌」などです。

相澤先生が紹介した作詞家である松本隆さんのインタビュー記事によれば、実際の歌詞は「君は天然色」のが亡くなった妹について書かれたものとのことでした。比較的近い解釈が出た点について、相澤先生も鋭いと話されていました。

ストーリーを考察する過程で少人数のグループになって話し合いましたが、同じ歌詞を読んでも解釈の内容は人によって異なっていることが印象的でした。例えば、歌詞の場面はいつか(春夏秋冬、朝昼夜など)について話し合った時、私は歌詞全体の印象から昼ではないかと考えましたが、他のゼミ生は自分と違い、夜だという解釈を提示しました。このことに自分は歌詞の感じ方が人によってどれほど異なるかを痛感しました。解釈の違いは少人数での話し合いだけではなく、グループごとによるゼミ全体の発表でも同様でした。

自分は多人数での歌詞の解釈は初めて行いましたが、歌詞の解釈がとても多様性に富んでいるという点はとても興味深く感じました。今回のゼミでの体験は自分にとって貴重な経験であり、また機会があればやってみたいと感じました。

次回のゼミはこれまで通りの新書報告です。充実したゼミ活動にしましょう。

2021年6月9日水曜日

2021年度前期第8回:グループワーク「作品を鑑賞するとはどういうことか」

 こんにちは。ゼミ生2年のYです。最近、ぐっと暑くなってきましたね。ブログを書いている現在の私の部屋の気温は32℃です。暑すぎます。これからもっと気温が上がっていきますから、皆さんも水分をこまめに補給して、体調に気をつけて生活していきましょう!

さて、第8回目のゼミは、グループワークを行いました。グループワークのテーマは「作品を鑑賞するとはどういうことか」です。授業前に各自で次のネット記事を読み、課題に取り組んでから授業に臨みました。先生から指示された課題記事はこちらです。稲田豊史「「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来」

今回のブログでは、このグループワークの中でどのようなことを話し合ったのか、そしてどのような意見が出てきたのかを紹介していきます。

最初に、記事から読み取れる「作品鑑賞とはどのようなものか」をゼミ生と確認しました。近年、「再生速度調整機能」や「10秒飛ばし、10秒戻し」が導入されている動画配信サービスが増えています。この記事は、この機能の登場によって、作品鑑賞の在り方が「作品を倍速にして観ること。また、自分の気になる展開のみを観て、その瞬間の娯楽を楽しむこと」になったと指摘しています。広辞苑によると、鑑賞とは「芸術作品を理解し、味わうこと」と定義されています。この定義を踏まえると、現代の鑑賞に対する考え方が本来のものから大きく変化していることが分かります。

次に、「なぜそのような仕方で作品鑑賞されるのか」を確認しました。記事では端的に「まだるっこしいから」と書かれていました。年代問わず、このように思ったことがある人は多いと思います。このように考えられるようになった背景が3点紹介されていたので一つずつ見ていきましょう。

わざわざ出かけて作品を鑑賞することは、
とてもコスパが「悪い」かもしれません。
しかし、映画館にしろ美術館にしろ劇場にしろ
行ったからこそ体験できることがあります。
コロナ禍が落ち着いたら、ゼミ生と出かけて
作品を鑑賞する機会を作りたいと思います。
写真は熱海のMOA美術館。このロケーション!

①映像作品の供給過多:現在では、多くの映像作品を、安い価格で視聴できるようになりました。しかし、あまりにも観られる作品が多いため、膨大な量の映像作品を視聴するのにはいくら時間があっても足りないのが現状です。そのため、少ない時間で作品を鑑賞できることが求められていると考えられます。

②「コスパ」を求めるようになった:作品を「速く」「効率的に」観たいという「時間的コスパ」を追求する人が増えています。また、最近の若い人は、短時間で何かのエキスパートになりたいと考える傾向にあるそうです。とにかく無駄を省き、回り道をしたくないと感じている人が多いと記事は論じています。

