2021年12月22日水曜日

2021年度後期第12回:グループワーク「日本の教育はダメじゃない」!?

 こんにちは。ゼミ生のIです。今回のゼミは「『日本の教育はダメじゃない』を読む」というテーマでグループワークを行いました。

小松光、ジェルミー・ラプリー『日本の教育はダメじゃない ―国際比較データで問いなおす』(ちくま新書、2021年)は日本の学校教育について国際比較データを使いながら相対的に理解していき、日本の学校教育は本当にダメなのかを現実的な視点で考え、実際は「日本の教育はダメじゃない」と主張する本です。

ゼミ生は事前にこの本を各自入手し、本のメッセージを意識して大事に思われるところに印をつけながら読了したうえで今回のゼミに臨んでいます。1つの本をみんなで読んでグループや全体で考えをシェアすることで本の内容理解を深めていくことが狙いです。初めに3つのグループに分かれて意見を出し合い、その後グループで出た意見を全体にシェアをしていきます。以下の問いを順番にディスカッションする形でグループワークを進めました。

  1. 驚いたこと、意外だったこと
  2. 印象に残ったデータ、大事だと思ったデータ
  3. 著者たちのメッセージはなにか
  4. 本の内容や著者たちのメッセージについて考えたこと

1の問から順に、グループワークで出た意見を紹介します。

まず初めに、「驚いたこと、意外だったこと」です。各班の発表を聞くと、驚きに二種類があることが分かりました。一つは他国の現実を知っての驚きです。もう一つは、私たちが持っている日本のイメージと現実のギャップへの驚きです。

多数あげられた驚いたポイントの中で特に口をそろえていたのは、アメリカの学校の授業時間の長さについてです。ゼミ生の多くが、ドラマや映画の影響でアメリカの学生は自由を謳歌していそうなイメージを持っていました。しかしアメリカの学校は授業時間が長い国のトップであることがデータから分かりました。

一方で日本人は勉強時間が他国よりも断然と短く、また日本人は勤勉な国民性だと思っているけれど、アメリカ人からはそうは思われていないことがわかりました。自国のイメージは外から見るとまるで違うことがよくわかる例でした。

その他にも、日本では授業に別解も教えるが世界はそうではないことや、日本のように体育の時間が無い国の存在、日本人は創造力が欠けているのではなくむしろ高いこと等がありました。相澤先生は、ノルウェーやスウェーデンのテストの点数が国際的に見て低いデータから、北欧は日本にとってお手本の国としていことが多いが、現実は日本よりもすごいわけではないとコメントしていました。

私は、内側からでは正しい現実を知ることが難しい、つまり自国を知るのには世界と比べる必要があるということが分かりました。

続いて「印象に残ったデータ、大事だと思ったデータ」についてです。日本の先生の忙しさは世界と比べてずば抜けていること(164頁 )、日本は別解等授業の工夫があり質が高い授業であること(101頁)がわかるデータの他、

  • 日本のいじめは国際的に比較すると少ない(126頁 )
  • 自信と実際の学力は関連しない。日本は自信がないが学力は高い(113頁)

も挙げられました。

私は先生の長い労働時間が授業の質に関連しているのではないかと考えました。また、国内のいじめ問題の多さを世界と比較すると、問題の大きさの程度を測る物差しが変わり興味深かったです。

続いて、ゼミ生が本から「著者たちのメッセージをどう読み取ったのか」を紹介します。ゼミ生の多くが、データを正しくみることや、日本の現実を理解するためには、内側から見るだけでなく、外側から見ることが必要であることを著者たちのメッセージとして読み取っていました。本書に出てくる数々の国際比較データから、日本の教育が悪いという主張はデータに基づいていないことを確認しました。

相澤先生は64頁の記述をふまえて、「データはわかりやすさで支持しない。わかりやすさを信じてはいけない。白黒を明確にするようなわかりやすい話は信じてしまいがちだが、物事はそんなに単純ではない。1か100かではなくグラデーションである。」とおっしゃっていました。

