2020年12月25日金曜日

2020年度後期 第12回:新書報告

こんにちは、経済学部4年Tです。寒さが厳しくなってきましたね。今回が年内最後のゼミとなります。それでは新書報告です。

相澤先生:筒井清忠編『昭和史講義【戦前文化人篇】』(ちくま新書、2019)
本書は戦前の文化人16人それぞれ注目して書かれたものです。文化人は様々で、小説家、音楽家、画家、哲学研究者、仏教研究者など多岐に渡ります。戦争という特殊な状況にあると文化人の功績は一転して汚点になり得ます。そう隠れがちな文化人を再発見できる点で意義のある一冊です。文化人を紐解くことで、昭和という時代が違う観点で見えてくるのだと思いました。シリーズで出版されているので、まずは直感的に興味が湧いたところから読んでみます。

私T
今回は先週欠席分含め、二冊報告しました。
阿部彩『子どもの貧困』(岩波新書、2008)
昨年別のゼミにて扱った新書です。貧困と聞くと衣食住がままならないことを想像するのではないでしょうか。そういった貧困を絶対的貧困といいます。裕福な国である日本では絶対的貧困には陥りにくいです。本書では相対的貧困に焦点が当てられています。相対的貧困は諸条件あるものの世帯所得およそ127万円と定義されていました。子どもは生まれてきた環境が全てです。選ぶことも、自助努力でどうにかなるものも数少ないケースです。少し前の一冊になりますが、問題提起の意義ではぜひ一読いただきたいと思います。
外山滋比古『知的生活習慣』(ちくま新書、2015)
本書は外山先生のエピソードに基づいて、いくつかの習慣を紹介されているものです。
仕事よりも生活が大事だと強調されています。確かに生活を優先していくことが、些か蔑ろになります。生活とは習慣でできています。生活習慣とは体と心の二面が存在しています。体の生活習慣をフィジカル生活習慣とし、心の生活習慣を知的生活習慣と定義していました。そんな知的生活習慣の一つを紹介します。日記付です。日記は一日の決算として書いていくそうです。様式は変えず、外山先生は博文館当用日記を愛用していたそうです。見返したときに基準となる軸がぶれないためにも、様式が変わらないほうがメリットが大きいと感じますね。

Aさん:小山聡子『もののけの日本史』(中公新書、2020)
旧世紀のもののけと人との関わりについて書かれています。もののけとは「人に害をなす正体不明の死霊」と定義されています。もののけのけは「気」から由来しており、鬼をイメージしているそうです。時代によって関わり方が変わります。職業として寄島という若い女性の霊媒が存在したり、狐を退治するビジネスがでてきたり、昨今の平和な時代では鬼太郎などキャラクター化させ娯楽として楽しんだりします。私自身オカルト的要素のものは信じていません。しかし文化として根付くのも理由があるのだとよくわかりました。

Yさん:金成玟『K-POP』(岩波新書、2018)
K-POPを聞いたことのない日本人は、とてもマイノリティだと思います。そんな親しみ深いK-POPの流行について書かれています。K-POPはアメリカのブラックミュージックを吸収したそうです。因数分解していくと、先例が集約されたものだと解説されていました。SMAPも参考にしているそうです。これらのことから、K-POPの明確な定義が難しくなっています。流行も時代の流れに沿った要素もあります。音楽がレコードからCDに変わったように、CDからダウンロードの媒体に変わっていきました。K-POPはその流れにYou Tubeの再生媒体を使って乗り切ったことも、流行の要因になります。あまり興味のなかったK-POPも理解が深まり、今までと少し違った音楽に感じそうです。

Iさん:岡田斗司夫『ユーチューバーが消滅する未来』(PHP新書、2018)
本書は2028年の世界を見抜き、どう変わっていくのか予測した内容が書かれています。20年30年スパンで考えると人間には仕事が残らないと言われています。どんな仕事が淘汰され、どんな仕事が残っていくのでしょうか。クリエイティブな仕事は意外にも残らず、AIが台頭していくそうです。反対に残っていく仕事も意外で、店員などは応用性が高い業務内容でAIなどでは対処が難しい理由から淘汰されないそうです。未来予測の3大法則も紹介します。
・第一印象主義
・考えるより探す
・中間はいらない
この3つです。直感的に意味が汲み取れないであろうところだけ補足します。「考えるより探す」は自身の答えを考えるよりも、共感性の高い答えをネット等から拾って行くというものです。3大法則も昨今の時代をよく表していると大変興味を持ちました。実際に購入したので読むのが楽しみです。

Nさん:南川高志『新・ローマ帝国衰亡史』(岩波新書、2013)
ローマ帝国はなぜ滅亡したのか、それはローマ人であるというアイデンティティの喪失と著者は訴えています。私はあまりローマ帝国について詳しくないので何とも意見し難いですが、Nさんは少し飛躍した論調だと感じたようです。ローマ人が持っていたアイデンティティは、ローマに対する誇りのようなものだそうです。誇りが生まれた背景には身分制度があったようです。身分が奴隷で生まれてきても努力により上に登れる制度であったそうです。実際に奴隷出身の皇帝がいるほどです。そのローマにゲルマン人が流入し、遊牧民族のゲルマン人はローマに馴染めなかったことで、アイデンティティが喪失しました。アイデンティティが喪失したことで、ローマ帝国が滅亡したのではと著者は考えています。

Sさん:築地達郎、京都経済新聞社取材班『ロボットだって恋をする』(中公新書ラクレ、2001)
まず恋をするという定義を自分にとってふさわしいと思う相手に同化することとしています。ただ本書はロボットと人間の共存について書かれています。Sさんはタイトルに惹かれて選書したので残念そうでした。内容は面白く、機械的なロボットというよりAIを搭載したアンドロイドのようなものに近い印象を受けました。学習する機能により、性格が形成されるそうです。扱っている人間がガサツだとそのロボットもガサツなロボットになってしまいます。ロボットは人間の子供のようなもので、扱う人間の人格もふさわしいものがあると訴えていました。ロボットも人間によっては人間不信になることもあるともありました。私の感想としては、すでにある通り面白いと思いました。しかし、2001年の本なので少し時代のブレを感じました。当時の時代に照らし合わせて読むとより面白いのかも知れません。

今回で年内のゼミが終了いたしました。今年もありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。次回は哲学書を読みます。

2020年12月23日水曜日

演劇「ピーター&ザ・スターキャッチャー」を鑑賞

大学の年内授業は終了しましたが、課外活動は続きます。今日は、新国立劇場内の小劇場で上演中の演劇「ピーター&ザ・スターキャッチャー」を観に行きました。参加したゼミ生二人は、劇場に出かけるのが初めてとのこと。どんな体験になったのか、以下に報告します。

Tさん:

先日バレエを鑑賞した
オペラパレスの地下にあります。
ゼミ生4年経済学部Tです。課外活動にて演劇を観劇しました。今回観劇したのはピーターパンに関連したお話です。ストーリーよりも演出を始めとした見せ方を中心に感想を述べます。

舞台には格子状のステージがあります。格子の穴を使って移動や小道具を取って劇をしていました。最初は違和感があったものの、時間が立つにつれて描写が変わっていることがよくわかります。というのも描写が変わっても格子状のステージのままです。船の甲板、船室、通路、島などすべての描写が表現されていました。こんな表現の仕方があるのかと感動しました。音楽も描写に合わせて、後ろで演奏が行われていました。細かいことまで注目すれば、照明も観客の視点が限定され、より観劇しやすく計算されていると推測できます。

総じてとても面白く、楽しく観劇しました。ぜひ、プライベートでも観劇しに出かけたいと思います。

ポスターも舞台に通じる
ポップなデザインです。
Iさん:

演劇は中高の演劇部の公演しか観たことがありませんでした。プロの公演を観るのは初めてで、新鮮で非常に面白かったです。

今回鑑賞した「ピーター&ザ・スターキャッチャー」はピーターパンが誕生するまでの物語を想像力豊かな舞台で表現されていたため、一緒に冒険しているような感覚になりました。またテンポが良くストーリーもわかりやすく、随所随所に笑いの要素も組み込まれていたので楽しめました。そして、役者さんたちの発声であったり表現力が素晴らしく、開演してすぐに劇に引き込まれました。その他、舞台の仕組みや小道具など様々な点で工夫がなされていて、感心してみていたらあっという間に終わってしまいました。

また機会があれば、自分でも演劇を観に行ってみたいと思います。

---

というわけで、二人とも生で観劇する面白さを存分に味わってくれたようです。なんでも実際に一度体験してみることが大事だと考えて、本ゼミでは様々な課外活動を企画してきました。来年もみんなで出かけて、新たな経験を共有したいと考えています。

2020年12月12日土曜日

バレエ「くるみ割り人形」を鑑賞

 こんにちは。経営学部2年のAです。新国立劇場で「くるみ割り人形」を鑑賞しました。初台駅を出た地上、新国立劇場入り口に集合しました。午後6時からの公演なので、あたりはすっかり暗くなっています。 

一階席の観客が
豆粒のようです...。
会場のオペラパレスは、例年であればクリスマスツリーなどが飾られ華やかな雰囲気に包まれるそうですが、今年はコロナ禍のためシンプルな設えでした。劇場内は4階まで観客席になっていて、想像よりも立体的な造りになっていました。ゼミ生は4階の最前列に座りましたが、下をのぞくと足が震えるほどの高さでした。 

そして公演が始まります。クララの家で開かれたパーティー、そこでドロッセルマイヤーからもらったくるみ割り人形が夢の中でねずみの王様と戦うお話です。クララと人形のパ・ド・ドゥだけでなく、アラビアや中国、ロシア、スペインの踊りや花のワルツがありました。 

その場で演奏されている音楽と、華やかなダンサーたちの踊りは美しかったです。建物、家具、降ってくる雪や気球などのリアルなセットも手伝って、まるで絵本の世界に入り込んだようでした。 

バレエを鑑賞するのは今回が初めてでした。映像ではなく、目の前でリアルに繰り広げられる公演を鑑賞すると終わった後にも深く心に残ります。リアルタイムで鑑賞することは、映画を自宅ではなく映画館で観ることのように価値がある体験だと思いました。 

2020年12月9日水曜日

2020年度後期 第11回:新書報告

  こんにちは。相澤ゼミ二年のYです。今回はいつも通り、各自読んできた新書の内容について、報告を行いました。早速、各々がどんな本を読んだのか、順番に紹介していこうと思います。

相澤先生:H・A・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』(新潮文庫、2017)

 相澤先生は、今回、新書ではなく文庫本を紹介されていました。この本では、ある少女が奴隷時代だった頃に、起こった出来事について書かれていたそうです。奴隷はレイプや性的虐待など、人としてではなく、もののような扱いを受けていたそうです。無理やり奴隷に子供を産ませ、その子供も奴隷として扱われると知りました。わたしは、このような現実があることにショックをうけました。この手記も、あまりにひどい出来事が書かれているので、真実ではなくフィクションだと思われていたそうです。

Tさん:鹿子生浩輝『マキャヴェッリ-君主論を読む―』(岩波新書、2019)

 この本は、マキャヴェッリから、君主としての在り方を学ぶという内容の本だそうです。具体的には、独裁や過激な政治の有用性について、語られていました。マキャヴェッリは、基盤が整っていない国では、愛されるより恐れられる君主が望まれると主張しているそうです。一見すると、マイナスなイメージしかない独裁も、実は乱れた国を統治するには、有効な手段と聞き驚きました。逆に、ある程度基盤がしっかりした国では、あまり効果がないそうです。

Iさん:加藤諦三『メンヘラの精神構造』(PHP新書、2020)

 最近では、メンヘラという言葉をよく聞くのではないでしょうか。メンヘラとは、メンタルヘルスの略で、心に何かしらの問題を抱えている人を指すそうです。この本では、メンヘラと呼ばれる人の心の中や、なぜメンヘラになってしまうのか、について紹介されていたそうです。メンヘラの特徴として、何か問題が起きったとき、自分だけが不幸など、被害者意識が強い傾向があると述べられていました。メンヘラになったしまう要因としては、幼少期化から愛された経験が少ないなど、家庭環境が大きく関係しているそうです。

Mさん:辛淑玉『怒りの方法』(岩波新書、2011)

 この本では、活動家である辛淑玉さんが、どのように怒るのがよいかについて紹介されていたそうです。具体的な方法を、10個挙げられていたので紹介します。

  1. 感情を簡単な言葉にする。
  2. 同じ言葉を繰り返す。
  3. ストレートに表現する。
  4. いつもの声の高さで伝える。
  5. 一回につき一回の怒り
  6. 目の前の小さなことから。
  7. 目標を決める
  8. 内容を具体的に指摘する。
  9. 相手に正対する。
  10. 人間関係の継続。

私はこの十項目を見て、怒りの方法というより、人との会話において大切なことなのではないかと思いました。質疑応答では、自分の周りの環境などに疑問を持つことが、怒りにつながるのではないかと議論されていました。

Aさん:梁英聖『レイシズムとは何か』(ちくま新書、2020)

 この本では、レイシズムとは何かという分析や、レイシズムが発生する要因について書かれていていたそうです。レイシズムとは、大まかには人種差別のことを指していて、過激になると、生きる人と死ぬべき人を区別してしまうそうです。差別に走ってしまう要因として差別アクセルというものが紹介されていました。具体的には、ヘイトスピーチ、政府の関与、極右が挙げられていました。その逆に、反差別ブレーキというもの挙げられていました。これは、差別を定義すること、人種の否定、極右の禁止、国家による対抗です。世の中には、差別行為を差別だと思わず行われていることが多いのではないかと思います。その多くは、人種意識からの、無意識な偏見から生まれていると思います。反差別ブレーキにあるように、まず定義し、政府が積極的に差別に対抗することが、必要なのではないかと思います。

早いもので、12月16日のゼミは最後の新書報告となります。最後まで、各自の新書について語り合いたいと思います。


2020年12月2日水曜日

2020年度後期 第10回:GW「自分の価値観リストを作る」

 こんにちは。経営学部2年のAです。今回は「自分の価値観リストを作る」をテーマにグループワークをしました。それを作ることで、自分の人生について改めて考えるきっかけにすることが今回の狙いです。 

事前準備として、ゼミ生全員がそれぞれの「自分にとって大事なこと・もの(5個以上)」リストと「自分の人生でやりたいこと(10個以上)」リストを作成してきました。それをもとに二つのグループに分かれて話し合います。また、今回扱うのは自分の価値観についてであり、デリケートなものです。そのため、先生から話し合う際の約束が三つ出されました。第一に、相手の言うことを否定しないこと。第二に、「ツッコミ」は「問いの提示」であること。第三に、自分の考えを押し付けないこと、です。価値観の違いを受け入れて、相手をリスペクトする姿勢で話し合います。 

初めに、「自分にとって大事なこと・もの」をグループ内で共有し、気になった部分について質問しあいました。共有してみると、それぞれで違ったものをあげていることが分かります。大事にするものが気持ちだったり、物理的なものだったり、行動・状態だったりします。人によってどれを多くあげているかは価値観の違いだと思いますが、自分のことを考えた後に、他の人の価値観を聞くと新鮮な気持ちになります。そして質問しあうことで、なぜその価値観を大事にするのかといった背景にある考えを知ることができました。 

