2019年6月26日水曜日

2019年度前期 第10回

こんにちは、ゼミ生のAです。第10回ゼミを行いました。今回は新書発表を行いました。

 最初にKさんが、工藤重矩『源氏物語の結婚 平安朝の結婚制度と恋愛譚』(中公新書、2012)を紹介しました。平安時代の婚姻制度「一夫多妻制」の理解を踏まえて、源氏物語について読み解く内容となっているようです。発表を聞いて、源氏物語という存在はよく知っていますがその内容はというと知らないことに今さら気づき、これを機にいつか読みたいと思いました。

 次にTさんが、南野忠晴『正しいパンツのたたみ方』(岩波ジュニア新書、2011)を取り上げました。家庭科という科目を通じて、毎日の生活を振り返りながら自分の生き方に役立つ技術や考え方などを身につけ、生きることを存分に楽しんでもらうといった概要になっているそうです。私は母と一緒に住んでいて朝ごはんや夕ご飯を作るのは全て任せきりにしてしまっているので、時間がある時は代わりに作り少しずつ自立して楽しいと感じることを増やしていきたいと思いました。

 次にOさんが、牧野雅彦『ヴェルサイユ条約』(中公新書、2009)を紹介しました。世界初の世界戦争の終結と戦後の新しい秩序を作っていく中で決められたヴェルサイユ条約。しかし条約締結に至るまでは様々な壁があり、そのような苦難をどのような経緯で乗り越えていったのかが紹介されているそうです。日本は第一次世界大戦では戦勝国でありましたが、第二次世界大戦ではドイツのような敗戦国となり、戦争責任をおいました。私は戦争はもう二度と起こしてはいけないと思っているからこそ、第一次世界大戦があったからこそ結ばれたヴェルサイユ条約、そして第二次世界大戦について深く理解しておきたいなと感じました。

 次にKさんが、正高信男『父親力 母子密着型子育てからの脱出』(中公新書、2002)を取り上げました。内容としては、母性は子供にとって安全基地のような働きを、対して父性はそこから巣立ち一人前になることを促す役割を持っていて、それが子供の社会化に影響するとなっていました。例で落語家の話が取り上げられていましたが、落語家の親は「なれ」と言ったことはないけれど、職場に息子を連れて行き仕事に体験させます。息子はそれがきっかけで落語家を目指しました。大事だからと過保護にしすぎるのではなく、大事だからこそ子供の世界を広げてあげる役になり、様々な体験をさせてあげるべきなのだなと感じました。

 次にHさんが、橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』(ちくま新書、2002)を紹介しました。作者は人がなぜ「美しい」がわかるかを理科系知識を用いず、理屈のみで「美しい」について解き明かしていこうといった本になっているそうです。男性の多くは恥ずかしいというのが理由で、あまり「きれい」や「美しい」などの言葉は使わないらしいです。しかしそのせいで感情の退化が起きて、「美しい」というものがわからなくなってしまうそうです。発表を聞いて、他人が「美しい」という言葉を使うことは聞いたことがありますが、私自身が「美しい」という言葉を使った覚えはないのに気づき、これはどうなっているのと考えさせられました。

 次に私が、池内紀『今夜もひとり居酒屋』(中公新書、2011)を取り上げました。町の片隅で赤い提灯を下げている居酒屋。酒に食べ物、店主と客がおりなす独特の時間がそこにあり、そんな居酒屋について詳しく説明されていました。面白いと感じたのは、居酒屋で使われるお品書きには3つのタイプ(黒板タイプ、表記タイプ、ビラタイプ)があり、それを見ればなんとなくその居酒屋にはこだわりなどはあるのか、またやる気の入り具合などが分析できるという点でした。20歳になったらぜひ居酒屋におとずれてみたいです。