私は著者のメッセージや相澤先生のコメントから、物事は1か100の問題ではなく複雑であり、物事を正しく把握する方法の一つがデータを見ることなんだと気付きました。

最後に、ゼミ生が「本の内容・メッセージを受けて考えたこと」を紹介します。「問題をゼロにするのではなく、減らしていくことが大切だ」や、「俯瞰的に物事を見ることが大切だ」と考えたようです。印象深かったのは、「この本自体からも距離を取る」という考えです。すなわち今の当たり前から少し距離を取ることが大切で、そのためには外部との接触の機会を意識的に作ることや、きっかけづくりを意識的にすることが大切だということに気が付きました。

さらに、教育問題は子どもの問題ではなく大人側の問題であるということにも気付いたゼミ生が多かったです。「大人が子どもたちにどういう大人になってほしいのか」、「これからの社会にどういう人が必要なのか」が教育方法に反映されるということです。このことから相澤先生は、「教育問題だけに限らず、『どういう社会に生きていきたいか』という価値観の話題に全てつながっているのではないか」とおっしゃっており、気付きを深めてくださいました。

私は本書に出てくる国際比較データを見ながら自分がこれまで受けてきた教育を振り返ると、国際的にみても質の高い授業を受けてきたことを誇りに思いました。これから教育を受ける子どもたちや、現在教育を受けている子供たちが同じように質の良い教育を受けられるように、国際比較データを使った教育政策について議論がなされることを期待したいです。

今年一年間お疲れさまでした。ゼミに入るまでは本を読む習慣が全くなかった人が多いゼミですが、この一年間で本を読むことに少しでも慣れたのではないかと思います。これから冬休みに入りますが、ゼミが無くても本を読んでいきましょう!

良いお年をおむかえください!

2021年12月15日水曜日

2021年度後期第11回:新書報告7

 こんにちは。ゼミ生のRです。寒さが厳しい季節になってきましたね。いよいよ、C班最後の口頭での新書報告になりました。それぞれが今まで手に取らなかったジャンルの本に挑戦していて、とても興味深い報告になったと思います。それでは、見ていきましょう。

Oさん:竹信三恵子『家事労働ハラスメント―生きづらさの根にあるもの』(岩波新書、2013年)

日本の家事労働問題について書かれた本です。本書は見えない労働である家事を担う女性たちが、社会から不当な扱いを受けている事例を紹介しています。家事をしている女性が外に出て働こうとすると、パートでしか働けず、所得が低くなる。そうすることによって夫の重労働に頼ることになり、夫が家事をしないという負のサイクルを生んでいると述べています。家事は生活をするためにしなければならないことだと思います。性別関係なくやる作業という意識が広がることを願います。

Tさん:慎改康之『ミシェル・フーコー 自己から抜け出すための哲学』(岩波新書、2019年)

ミシェル・フーコーの哲学の変遷を知ることができる入門書です。フーコーの哲学を読むにあたって、確実とされている原則に疑問をもつ人はおすすめだと紹介していました。フーコーの哲学の特徴は、世の中で当たり前だとされていることを本当にそうなのかと問い直すことだそうです。そして、当たり前と思っている事柄を見直すことが自己からの脱出に繋がるそうです。また、自己から抜け出すためには、読書をすることもその手段の1つではないかという議論になりました。確かに読書によって、知らない世界を知るということは、自己から抜け出す1つの方法だと思いました。

Tさん:成田憲保『地球は特別な惑星か? 地球外生命体に迫る系外惑星の科学』(ブルーバックス、2020年)

 本書は、系外惑星と地球外生命の探索の最前線を解説しながら、地球は多様な生物が生息することができる特別な星なのかを問う内容です。系外惑星とは、太陽系の外にある、太陽以外の恒星を公転する惑星のことで、1995年に明確に発見されました。2020年までに系外惑星は4000も見つかっています。その中で、気温が地球に近い惑星は数百億ほどあると予想されています。この報告を聞いて、地球と似た惑星がそれほどあるなら、宇宙人もいるのではないかと思いワクワクしました。

Kさん:津田敏秀『医学根拠とは何か』(岩波新書、2013年)