次に、「自分の人生でやりたいこと」を共有しました。 こちらもそれぞれが違ったものをあげています。今すぐできそうなものや、時間がかかるもの、体力がいるもの、経済力がないと難しいものがありました。共有後に気になったものを質問しあう中で、初めに共有した「自分にとって大事なこと・もの」と関連していることに気づきました。それぞれの価値観が違えば、やりたいことも違うということが分かります。万人に共通する人生を充実させるものはないと言えるでしょう。 

最後に、「自分の人生でやりたいこと」をお金や準備、時間などを考慮して、いつやるかを考えて並び替えたものを発表しました。ゼミ生それぞれが違ったものをあげていていましたが、共通点もありました。それは体力がいることは若いうちに、お金がかかることは年を取ってからやること想定していることです。 

発表が終わった後で先生から、年を取ると人間関係ができにくいという話がありました。人と出会う機会が多い学生である今(コロナ禍ですが…)を大事にしたいです。また、言語習得はもちろんのこと、お金のかかる投資も若いうちから始めるのがいいという話はよく耳にします。将来やろうと思っていることでも、今からできることがあると改めて気づきました。若さを活かして早めに行動しようと思います。 

今回は「自分の価値観リストを作る」をテーマにグループワークをしました。次回は新書報告です。 

2020年11月25日水曜日

2020年度後期 第9回:新書報告

 こんにちは。相澤ゼミ現代法学部4年のMです。朝と夜の冷え込みが増し、体調不良に余念がない今日この頃です。今回のブログでは11月25日に行われた新書報告の様子を紹介します。

相澤先生

野口雅弘『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』 (中公新書、2020)

太田浩一訳『宝石/遺産~モーパッサン傑作選~ 』(光文社古典新訳文庫、2018)

 藤堂嘉章訳『ジェームズ・ドーソンの下半身入門:まるごと男子!』(太郎次郎社エディタス、2015)

『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』は資本主義の発展と近代社会の特質をマックス・ウエーバーの主張とそれらが与えた影響が述べられています。

『宝石/遺産~モーパッサン傑作選~』は日本の近代文学者に大きな影響を与えたモーパッサンの主要な作品が6編収録されています。

『ジェームズ・ドーソンの下半身入門:まるごと男子!』は思春期の男子を対象とした

男子社会のサバイブの仕方且つ性教育、恋愛の指南が述べられており、男子特有の論理が紹介されています。

M(私):白川部達夫『日本人はなぜ「頼む」のか』(ちくま新書、2019)

日本史を振り返りながら「頼む」という言葉の持つ意味や人との関係を紐解いていく内容です。事例として、平安時代に、貴族の中でも主に女性が父親などの「経済的庇護者」に対して生活支援や宮中に上がってからの身の振り方等の指導を受ける際に使われました。これが鎌倉時代になると「御恩と奉公」という形で言葉の持つ意味合いが変化していきます。さらに江戸時代になると、「義理」概念を生む基盤となり、時代背景とともに人と人の結びつきの変化を表します。本書を通じて日本人のメンタリティの歴史を学ぶことで、情景等の奥深さを感じられます。

Sさん:河合清子「ねぶた祭“ねぶたバカ”たちの祭典」(角川oneテーマ21、2010)

巨大な人形の灯篭が印象的な「青森ねぶた祭」を紹介する本です。祭りの時期になると300万人もの観光客が訪れ、230億円の経済効果を生んでいます。祭りでは、ねぶたの周りで踊る「跳人」による「らっせーらー」の掛け声と共に、ねぶたが市内を踊り歩きます。ねぶた審査において優秀作品に選ばれたものは最終日に船に乗せられ、青森港を運行します。また、ねぶたの絵の題材には神話や武将の伝説を切り取ったものが多く、専門のねぶた師がそれを描き上げます。祭りの管理・運営が神社・お寺ではなく、市民の市民による活動である点や誰でも参加可能な点に魅力を感じました。  

Tさん:山本章子『日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019)

日米地位協定の変遷を紹介しています。この協定は沖縄県等に駐留している米軍の扱い方やそれに関する米国との取り決めを示すものです。駐留基地のない地域に住んでいる人々には関心の低い問題でしたが、米軍兵士による犯罪が報道されることで、その縮小と再編を望む声も増えてきています。現在では、米国との交渉が進み、協定内で明文化されている犯罪の扱いにおいて、アメリカ主導ではなく日本も関与できるようになりました。また駐留基地での訓練時の選択権についても同様の改善がなされています。米軍が駐留することによるメリット・デメリットからも非常に複雑な問題であるといえます。

Aさん:西條勉『『古事記』神話の謎を解く』(中公新書、2011)

上巻、中巻、下巻からなる古事記について、その上巻のおおまかな解説がされています。表面的なく裏に隠された物語の意味の紹介が印象的でした。その事例として、スサノオがクシナダヒメと共に出雲国で八岐大蛇を退治した話では、稲の神様である八岐大蛇と稲穂の神様を祭る巫女様の意味を持つクシナダヒメから、それ自体が神様を祭る行為の象徴であるそうです。古事記全体を通して矛盾点は多く、外国からの神話の影響も受けているとのことです。

Nさん:鬼頭昭三『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』(ブルーバックス、2017)

アルツハイマー病と糖尿病は密接な関係があるという説が紹介されています。二つの病気は発症の原因にインスリンが深く関わっています。糖尿病はインスリンの不足により血液中のブドウ糖濃度が上昇することで発症します。一方、アルツハイマー病はアミロイドβ(たんぱく質)の過剰蓄積によって記憶細胞の破壊が生じますが、インスリンそれを抑制する役割を持っています。従って糖尿病の発症によるインスリンの低下が、結果的にアルツハイマー病のリスクが高まるといわれています。実際に糖尿病患者の六割が、アルツハイマー病の予備段階である海馬の萎縮が確認されているそうです。インスリンの低下を引き起こさず、糖尿病を予防するには、日頃から健康的な生活(適度な有酸素運動、炭水化物の過剰摂取、質の良い睡眠)を心掛けましょう。

Iさん:西成活裕「渋滞学」(新潮選書、2006)

「渋滞」と聞いたときに、車の渋滞を思い浮かべる人が多いと思いますが、本書ではそれ以外に災害時の避難における人の流れや通信上の情報の渋滞、又は神経細胞のタンパク質を運ぶ役割を持つキネシンとダイニンの渋滞による健康障害など幅広く取り上げられています。中でも高速道路での渋滞は、事故や合流場所での遅延が原因ではなく、若干の坂道が影響しています。ドライバーが上り坂であることに気付かず、アクセルを踏む力が変わらないためスピードが落ち、その結果として不用意なブレーキが増えて自然渋滞が発生します。対策として、渋滞を感じる前から車間距離を置くことを意識することで、不用意なブレーキ防止につながります。渋滞解消に向けて安全運転をしましょう。

12/9は新書報告を行います。コツコツと取り組んでいきましょう。ここまでありがとうございました。

2020年11月21日土曜日

国立劇場で歌舞伎鑑賞

国立劇場のロビー。
 秋晴れの土曜日、ゼミ生3名と国立劇場へ歌舞伎鑑賞へ行きました。若者には縁遠い印象のある伝統芸能。敷居は高いですが、演劇としてもショーとしてもとても楽しいものです。

以下に、参加学生の感想を掲載します。

Sさん

私は今回初めて歌舞伎を鑑賞した。驚いた点は二つある。一つ目は服の優美さである。序幕で平清盛が身に着けていた衣装の美しさに思わず息を呑んでしまった。しかし服の優美さに負けず平清盛役の人の立ち姿は凛々しいものだった。摺り足というものがあるのもこの姿勢を崩さないようにするためなのかなと私は感じた。二つ目は語り手と三味線と演者のタイミングがずれないことである。バレエと違い語りの独特なリズムに合わせて動いているので合わせるのが困難に見えるがビシッと当たり前のように決めていくので驚いた。初めて鑑賞したので雰囲気を感じ取るので精いっぱいだったがいい経験になった。次に鑑賞するときには作品を事前に下調べしてから見てみようと思った。

Tさん

経済学部 4 年ゼミ生 T です。 今回の課外活動で初めて歌舞伎を観劇しました。率直な感想としては、私には難しかった かなと感じました。声や魅せる動き、演出は感動しました。ただ言語化できるほど理解が できず、難しかったなという感想に落ち着いた次第です。回数を追えば率直に楽しかった と感じることができるのかも知れません。また、テレビで見るような役者さんが実際に歌 舞伎されてる姿は感慨深かったです。テレビで見る役者さんの見方が変わりました。次の 課外活動も新しい発見がありそうで楽しみです。

Iさん

中学生以来の歌舞伎鑑賞で昔よりかは理解出来るものだと思っていましたが、難しくてちんぷんかんぷんでした。歌舞伎特有の間合いや言葉、三味線や小太鼓などの楽器など様々な要素があり奥が深いと感じました。

ですがなかなか観る機会がないので貴重な経験となりました!


2020年11月11日水曜日

2020年度後期 第7回&第8回:映画「ズートピア」を読む

 こんにちは。相澤ゼミ3年のIです。第7回と第8回のゼミは、「映画を読む」というテーマで行いました。第7回に映画『ズートピア』を鑑賞し、第8回で作品を考察するグループワークを行いました。はじめに、映画の概要を紹介します。

高度な文明を築いた動物たちが人間のように暮らす楽園「ズートピア」を舞台とし、夢を信じる新米ウサギ警官「ジュディ・ホップス」と、夢を忘れた狐詐欺師「ニック・ワイルド」の二人がズートピアで起こる事件の解決に挑むお話です。ズートピアでは、肉食草食問わず、あらゆる動物が生活を共にしていました。一見、ズートピアは、誰もが自由に過ごせるユートピアのような世界ですが、そこにも偏見による差別が起こります。このような現実の大都市にも起こり得る社会問題を描いています。ディズニー映画ですが、メッセージ性もあるため子供から大人まで幅広い年代の方が楽しめる映画となっています。

考察を行っていくうえで以下の4つの問い、項目について話し合いました。

  1. 映画のメッセージは何か?
  2. 1のようなメッセージを読み込む根拠となったシーン、演出はどのようなものか?
  3. 読み取ったメッセージへの自分なりの考察、意見
  4. その他面白いと思ったこと、気づいたこと

グループワークをして出た意見をそれぞれまとめていきます。

1. 映画のメッセージは何か?

 大きく2点が挙げられました。まず一点目は、「偏見」や「差別」が存在しているということです。二点目は、それらによる先入観を跳ね返すべきだ、ということです。

2. 1のようなメッセージを読み込む根拠となったシーン、演出はどのようなものか?

 具体的なシーンがグループワークの中でいくつも挙げられましたがここでは、私が重要だと思った点を紹介します。

まず、ジュディが警官になりたいと言うと、草食動物で小さいウサギという理由でなれるわけがないと馬鹿にされていたり、肉食動物は凶暴で野生化するといって恐れられたりと、それぞれの立場から自分とは異なるモノに対して偏見や先入観を抱いていた、という点です。

また、ジュディが大きな手柄をあげて表彰され記者会見をする場面があります。ウサギという種族のせいで差別的に扱われ、それを取っ払うたに中身や能力で補う努力をするなどたくさん苦労をしてきたにもかかわらず、ジュディ自身が肉食動物に対して偏見を持っていることを露わにするコメントをしていました。

そしてジュディとニックの元々は対照的だったふたりが相棒関係になったり、ノロマと思われていたナマケモノのフラッシュが速度超過の違反をしたり、全体を通して、先入観を跳ね返すような行動を描くシーンが多く見られました。

3. 読み取ったメッセージへの自分なりの考察、意見

 ここでは、ゼミ生の中で大きく分かれた点と、共通した点がありました。まず、他者を見る際の点として2つに大きく意見が割れました。一つ目は、他社に対して偏見や差別をするのは相手を知らないからしてしまうので、まず相手を知ろうとすることが大切である、という考えです。二つ目は、現実的に考えて大きな枠組みとして偏見を持ってしまうのは仕方がないので、その中でいかに個人にフォーカスして向き合うことができるかが大切という意見です。しかしこちらの意見に対しては、カテゴライズしてしまうのはそもそも良くないのではとの反論も出ました。

次に、個人がどう行動するかという点では共通した意見となりました。映画の主題歌である「try everything」や映画中にしきりに出てきたズートピアというユートピアな世界のキーワードとしての「誰もが何にでもなれる➡何にでもなりたい」ということから、偏見や差別を取っ払うための行動や挑戦が大切であるということです。

4. その他面白いと思ったこと、気づいたこと

  • 副市長の陰謀から、“恐怖”を利用することでコントロールしやすくなるというのは現実にも通じる。
  • リアルにし過ぎて現実味を帯びさせないために、人間と近い種の動物が出てこなかったり、肉食動物の食事シーンがなかった。

などの意見が挙げられました。

私の感想

『ズートピア』は僕自身、観るのは二回目でした。一回目は娯楽としてただただストーリーを楽しむという見方でしたが、今回は、グループワークをするという目的があったので、より深く考えながら鑑賞でき、違った楽しみ方が出来ました。また、このように様々な視点から楽しむことの出来るズートピアは優れた映画なのだとも思いました。

そして、今回のグループワークを通して、他の人の考察を聞いたり意見交換をする中で今までにしたことのない深い映画鑑賞となり、「映画を読む」ことが出来たと思います。機会があればまたこのようなグループワークをして深く映画に触れ合いたいと感じました。

次回は、久しぶりの新書報告です。本の世界を楽しみたいと思います。


2020年11月4日水曜日

2020年度後期 第6回:GW「読書について考える」

 こんにちは。相澤ゼミ経営学部3年のNです。今回のゼミでは、ゼミ生の皆さんと「何故本を読まないのか」という問いを考えるグループワークを行いました。

この背景には、私の総合研究教育ノートが関係しています。私は、総合教育研究ノートにて学力と読書の関係性について考察しようとしています。資料を調べていくうちに、読書が学力向上に関係するといわれているのに、何故学生は本を読まないのかが気になりました。そこで、相澤先生とゼミ生の皆さんにご協力頂き、今回グループワークを行っていただきました。最初にゼミ生の読書の実態を話してもらい、その上でどうやったら本を読めるようになるかを皆で考えました。以下、提示した問いとゼミ生の回答、私のコメントをまとめていきます。

Q1:ゼミ生の読書習慣の実態

  • ゼミで読む新書を除けば、週に一冊読むか読まないかといった所。一番多い人で月7冊程。
  • ジャンルは多岐にわたる(新書、ハウトゥー本、ビジネス系、小説、歴史)。

皆高い頻度で本を読んでいるのではないかと感じました。こうした意識の高さは相澤ゼミならではかもしれません。読む本のジャンルは多岐にわたりましたが、こうしたジャンルの違いは学力にも影響を及ぼすのか、興味がわきました。


Q2:読書媒体と入手方法

  • 媒体は電子、紙どちらも半々の意見。
  • 入手方法も、購入、借りるが半々。

私はもっと電子書籍で読む方が多いと思っていましたが、意外と紙で読む方も多く驚きました。私的な見解ではありますが、実際に書店や図書館へ足を運ぶと、ネット検索では発見しにくい本に出合うこともでき、面白みがあります。一方、電子書籍は紙の本に比べて購入の手間がない、かさばらないといった利点があるため、場合に応じてどちらも活用していくのが大切かもしれません(かく言う自分は電子書籍をほとんど読まないのですが…)。