 最後にNさんが、福島章『犯罪精神医学入門ー人はなぜ人を殺せるのかー』(中公新書、2005)を紹介しました。人が人を殺す理由としては、①脳に微細な点で健常人とは違った変異をもって生まれ、②幼少時に過酷な虐待心的外傷を受けて育ち、③平均的な人とは違う性格を持ち場面によっては低水準の自我の防衛機能を働かせ、④多彩だが否定形的な精神症状を示す。そして深刻な不適応が生じると、⑤自殺願望を抱くが、自らの死を果たすためにはまたは自らの死を招くためには、⑥人を死に至らしめる。これら6つ全てをこなす時、シリアルキラーなどが生まれ、ここでは大量の殺人を起こしてしまうのではないかと話していました。最近川崎市では18人の人が刺され小学生の女児と男性が死亡するという事件がありました。先ほど6つの条件を述べましたが、どれか1つだけでも満たさなければこんな事件も起こらなかったのではと思うととても悲しい問題だなと感じました。

 今回は普段の生活に関係のあるものが特に多いなと感じました。今回の新書発表を終えて、今までは少しも気にしたことがないものにこれからはできるだけ目を向けたみたいなと感じました。

2019年6月18日火曜日

2019年度前期 第9回


 ゼミ生のOです。第9回ゼミを行いました。今回は、前回鑑賞した映画『ズートピア』から各自が感じた事や考えたとについてディスカッションしました。

最初にそれぞれが感じた事を一つずつ言っていきました。そのなかでもゼミ生が一番感じ取った事は「肉食動物と草食動物との偏見」でした。大都会ズートピアでは、多種多様な動物が共存している街です。しかしその実態は、肉食動物と草食動物がお互いにレッテルを貼り、できる事や役割を決めつけています。そうしたお互いのステレオタイプがやがて深刻な対立を生む過程へと繋がる恐ろしさを共有しました。また、ディスカッションをしていく中で重要なメッセージとして、映画で描いている対立関係は人間社会にも当てはまる事が読み取れます。肉食動物と草食動物、大型動物と小型動物の異なる他者の違いは、人間社会で言う人種、性別、健常者と障がい者の違いによる差別や偏見にも当てはまります。動物(人)を見た目だけで判断することが危険であり、見た目ではなく内面を見ていくことがとても重要である事が伝わりました。

 他にディスカッションをする中で見えてきたメッセージとして「幸せ」とは何かという問い(メッセージ)について考えさせられました。主人公のジュディーは、両親の心配をよそに自分の夢である警察官になる道を選びました。警察官になると危険や困難な事が数多くありますが、自分自身の夢や好きなことを実現する事も幸せであると考えられます。一方で、ジュディーの両親が言うような伝統的なウサギ(農家)の暮らしも幸せな生活でしょう。しかし、ジュディーの両親は、そのような生活をしてたまたま幸せと感じただけかもしれないと言う捉え方もできます。「幸せ」の捉え方は、必ずしも自分と他者が同じと感じる事は無く、客観的に捉えることは難しいのだと考えさせられました。

 『ズートピア』はディズニー映画であり、ディズニー映画と聞くと子供から大人まで楽しめる映画というイメージがあります。しかし、その内容には人間社会の様々な問題を数多く反映しており、制作者のメッセージが読み取れます。現実世界で考えても、この映画の制作国であるアメリカ合衆国が今現在抱えている社会問題を再現しているようにも感じられます。映画と現実世界を対比する事で私達の世界が『ズートピア』から見えてくるでしょう。

2019年6月16日日曜日

国立劇場で歌舞伎鑑賞。

ゼミ生のMです。今回は課外活動で、歌舞伎を見に行きました。

国立劇場に入って最初に始まったのは、歌舞伎鑑賞教室でした。その後の演目で出演する演者さん、中村虎之助さんが面白楽しく歌舞伎についての解説をしてくれました。歌舞伎に関わる話が聞けて、より今回の演目を楽しんでみることができました。

歌舞伎教室はポップな演出。
インスタ用に写真を撮る時間も。
歌舞伎教室ということで、
若い人がたくさん来場していました。













今回の演目は「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」といわれる江戸時代に人形浄瑠璃として演じられ、のちに歌舞伎でも演じられるようになった演目です。作者の福地鬼外は平賀源内のペンネームの一つで、源内は軍記物語『太平記』の一部を元にこの作品を書きました。


 内容としては、お舟と呼ばれる少女が数時間前に出会った新田義峰のために命を燃やしてその身を守ろうとするお話しです。自分としてはお舟が義峰に出会った瞬間、一目ぼれして舞い上がってしまったシーンが、印象深く残っています。この演目のラストは悲しいものになっており、お舟が心のそこから恋をしてしまうこの楽しいシーンは、心に来るものがあります。 