著者は医師かつ医学博士であり、日本において医師や専門家によって見解が異なり、医学根拠の混乱が続いているのはなぜかを解説した本です。医学根拠は、個人的な経験を重んじる直観派、生物的研究の結果を重視するメカニズム派、統計学の方法論を用いる数量化派の3つに分かれることが混乱のもとになっていると述べています。また、メディアが分かりやすい言葉を使いすぎることも混乱の原因であると指摘していました。コロナ禍で様々な情報が行き交う今こそ読むべき興味深い本であると思いました。

R:今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』(岩波新書 2016年)

 学生を使い潰す「ブラックバイト」について実際の事例を紹介しながら、その危険性を述べた本です。ブラックバイトは学生の強みと弱みに付け込んだ構造になっています。一度入るとなかなか辞めることができなかったり、必要以上に責任を押し付けたりするケースが多くあります。この結果、生活がアルバイトに支配され、勉強が疎かになり、最悪の場合には留年や退学に追い込まれることもあるそうです。このようなブラックバイトの異常性に気づくために、知識を身に着けること、おかしいと思ったら身近な人の相談することが大切だと思います。バイトをしている人や新しく始める人にはぜひ読んでほしい本です。

以上の5冊が新書報告でした。次回は、ゼミ生全員が同じ本を読みグループディスカッションをします。残り僅かのゼミ活動を有意義なものにしていきましょう。


2021年12月8日水曜日

2021年度後期第10回:卒論をめぐってグループワーク


卒論の概要を発表するNさん。
こんにちは。相澤ゼミ4年のNです。今回のゼミでは、ゼミ生の皆さんと「若者に本を読んでもらうためには」という問いを考えるグループワークを行いました。

この企画には、私の卒業論文が関係しています。私は卒業論文にて、高校生や大学生に本を読んでもらう方法を考察しています。私自身は本ゼミの活動を通じて読書から知識を得るとともに、多くの感動も感じています。しかし、資料を調べると高校生や大学生はあまり本を読んでいないことが分かりました。ネットが普及した現在 or 今日、知識や娯楽は容易に入手できます。それは大変便利ですが、私は、読書だからこそ得られる知識や感動もあると考えています。そんな、読書がもたらす知識や感動を多くの方に知って頂きたいと考え、若者に読書を促すにはどうすればよいかを検討するために、相澤先生とゼミ生の皆さんのご協力のもと、今回のグループワークを行っていただきました。

本グループワークを行うにあたり、全国で行われている読書推進活動や読書啓発本を調べた結果、私は、強制的に読書を行う時間を設けるのが最も効果があるのではないかと感じました。なぜなら、そもそも本を読まなければ、本の良さを知れない、あるいは良さに気づけない のではないかと考えたからです。こうした観点から、私はゼミ生に対して強制的な読書イベントを行うべきか、読書独自の良さとは何か質問しました。以下、ゼミ生の回答と、私のコメントをまとめていきます。

Q1:強制的な読書イベントを行うべきか

強制すべき

  • 本に触れる機会を増やすべき(読まないと魅力を知れないから)。→ 読まないと魅力に気づけないので、本に触れる機会を増やすべき。
  • 朝読書(始業前、10分程度の時間を利用して生徒と教師が自分の好きな本を読むという読書推進活動)を設けることによって、集中力と語彙力のアップも見込めるのではないか。
  • 他人と共有することによってコミュニケーション能力も向上するのではないか。
  • 小中高の朝の読書時間のように、ノルマを設けず時間だけを決める(ノルマを設けると強制感が強い為)。

強制に反対

  • 強制することによって読書嫌いになる or なってしまうのではないか。
  • 読書の重要性を分からずに読んでも効果がないのではないか。
  • 習慣化されず、形だけで終わりそう。

強制すべきだとする意見は、私が考えていた、本に触れる機会を増やす必要性や、それに付随するメリットと通じるものでした。一方、反対派の意見は、私自身も感じていた、読書嫌いになるのではないか、習慣化されないのではないかという危惧が示されました。

