2022年6月8日水曜日

2022年度ゼミ 前期第8回:新書報告(A班担当)

  こんにちは、3年のZです。今回は一巡して、A班の2回目の新書報告が行われました。本と発表方法どちらも、バラエティに富んでいました。それでは、A班の報告を紹介していきます。

Uさん:千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書、2022年)

 本書は、デリダやフーコーといった現代思想を学ぶことができる一冊です。著者によれば、昨今、物事に分かりやすさが求められていますが、単純に理解することはよくないとしています。なぜなら、社会の構造は分かりやすい単純なものではないからです。よって、複雑なものを複雑なものとして理解することが重要だと指摘しています。しかし、複雑なものの理解は簡単ではありません。これを理解するためには知識の積み重ねや理解するためのエッセンスが必要です。本書は、読者の理解を促すために、後者を意識して書かれているそうです。

 私は現代思想は、難解なイメージがあり、積極的な関心がありませんでした。この発表を聞いて、多少関心を持ちました。

Hさん:正高信男『考えないヒト ケータイ依存で退化した日本人』(中公新書、2005年)

 本書は17年前、まだスマートフォンが一切普及していない時代に書かれた一冊です。著者はケータイ依存によって、主に若年層に2つの問題が起き、これを「サル化」だと指摘しました。1つ目の問題は、「出歩き人間」の発生です。これは、ケータイによって、いつどこでも連絡が取れることから、自分の家に帰ろうとしなくなってしまう問題です。2つ目は、コミュニティ能力の低下です。メールの文章を読むことや、電話による声だけのコミュニケーションばかりになって、言葉を額面通りにしか受け取れなくなってしまうのではないかと著者は危惧しています。

 私は、本書は、ガラケーが主流だった時代に書かれた本であるため、スマホの普及によってケータイ依存が以前と比べてどう変化したかについても興味を持ちました。

Dさん:山田敏弘『その一言が余計です。 日本語の「正しさ」を問う』(ちくま新書、2013年)

 本書は、日常生活で余計に感じる一言について、その表現や文法に着目して、書かれた一冊です。発表では、例として、「~でいいよ」という表現が挙げられました。この表現が生まれる原因を著者は2つ考察しています。1つは、「らしい」や「ようだ」など、日本語は断定を避ける表現が多いためです。もう1つは、「~でもいい」から「~でいい」へと表現が変化したというものです。

著者は、私たちが、余計な一言を言ってしまう(捉える)立場だとして、相手の言葉を寛大に受け止める必要があると主張しています。

私は、細かい言葉のニュアンスや違いで余計な一言に変貌することに、コミュニケーションの難しさを感じました。

Yさん:池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』(トランスビュー、2003年)

 本書では、当たり前だと思っていることについて深く考える哲学書です。発表では「言葉」について取り上げられました。例えば、「美しい」という言葉であれば、まず美しいと感じるものについて考え、美しいとは何かと考えていき、最終的に、自分に他者との共有ができる美しいという概念があることが分かります。このことから、言葉は自分の中に概念として理解されるものであると著者は述べています。

 発表を聞いて、私はあまり普段当たり前だと思っていたものについて改めて考えてみると、新たな気づきが見つかって面白かったです。

Kさん:小林憲正『地球外生命体 アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』(中公新書、2021年)

 本書では、「アストロバイオロジー」と呼ばれる、地球外生命体について研究する学問について解説されています。アストロバイオロジーは、地球外生命体を問うために、そもそも地球では生命がどのように誕生したのかを分析しています。本書によれば、地球の生命体は宇宙から飛来した隕石がきっかけで誕生したのではないかという説が有力になっているそうです。

 宇宙や生命についてはまだ分からないことが多く、話を聞けば聞くほど、興味関心が尽きないと感じました。


以上が今回の新書報告でした。興味深い発表が多く、学びを深められたゼミでした。来週は2回目のB班の報告です。どのような報告が行われるのか楽しみです。皆様お疲れさまでした。