Q3:そもそも「本を読みたい」と思っているか

  • ゼミ内では読みたい派が多数。読みたい理由は、読書による学びというより、読むこと自体が楽しいという印象。
  • 読まなくてもよい(必ずしも読書の必要性はない)派の意見は、学びの面が強い印象。学ぶ必要のある専門知識や、実生活に役立てられそうな知識を得るため読むという意見。

本を読みたい派は娯楽として、読まなくてもよい派は知識が得られるからという意見でした。一方で、両者ともに、本を読むのは良いことだと考えていました。そこで、どのような意味で本を読むのは良いことだと考えているのかという点を深掘りしていきました。


Q4:本を読むことによって得られるものは何か

  • 読みたい派の意見
    • 読んでいて楽しい(没入感、文字だけだからこそ想像するのが楽しい)。
    • 古人の考えを知れるのが面白く、自身の考えを深められる。
  • 読まなくてもよい派の意見
    • 新しい知識や語彙力を得られる。
  • 双方から出た意見
    • 読書に時間をかけても無駄に感じない(知識が得られるから。苦労して読んだことの達成感)。
    • 信憑性の高い情報が得られる。ネット検索だけでは得られない深い情報を得られる。

やはり、本を読みたい派は本を読むことに楽しさを見出している一方、読まなくてもよい派は新しい知識や語彙力を得られる点に本を読む意義を見出していました。また、こうした状況から、本を読みたい派は内向き(物語を自分で楽しめるか。自分の中で楽しみを見つけられる)、本を読まない派は外向き(他者と何かをするときに役立つ。知識として蓄えられる)に本を捉えているのではないかという意見が出て、非常に興味深かったです。ゼミ生以外の方にも、この説が当てはまるのか調べてみたいと感じました。

一方、自身が読んだ本を他人と共有することで、気づかなかった本の面白みや、他人との共感によってもっと読書を楽しめるという意見も出てきました。しかし、こうした他人との共有を行う際、小説は難しく、新書は比較的行いやすいという説明がありました。小説のようにストーリー性のあるものは、そのストーリーを相手も理解していないと面白さが伝わりにくいため、共有が難しい。その点、新書等は知識として蓄えられやすく、他者との話につなげやすいとのことでした。本ゼミでは小説ではなく新書の報告を行っていますが、それにはこうした理由があったということを理解しました。


Q5:学生にもっと本を読んでもらうにはどうすればよいか

  • 範囲等を指定して強制的に読んでもらう。
  • 本を作ってもらう(本を作るには知識必要だから必然的に読む)。
  • 共通の小説を読んでもらって、意見交換をする。

やはり一番有効なのは強制的に本を読んでもらうことかと思います。しかし、それでは自主的に本を読んでもらう段階まではいかず、一時的なものに終わってしまう可能性が大きいでしょう。「必ず一週間に一冊読む」ということを習慣づけ、それを守れる方なら続けていけるでしょうが…。その点、共通の本を読んで意見交換を行うというのは、有効かもしれません。同じ本でも、自分だけでは気づかなかった面が見えてきてその本の面白み、ひいては本全般に対する興味に繋がるのではないでしょうか。

今回のゼミを通して、他の方が本に対してどのような考えを持っているか知ることが出来ました。また、自分自身、何故本を読むのかといったことを改めて考えさせられ、非常に面白かったです。ご協力いただいた相澤先生とゼミ生の皆さん、本当にありがとうございました。

次回のゼミでは映画『ズートピア』を鑑賞し、次々回で感想を述べあうこととなっています。私もまだ視聴したことがないので楽しみです。皆さんもお楽しみに!


2020年10月31日土曜日

バレエ「ドン・キホーテ」を鑑賞

 担当教員の相澤です。10月の終わりに、ゼミ生三名とともに、新国立劇場でクラシックバレエ「ドン・キホーテ」を鑑賞しました。私自身バレエ鑑賞が趣味でよく出かけます。その美しさと楽しさを知ってもらいたく、今回の課外活動を企画しました。ゼミ生は三人とも初めてのバレエ鑑賞だったそうですが、その素晴らしさを体感したようです。
以下に、感想を掲載します。

新国立劇場オペラパレス
Tさん

 私は初めてバレエを観劇しました。新国立劇場のような大きなオペラハウスも初めてで、劇場にも感動しました。

今回のバレエを観劇し、特に印象に残っているのは細かい演出です。観劇する以前は踊りが主だっているものだと思い込んでいました。その先入観はいい意味で裏切られました。最初の場面で、ドン・キホーテが屋内にいる場面が広がります。その場面の照明は十字の影がありました。その影によって窓から日が指している様子がわかります。その他、バレエを披露していないキャストも扇で大きく扇いでいたり、談笑している様子が自然でした。もちろんバレエも凄いと感じましたが、全体の演出に感動しました。次回の課外活動も楽しみです。

Iさん

初めてバレエを鑑賞してみて、まず歌詞や台詞がないという点に驚きました。当然踊りがメインとなってくるのですが、音楽伴奏であったり舞台芸術など様々な要素があり視覚と聴覚で楽しむことが出来ました。バレエの踊り自体は身体全体で表現されていて凄くダイナミックで、また音楽との融合もあり迫力がありました。物語は、比較的わかりやすいものだったと思うので、全くの初めての僕でも作品に入り込み楽しむことが出来ました。また機会があれば鑑賞してみたいと思います。

Sさん

ゼミ生的ドン・キホーテのポーズ
 私は今回初めてバレエを鑑賞しました。バレエはオーケストラの演奏と共に言葉を発さずに表現するものだと知らずに観に行きました。実際に観て思ったことは二つあります。一つ目はドン・キホーテが主人公でありながらあまり踊らないところです。むしろ踊りを観客と一緒に楽しんでいるシーンがあり驚きました。二人の男女の恋愛が主題だと思いました。二つ目は劇中でセリフがないことです。そのため表情と動作で表現していきます。その時のBGMはオーケストラの生演奏なので迫力がありました。曲の強弱や見せ場のタイミングが演者の動作とぴったり合わさっているので引き込まれました。視覚と聴覚に訴えることで観客の心に響く表現ができるのだなと感じました。

2020年10月28日水曜日

2020年度後期 第5回:新書報告

こんにちは。相澤ゼミ生四年経営学部Sです。冬のような寒さに時々なりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。私は冬用のコートを着ながらこのブログを書いています。今週は先週に引き続きオンラインで行った新書報告についてご紹介致します。

相澤教授:沢山美果子『性からよむ江戸時代―生活の現場から』(岩波新書、2020)

     藤野裕子『民衆暴力』(中公新書、2020)

相澤教授は今回二冊の本について紹介されました。『性からよむ江戸時代』は村に生きた人々のセクシュアリティーを解き明かしていく本です。特に当時の裁判記録から例を挙げて日本史を解き明かしていくという内容になっています。

 『民衆暴力』は百姓の一揆などに始まる集団で起こった事件を著者が客観的に分析した本です。例えば関東大震災の朝鮮人虐殺。勝手なイメージや偏見で民衆が動いてしまったことについて深く取り上げられていました。

 真実味の無い噂でも大人数が訴えていると本当のことのように聞こえてしまうという恐ろしさを私は改めて感じました。コロナにおいても様々なデマが飛び交いましたがただその情報を鵜呑みにするのではなく自分なりに調べることが大事だと思いました。

Tさん:大森正司『お茶の科学』(講談社ブルーバックス、2017)

 この本は紅茶やお茶についての歴史や淹れかた、種類などを説明しています。お茶の渋みが酸化すると紅茶になることやお茶の良し悪しは渋み、旨味、苦みの三つの要素で決まることなどお茶についての興味を深めるのにおすすめの本です。

Tさんはもともとお茶を飲むことは少ないと言っていましたがこの本を読んでお茶について多くの面白さを見つけることが出来たと言っていました。

Aさん:本川達雄『ウニはすごい バッタもすごい』(中公新書、2017)

 この本ではウニやバッタをはじめとする無脊椎動物の面白い特徴について説明されています。浅利の殻を閉じているキャッチ筋やナマコは危険時、内臓を吐き出して逃げることなど新しい発見に巡り合える一冊です。

Yさん:近藤雄生『旅に出よう』(岩波ジュニア新書、2010)

 この本は色々な国に旅行した著者が経験したことや驚いたことについてまとめられたものです。特にオーストラリアにあるハットリバー公国を建てた人の話がYさんの印象に残ったそうです。コロナの影響で現在は無くなってしまったそうですが、50年近く個人の国家が続いたことに驚いたそうです。

Mさん:デイビッド・T・ジョンソン『アメリカ人のみた日本の死刑』(岩波新書、2019)

 この本の著者はアメリカの人です。日本の司法は本当に慎重な制度であるのかアメリカと比較して分析していきます。日本の裁判は当日にならないと詳細がわからない秘密主義であり検討する時間が限られてしまうのに慎重な裁判になることはないだろうと批判しています。このように日本とアメリカの対比から死刑になるまでの流れを追っていく本です。

Nさん:奥田昌子『欧米人とこんなに違った日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス、2016)

 この本は国によって病気の発症率や抑え方が違うことを統計に基づき分析していくものです。例えばアメリカは肺、気管支のがんの発症率が高く、理由としては肥満と喫煙者の人数が多いことを挙げています。一方日本人は大腸がんや胃がんの発症率が高いそうです。どうすれば発症率を抑えられるかなどは書いていなかったそうですが、現状を知りたい人にとっては興味深いデータが載っている本です。

Iさん:岡本真一郎『悪意の心理学』(中公新書、2016)

 この本は言葉や会話に宿る誤解や悪意について説明しています。その誤解や悪意は故意に起こすものではなく意図せずに悪い意味になって伝わってしまうことを指しています。主に二つの要素から失言が発生しやすいと言われています。一つ目は「透明性錯覚」です。相手に自分の心の中のことを伝えようとするときに実際よりも正確に伝わっていると過大に評価しやすいことです。二つ目は「マジックミラー錯覚」です。自分の発言に対して他人は気づかないだろうと感じてしまうことです。自分も見えないから相手も見えないだろうと考えることです。以上の二つの要素から誤解や悪意は生じてしまうそうです。Iさんはそのことをふまえ、相手の視点に立って考えることの重要さを改めて感じたと言っていました。


 次週は新書報告ではなくグループワークの予定です。そこでも新書にはない新しい発見が出来ると楽しみにしています。ここまでありがとうございました。

2020年10月21日水曜日

2020年度後期 第4回:新書報告

 こんにちは、ゼミ生4年経済学部Tです。寒くなり、上着も徐々に厚手に変わりますね。ゼミは変わらずオンラインで行っています。今週は新書報告です。それぞれご紹介します。


相澤先生:小塩真司『性格とは何か より良く生きるための心理学』(中公新書、2020)

著者は心理学の研究者です。本書は性格を紐解き、人生をよりよく生きるために役立つ心理学的知見を紹介しています。

まず読者の皆さんは、性格と聞いて何をイメージしますか?温厚、優しい、真面目…すぐ思いつくだけで数多くありますね。これらを分解していくと5つの要素で表現できます。学問上、“BIG5理論”と呼ばれます。以下がその5つの要素です。

・外向性:活発さ、元気さ

・神経症傾向:心落ちつかない感じ

・開放性:外への関心、興味の強さ

・協調性:他者とうまく付き合う性質、調和性

・勤勉性:真面目、計画的、誠実性

各人の性格とはこれらの要素に濃淡がついたものになります。自己分析ツールとしても広く活用されていることで有名です。また性格に優劣はないものの、勤勉性の強い人には好印象・仕事ができる人が多い傾向があるようです。直感的に好印象は調和性の影響が強そうだったので、勤勉性の強さで好印象に感じるのは意外ですね。日々、勤勉に務めなくてはと戒められました。


Nさん:武村政春『生物はウイルスが進化させた』(ブルーバックス、2017)

本書はウイルスの特性や起源を扱う内容でした。一般にウイルスは、生物が派生してできたものだとされています。著者は反対にウイルスが派生し生物ができたと主張しています。前提、ウイルスは生き物と定義されていません。ここでウイルスと生物との差について触れます。細胞性生物の遺伝子情報はDNA、ウイルスの遺伝子情報はRNAの塩基配列に保管されています。生物は自分でタンパク質を分解し増殖でき、ウイルスはできません。ウイルスの特徴の一つは、遺伝子の平行移動をさせることです。遺伝子の平行移動とは遺伝子情報をコピーすることで、これによって種を超えた遺伝子を媒介します。最後に著者は、ウイルスは目に見えないがたしかにいる、と締めくくり、これまで目を向けていなかったものに、目を向けることがときに必要だと訴えています。


Iさん:堀井令似知『ことばの由来』(岩波新書、2005)

本書は「指切りげんまん」を始めとした、字面ではルーツが推測できないような日本語表現の由来を説明しています。

「指切りげんまん」は約束を交わすときに使う言葉ですよね。みなさんも「指切りゲンマン、嘘ついたら針千本飲まそ」を一回とは言わず何度も使ってきたことでしょう。余談ですが、私は語尾を「飲ます」と使ってきました。耳で聞いたまま使っていたからだと思います。結論、「指切りげんまん」の由来は諸説あります。今回はその一説を紹介します。「指切りげんまん」を表す略語として、ユビキリやゲンマンが使われています。略語から言葉を分解して由来を追っていきます。ユビキリとは指を切ることから来ているのではとされています。遊女が相愛客に誓いの証として小指を贈ったそうです。ゲンマンとはゲンが拳、マンが万回、嘘をつけば拳で万回打たれるという意味に由来するそうです。どちらも穏やかではありませんね。

本書では詳しく取り上げられていませんでしたが、「胡座をかく」と「ベソをかく」の「かく」という動詞は同じ使われ方をしているようです。言葉の使い方は地方によって、同じ意味でも字が異なったり、同じ熟語でも意味が異なったりします。足を組んで床に座る姿勢が胡座なので、「かく」の動詞部分が座る意味になります。「ベソをかく」の「かく」が涙を流すという動詞になるので、意味が合いませんよね。こういった共通して使われる言葉にもなぜ?と不思議になります。日本語が難しいと評判なのは、こういった由来による背景もあるからだと感じます。


Sさん:辛島昇『インド・カレー紀行』(岩波ジュニア新書、2009)

カレーの語源をご存知ですか。17世紀のインドの“カリル”というスープから始まったようです。本書にはドーサやサンバルのレシピも書かれていて、インドの食文化についても取り上げられています。今日の日本のカレーは、イギリスによって輸入されました。南インドの米と食べるカレーが日本カレーのルーツです。ルーツの違いで、イギリスでは一般にカレーのことを“カリー&ライス”、アメリカでは“カリー”と呼びます。余談ですが、私がアルバイトをしている飲食店では、“カリー”と呼称しています。

相澤先生はインドがとても好きみたいで、カレーの味について地域ごとにレビューを共有されていました。同じ国の料理でも地域によって味の付け方が全く異なる特徴を持つようでした。先日のゼミでインドのトイレ事情についても触れられていたので、一層インドに興味が深まりました。


私T:竹田いさみ『世界史をつくった海賊』(ちくま新書、2011)

本書はイギリスのエリザベス女王政権下の海賊の活躍について解説されています。総じて、教科書で学んできたよりも、実際の歴史には卑怯なことが横行しているなと感じました。決して悪い意味ではなく、世界史で学んできた内容はポジティブな側面を取り上げてるので、仕方ないのだろうと思います。正々堂々の姿勢だけでは、勝てない現実があったのでしょう。海賊のように卑怯な活動も、必要悪だったのかもしれません。