グループワーク風景。
私は、強制的な読書イベントとして必須科目を設けるという案を考えていましたが、これに対しては、読書強制賛成派の学生からも、強制感が増し過ぎるのではないか、と慎重な意見が挙げられました。しかし、これに対する提案として、必須科目ではなく選択科目にしてはどうか、という指摘も頂けたため、今後は、必須と選択のメリット・デメリットもまとめていきたいと感じました。また、強制的な読書時間を設ける場合、図書館で本選びを行いやすくしてあげる工夫(本ごとにレベルを分ける等)も行う必要があるのではないかという意見も出ました。本ごとにレベルを分けるのはかなりの労力が必要になるため、実用可能かは分かりませんが、非常に興味深く感じました。

Q2:他に楽しいこと・やりたいことが数多くある中で、なぜ読書なのか?(読書独自の良さとは?)

  • 情報の信憑性が高い。
  • 想像力を膨らませられる。
  • 知識が増えるのが楽しい。教養や雑学を身に着けられる。
  • 語彙力や伝え方、深い知識を身につけられる。
  • 社会人必須の知識や技術を身につけられる。
  • 成功をしている人は本を読んでいる印象がある。先人の例を学べる。
  • ネットでも情報は取れるが、ネットだとその場限り。読書では達成感が感じられる。
  • 本を読んでいるという事実が与える充実感や肯定感を感じられる。

情報の信憑性や知識を得られるという意見と共に、教養を深められるという意見も出ました。また、充足感や達成感を感じられるという意見に関しては、本に使用した時間や金銭から来るものではないかと考えました。深めたい、身に着けたい知識に関しては、ネットで調べるだけでなく、本を購入する、もしくは借りた本の内容をしっかりとメモすることが大切だと改めて感じました。

また、この質問への回答を通して、高校生から本を読まなくなる理由も挙げられたため、それについても記載します。

  • 高校三年間は部活や受験で忙しく、小中の読書週間が失われてしまう。
  • スマートフォンを入手することにより、そちらに夢中になってしまう。

こうした意見から、短時間でも読書をする習慣を整える必要性や、スマートフォンの影響力の大きさを再認識できました。一方、この打開策として、生徒・学生に対して、授業として読書実践を取り入れるのは、やはり意義があるのではないかと感じました。

まとめ

今回のグループワークにて、読書を促すためには、読書の重要性を今一度説明する、本に触れる機会を増やす、本を読む習慣を作ることが重要であると感じました。具体的な案として、必須か選択かはともかく、本を読む授業があっても良いのではないかという意見も頂けて、とても参考になりました。また、ゼミ生から出た賛成意見・反対意見が、自身が考えていた意見と同じだったため自身の考えに自信が持てました。頂いたご意見、ご指摘をしっかりと卒論にまとめていきたいです。ご協力いただいた相澤先生とゼミ生の皆さん、本当にありがとうございました。

次回のゼミではCグループが新書報告を行います。新書報告も残り2回となり、Cグループにとっては次回が最後の新書報告となります。寂しい気持ちもありますが、残りのゼミ活動も存分に楽しんでいきたいです。


2021年12月1日水曜日

2021年度後期第9回:新書報告6

こんにちは。4年のMです。12月に入り、今年も残すところあとわずかとなりました。さて今回は、私を含め5人による新書発表となります。今の時期にぴったりな本や日々の生活に関連した本が中心でした。それではDグループの発表を見ていきましょう。 

Gさん:堀井憲一郎『愛と狂瀾のメリークリスマス なぜ異教徒の祭典が日本化したのか』(講談社現代新書、2017年)

1906年、日本にクリスマスが伝わった。なぜ1225日なのか。その背景を中心に、Gさんは報告をしてくれました。神(イエス)が現れた日が1225日であり、背景には宗教的、国的な問題があるそうです。タイトルにある「狂瀾」の意味するところは気になる点でしたが、戦後の独立前後のクリスマスには大人が飲んで食べて騒がしくしていたことから「狂瀾」と表されていると知りました。プレゼントをもらう子どもだけではなく、大人も楽しんでいた状況が伝わります。