③すべてをセリフで説明する作品が増えた:これは、自分の状況や描写をセリフで丁寧に説明する映像作品が増えている事態を表しています。登場人物の表情や風景から読み取れるものをセリフにしてわかりやすくすることで、セリフのないシーンを飛ばしてもよいという発想が生まれるのだと著者は考察しています。

このような背景が挙げられていましたが、皆さんはどう思いますか?私は特に、①と②に共感しました。限られた時間の中で自分の気になる映像作品を観ようとすると、どうしても時間が足りません。また、一度映像を観始めると続きが気になるので、早く物語の展開を知りたいという気持ちに駆られます。そのため、倍速機能を使って映像作品を観ることが増えたのだと私も思いました。③は、言われてみると確かにそうかもしれないと感じました。私自身、映像を観ていなくてもセリフを聞いていれば登場人物の感情や場面が分かる作品を多く観ていることに気がつきました。

そして、3つ目の背景を説明した「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきている」という文章に注目したゼミ生がいました。そこから「謎は謎のままでよいのか」、「謎を楽しむとはどのようなことなのか」が議論となり、盛り上がったので紹介します。

「歌詞は抽象的なものが多く、歌詞の意味の受け取り方は人それぞれで正解がない。ここにも、謎であるからこその面白さがあるのではないか。」

「ドラマなどの最後に、その後がどうなっているかわからない状態で終わることがある。

その先は視聴者一人一人の想像に任せるような謎を残すことで、ストーリーに幅を持たせている。だからこそ、謎があったほうが面白いのではないか。」

「芸術作品は、説明されすぎていない、わからないからこその美しさがあるのではないか。作者は、何かに影響を受けて作品を作ると思うが、それがすべて説明されて理解できてしまえば、美しさはなくなってしまうだろう。」

といった意見が挙げられました。ディスカッションを通じて、これらの意見には「解釈の余地を残す」という共通点があることに気がつきました。確かに、わからないことを想像して自分なりの展開を作るのは楽しいですよね。「謎」について色々な意見を聞くことで、新たな発見になりました。それぞれが自分なりの考察を深めることのできた、とても有意義な議論となりました。

最後に、「自分自身にとって作品を楽しむ・鑑賞するとはどういうことか」を共有しました。これも、人によって全然違う考え方をしていて、自分にはなかった発想を知ることができました。

私にとって鑑賞とは「何度も作品を観返し、自分なりの考察を深めるもの」です。繰り返し味わうことで、一度鑑賞しただけでは理解できなかった表現の意味や感情の変化などをより深く読み取ることができます。また、作品に触れた年齢や自分の置かれている状況によって、同じ作品を鑑賞したとしても全然違う印象を受けることもあります。作品を通して自分と真剣に向き合うことができるような味わい深い作品に出合えた時は本当に幸せだと感じます。


写真は、彫刻の森美術館の作品。現代美術は
「鑑賞」しがいがあります。(相澤)
他のゼミ生からは、「作品の物語のみを楽しむこと」、「間の取り方のような構成を楽しむこと」、「作品を飛ばしながら見ることも楽しみのひとつだ」という意見も出ました。また、「映画館や美術館のような鑑賞するための場所に行くこと」、「意見を共有して新たな価値観に触れること」、「歴史的背景を知ること」など、作品から読み取ること以外からも鑑賞の楽しみを見出している人がいて、とても興味深かったです。ブログを読んでくださった皆さんは「鑑賞」をどのように楽しんでいますか?この記事が考えるきっかけになったら嬉しいです。

今回は、初めてゼミでグループワークを行いました。新書報告だけでは話すことのできなかったゼミ生と交流し、人柄や性格を知ることができ、非常に楽しい時間になりました。残念ながら、緊急事態宣言によりZoomでの授業となりましたが、機会があれば、今度は対面授業でグループワークをやりたいです!