他にも歌舞伎の上演中に流れる三味線や歌は、場面の臨場感をより鮮明にし、まるで自分たちもその場に立ち会っているかのようでした。機会があれば、また歌舞伎を見に行きたいです。

2019年6月12日水曜日

2019年度前期 第8回

担当教員の相澤です。今週と来週のゼミは「映画を読む」と題して、映画のメッセージを理解、解釈する練習をします。

今日はその前編として、皆でお題となる映画を見ました。今回私が選んだ映画は『ズートピア』です。動物たちが仲良く暮らし「誰もがなりたいものになれる」街(ズートピア)を舞台に、いろんなあれこれが起こって...。

毎回私は、読書する時には著者が読者に伝えようとしているメッセージは何かを意識するよう指導しています。これは読書だけでなく映画鑑賞にも当てはまります。どんな作品も何か伝えたいことがあるから作られている。それを理解することが鑑賞だと考えます。そこで今日のゼミでは、作品のメッセージを読み取ること、そしてどのような根拠でそう読み取れるのか説明できるようにすることを意識しつつ映画を見ることを課題としました。

2時間弱の上映中、映画を楽しみつつもしっかりメモを取ったゼミ生たち。次回は各学生が読み取ったメッセージとその根拠をシェア、ディスカッションし、映画鑑賞の体験を深めたいと思います。

2019年6月5日水曜日

2019年度前期 第7回

ゼミ生のKです。前回、第7回の活動を行いました。今回も新書発表を行いました。

 ゼミ生のTさんは今回二冊の本を紹介してくださいました。一つ目は串崎真志『心は前を向いている』(岩波ジュニア新書、2013年)です。著者は心理学者の立場から書いた本であり、人の心は基本的には前向きにできているので、無理にポジティブになろうとしなくてもよいとのことです。もう一つは『フリーという生き方』(岩浪ジュニア新書2007年)です。著者は人とのかかわりを強く持つことによって、フリーという生き方を見つけたとのことでした。

  次にHさんが酒井信雄『日本人の「ひるめし」』(中公新書)という本を紹介しました。日本人にとって昼飯は軽く食べるものであるが、ヨーロッパなどは昼飯を時間をとってしっかり食べる。それはヨーロッパはもともと昼・夜の二食文化から朝飯を足して三食文化になったのに対し、日本人は朝・夜の二食文化から昼飯を足して三食文化になったからだという。私もこの話を聞き、確かに日本人の昼飯は軽く、早く、というイメージがあるので、様々な文化の違いとはこのような背景から生まれるのだと思いました。

  次に私が川人博『過労自殺』(岩波新書2014年)を紹介しました。過労自殺の例から、過労自殺の特徴。なくすためにはどのようにしたらいいのかなどが書いてある本です。この中で私は、「労働法を知り、長時間労働や職場環境の異常を気付くべき」という著者の考えに共感したので、それを発表しました。

  Aさんが、石井龍一『役に立つ植物の話』(岩浪ジュニア新書2000年)を紹介しました。作物の人類の歴史と深いかかわりがある十種類について書かれた本だそう。この本によるとジャガイモはいもの周囲を二周する間に5個の目がある規則性があるそうだ。私はこれを聞いて一刻も早くジャガイモを買って確かめたくなりました。

  Мさんは波多野誼余夫・稲垣佳世子『無気力の心理学やりがいの条件』(中公新書1981年)を発表しました。ご褒美があれば効力感(やる気のある状態)があがるのかと思えば、けしてそうではなく、自分で選択して努力することが効力感につながるとのことでした。

  最後にOさんが岩下明裕『北方領土問題』(中公新書2005年)を紹介しました。今まで見てきたニュースなどでは四島一括返還の話しか聞いたことがありませんでしたが、実際に住んでいる人の現状や声では二島の返還が現実的なのかなとも思いました。

  今回の新書発表は偶然にも関連した内容が多く、その中でも発見があり非常に面白かったです。また、新書の発売された年代も様々だったので、今後はその本が書かれた年代の社会情勢なども含めて読みたいなと感じました。