キリスト教の予備知識があったほうが読みやすいとGさんはコメントしていました。少し難しさが感じられますが、クリスマス前に読んで周りの人に知識を話してみるのも面白いのではないでしょうか。


Bさん:山竹伸二『ひとはなぜ「認められたい」のか』(ちくま新書、2021年)

本書は、ひとが認められたいと望む背景にある、承認の2つのタイプを明らかにしています。1つは行為の承認であり、もう1つは存在の承認です。欲望は、赤ちゃんが親から愛を注がれるような神話的承認から存在の承認へ移り、主体的、行為の承認へと形成されていきます。承認不安が起こるのは価値観が多様だからです。しかし、不安を避けるために同じ価値観の人間で集まるだけでは、社会の分断を引き起こしかねません。

このような報告を聞いて、互いを認め合う姿勢や自分を知ることが重要であると考えました。社会人になると、認められる、褒められる機会は今よりも減ると思いますが、自分で自分をコントロールできる力を今から備えていきたいです。

 

Iさん:堀忠雄『快適睡眠のすすめ』(岩波新書、2000年)

本書は、個人差がある眠りについて、計測データをもとに書かれています。睡眠タイプは朝型と夜型に分けられ、①寝つき②寝起き③睡眠そのものの満足感に違いがあります。快適な睡眠にするためには、体温が下がると眠くなる仕組みを活かし、温めのお湯に入ることや軽く汗ばむ程度の運動をすることが効果的だそうです。

一番驚いた事実は、夜型から朝型には変えられるが、朝型から夜型には変更が難しいことです。私はどちらかと言うと夜型であるため、朝型に変えられることに嬉しさを感じました。しかし、意識しないと徐々に睡眠リズムが元に戻ってしまうことから睡眠にも工夫が必要と言えます。

 

Nさん:苫野一徳『未来のきみを変える読書術』(ちくまQブックス、2021年)

まずこのタイトルを見て、「読書の仕方によって自分の未来が良い方向へ進んでほしいな」と思いました。本書には、読書による効用や術が書かれており、読書があまり得意ではない人にこそおすすめしたい一冊です。読書術としては2つありました。幅広く読みピックアップして深めていく術、つまり信念を深掘りしていく技術です。2つ目は、思考の偏りがでるため少し危険を伴うため、信念検証型として異なった考え方の本を読むことも重要です。

私自身これから読書をする際には、自分の信念に合う本だけでなく、客観的に「そのような考えもあるよね」という気持ちで読み進め、あまり興味のない本にも挑戦していこうと思います。

 

M:亀田達也『モラルの起源 実験社会科学からの問い』(岩波新書、2017年)

本書は、実験を交えながら、利他性、共感性、正義やモラルといったテーマを中心に、人文知と自然知が関わり合う可能性を探る一冊です。タイトルから難しさを感じましたが、読み進めていくと図やイラストとともに分かりやすく書かれていました。イヌとヒトの親和性を検証した実験や、ミツバチの8の字ダンスは人間での投票や意見表明にあたることを示す実験が、本書の例として挙げられています。

他の生物にもヒトと類似する利他性や共感性が見られるという実験結果を読んで、ヒトは一人では生きていけないと言われる理由がわかったような気がします。今後も心理学的な知識を身につけたいと思うきっかけになりました。

 

今回の5冊の新書報告はどれも、今まで立ち止まって考えたことのなかった内容を扱っていました。なぜ1225日がクリスマスなのか、ひとはなぜ認められたいのか、快適な睡眠方法、未来の自分を変える読書術、協力的な社会の実現・・・。新書のテーマは異なるものの、当たり前に生活する中で得ておくべき知識を身につけられたのではないでしょうか。

さて、次回はグループワークを予定しています。新書報告とはまた違った意見交換をすると同時に、ゼミ仲間との仲もより深めていきましょう。

2021年11月24日水曜日

2021年度後期第8回:新書報告5

こんにちは。ゼミ生3年のWです。前回のゼミ活動では映画を鑑賞し、それをもとにグループディスカッションを行ったため、今回は1週間ぶりの新書報告となりました。では、C班の新書報告を紹介していきます。