歴史に出てくるこの時期のイギリス冒険家は、概ね海賊でした。国がバックで密かに援助して、海賊行為が行われていたようです。世界周航を初めて達成したマゼラン艦隊は有名ですが、マゼランは周航を遂げず亡くなってしまいます。指揮官として艦隊の世界周航を成功させたのは、イギリスのドレークが初めてです。ドレークは英雄として当時のイギリスでも取り上げられるものの、実態は海賊でした。ドレークを始めとした海賊を後援し、影で暗躍していたのはエリザベス女王です。当時エリザベス女王はヨーロッパでの地位は低く、スペインやポルトガルに引けをとっていたため、海賊を活用したようです。

その他、海戦や貿易で海賊は活躍します。世界史の教科書には記載されないダークサイドも史実として存在し、それが支えている歴史が存在することを知って大変興味深かったです。


Mさん:中川寛子『東京格差』(ちくま新書、2018)

本書は不動産価値に注目します。2040年には日本全体で40%と不動産価値が落ちると言われる中で、企業や自治体が不動産の価値維持できる地域にスポットをあて、自助努力や企業努力により価値が維持・向上する街とそうでない街との差が、なぜ、どうして生まれるのか解説しています。

企業による地域の価値が上昇した例として、東急グループによる駅を中心とした街づくりが挙げられていました。高級住宅地は元来お手伝いさんの存在を前提に作られてきました。その結果、現在でもコンビニやスーパーが少なく、現在では不便な街となり需要が低下しています。東急グループは駅周辺に街機能を集約することで、高級住宅街で起きている弊害を取り除いています。ある種コンパクトシティに近い街づくりを行うことで、課題を解決できる取り組みです。

Mさんが企業や自治体が不動産価値を高めると話していた際、恣意的ではと疑いつつ聴いていました。しかし内容は良い意味で裏切られます。そうではなく、不動産価値は地域の改題解決の副産物的についてきたものだとわかりました。中長期的に住む場所を選ぶのに、一読したいと思います。


Aさん:島田裕巳『疫病vs神』(中公新書ラクレ、2020)

疫病の正体がわかるまでの医学は意味をなしていませんでした。疫病の正体がわからない時代の処置やその意図、背景が書かれている一冊です。

中世の黒死病では、ヨーロッパの30%の人々が亡くなりました。疫病に対し当時の医学では、悪い血を抜くという意味で100cc~1000ccほど血液を抜いて「治療」していたそうです。私のような素人でさえ、意味がないなとわかります。また待機療法で治るまで安静にするという処置法もありました。血を抜くよりは有意義ですが、これも現代では疫病にかかって病院で何も治療されないのは想像できませんね。

日本では疫病が祟りから起きていると考えられ、神仏に祈ることや改元することで疫病と戦っていました。また、疫病の蔓延に妖怪が関わっていたとの考えもあったそうです。今日のように西洋医学が発展しなければ、疫病は神様にお祈りして対処していたと思うと感慨深くもなりました。


新書報告も回数を重ね、関連する内容も増えてきました。関連する内容が増えたことで、知識や考え方が体系的に醸成されてきたなと感じています。今回のブログは以上です。次回も新書報告が続きます。

2020年10月14日水曜日

2020年度後期 第3回:新書報告

 こんにちは。ゼミ生のYです。今回のゼミでは通常通り新書発表をしました。どんな本を読んだのか、それぞれが発表した本を順番に紹介していきます。

相澤先生:佐藤大介『13億人のトイレ』、角川新書、2020年

IT革命により、ビルが立ち並び華やかなイメージもあるインド。そのインドの現状を、この本ではトイレという観点から紹介されていました。インドの人にとって、トイレは不浄なものなので、家に作らない人も少なくないそうです。自分が想像している以上に、日本と海外の、文化の違いによる生活様式の違いがあるのではないかと思いました。

Tさん:若桑みどり『お姫様とジェンダー:アニメで学ぶ男とオン案のジェンダー学入門』、ちくま新書、2003年

童話に出てくるお姫様は基本的に王子様が迎えに来るのを待っています。女性は、そのような他力本願な描写を多く見て育ち、それが無意識に女性自身のキャリア意識の低さにつながっていると述べられていました。わたしは、最近のお姫様の映画では、自分自身の力で未来を切り開くという描写が増えているような気がします。それは、この本が書かれてから20年の間に女性の立場が変わりつつある影響ではないかと考えました。

Aさん:山本博文『切腹』、光文社新書、2003年

この本では切腹の時代背景や実例などが紹介されているそうです。最初は武士の誇りを意味していた切腹は、江戸時代には懲罰の意味に変化していったそうです。それは自分の主が死んだときに殉死で切腹する人が多かったためと紹介されていました。自分の腹を自分で切るのは想像するだけでも恐ろしいので、昔の人にとって腹を切ることに大きな意味があったことが伝わってきました。

Iさん:柴田 三千雄『フランス史10講』、岩波新書、2006年

この本ではフランスの現在に至るまでの歴史について紹介されていたそうです。自由と平等どちらかに偏っている国は存続できないという言葉がとても印象に残りました。この条件を基にどのような国家が長続きするのか、また今ある国に当てはまっているかについて調べてみようと思いました。

Sさん:早坂隆『世界の日本人ジョーク集』中公新書ラクレ、2006年

この本では世界各国と日本人のジョークについて紹介されているそうです。豪華客船が沈没したとき、どのように声をかけ海に飛びこませるかという問いに、日本人には「みんな飛び込んでるぞ」と呼びかけるのが、日本の国民性を的確に表していると思い印象的でした。文化によって、ジョークや禁句の範囲は違いますが、それぞれ尊重することが必要だと述べられていました。

Sさん:海老原嗣生『年金不安の正体』、ちくま新書、2019年

年金はこれからもらえなくなるのではないか。この本ではそのような不安に対しそんなに心配しなくても大丈夫と述べられているそうです。年金に頼るのではなく、貯蓄を増やしていくことが大切だそうです。発表を聞いて、年金に限らず正しい知識を持つことが、不安にならないための一番の方法だと気づきました

以上で今週のゼミの報告を終了にします。来週も引き続き新書発表を行います。



2020年9月30日水曜日

2020年度後期 第2回:GW「言葉遣いについて考える」

 こんにちは。経営学部2年のAです。後期2回目は「言葉遣いについて丁寧に考える」をテーマにグループワークをしました。どんな時でも言葉遣いは大切で、卒業して就職すればなおさらです。分かりきったつもりにならずに、学んでいきます。 

相澤先生は、学生から「お疲れ様です」と言われることがよくあるそうです。本来は「おはようございます」や「失礼します」を使う場面なのに、「お疲れ様です」が来ると違和感があるため、今回のゼミで扱うことになりました。 

 二つのグループに分かれて、二段階の話し合いをしました。 

一つ目は「『お疲れ様です』はどんな時に使うか?」です。話し合った結果、事務連絡の入りの部分、バイトを上がる時、先輩後輩といった仲間内の挨拶、「おはよう」以外の時間、といった意見が出ました。いろんな場面で使われています。特徴は、知り合い同士で使うこと、友達には使わないこと、丁寧語を使うべき目上の人へのきっかけ作り、として使われていることです。 

二つ目は「『お疲れ様です』はどんな言葉に置き換えられるか?」です。話し合った結果、業務連絡なら「こんにちは」「仕事の連絡です」「今お時間よろしいですか?」、バイトを上がる時は「さようなら」「お先に失礼します」といった意見が出ました。自然で、その場に合っていて、意図もしっかり伝わります。このように本来使われる言葉を「お疲れ様です」で済ませられるところを見ると、これは一見便利な言葉ではあります。

しかし、先生は、本来の言葉を「お疲れ様」に置き換えることに問題もあるのではないかと指摘されました。先生は特に「お疲れ様です」を目上の人に使うことは違和感があるそうです。実際に、ネット上では「『お疲れ様です』を目上の人に使ってもいいか」という質問記事がたくさんありました。質問が出るということは、賛否両論があり、相手によっては不快に感じることもある「リスクある表現」です。多くの学生が何気なく使っている言葉ですが、先生からは「目上の人に使う言葉は慎重にならないといけない」というアドバイスを頂きました。 

そして、誰が相手でも問題なく使える言葉をグループで話しました。そこで出たものは「おはようございます」「こんにちは」「お先に失礼します」「今お時間よろしいですか?」でした。「お疲れさまです」一つで済ますよりも言葉の意図が伝わり、違和感もありません。カジュアルに話せる先輩になら「お疲れ様です」を使ってもいいかもしれません。しかし、より適切で意図が伝わるものならどんなに目上の人にも失礼なく使うことができます。 最後に、形式的な決まり文句として「お世話になっております」があると教えて頂きました。  

「お疲れ様です」を使う人に悪気はないと思います。しかし、何気ない言葉で相手が不快になる可能性があることは忘れないでいたいです。それでも、つい使ってしまうかもしれません。そのため、まずは「お疲れ様です」をなるべく使わないことを意識しようと思います。 

今回は「言葉遣いについて丁寧に考える」をテーマにグループワークをしました。次回は新書発表です。 

2020年9月23日水曜日

2020年度後期 第1回:夏休み読書報告

 こんにちは!経営学部3年のIです。夏休みが終わり後期の授業が始まりました。後期も引き続きオンラインでzoomを使っての活動になります。今回は各々が夏休みに読んだ本を報告し合いました。新書縛りは無しです。では、どのような発表があったか一人一人紹介していきます。

相澤先生
小川さやか『 チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社、2019)や樋脇博敏『古代ローマの生活』(角川ソフィア文庫、2015)など6冊ほど紹介されていました。小説から歴史書と幅広く様々なジャンルがありましたが個人的には、『古代ローマの生活』に興味が湧きました。色々な視点から古代ローマの生活や世界観を垣間見たい思いました。
↓6冊全て紹介されている先生のブログです↓
https://n-aizawa.hatenablog.com/entry/2020/09/18/170813

Nさん
夢プロジェクト[編]『ポジティブな人と言われる技術』(河出書房新社、2005)
各場面ごとケースに応じたポジティブな考え方を紹介されていたそうです。例えば、「失敗や挫折をエネルギーに」というアドバイスでは、逆に何ができているかを考え、できなかった失敗を踏まえて次につなげることが勧められています。
とは言っても、場面や人によって処方箋は異なるそうで、自分もポジティブになるような行動を自ずととっていたのかもしれないと思いました。

Aさん
鴻上尚史『「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書、2019)
震災時は他の人を助けるのに普段の生活の中では見て見ぬふりをしがちという日本人の特性に外国人が驚いたという出来事を出発点として、「世間」と「社会」というワードがキーから日本社会を捉えているそうです。日本人は、自分の周りの人間からなる世間を大切にしがちで、空気を読むことに苦しんでいるのだそうです。

Tさん
前田裕二『人生の勝算』(幻冬舎文庫、2019)、南場智子『不格好経営』(日本経済新聞出版、2013)
他にも何冊か読まれたそうですが、どれも会社の社長が執筆されているものでした。しかしどの本にも共通するものとして、成功するための絶え間ない努力や失敗を通じての新たなる一歩などがあったそうです。
きっと社長になるような人はそのような素質があってのものだとも思うのですが、それ以上に直向きな探究心や努力を惜しまない力が備わっている方々なのだと思いました。

Sさん
・志村けん『変なおじさんリターンズ』(日経BP、2000)
・アニマル浜口『俺が気合を入れてYahoo』(ごま書房、1993)
どちらとも芸能人のエッセイで、自らの経験をふまえて若者に向けてのメッセージを発しているそうです。
本を通じてその人の過去を知ることもでき、とても面白そうだと思いました。
今回は新書という縛りがなかったため、皆さん色々なジャンルの本を読まれていて、とても面白かったです。次回は読書報告ではなくグループワークになります。お元気で。

2020年8月22日土曜日

クラシック音楽に触れる。

 ゼミ生Iです。今夏いかがお過ごしですか。課外活動を報告します。

今回は先生とゼミ生4人で8月22日にサントリーホールで開催された読売日本交響楽団の「YOMIKYO SUMMER FESTIVAL 2020」に行ってきました。僕自身このようなコンサートに行く機会がなく、またクラシックも聴くことがないので新鮮でとても貴重な時間になりました。音楽の専門的な知識が無く、詳しいことはわかりませんでした。ただ、一つ言えるのは、美しい音楽(オト)に包まれ耳が喜ぶのとともに心が浄化されたということです。

開演前の会場

コンサートのプログラムは下記の三大協奏曲で構成されていました。

・メンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲』ホ短調 作品64

・ドヴォルザーク『チェロ協奏曲』ロ短調 作品104

・チャイコフスキー『ピアノ協奏曲 第1番』変ロ短調 作品23

3楽曲に総じて言えることは、1つの曲の中で優しくゆっくりとしたパートと、激しく強く疾走感のあるパートが楽章ごとだけでなく楽章内でも混在し一変するため、さまざまな表情を魅せられ、まるで音楽(オト)が生きているかのように感じられました。

ソーシャルディスタンスを
とった客席にて。

その中で特に印象的だったのは、3楽曲目のチャイコフスキー『ピアノ協奏曲 第1番』です。自分自身がピアノを習っていることもありますが、会場の雰囲気がガラッと変わっているのを感じました。弦楽器と打楽器、そこにピアノの音色が交わり深く奥深しい音楽になっており惹き込まれ、30分ほどある演奏があっという間に終わってしまったという感覚でした。またピアノの辻井伸行さんの表現力も相まって、ピアノ・パートやクライマックスは圧巻で、曲が終わったときに思わず立ち上がって拍手をしたくなるほど魅了されていました。

やはり生の演奏はCD音源とは比べものにならないくらい迫力があり感動しました。またいつか機会があればクラシック音楽に触れたいと思っています。

2020年8月6日木曜日

ピーター・ドイグ展を観る。

ゼミ生Tです。今夏いかがお過ごしですか。課外活動を報告します。東京国立近代美術館では10/11までイギリス人画家ピーター・ドイグの展覧会が開催されています。今回は先生とSさん、私の計3名で鑑賞しに出かけました。

展覧会は3章で構成されています。
・第1章 森の奥へ 1932~2002年
・第2章 海辺で 2002年~
・第3章 スタジオの中で-コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003

章によって作風が違うように見て取れました。第1章は神秘的な明るい物が多く、反対に第2章は無機質で少し暗い感じがしました。第3章はポスターサイズの絵で、タイトルをそのままイメージしたものが多く描かれていました。

鑑賞は、二段階で行いました。始めに各人で30分かけて展覧会を周り、好きな作品を探しました(結局30分では足りず、45分ほど鑑賞しました。)。その後、みんなで集まって、好きな作品をそれぞれ紹介しました。

参加者の好きな作品として紹介したのは以下の通りです。
相澤先生:「ブロッター」、「コンクリート・キャビンⅡ」(どちらも第1章)
Sさん:「天の川」(第1章)、「ラペイルーズの壁」(第2章)
私T:「コンクリート・キャビンⅡ」、「ラペイルーズの壁」
一見すると私が二人を真似したみたいですね。

次は上記の作品を簡単に紹介します。(展覧会は写真撮影可でした。)
「天の川」
「ブロッター」、「天の川」は現実ではあり得ない現象が描かれています。
「ブロッター」の氷の上に立つ男性の足元には波紋が広がっています。「天の川」は水面に反射して映るものの方が鮮明に見えます。どちらも現実にはないミステリアスな構図で魅力的でした。