来週のゼミも新書報告はお休みで「歌詞の解釈」をする予定です。どんな歌詞を扱うのかはまだ知らされていないので今からとても楽しみです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、来週の相澤ゼミのブログでお目にかかりましょう。以上、Yでした。



2021年6月2日水曜日

2021年度前期第7回:新書報告4

こんにちは。新ゼミ生の3年のOです。今回のゼミは、オンラインでの新書報告や質疑応答にもだんだん慣れてきて、前回よりも議論が活発になったように思います。それでは新書報告へ参りましょう。

Yさん:蟹江憲史『SDGs(持続可能な開発目標)』(中公新書、2020年)

最近話題になっているSDGsについて、Yさんが本書を用いて詳しく教えてくれました。本書では、SDGsの目的と取り組みが丁寧に書かれているそうです。2030年までに持続可能な世界を作るため、経済、社会、環境の3つの観点から取り組むべき17の項目が取り上げられています。Yさんが最も印象に残った項目は12番目の「つくる責任、つかう責任」だそうです。先述の3つの観点全てが関わっているからだそうです。私たち学生にとっても、就職する際にSDGsに取り組んでいるかどうかを選ぶことは、将来自分がより良い世界で生活するために重要だと思いました。

Kさん:福島章『犯罪精神医学入門 人はなぜ人を殺せるのか』(中公新書、2005年)

もし私が本棚からこれを見つけたら、タイトルの強烈さに思わず手を引っ込めてしまうだろう一冊です。本書では、2001年に起きた大阪教育大学付属池田小学校事件を中心に、残虐な罪を犯してしまう人について考察しています。幼少期からの虐待経験や、本人の過激な性格、不安定な精神状態が重なり合うと、エネルギーを爆発させ凶悪殺人事件を起こしてしまうとされています。これは2005年と少し古めの本ですが、人を殺してしまう人の根本的な特徴は今も変わらないそうです。そのような人は見た目では判断しにくいため、私たちは他の人との接し方に気を配りながら生活するべきだと思いました。

Wさん:益田安良『金融開国 グローバルマネーを手なずけろ』(平凡社新書、2000年)

金融について主体的に勉強しているWさんからの報告です。本書では、社会のグローバル化に伴う金融開国(日本の金融機関の国際化)について書かれています。私たちが日常的に利用している銀行の間では、かつて内部競争が起こっていたこと、変動相場制によりその競争が国際市場へ広がったこと、さらに現在では地方銀行の合併が行われているという流れをつかむことができました。Wさんによれば、経済を勉強することのメリットは、その仕組みが分かることで、実社会でも役に立つ点なのだそうです。私も一読したいと思いました。

Nさん:北村暁夫『イタリア史10講』(岩波新書、2019年)

本書は、古代から戦後までのイタリアの歴史について10個の項目に分類して書かれた本です。Nさんが最も印象に残ったのは19世紀のイタリア統一の歴史で、それまで周りの強国に支配されバラバラだった小国が、一つにまとまった点が面白かったそうです。

イタリアを一言で表すと「地域ごとで異なる文化を持ち、特色も違う国」とNさんは考えていました。偶然にも76年前の6月2日(報告日)がイタリアの建国記念日ということもあり、イタリアに親近感が持てました。

Mさん:梓澤和幸『報道被害』(岩波新書、2007年)

本書において報道被害とは、ある事件や事故について、マスメディアの取材陣が当事者を問い詰めたり、スクープを出そうと躍起になって追い回したりする結果、被害者の人権が侵害されてしまう事態を指します。報告を通して、取材する側だけでなく取材される側にも自由があることを意識することによって、被害を抑えられることが分かりました。SNSの普及により、現在は情報の受発信が容易です。だからこそ、自分の力で知り得た生の情報をもって物事を判断することが重要だとMさんの報告から教えられました。

今回で新書報告はA、Bグループとも2周しました。新書報告後の質疑応答の中では、一つの問いについてみんなが意見を出し合い、議論に発展する場面が増えてきたように思います。自分が質問するだけでなく、他の人の質問を聴くことでも、自分とは異なる着眼点を知ることができるため、毎回とても楽しいです。

次回は、新書報告を一回お休みし、グループワークを行います。どんな内容なのか今から楽しみです。