Yさん:白木夏子『ファッションの仕事で世界を変える エシカル・ビジネスによる社会貢献』(ちくまプリマー親書、2021年)

本書はファッション業界の仕事を具体例にあげて、  ビジネスと社会問題のつながりについて、その解決方法をSDGsをもとにして書かれていたそうです。私は経営学部の学生でありながら、「エシカル・ビジネス」という言葉を初めて聞きました。「エシカル」という言葉は日本語で「道徳的」を表すそうで、「エシカル・ビジネス」  とは労働環境や安全管理などに十分に配慮したビジネス活動のことでした。そして、私は本書で具体例としてあげられていた、ファッション業界で販売員のアルバイトをしています。発表では大手ファッションメーカーの工場が倒壊し、1000人以上もの従業員が亡くなった「ナナプラダの崩壊」のような、私たちが普段目にすることのない生産者の方たちが置かれている酷い労働環境が紹介されました。この報告を聞いて私は、自分が販売する商品がどのような労働環境で製造されたものなのか調べてみようと思いました。また、自分が消費者として購入する際は、悪い環境で生産されたものを買わない「ボイコット」と良い環境で生産されたものを購入する「バイコット」に意識をしようと思います。

Oさん:林道義『家族の復権』(中公新書、2002年)

本書は子育てを軸に、著者の考える家族の在り方について書かれていたそうです。日本の家族  では子どもを1番大切な者として守るという考え方があるそうです。子どもに家族の位置関係を把握させるために両親が子供目線に立って、夫が妻をお母さんと呼んだり妻が夫をお父さんと呼びなど、子供が中心の家族関係を構成しているとのことでした。また、  家事には給料が発生しないため、他の誰かに任せようとする「外注思想」によって女性も働くことが求められて  いますが、それによって家族が空洞化することが危惧されていました。さらに、女性が働くために子どもを保育施設にあずけることで子と親の関係が薄れると危惧されていました。そのため保育所を増やしても少子化対策には効果がないというのが著者の主張でした。この報告を聞いて私は、育児休業制度が充実してきている昨今とは少し違う考え方だと感じました。

Kさん:大嶋英利『アスベスト 広がる被害』(岩波新書、2011年)

「アスベスト」は鉱物からできた中皮腫というがんを引き起こす発がん作用のある繊維で、建築や造船に  使用されてきたと紹介されていました。  またこの  「アスベスト」には体内に入ってから中皮腫が発生するまでに40年の潜伏期間があるとのことでした。  「アスベスト」が使用された戦後の建物の解体ラッシュがこれから始まるとのことでした。その作業によって飛び散る粉が体内に入り込まないように対策をしなければ、私たちも将来「アスベスト」が原因でがんになる恐れがあるという内容にとても恐怖を覚えました。しかし、  現在は環境庁や厚生労働省によって技術指導などがされているそうなので、あまり神経質になる必要もないと思いました。

Tさん:小塩真司『性格とは何か よりよく生きるための心理学』(中公新書、2020年)

本書では心理学の知見から人の性格特性を5つに分類したビッグファイブが紹介されていました。この5つは開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向だそうです。そしてこれらを利用した性格研究(よりよく生きるための自己分析)は、勤勉さが完璧主義とつながるように多面的で、他の性質との兼ね合いで結果が変わるそうです。また、自分の性格知ることは自分の視野を広げることにつながるとされていました。また就職活動では自分と向き合い、本当にやりたいことを見つけることが重要とされています。ですから私は、  なぜ就職活動において自己分析が大切とされているのか、この報告からわかったような気がします。今一度自己分析をやり直し、自分の性格と向き合う時間を作りたいと思いました。

以上の4冊が今回の新書報告で紹介されました。毎回の講義で思うことなのですが、普段自分では手に取らないような本の発表が聞けてとても楽しいです。残り少ない新書報告では、いったいどんな本が紹介されるのか楽しみです。