「コンクリート・キャビンII」
「コンクリート・キャビンⅡ」は率直に東京経済大学のキャンパスに似ていると思いました。綺麗な近代的な建物が雑木林の奥に広がっている光景をイメージしてください。本学の学生なら、こんな光景に既視感があるのではないでしょうか。木の自然と人工的な建物の対比が身近でまた現実味もあり、とても惹かれます。

「ラペイルーズの壁」
「ラペイルーズの壁」は赤茶色のところどころ剥げた壁際を歩く男性の絵です。全体的に写実的に描かれていて、風景は無機質そのものでした。風景と違い、穴の空いた明らかに小さいパラソルを差す男性の後ろ姿は朧げに見えました。鑑賞して感じた良さをうまく言語化できないのがもどかしいところです。

ピーター・ドイグ展の鑑賞を終え、所蔵品ギャラリーも覗きました。展望休憩室では皇居の眺めも一望できます。個人的には所蔵品の太田喜二郎氏の作品は点描がキレイで印象に残っています。

美術の魅力に気づくことのできた時間でした。参加してよかったです。それもあって今月プライベートで国立新美術館へ足を運ぼうと思っています。

次回も課外活動です。

2020年7月22日水曜日

2020年度前期 第13回:個人面談

担当教員の相澤です。前期最後のゼミの活動を報告します。

毎学期、最終回は個人面談を行っています。学生は事前に振り返りシートに記入した上で面談に臨みます。面談では、私とともに学期中に学んだことを確認し、後期の課題を自分なりに設定してもらいました。

本ゼミでは、毎週の新書報告を軸に運営しています。今学期は、持ち時間3分で内容を紹介し、ゼミ生との質疑応答と行う形で、計6回実施しました。新書報告はゼミ生にとっても初めての経験だったわけですが、新書を読むことそれ自体だけでなく発表の仕方も慣れてコツがつかめてきたという声が聞かれました。また、本を読む習慣がなかったが、読み始めると面白いことに気づいたという声も聞かれました。教員として、ゼミの狙いが機能したことを嬉しく思いました。

一方、今後の課題として多くの方が挙げていたのが、質問が(うまく)できなかったという点です。ゼミでは毎回、必ず一度は質問するよう義務付けています。数名の方が、質問はできたけれど、もっと内容を深める質問をできるようになりたいという前向きな課題を掲げてくれました。


各ゼミ生が次の目標を見つけるとともに、私自身も、学生に資するゼミ運営について考えさせられる機会となりました。夏休みの間に、いろいろネタを仕込もうと思っています。

なお、夏休みには何度か課外活動を実施する予定です。学生と直に対面し、一緒に新しい経験をすることが今から楽しみです。

2020年7月15日水曜日

2020年度前期 第12回:GW「『社会のしくみ』を考える」

相澤ゼミ経営学部3年のNです。今回は、歴史社会学者の小熊英二さんのネットインタビュー「もうもたない!?社会のしくみを変えるには」を読み、次の2点の共有、ディスカッションを行いました。

(1)気になった点や他人の意見を聞きたいと思った点
(2)日本社会で生きるとき大切にしたいもの・変えてもいいもの

 詳しい内容を報告する前に、記事の概要を記載したいと思います。
本記事では、1970年代に完成した日本社会のしくみが、時代の変化に伴い、維持できなくなっているのではないかという考察が述べられています。日本社会のしくみとは、終身雇用や年功序列の賃金システム、そして新卒の一括採用などに象徴される雇用慣行と、それに規定されてできていった教育や社会保障のあり方、さらには家族や地域のあり方といった日本社会の慣習の束のことを指しています。
また、小熊氏は現代日本での生き方を、大企業型・地元型・残余型の3つに分類して説明していました。1つめの大企業型は、大学を出て大企業の正社員や官僚となり、賃金が年功序列で上がっていく人を指します。こうした大企業型は所得が多いものの、長時間労働や通勤時間が長く、地域社会とのつながりが薄い人が多いという特徴があります。2つめの地元型は、地元の学校を卒業し、農業・自営業・地方公務員・建設業などで地元にとどまって働いている人を指します。所得は比較的少ないものの、地域コミュニティ-を担い、持ち家や田んぼを有したり、人間関係が豊かだったりします。3つめの残余型は、平成の時代に増加してきたタイプで、所得が低く、人間関係も希薄という特徴があります。これらの象徴としては、都市部の非正規労働者などが挙げられます。
社会のしくみは、全人口のわずか3割の大企業型の安定性を守るために維持されてきました。しかし、東西冷戦の終結など、この三十年ほどの間に様々なことが起こったことから「日本は社会のしくみを維持できなくなってきているのではないか?」というのです。大企業型は、長時間労働・人事査定の強化・非正規雇用の活動といった方法でしくみを保っていますが、地域型・残余型の7割はどんどん非正規雇用へ移動していき、安定性を失っていきました。
社会のしくみが維持できなくなっていくにつれ貧困や格差という問題が出てきます。そうした問題への気づきが遅れた理由として、問題を論じるのが安定した約3割の人々であったこと、日本人が成果主義を嫌った事が挙げられています。現状、社会のゆがみは外国人労働者を使って解消しているものの、行政の人員不足によって人権問題が発生していると小熊氏は警鐘を鳴らしています。
記事の最後には、「社会のしくみを変えることに不安な者もいるかもしれないが、これからは、何を望み、何を望まないか考えていく必要がある」と、小熊氏は述べています。

記事の概要をふまえて、次に、冒頭で述べた(1)(2)についてゼミ生がどんな点に注目したのか、記載していきたいと思います。
(1)に関しては次のような意見が挙げられました。
・一億総中流(自身は中流階級と思う者が大多数)というなじみのない言葉が印象的だった。
・約3割の人々を残りの7割の人々が支えているというのに驚いた。
・日本では階級や階層の格差を意識するのが難しいことが分かった。
・日本は国内市場が大きいため、問題の発見が遅れたという点がおもしろかった。
・社会のしくみが東西冷戦で維持されてきたというのは皮肉で興味深かった。
・日本人がやりたくない仕事を外国人労働者で補ってきたという指摘に驚いた。
・公務員の数が少ないという問題を再認識できた。

私は、日本では階級や格差を意識しづらいという話が特に面白いと思いました。すなわち、企業内部では格差がそれほど開いていないため、格差を意識しにくい。一方、企業間の格差は着実に広がっているというものです。こうした、格差が見えにくい社会が形成された要因として、企業内で格差があると労働者のやる気が削がれるという点が挙げられるでしょう。私はそれと共に、他者と比べて自身が劣っているように感じる・自身が劣っていることを他者に気づかれたくない、という日本の恥の文化も関係しているのではないかと感じました。また、「こうした状況は私たちが選択してきた結果なのだ」という小熊氏の言葉も印象的でした。現状を「こんなはずではなかった」という方もいますが、我々が選択してきたからこうした現状になったという小熊氏の考えは実に興味深かったです。これは次の(2)にも関係してくることですが、何を守って何を捨てるのか、所捨選択を行う必要があると分かりました。

(2)の日本社会で生きるとき大切にしたいものは、物事を選択できる自由・趣味を行える時間の確保・自身や他者が健康に生きていけること・仕事に対してのやりがいの4点が挙げられました。逆に変えてもよいものとしては、現在の労働形態と、他人を気にしすぎる慣習の2点が挙げられました。
 私は、(2)に関するディスカッションを通じて、自身が大切にしていきたいもの・変えてもよいものを見直すことが出来ました。社会で生きていくにはあきらめなければならないことも多くあると思います。しかし、その時に本当に大切にしたいものは何なのかを考え、選択したいと思いました。

次週は1期最後のゼミとなります。もうそんな時期なのかと驚きを隠せませんが、最後まで気を抜かずに頑張っていきたいです。お楽しみに!

2020年7月8日水曜日

2020年度前期 第11回:新書報告

現代法学部4年のMです。今回も先週に引き続き新書報告を行いました。どのような発表があったか一人一人紹介していきます。

相澤先生
石川明人『キリスト教と戦争』(中公新書、2016)
この本は、今までキリスト教は平和を訴えながらも、なぜ、戦争という暴力行為をしてきたのかを多くの事例、参考文献をもとに解説しています。殺しと愛は矛盾しないとする「正戦論」はアウグスティヌスに始まり、現代ローマ教会の正当防衛承認に繋がっていきます。以前の新書報告で「魔女狩り」について学びました。魔女狩りでは不当な判決と残忍な処刑方法によって多くの犠牲者を出しました。本書の事例で紹介されている宗教戦争においても異教徒への迫害があったことから、時には世俗文化として割り切ることも重要だと考察しています。

Tさん
森山至貴『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書、2017)
近年LGBTと呼ばれるセクシャルマイノリティが注目され、クィア・スタディーズという言葉を聞くようになりました。クィア・スタディーズとは、あらゆるセクシャリティを対象としている分野の一つで、本書ではセクシャルマイノリティについての正しい知識や性の在り方の分類について歴史と経緯をふまえて説明しています。LGBTは多数者と少数者の対立と思われがちですが少数者同士でも差別が起きていることがあり、多様性の複雑さが現れています。

Aさん
原田隆之『痴漢外来』(ちくま新書、2019)
痴漢やレイプといった性犯罪について、犯人の性格や生活習慣から原因を紐解き、再犯防止に向けた取り組みを紹介しています。痴漢は「性的依存症」と呼ばれ、認知のゆがみによる性的興奮から抜け出せないため、犯罪の中でも再犯率が高いといわれています。日本では「認知行動療法」といった依存を克服する治療を経て社会復帰を目指します。一方、海外ではGPSによる追跡や保安処分によって通院が強制されるなど、社会からの風当たりもより強い傾向にあります。

Yさん
青木保『異文化理解』(岩波新書、2001)
異文化に対する偏見と先入観が、時には戦争をも引き起こす原因になるため、本書ではその国の文化が形成された歴史への理解も重要だと述べられています。また、著者はインターネットが普及した今の時代は先入観や固定概念による決めつけが生まれやすいと考察しています。確かに、マスメディアの報道次第で、情報の受け手である大衆に対して間違った理解を促すことも考えられます。このことから、正しく異文化理解を行うには常に慎重な姿勢で情報を見極める必要があると感じました。

Sさん
布施英利『「進撃の巨人」と解剖学』(講談社ブルーバックス、2014)
本書は、漫画『進撃の巨人』に解剖学の知見が生かされていることを論じています。本書に出てくる「美術解剖学」は、漫画の世界において筋肉を描写する際の情報として大いに役立っている学問だといえます。はじめは漫画家も解剖するのかと驚きましたが、解剖実習は医学部生しかやってはいけないため、漫画家は実習の様子を見学し、筋肉や骨格をスケッチするそうです。漫画を読む我々は実際の筋繊維を見たことがないため、『進撃の巨人』の描写のリアルさを判断することはできませんが、その筋肉描写のインパクトが私たちの想像力をかき立て、魅力の増幅に繋がっていると言えそうです。

Iさん
長沼毅『死なないやつら』(講談社ブルーバックス、2013)
本書は、高圧環境、酸性環境、宇宙線環境といった劣悪な環境下にいる極限生物を題材とし、進化の観点も踏まえて考察しています。極限生物は進化の過程で環境に適応したわけではなく、突然変異から誕生したといわれています。また、極限生物の特徴の一つに体の小ささがあります。これは、劣悪な環境下を生き抜くための進化だと思われます。極限生物の圧倒的な耐久性と生息域は大変興味がかきたてられます。

Nさん
竹内薫・丸山篤史『99.996%はスルー』(講談社ブルーバックス、2015)
情報化社会の現代ですが、本書のタイトルにあるようにほとんどの情報はスルーされています。その理由の一つは、人の脳が一度に処理できる量が決まっていて、およそ数十ビット/秒に対し、入ってくる情報は1000ビット/秒を超えているためです。また、マスメディアやSNSの発展により、情報量が2000年初期と比較すると35倍になったといわれています。これからは、重要な情報を取りこぼさず、なおかつ、スルースキルも習得することが必要不可欠だと考えられます。

Mさん
園山耕司『新しい航空管制の科学』(講談社ブルーバックス、2015)
現在日本における一週間の航空機の離発着数は国内線だけでも1万便を超えていて、それらを支えているのが航空管制です。航空管制は、飛行機のパイロットと常に連携を取り、離陸してから到着するまで指示を送り続けています。また、航空管制は、航空機がより安全に飛行できるように、衛星のほかに「エリアナビゲーション」とよばれる機械で高度や気圧等の変化を読み取り、航空機の位置情報を正確に把握しながら的確な指示を出しています。さらに、コックピット内の装置も以前はアナログなものでしたが、最近はカーナビ仕様になっているため航空管制の指示がよりスムーズに伝達できるようになったとのことです。

来週は今学期最後の授業です。もうひと踏ん張りです。

2020年7月1日水曜日

2020年度前期 第10回:新書報告

相澤ゼミ生の経営学部4年Sです。今回も先週に引き続き新書報告をしました。どのような発表があったかそれぞれ紹介します。

相澤先生
清水克行『耳鼻削ぎの日本史』(文芸春秋社、2019年)
この本は、耳鼻削ぎという日本の文化について中世歴史家の著者が辿っていくものです。耳鼻削ぎといえば秀吉の朝鮮侵略の話が有名ですが、実は耳鼻削ぎは秀吉の朝鮮侵略以前から行われていたものです。中世人の論理を解き明かしながらその意味を分析していくのが本書のテーマです。例えば耳鼻削ぎが死刑に相当する罰になることから現代人と中世の日本人の思考の違いを解説しています。

Aさん
川村裕子『平安女子の楽しい!生活』(岩波ジュニア新書、2014年)
本書は平安時代の貴族の生活について書かれています。女子だけでなく男子の生活についても解説されているのも面白い点です。平安時代の結婚は手紙のやりとりから始まり、男性が女性の家に通って愛を育んでいきます。当時のモテる男性の条件は手紙をまめに出すことや字が綺麗なことだそうです。考えていることやしていることに現代と似ているものがあるなと私は感じました。

Iさん
松本英恵『人を動かす「色」の科学』(サイエンス・アイ新書、2019年)
Iさんは色彩検定3級を持っていて、この本の内容はその知識に通じるものがあると言っていました。この本は色が人に与える影響について説明している本です。例えば色の持つ主張性が挙げられます。トイレの男性、女性を見分ける図の色は必ず青と赤に振り分けられています。つまり色が人にイメージを与えることがあります。例えば色の持つ印象とその人の振るまいがマッチすると相乗効果を発揮することや逆にマッチしないとイメージが悪くなりやすいそうです。相澤先生の好きな色である赤は負けず嫌いな印象を与えるカラーです。私も好きな色なので相乗効果を発揮できるような漢になりたいと強く思いました。

Tさん
坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書、2016年)
本書は風俗業が抱える問題を実際に働いている人の状況などを交えて説明しています。Tさんは、本書の中で扱われている次の2つの問題を紹介していました。一つは、託児所とベビーシッターがついていて子持ちの人でも働くことが出来る店など、ある意味働く人のワークライフバランスが実現できてしまうこと 。二つ目に、そしてお客さんがつかないと思うようにお金を稼ぐことが出来ずに劣悪な環境に依存してしまう悪循環に陥ってしまう点です。このような風俗の実態を紹介していてリアリティ溢れる本です。