2021年11月17日水曜日

2021年度後期第7回:グループワーク「映画を読む」

こんにちは!ゼミ生のOです。11月も半ばになり、朝晩はとても冷えます。今回は、映画を題材にしてグループワークを行いました。取り上げた映画のタイトルは、『パリのランデブー』です。本作品は、30分の短いお話が3つ入っているオムニバス映画です。その中から、私たちは第一話「7時のランデブー」を鑑賞しました。物語の舞台はフランス、主人公の女子大学生の恋愛模様と日常生活を描いた作品です。

映画鑑賞後、グループになってこのお話のあらすじを再構成してみるというワークをしました。その際、先生から課された3つの問いにも答えるべく、挑戦しました。

すなわち、

Q1.このお話のオチは何か

Q2.この映画の面白さは何か

Q3.スリ(映画の中で、主人公が何者かに財布を盗まれてしまいました)は誰だったのか

です。

3つのグループに分かれて意見を出し合い、まとまったところで各グループの考えを発表しました。すると、ゼミ生それぞれで異なる意見が飛び交い、グループとしての考えも解釈がそれぞれ少しずつ異なっていました。

例えば、Q2.この映画の面白さについては、「日常生活で偶然の出来事が重なったこと」、「主人公の気持ちに共感できること」、「伏線がたくさん用意されていて、多様な解釈ができること」などが挙げられました。

Q3.スリ犯について、様々な解釈の仕方がありましたが、相澤先生から「その主張の根拠は?」と聞かれると、ゼミ生は皆説明に戸惑っているようでした。つまり、映画では描写されていないのにも関わらず、ある怪しい登場人物をスリや共謀者だと自然と思い込んでしまっていたということです。私も、根拠なく自然に他のゼミ生と同じ考え方をしていたことに、正直驚きました。

多様な解釈ができるのは、映画の中でいたるところに思わせぶりなヒントがあるのに、それらが明確ではないからだと発見できました。答えがはっきりと与えられていないため、鑑賞者にとって開かれた解釈ができる作品は、何度も観る価値があってより面白いといえそうです。

グループワーク中

今回のグループワークは、文章を読むのとはまた違った楽しさがありました。真相は確かめられないとしても、新たな発見ができるかもしれないと思い、この映画をもう一度観てみたいという気持ちになりました!

次回は、通常通りの新書報告になります。読書の秋ということで、読書習慣をまた取り戻していきましょう。


2021年11月10日水曜日

2021年度後期第6回:新書報告4

 こんにちは。ゼミ生2年のZ です。先週は課外活動があったとはいえ、ゼミがなかったため、少し久しぶりのゼミになりました。今週のゼミの内容はD班による新書発表です。以下、取り上げられた新書を見ていきます。

Gさん:門倉貴史『偽札・贋作・ニセ札と闇経済』(講談社+a新書、2004年)

 本書では偽札や贋作といった偽物が出回ることによって、経済にどのような影響が起きるのかについて述べられています。本書によれば、偽物が出回ることは経済にとって悪影響になるそうです。

 これまで偽物や偽札をあまり身近に感じたことはありませんでしたが、報告を聞いて私たちの身近な生活に影響を与えるものだということを知りました。偽物や偽札の問題について、ニュース等で関心を持ちたいと思いました。

Iさん:阿岸祐幸『温泉と健康』(岩波新書、2009年)

 本書は、温泉を用いた医療法である温泉療法を紹介しています。温泉療法とは、温泉だけでなく、温泉の周りの環境や気候なども生かした療法です。本書では、ヨーロッパでの実例を中心にその効能などについて学べるそうです。

 私は温泉に入るときに、温泉の持つ効能や健康についてあまり意識したことがなかったので、意識する良いきっかけにしたいと思います。

Mさん:畑村洋太郎『回復力 失敗からの復活』(講談社現代新書、2009年)

 本書では、人間が失敗して、落ち込んだ状態から回復するにはどうすればよいのかについて、書かれています。失敗から立ち直るための方法として、失敗したときに、誰かに淡々と話を聞いてもらうことがよいと発表では取り上げていました。