Nさん
玄田有史『希望の作り方』(岩波新書、2010年)
本書は希望とは何なのか、そして希望を持つために必要な要素を紹介していくのが大きなテーマになっています。この本の希望の定義は困難な状況について本人が考え、行動して変えていくことです。中でもその希望を作る4つの要素は気持ち、何か、実現、行動です。そして希望をつくる2つのきっかけは失敗を経験することと仲間をつくることがあります。特に自身と違う価値観を持つ仲間と話すことが大切です。

Mさん
高橋久仁子『「健康食品」ウソ・ホント(ブルーバックス、2016年)
健康食品などの広告によく見られる「これを摂取すれば〇〇出来ます。」この言葉が本当なのか、実際どうなのかを科学的に検証していく本です。実際にトクホや機能性表示食品の設定された飲み物を例に本当に脂質の排出量が増えるのか確かめています。結果はあまり大きな効果にはなかったです。あまり誘い文句を鵜呑みにしてはいけないということを伝えています。

S(今回ブログ担当者)
小泉武夫『いのちをはぐくむ農と食』(岩波ジュニア新書、2008年)
本書は日本の食料自給率が低下しているにもかかわらず農業が後継者不足や異常気象で大変な状況になっていること、そして私たちが何をしたらいいのかというのがテーマになっています。農家の後継者不足や海外に食料を依存すると出てくる問題について説明しています。そのうえで日本の食について考えること、日本の食材を食べ日本というふるさとの味について考えることが日本の食と農家を考えることにつながっていくと主張していました。

Yさん
斉藤忠夫『チーズの科学』(ブルーバックス、2016年)
本書はチーズの栄養機能や作り方によって1000種類も違いができるチーズの魅力について紹介しています。チーズには豊富なカルシウムとその栄養の吸収しやすさが高いことや虫歯の予防になることが発見されています。そしてYさんはこの本を読んで食品を科学的な側面から分析する面白さを感じたそうです。

今回のゼミの最後で相澤先生に「ゼミ生の皆の伝える力が新書報告を通じて向上しています」と嬉しいお言葉をいただきました。これからもしっかりとゼミを楽しんでいきたいと思います。

2020年6月24日水曜日

2020年度前期 第9回:新書報告

2020年度前期第9回
ゼミ生4年経済学部Tです。ブログも一周し私の担当が二回目になりました。今週は新書報告です。

相澤先生
山口晃『ヘンな日本美術史』(祥伝社、2012)
本書は現代美術家の視点で鳥獣戯画や水墨画を始めとした日本美術を捉えたものです。著者の感性を中心にして日本美術の魅力が語られています。事前知識のない美術品を鑑賞しても、手探りでの感じ方になります。そのため日本美術を鑑賞する上でヒント、糸口になるのではと感じました。

福田千鶴『後藤又兵衛 大坂の陣で散った戦国武将』(中公新書、2016)
本書は後藤又兵衛という武将を切り口に戦国武将の在り方が書かれています。ゼミ生のSさん曰く、戦国を舞台にしたゲームでは定番の人物だそうです。私は日本史に疎いため、後藤又兵衛を初めて知りました。

三鬼清一郎『大御所 徳川家康 幕藩体制はいかに確立したか』(中公新書、2019)
先生が読了されていないため表現を濁します。本書は徳川家康の後半生の生き方が書かれているようです。先生は日本史を様々な角度から見ることで「歴女」の夏にするそうです。

Mさん
草野真一『SNSって面白いの? ―何が便利で、何が怖いのか―』
(講談社ブルーバックス、2015)
著者は、SNSの成り立ちを追いつつ、SNSに肯定的な立場を表明しています。
本書では権力が5つあるとされています。いわゆる三権の司法、行政、立法に加え、4番目の権力がマスメディア、5番目がSNSです。ときにSNSは国を動かす力さえあります。SNSは強い権力であると意識が鈍くなってしまいがちだと思うので、権力の1つだと自覚が必要だと考えさせられました。本書の内容と関連して、SNS黎明期の様子を描いた2010年の映画『ソーシャルネットワーク』を相澤先生が勧められました。

Aさん
田中修『植物はすごい』(中公新書、2012)
メディアでも露出している田中氏の本です。一見意思のない植物の生き方を体系的に紹介されています。植物は守る手段として棘や毒、抗酸化物質を持ちます。棘は身を守る以外にも移動にも使われます。また毒を持つ植物は不作時にも食べられるものもあり、救荒植物と呼ばれます。例えば、救荒植物のヒガンバナは水につけることで毒が抜け、食べることが可能です。また、植物は光合成を行っています。しかし、太陽光の紫外線はCO2の割合に対し植物の必要な量を超え、活性酸素になり残留します。端的に言えば動物が日光を浴びることと同じです。日光が強いため植物は光合成でエネルギーをすべて酸素へ還元できず、紫外線のダメージを負います。そこで、植物の抗酸化物質(アントシアニン、カロテン)を体内で生成し過酸化を防ぎます。人間にもアントシアニン、カロテンは有効です。私は植物の凄さよりも、強さが分かりました。

Nさん
国立がん研究センター研究所『「がん」はなぜできるのか』(講談社ブルーバックス、2018)
今日では二人に一人が「がん」になるといわれています。そんな国民病となりつつある「がん」を取り上げた本です。未だに不治の病というイメージが根強い「がん」ですが、有効な治療法が増えています。しかし普通の検査では早期発見が難しい現状にあります。早期発見ができなければ、治療の難度も高くなってしまいます。悪い生活習慣とされるお酒、たばこによって免疫の作用が阻害を受け、がん細胞の増殖を抑えられず「がん」ができます。お酒、たばこ以外にも塩分過多の高血圧、運動不足や肥満も「がん」の原因に数えられます。私も最近は怠慢な生活を送っているので、改めて生活習慣を見直す機会になりました。

T(今回ブログ担当者)
森生明『会社の値段』(2006、ちくま新書)
コンサルティングファームを渡り歩いた森生明氏の本です。本書では著者のM&Aの経験から、会社の値段の出し方や考え方が書かれています。著者は会社の値段を図る手段として時価総額MV、企業総価値EVまた適正を図るPERを用います。時間が足りず発表では触れられませんでしたが、日本式の考え方米国式の考え方の比較もありました。それぞれ会社の価値への考え方が違っており、日本式は顕著に定性的、米国式は顕著に定量的であるとわかりました。本書は2006年に出版されているため、2020年の現時点と重なる部分と異なる部分も楽しめます。根幹の会社の値段については大きく考え方が変わっていないと思います。私の感想として個別株式の購入を検討している場合は一読するのがおすすめです。

Iさん
浜田寿美男『自白の心理学』(岩波新書、2001)
皆様は身に覚えのない疑いをかけられたことがありますか?Iさんは本書を読むまで、「身に覚えのない疑い」をかけられても「嘘の自白」をしない自信を持っていたようです。浜田寿美男氏は冤罪事件に関わってきた際、取調べの過程を分析しました。その分析によれば、問題点は取調べの環境にあるそうです。具体的には、取調室が密室であることや容疑者が犯人であると確信しているという点です。容疑者は、精神的に追い詰められ、孤独感ゆえ犯人の振りもしてしまいます。冤罪の疑いなので、証拠も矛盾した箇所も出てきます。しかし取調官は上手く捏造し矛盾点も消します。本書で分析された時代(2001)と異なり、現在は取調べの録画も行われているようです。取調べの録画について現代法学部のゼミ生Mさんへ現代の取調べについて情報を補足してもらいました。Mさんは、未だに残る課題として、取調べのすべてが撮影されるわけではなく場面が限られている点やカメラワークが悪く大事な場面の詳細がわからないことがある点を挙げてくれました。私は発表を聞いて、20年近く経過していても明確に問題が改善されていないこともわかりました。

Sさん
岩田誠 『上手な脳の使いかた』(岩波ジュニア新書、2016)
脳の仕組み、育ち方、使い方が書かれた本です。本書では大きく脳は大脳、小脳、脳幹の3つの部分からなると紹介されていました。特に大脳皮質の内側にある大脳辺縁系の海馬では記憶や学習を司っています。記憶をつくることを「記銘」と呼びます。本書では、海馬で優位に記銘させる方法が紹介されています。まず前提として本書に書かれている記憶の種類には以下の3つがあります。

・エピソード記憶(陳述記憶)
いつどこで何があったといった体験の基づく記憶
・意味記憶(陳述記憶)
モノの名前や公式といった学んで覚えた知識のこと
・手続き記憶(非陳述記憶)
運動の動作や絵の描き方といった技能に関する記憶で、実際に手や体を動かさなければ身につかないもの

中でも「エピソード記憶」が強い記銘が可能です。エピソード記憶は自分の体験がもとになるため、それだけで強いインパクトがあります。そのため海馬だけでなく、脳のいろいろな部分に送り分散し蓄えると考えられています。記憶を蓄える場所については詳しくわかっていません。また活用以外にも脳を有効に使うために休めることも重要です。本書では90分サイクルでの勉強がおすすめされていました。そういえば大学の講義と同じ時間です。いささか長いと感じていた講義が、理に適っていたみたいです。

私たちゼミ生も新書報告に慣れてきました。報告に際して先生から3分の使い方、新書で得た知識と自信の見解のバランスのアドバイスを頂きました。私は3分でまとめるのが難しく感じています。報告は必然と情報の取捨選択が迫られます。今回改めて読み解く力と伝える力を兼ね備え、同時に醸成させなければと課題を感じました。

来週も新書報告を行う予定です。

2020年6月17日水曜日

2020年度前期 第8回:文章の書き方レッスン

相澤ゼミ生の経済学部二年のYです。今回は「文章の書き方」について学習しました。その活動について記載していきたいと思います。

事前準備として、授業前によくない文章例が先生から配布されました。その文章のどこが良くないのかを事前に考え、問題点を改善した文章をあらかじめ作る宿題が課されました。当日は、その宿題をもとに授業を行いました。

授業ではA、B二つのグループに分かれグループワークを行いました。グループワークでは各自事前に用意した資料を元に、改善点について意見を出しあい文の添削をしました。そしてまとめた分について各グループ発表し、お互いの意見について共有しました。一つ目の文章では一文が長い、話し言葉がないなど共通の意見が出ました。二つ目の文章の文章も同様に文章が長く、伝えたいことがわからないという意見が多かったように思います。文のつながりを明確にし、シンプルな文章を心掛ける。このことが読みやすい良い文章につながると理解しました。

グループワークを行い、意見のまとめ方にそれぞれ違いがあったのが面白いと思いました。例えばAグループでは文の構造自体を変えていました。その一方Bグループでは言い回を変えたり文章の区切り方を変えたりしていました。また授業では先生も改善案を発表されました。先生の変え方はBグループに近く、文を補うことによって読みやすくしていました。様々な文章を読みやすくするための工夫が見ることができとても興味深かったです。

授業の最後には先生からブログを書く上で気を付けることについて教わりました。その中で「など・ものといった言葉を使ってごまかさない」、「類語を使って文が単調になるのを避ける」という二点の指摘は、自分が頻繁にやってしまうので意識していこうと思います。

今回はグループワークを通して意見交換をするという初めてのことに取り組みました。途中ハプニングも起き、とても楽しい授業でした。来週からはまた新書報告に戻ります。

2020年6月10日水曜日

2020年度前期 第7回:新書報告

経営学部2年生のAです。今回、ゼミ生は講談社のブルーバックスから新書を選びました。科学系の新書です。

相澤先生 吉成薫『エジプト王国三千年史』(講談社選書メチエ、2000
古代エジプトの死生観や社会制度、美術などを文学を通して学ぶ本です。当時は文字を読めない人が多くいたため、それらを残したのは位の高い人たちであったそうです。選書は新書よりもサイズが大きく分厚そうだったので読みごたえがありそうでした。また、相澤先生から「同じテーマの本を二冊以上読むことで知識の定着ができる」という話もありました。同じことが書かれていれば、それほど大切なことだとわかりますし、「あの本にも書いてあったな」と確かめながら読めそうです。

A(今回の担当者)山田克哉『時空のからくり』(講談社ブルーバックス、2017
時間と空間について書かれた本です。当たり前というか、無いことが考えられない時間と空間が物体のように伸びたり縮んだりする性質があることに驚きました。速いスピードで動く箱の中の時間が外の時間と比べて遅くなることや、空間が曲がることが相対性理論なども使われて説明されていました。しかし、そもそもなぜ曲がるのかは分からないそうです。壮大な内容でした。

Yさん 能世博『ウォーキングの科学』(講談社ブルーバックス、2019)
歩き方が健康にまで影響することが書かれた本です。インターバル速歩によって十歳若返ることができるそうです。細胞内のミトコンドリアが体力と関係しているという話もあり、科学的なのだと思いました。歩く機会は毎日のようにあるので実践しやすいのではないでしょうか。五分を一日三セット行うと五カ月くらいで効果が出るらしいです。継続して若返り続ければ不老不死に…なりませんね()

Iさん 池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』(講談社ブルーバックス、2016)
無意識に思考が錯覚する現象を認知バイアスと呼び、買い物で「得だ!」と思って買ったものが、冷静になるとそうでもなかったりすることもそれに該当します。1000円の普通カレー、1500円の特製カレーの二つに3000円の極上カレーを加えると、選択肢が二つの時より特製カレーを選びやすくなる話がありました。気づかないだけで、同じような事例はたくさんありそうです。誰にでも当てはまるものを「自分にピッタリ!」と思い込んでしまうバーナム効果も紹介されました。悪く言えば操られることになるわけですが、それに気づかないって少し怖いですね。

Tさん 二井将光『生命を支えるATPエネルギー』(講談社ブルーバックス、2017
細胞内のミトコンドリアでATPというエネルギーが作られていて、それがアデニン・リボース・リン酸に分かれているという話がありました。これらを聞くと中学高校で習う生物を思い出します。Yさんの読んだ『ウォーキングの科学』とも似ているところがありそうです。また、ATPががん治療や殺虫剤にも役立っているという話がありました。医療や虫退治にもATPが関わっているのは興味深く感じます。こういった知識を知っておくと、生き物の体に詳しくなれそうです。

Nさん 藤原さなえ『日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方』(講談社ブルーバックス、2018)
「舌力」を鍛えることで滑舌や姿勢がよくなったり、顔もシュッとするそうです。上の歯に舌が当たっていないとこれが不足しているそうなので、発表を聞いてドキリとしました。トレーニングで鍛えることが可能です。舌は食事と会話ぐらいしか関係ないと思っていましたが、そんなに単純ではないと思いました。あまり意識しない「舌」について考えることができて、健康につながる本だと思います。

Mさん 櫻井武『睡眠の科学ーなぜ眠るのかなぜ目覚めるのかー』(講談社ブルーバックス、2017
睡眠のメカニズムについて書かれた本です。脳にある覚醒中枢と睡眠中枢がお互いの効果によりバランスを取っているそうです。オレキシンというホルモンが抑制されると眠れるそうで、そのために重要なことが食事・睡眠環境・体内時計だそうです。生活習慣が荒れるとこの三つは乱れやすいものばかりです。ぐっすり眠るために意識したいものです。

Sさん 亘部幸博 『コーヒーの科学』(講談社ブルーバックス、2016)
コーヒーの歴史やおいしさ、焙煎、健康について説明した本です。普段消費されているコーヒーは「コーヒーノキ」の種が材料で、これを加熱してあの色や香りがつくそうです。おいしさは苦味・酸味・香りからくるもので、焙煎前でも300種類の香りがあるとは驚きです。カフェインが含まれているので一度に34杯飲むと急性中毒になるとのこと。飲みすぎには注意ですね。

今回は科学系の話を聞くことができました。他のゼミ生の発表から、すぐに実生活で役立つ知識を得ることができてよかったです。これからもジャンルを問わず、様々な新書を読んでいきたいと思います。来週は新書報告ではなく、「文章の書き方」を学びます。

2020年6月3日水曜日

2020年度前期 第6回

相澤ゼミ経営学部3年のNです。今回は前回と同じく新書報告を行ったので、その活動を発表順に記載していきたいと思います。

相澤先生:三井誠『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書、2019)
この本は昨今アメリカで起こっている科学不信について取材、考察したものです。科学先進国のアメリカから「地球は本当に丸いのか?」「本当に人はサルから進化したのか?」という話が出てくるのは驚きがありました。また、こういった事例はアメリカだけでなく世界中で起こっているのではないかという先生のコメントには驚かされました。一方、質疑応答でTさんが仰っていたような「科学的という言葉を信用し過ぎなのも危険ではないか」といった指摘にも共感しました。「科学的に~」と言われると説得力があるように思ってしまいますが…本当にそのデータが正しいのか疑問に思わないのは危険かもしれないと感じました。データは、都合のいいように見せることもできるため、ニュース等で報じられていることも鵜呑みにしすぎないことが大切であると感じました。

Tさん:鎌田雄一郎『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書、2019)
この本はゲーム理論について初心者向けに書かれたものです。前回Tさんが紹介された『多数決を疑う』は集団の意思決定が主(集団の利益優先)だったのに対し、今回の『ゲーム理論入門の入門』は個人の意思決定が主(個人の利益優先)であり、その違いが面白かったとの事でした。「意思決定」という同じ分野であっても視点を変えると違った面が見えてくるため、同じ分野の本であっても読み比べを行ってみる事が大切であると再認識しました。こうした話は難しいイメージがありますが(実際、話の内容は結構難しかったようですが)、Tさん曰く読みやすかったとのことなので、自分でも読んでみたいと思いました。

Iさん:森島恒雄『魔女狩り』(岩波新書、1970)
この本は中世ヨーロッパで行われていた魔女狩りに関して書かれた本であり、根拠のない告発から拷問にかけられていった人々の実態等が描かれています。こうした魔女狩りは宗教権力の衰退とともに下火になりますが、それまでに多くの無実と思われる方々が犠牲になりました。実際に行われた拷問に関することも詳細に書かれており、読んだIさんもショックを受けていました。当時信じられていた事が、後世から見れば非現実的なものであるという事象はこの他にもあり(前回Sさんが紹介された『ガリレオ裁判』での天動説等)、現在の価値観を信じすぎて排他的にならないよう、気を付けていきたいと感じました。

自分(N):小林快次『恐竜時代Ⅰ 起源から巨大化へ』(岩波ジュニア新書、2012)
この本は恐竜の進化を当時の気候や生態系に絡めて考えるものです。恐竜が巨大化していった過程等を知るとともに、何故そうなったのかという背景や実際の発掘調査についても知ることが出来面白かったです。この本を読んで私は、物事の結果だけでなく「何故それらが起きたのか」という背景を知ることが大切であると感じました。背景を知らなければ本質を理解できず、「理解したつもり」で終わってしまうからです。これからは、話を聞いて「理解したつもり」にならないようにしていきたいと感じました。

Aさん:渡部泰明『古典和歌入門』(岩波ジュニア新書、2014)
この本は和歌について解説したものです。和歌の意味だけでなく、制作背景や込められた思い等も書かれているようで、和歌をあまり知らない方・より深く知りたい方のどちらも面白味を感じる本ではないかと思いました。質疑応答にて現在の国歌の元となった和歌を紹介してもらえたのですが、意味を理解することで今まではどこか遠い存在であった国歌が少し身近に感じられるようになりました。和歌の解説書となると、単調で少し退屈に感じる…というイメージがあったのですが、この本であれば楽しく学ぶことが出来るのではないかと感じました。

Mさん:左近司祥子『哲学のことば』(岩波ジュニア新書、2007)
この本は「恋する気持ち」「死を考える」といった項目ごとに哲学者の言葉を紹介し、それに対して著者の解説・見解を述べる本です。特に私の中で印象に残っているのは、「恋する気持ち」の解説で述べられている「目」に対する考え方です。これは「相手の目になって物事を見ることで、違った世界を見ることが出来る」「目と目を合わせることで相手へ自身の思いを伝えることが出来る」という考え方です。目は口程に物を言うという言葉にあるように、人の目というのは相手に対して様々な印象を与えるという事を改めて考えさせられました。また、視野を広く持つことは様々なことへの対応が可能となることから、恋だけでなく普段の日常生活に直結する考えであると感じました。Mさんは、哲学は難しいものではありますが、生活に身近なもの・活かせる部分があり、面白かったとコメントしていました。著者の方の解説や例え話もついているので、哲学の入門として読んでみるのに最適な本かと感じました。

新書報告を行ってみて私が感じたのは、多角的に物事を見ることが出来るということです。新書報告で他のゼミ生の発表を聞くことによって、一人で読んでいた場合には出会わない本・自身とは違う考え…といったものに触れることができます。それによって、自分一人では知ることのできなかった知識や考え方を得ることが出来ます。こうした学習を続けていく事で、自分一人でも多角的に物事を見られるようになっていくのではないでしょうか。

最後に授業形態に関する報告をしたいと思います。新型コロナウイルス流行に伴い、相澤ゼミではZOOMを活用した新書紹介・ネット記事を読むといった活動をしばらくの間行っていきます。次回は講談社(ブルーバックス)の新書紹介です。岩波新書と比較して何か違いがあるのかといった点にも注目していきたいと思います。ありがとうございました。

2020年5月27日水曜日

2020年度前期 第5回:新書報告

 こんにちは、ゼミ生の経営学部3年のIです。第5回のゼミを行いました。今回は今年度初めての新書報告を行いました。外出し本を選ぶのが難しいという状況を鑑みて電子書籍を駆使し発表をしましたが、様々なジャンルの本が紹介されました。

 まず始めに相澤先生が、圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書、2016)と宮津大輔『現代アートを買おう』(集英社新書、2010)と高橋龍太郎『現代美術コレクター』(講談社現代新書、2016)の三冊を紹介されました。
 どれも美術、芸術関連の内容で、特に後半の二冊は似ておりアートの見方や買い方、またアートと一口に言っても、絵画や何かモノを創造していたり、空間を演出していたりと様々でそれらをどのように楽しむのかという具体的なアドバイスが書かれている本だそうです。このように同じテーマについての本を読み比べると、根本は同じ内容でもそれぞれの相違点や表現方法の違いなど見比べられるので面白そうだと思いました。

 2番目に僕が、今北純一『自分力を高める』(岩波ジュニア新書、2011)を紹介しました。この本は、筆者自らの激動の半生を振り返り、その経験をもとに今の若者へメッセージを送るという指南書です。筆者のメッセージとは、具体的には自立・個性・能力の三要素からなる「自分力」を大切にしようというものです。
 個人的に印象深かったのが、「リスクを取らないことが一番のリスク」という言葉です。実際リスクを承知の上でも自ら行動を起こしていかなければ、現状維持で新たな出会いや感動刺激もなく変化が起きないと思いました。また変化が起きなければ成長もないのではないでしょうか。

3番目にSさんが、田中一郎『ガリレオ裁判』(岩波新書、2015)を紹介されました。
この本は地動説を唱え二度の裁判で有罪を宣告されたガリレオが科学者として必死に闘った姿が描かれており、その背景には何があったのかを明らかにする内容だそうです。
その時代の裁判は宗教との絡みがあり裁判にかけられた時点でほぼ有罪になってしまうという実に理不尽なものだったそうです。有罪と判決を下していた裁判官側にもガリレオの地動説に賛同する者がいたと聞いて少しは救われるとも思ったものの、やはり自分の訴えが理不尽な制度により否定され続けるというのは甚だ虚しく悔しくやり切れない気持ちだったのだと想像しました。

 4番目にTさんが、眞淳平『世界の国1位と最下位(岩波ジュニア新書、2010)を紹介されました。この本は世界の国々を人口や面積など主に数字での観点から順位化し、上位の国と下位の国の違いを歴史や経済面から考えるという内容だそうです。
 今は昔と比べグローバル化の流れにより様々な国と接点が増え実際様々な国を耳にする機会が増えてきたのではと考えますが、意外と見えていないところもあるのだと思いました。その例として、発表のなかでも取り上げられていたのですが、ロシアはあんなにも国土が広いためさぞ人口も多いのかと思いきや、日本とほとんど同じなのだそうです。このようにちょっとした点でも、世界の各国を比較してみると新たな発見があり面白いものだと実感しました。

 5番目にTさんが、坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書、2015)を紹介されました。
この本はゼミ生の中でも読んでみたいという人が多く人気がありました。内容としては、経済学と政治学を擦り合わせた筆者独自の観点から多数決の問題点を問うというものだそうです。
 多数決は、票が割れてしまったが故に思わぬ案が通ってっしまうこともあるなど、必ずしも議会や話し合いの場での最善の策ではないか。筆者はこのような多数決の問題点を指摘した上で、そのような問題の解決策として「ボルダールール」や「最尤法」などを紹介しているそうです。しかし、現状では、そもそも多数決という決め方を変えるために多数決を用いなければいけないわけで、堂々巡りになってしまう気がします。話し合いにおける最善の策を考えることは、そう簡単なものではないのだと思いました。

 6番目にSさんが、南野忠晴『正しいパンツのたたみ方』(岩波ジュニア新書、2011)を紹介されました。非常にキャッチーなタイトルですが、これはある講演で筆者が問者から質問された内容だそうです。初の男性家庭科教師である著者が、学校で習う家庭科がどのようなところで活躍するのかを書いています。
著者は、家庭科の知識や技術を培っても直接的な見返りとしてお金にはならないけれど、自分自身の生活の質を向上させ、人間として生きていくうえで役にたつのだと言っています。
 自分は今一人暮らしではないですが、将来自立していく上で家庭科の知識や生活の知恵などが自分の生活の質、QOLを高めるのだと思いました。つまり、家庭科というのは生活力に直結してくるもので大切なのだと思いました。

 最後にAさんが、長沼毅、井田茂『地球外生命』(岩波新書、2014)を紹介されました。この本は、地球にどのようにしてどんな生物が誕生し、また何故生命が誕生したのが地球だったのか、他の惑星には生命の灯はあるのかを考察する内容だそうです。
 地球には元々酸素なく、また地球以外にも生命が生存していくには十分な環境が整った惑星はほかにもあるそうで、では何故地球に人間が生まれこのように発展、発達していったのかは偶然というしかないこと。ある意味でこの答えも面白いものだと思いました。
また、地球外生命は存在するのかという点ですが、仮に存在するにしてもバクテリアくらいで人間のような存在はいないのではないかと主張されていました。非常に興味深く面白い内容の本だと感じました。

 今回が初めての新書報告、しかも自分自身元々本を読む習慣がなかったため非常に不安でしたが、自分が選択した本は楽しく読むことができました。さらに、他のゼミ生が読んだ様々なジャンルの本の発表を聞き新たな発見や知識を得ることができた点で、非常に有意義だと思いました。そして発表者としては、簡潔でわかりやすくまた興味を持ってもらえるような話し方を心掛けたり聞き手としては、傾聴力という点で疑問点や気づきなどを整理しながら聞くとより実りがあると考えました。このように課題も多いので、今後意識していきたいと思いました。

 次週も今回と同じく新書報告をするので、上にあげたことに注意しながら取り組んでいきたいと思います。ゼミ生が次はどんな本を選び読んだのか、次回のブログで紹介されると思いますので引き続きお楽しみください。

2020年5月20日水曜日

2020年度前期 第4回:本の探し方を学ぶ

相澤ゼミ生の現代法学部4年のMです。今回は「ゼミで紹介する本の探し方」について学習しました。これから本格的に始まる新書発表にむけて、本の選び方のポイントを考えていきます。また前回と同様にZOOMを使用しています。

今回のゼミの目的は、新書発表の際に一定の水準をクリアした本を紹介するためです。本には学術的な意味で格があり、それが本の質を裏付ける要因になります。そこで本の格を意識するには、出版社や著者に注目して本を探していくことが重要になります。

まず、新書には専門的な学術のものから実践重視のものなど出版社によってばらつきがあります。その中でも「中公新書」、「岩波ジュニア新書」は専門の学者が書いていることが多く、学術度も高いため、ゼミの新書発表においては先生おすすめの出版社として紹介されました。また、著者が学者や研究者であることは、その専門分野のプロということになります。したがって、本のテーマが著者の専門と一致しているか確認することも学術的な知見を得るために必要なポイントといえます。中には、著者が研究者ではないものもありますが、現場での経験をふまえた提言や社会問題等の取材ルポなどは読む価値があるでしょう。(例:坂本敏夫『死刑と無期懲役』(ちくま新書、2010)、杉山春『ルポ 虐待』(ちくま新書、2010))

そして、実際に本を読み進めていくと読んだ本について忘れてしまうことがあります。得た知識をより自分のものにするために、読んだ本の情報や気になった箇所を記録していけば新書発表の際にも役立つということも確認しました。

今回のゼミで印象に残ったのは、出版社ごとの学術度の違いです。個々の格を意識したうえで、様々なタイプの新書を読み進めていくのも読書の楽しみだと感じました。

次回は初めての新書発表です。一人3分間のプレゼンを行います。ゼミ生がどんな本を読んできたのか、次回のブログで紹介されると思いますので引き続きお楽しみください。

2020年5月13日水曜日

2020年度前期 第3回:GW「公衆衛生の倫理を考える」

相澤ゼミ生の経営学部4年Sです。今回から相澤ゼミのテーマの一つである「文章を読んでいくこと」に入っていきました。相澤先生から指定された「公衆衛生に関する倫理」のネット記事を事前に読み、記事の中で何を伝えたいのかを考えていきます。今回もZOOMを使用しています。

今回のゼミの目的は、何かを論じる文章を読み、理解する技術を知ることと、新しい情報・知識を得た上でディスカッションすることです。ディスカッションそれ自体は目的ではありません。記事を理解せずにディスカッションする、つまり勉強しない段階での意見・思い込みをディスカッションしても有意義ではありません。しっかり記事の内容を理解するために、相澤先生は私たちに七つの問いを投げかけました。

・公衆衛生政策の特徴とは何か。
・この記事のテーマ、特徴は何か。
・感染症予防一般の難しさとは何か。
・COVID-19には、他の感染症予防策よりも強い反応が取られている。それはなぜか。
・COVID-19に対する強い反応を正当化するためには、どんなことが必要か。
・記事では、補償についてどのような主張をしているか。
・民主的なプロセスとは何か。

それぞれの問いについて回答し、わからないところがあればゼミ生の中で共有しました。また、それとは別に最近のコロナに関するニュースで気になることも話し合いました。挙がった内容としてはコロナ離婚、山梨県の女性に対してのマスメディアへの批判、京都女子産業大学の対応の問題、テレワークへの企業の対応などです。

次回は本の選び方について相澤先生にレクチャーしていただく予定です。引き続き相澤先生の下で学んでいきたいと思います。そして次回のゼミ後にZOOMを使ってオンラインのお茶会を開催する予定です。ゼミの中で親睦を深めていくためです。本来ならば皆で会って行いたかったのですがコロナのことがありオンラインになりました。またコロナが落ち着いたら改めて開催したいなと考えています。

最後にこの自粛期間の時間を有意義なものにしていくことをここに決意して今回のブログを終わります。ありがとうございました。

2020年5月6日水曜日

2020年度前期 第2回:ゼミオリエンテーション

ゼミ生4年経済学部Tです。今回からゼミ生がブログを担当いたします。今日はZoomを利用した2回目のゼミです。本記事では、1. 本日のゼミについて、2. Zoomを利用した感想の2つへ分けて書きます。

本日のゼミの内容は以下の通りです。
・先生からのお願い
・Zoomの使い方
・ブログ順番決め
・「質問」について考える
・今後の見通し
・来週について

まず、先生からのお願いでは対面での授業と変わりなく緊張感を持って受けてほしいということでした。Zoomの使い方はゼミ内ルールの確認と肖像権保護の案内です。ブログの順番は後述します。

「質問」について考える、これが今日の本編です。前回の課題は、掲示板に自己紹介を記入した上で、他のゼミ生と各自の自己紹介について質問・応答し合うでした。このやり取りを踏まえて、質問の目的、良い質問をするために気をつけること、話し手に質問してもらいやすくするた目の工夫について考えました。特に私が印象に残ったのは、良い質問をするには話を聞く必要があり、裏返すと良い質問は話を聞いてる証明にもなるという指摘です。質問にはそういった面もあるのだと印象に残りました。

今後の見通しですが、できる限り新書発表をしていくこと、その際に大学図書館にて契約している電子ブックを活用するとのことでした。来週は「公衆衛生の倫理」についてネット記事を読んだ上でディスカッションをし、「公衆衛生の倫理」の今を考えます。

Zoomを利用し感じたことは、定性的な情報があまり入らないことです。先生が意見を求めているのか、確認しているのかわからない時がありました。きっと対面であったら雰囲気で理解できたのだと思います。オンライン上では雰囲気を感じ取るのが難しいです。反対にZoomだからこそ面白かったこともあります。先生は背景をバーチャルにしています。本を紹介するとき本もバーチャルと同化し、背景しか見えないということもありました。「それどの本やねん」と思い、個人的には笑うのを我慢できませんでした(笑)こういったハプニングは楽しめる要素かと思います。本日のゼミで目次の提示についての話がでたので、簡単に取り入れてみました。いかがでしょうか。

最後にブログ順番ですが、4年生が時間に余裕があるということで以降二人の4年生が続きます。

2020年4月22日水曜日

2020年度前期 第1回:Zoomとmanabaで顔合わせ

担当教員の相澤です。

今日から2020年度の授業が始まりました。今年度は7名のゼミ生と私の8名で活動します。1期のゼミは、コロナウィルスの影響で対面授業ができないため、Zoomを用いて実施することにしました。ゼミ生とは、開講前からLINEで連絡を取り合ってZoomを使えるようになってもらい、満を持して初日を迎えました。

私のゼミは、「読書を通して自分を豊かにし、口頭や文章での自己表現能力を高める」ことを目的としています。ゼミ生には例年、週に一冊新書を読み、ゼミで報告することを義務付けてきました。しかし、図書館が閉館している今は本にアクセスすることも難しいため、読書以外の学びもゼミ活動に盛り込むことにしました。当面は (1) オンラインでのコミュニケーション技術を磨く、(2) ネットでアクセスできる記事を元にディスカッションするという二つの活動を行なっていきます。

第一回のゼミは、上記の活動方針を確認した後で、Zoomの使い方に慣れることとゼミ生同士の顔合わせを行いました。たとえコロナが収束しても、これからの就活や仕事を行う上で、オンライン会議は欠かせないものになるでしょう。ゼミでは、オンライン会議ツールを上手に使う技術も身につけることも目標にします。

オンライン会議ツールのよさは、何と言っても互いの顔が見え、リアルタイムでコミュニケーションできることです。今回はまだよく知らないもの同士、顔を見ながら簡単な自己紹介をしてもらいました。

さらに、manaba(本学が使用しているLMS)の掲示板上で、もう少し詳しい自己紹介をしてもらうことを課題にしました。当然ですが、自己紹介は互いをよく知るために行うものです。そこで、掲示板で自己紹介をするにあたっては、できるだけ自分の情報を具体的に提示することを意識するよう指示しました。

ここまででゼミ本編は終了です。その後、manaba掲示板に各自自己紹介を記入、さらにそこに他のゼミ生が質問をするというやりとりを一週間かけて行いました。やりとりを読むと、学生個々人の特徴がしっかり伝わってきます。次回のゼミでは、このやりとりの経験を踏まえて、よい質問とは何かを考えてみたいと思います。

2020年3月2日月曜日

Stage à Paris(Oさん編)


ゼミ生のOです。私達相澤ゼミでは29日から17日まで海外ゼミ研修としてフランス共和国のパリに行きました。今回は、その報告をします。

1日目
仁川空港の検疫レーン
 初日、早朝に集合場所である成田空港に集合しました。しかし、そこで経由地である仁川~パリの飛行機が天候不良で12時間遅れている事が判明。思わぬトラブルも有りながらもまずは経由地の仁川まで向かうことになりました。到着した仁川国際空港では、新型コロナウイルスの影響で中国から来た人は検疫を受けるレーンが設けられていました。仁川では12時間待ちながらも欠航にはならず12時間遅れでパリに向けて出発しました。

2日目
エトワール凱旋門
 飛行機の遅れで本来のスケジュール通りには行かなかったものの、早朝にパリのシャルル・ド・ゴール国際空港に到着。空港からはホテルに直行しました。
 ホテルに到着後はしばらく休憩した後、午後からは交通パスを購入して地下鉄でエトワール凱旋門やエッフェル塔と言った有名な建築物を見学しました。パリの街並みは日本とは大きく異なり、昔ながらの古い建物が並んでいて非常に計画された都市だと感じました。
 パリの名所を見学した後は、ホテル近くのスーパーで食べ物を買って部屋で軽くメンバー全員で打ち上げをしました。

3日目
モスク

 この日は、午前中にパリにあるイスラム教徒の礼拝場モスクに行きました。フランスと聞くと「キリスト教カトリックの国」という勝手なイメージというのが私達日本人の間にはあるでしょう。しかし実際には、フランスの植民地であった北アフリカや中東との関係もあり、フランス及びパリの中には一定数のイスラム教徒がいます。その為、パリ市内にもいくつかのモスクがありその中の一つを今回見学しました。モスクの外観は、伝統的なイスラム建築の風格をしており、ここが中東のどこかの国にいると思えるほどです。内部には、とても美しいモザイク模様の壁が待ち受けていました。他にも、モスクには中庭があり庭師がイスラム庭園の手入れをしていました。礼拝をする部屋は神聖な場所と言うこともあり見学は禁止されていましたが、モスクの内部は大都会パリの中にはいると思えないような静けさで、落ち着いた場所である事が印象的でした。モスク見学後は、隣接するカフェで主に北アフリカのモロッコで飲まれるミントティーを一杯飲みました。ミントティーの味は、ミントの香り以上に甘かったです。

 フランスにおけるイスラム教徒は、過去に一部のイスラム過激派によるテロ事件が発生した事もあり、フランスなどヨーロッパ各国では差別の対象ともなっています。そのこともあってフランスに行く前はそうしたネガティブなイメージが強かったですが、実際にモスクを訪れると異なる宗教であっても受け入れる寛容なフランス社会である事が感じられました。

 モスクの次には、国際大学都市に行きました。国際大学都市は、フランスに留学している学生のための寮が集まっている場所です。寮の建物は国別になっており、世界中様々な国の寮が敷地内に密集しています。敷地内には、フランス人の他にも世界各国の国の学生が生活しており、とても国際的な場所だと感じました。

 国際大学都市を散策した後には、サクレクール寺院に向かいました。サクレクール寺院のある場所はパリの高台にあるため、パリの街を一望できる場所です。到着した時は、強風が吹き荒れていて時より雨が降っていましたが、パリの街を眺められました。

 次に訪れたのは、ホロコースト博物館です。ホロコーストとは、第二次世界大戦中にナチスによって大勢のユダヤ人が虐殺された事を言います。ユダヤ人に対するホロコーストはナチスに占領されたフランスでも行われ、大勢にユダヤ人が殺害された事実があります。そのような歴史上の悲劇を現代に伝えるためにこの様な博物館があります。博物館の見学はスケジュールの都合上短い時間でしたが、当時の資料など様々な展示品が展示されています。

ホロコーストと聞くと、ナチスが主導して一方的にユダヤ人を虐殺下というイメージが強いかも知れません。しかし、ナチス占領下のフランスでは一部のフランス人がナチスと協力してユダヤ人への迫害に関与した事実もあります。ナチスに占領され、戦争の「被害者」としての立場もあるフランスですが、ホロコーストに関与した「加害者」としてのフランスの立場もまた事実です。フランスでは、都合の良い歴史だけで無く様々な立場から歴史を見直す動きがある事をこの博物館からは学びました。

ロシア正教会外観
 この日の最後に訪れたのはパリ中心部にある「ロシア正教会」です。ロシア正教会では、相澤先生のご友人であるロシア人のエカテリーナさんと待ち合わせ、彼女に案内させてもらいました。移民国家であるフランスには、様々なルーツを持つ人々が暮らしています。その中でも同じヨーロッパ内の移民として多くのロシア人がフランスに渡っています。エカテリーナさんによると多くのロシア人がフランスに移民したきっかけとして1917年のロシア革命が影響していると話していました。

ロシア正教会内部



案内では、教会についても色々と教えてくれました。例えば、教会にある一枚のイコン(キリストや聖人などの聖画像)は、かつてナポレオンがロシア遠征の際に盗みその後ロシア人女性がオークションで落札したという逸話を教えてくれました。

 ロシア正教会は、教会内に「椅子がない」と言った西方教会(カトリック、プロテスタント)との違いも発見しました。この日の見学からは、フランスに移民として渡ってきた人々の心の拠り所として教会やモスクが大きな役割を果たしている事が感じ取れました。

4日目
教科書でおなじみの太陽王ルイ14世の肖像画
 この日は、あの有名なルーヴル美術館に行きました。ルーヴル美術館には朝早くに着きましたが、さすがに世界有数の美術館というだけあって世界中から大勢の観光客が訪れていました。最初はこの時期に開催されていたレオナルド・ダ・ビンチ展を見学しました。ここでの展示は、レオナルド・ダ・ビンチが描いた絵画の他にも難解な設計図などが展示されていました。その後は各自自由に行動する事となり、その他の常備展も見学しました。ルーヴル美術館は想像以上に広いため展示を見て回るだけで疲れましたが、本でしか見たことのないような有名な絵画を直接鑑賞出来て感動しました。

夜のルーブル
 昼食を取った後は、美術館に隣接する公園を散策しエッフェル塔に向かいました。エッフェル塔の周りにはテロ対策の為に透明なガラス板が設置されていました。世界的な観光地であるエッフェル塔に登るためにチケットを買うのに約1時間並びました。エレベーターで展望台に登るとパリの美しい街並みが一望できました。東京のように高層ビルが少ないので、遮るものが無いのが日本の街との違いだとも感じました。登った時間はちょうど夕方であったため、徐々に空が暗くなって美しい夜景が見られました。

 エッフェル塔の次には、再びルーヴル美術館に向かいました。夜のルーヴルはライトアップがされており、昼間とはまた違った雰囲気が味わえました。

展望台からの眺め
夜のエッフェル塔





















5日目
ヴェルサイユ宮殿
 5日目と6日目は自由行動となっていたので5日目にはパリから電車で3040分にあるヴェルサイユ宮殿に行きました。宮殿の内部には様々な宗教画や王族の肖像画が描かれており、フランス王朝の華やかな歴史を感じました。受付では無料の日本語ガイドオーディオを借りたので、各部屋の説明を聞くことができて勉強になりました。宮殿を出て外の広大な転園には、見事に規則正しく整備されたフランス式庭園がとても印象的でした。庭園はとても広かった為に歩いての移動はとても疲れました。

6日目
 6日目にはゼミ生全員でディズニーランドに行きました。パリのディズニーランドは思ってたほど広いわけでもなくアトラクションの待ち時間も長くても1時間程度待たされる程度でした。夜の閉園前のプロジェクションマッピングでは、Let it go(フランス語Libérée, Délivrée)の曲が流れると盛り上がっており、フランスでも人気があるのだと実感しました。

7日目
 7日目には、最初に移民博物館を訪れました。博物館では、時代やジャンルごとにフランスに渡ってきた移民についての展示がされています。

 フランスの移民の歴史は、大航海時代以降に他のヨーロッパ諸国と同様に植民地を獲得していった事に始まります。そこで労働力として現地人を「奴隷」にした事から、フランスにもヨーロッパ外の人がやって来ます。この時の奴隷貿易によってやって来た人々がいわば「最初の移民」とも読み取れます。その後、植民地を拡大していったフランスは、アメリカ大陸、アフリカ、中東、アジアなど世界中に植民地を抱える事になりました。

 フランスに移民としてやって来た人々の理由は、強制的(奴隷)や経済的、政治的混乱など様々である事が展示から伺えます。移民は最初、フランス社会に溶け込めなかったですが、戦争で兵士として戦う事で同じ「フランス国民」という意識が芽生え徐々に受け入れられてきた事は興味深いです。また、移民とフランスに元々いた人が「結婚」を通じて「家族」になる事が移民の受け入れに繋がると展示されていました。

これまでのパリ滞在でも街中には様々な人種の人々がいると感じていました。フランスはこれまで様々な地域から「移民」を受け入れてきた国でもあり、長い時間をかけて移民を受け入れる社会になってきたのだと学びました。

8日目
 最終日となったこの日は、先生の紹介で日本語を学んでいる夫婦のカトリーヌさんとレオさんとカフェで交流しました。交流会では、先生の通訳の元ゼミ生からフランスに関する質問をする形で行われました。その中で私が「フランス人は雨が降ってもなぜ傘を差さないのか」と質問しました。すると、「日本のコンビニのように傘を買える場所が少ない事や乾燥しているのですぐに乾く」という答えを聞いて滞在で感じていた疑問が解消されました。

 その他にもゼミ生が文化や生活面に関することや政治に関することなど色々な質問をして、話が尽きないほどでした。しかし、あっという間に時間が過ぎて帰る時間がやって来ました。

 帰りも韓国の仁川を経由して遅れることなく日本に帰国しました。

 私は、昨年度も海外研修でスペインのマドリードに行きましたが、同じヨーロッパの国なので街の雰囲気や生活スタイル(例えば赤信号でも道を渡るなど)が似ている事も感じました。一方、フランスはスペインよりも積極的に移民を受け入れてきたので、街中にいる人々の人種も白人、黒人、アジア人、中東系など非常に多様姓に満ちている事に気づかされました。また、フランスに行く前は、治安やストライキの他にコロナウイルスによるアジア人差別のニュースを聞いていたので少し不安はありました。けれども現地に行ってみると、差別される様な事はなく、普通に観光を楽しめました。

 今回のフランス研修では、様々な文化・生活の違いを体験しました。違う国に来て改めて日本のほうが優れている点やフランスに学ぶべき事が発見できてとても有意義な研修でした。

Merci beaucoup! Au revoir!