 発表では、他にも立ち直る方法が紹介されました。中でも私が印象に残ったのは、人のせいにするというものです。これは、人のせいにすることによって、自分に責任をかけすぎないためだそうです。私は、時にはそういった態度は必要かもしれないと思いました。

Nさん:印南敦史『読書する家族のつくりかた』(星海社新書、2021年)

 本書は、本が読まれていない理由を分析し、本を読んでいない人がどうすれば本を読むのかについて考察した本です。特に家族で本を読むことをいかに習慣化するのかという問題について述べられています。本を読む習慣をつけるためには、短くても読書の時間を作ることや、本を手に取りやすい場所に置くなど、本を身近にすることが重要だそうです。

 本ゼミも読んだ本を発表するゼミであり、読書の習慣化は必須事項です。本書はそう言った点で、ゼミ活動の参考にもなる本だと感じました。

Bさん:佐藤ブゾン貴子『人は顔を見れば99%わかる』(河出新書、2020年)

 本書では、顔の特徴を見ることにより、人間性を読み取ることができる相貌心理学について書かれています。人の顔は生まれたときから同じというわけではなく、環境などにより、絶えず変化しているらしいです。なお、発表後に先生からは、この本の内容は学問と呼べるのかという疑問が呈されました。

 ゼミの発表を聞いて、私は具体的に人の顔のどこをどう見れば人間性が分かるのだろうと思いました。

以上5冊が第6回の新書報告で紹介されました。次回のゼミは、新書報告は小休止して、グループワークを行います。来週はどんなゼミになるのか楽しみです。


2021年11月3日水曜日

課外活動:バレエ「白鳥の湖」鑑賞

11月3日文化の日に、ゼミ生九人とバレエ「白鳥の湖」を鑑賞しに新国立劇場へ行きました。休憩時間を挟みつつ三時間に渡る豪華な舞台でした。参加者の感想を以下に記します。


Oさん

初めてのバレエ鑑賞で、行くことが決まってからとてもワクワクしていました。当日ホールに入り、劇が始まってからは、私が抱いていた期待を上回るほどの素晴らしい演技に魅了されました。

バレエダンサーたちの手足・足先まですべてを使った舞は、とてもきれいで感動しました。ダンサーの方はみんな背筋をピンと伸ばして踊っていて、格好よく見えました。私も日常生活で、きれいな姿勢を保つこと、優雅で余裕のある立ち振る舞いを心がけたいと思います。

主人公のオデット姫やジークフリード王子の踊りはとても素敵で、演技とはわかっていても、2人の間には本当に愛が生まれているのではないかと思うほど素晴らしかったです。2人に憧れました。私が特にすごいと思ったのは、第3幕に出てくるタンバリンを持った男女2組のダンサーペアです。タンバリンを駆使しながら、回ったり交互に鳴らしたりしていたこと、且つそれらがオーケストラの演奏とぴったり合っていたことが素晴らしかったです。白鳥に変えられたオデット姫の多くの仲間たちの息の合った舞もとても印象に残っています。私はそれぞれの動きに見とれてしまいました。

今回の鑑賞を通して、私はバレエがとても好きになりました。なぜなら役者の演技や身のこなし、きらびやかな衣装やオーケストラの生演奏までも楽しむことができたからです。

今回は4階席という少し引いたところから観たので、舞台が視界にちょうど収まるくらいの小さな箱のように見え、その中でバレエダンサーが踊るたびに衣装がキラキラしていました。まるで宝石箱を開けて、中の宝石にうっとりしているような感覚でした。

今度はもう少し近く(オーケストラピットが見える位置)でも観てみたいです!


幕間はテラスで。よい天気でした。


Tさん

今回、ゼミの課外活動として新国立劇場にバレエを見に行きました。演目は「白鳥の湖」です。2年前のゼミ在籍時に「くるみ割り人形」を見てから人生で2回目のバレエ鑑賞でした。「白鳥の湖」はとても有名な演目だったので、楽しみにしていました。実際に見た感想としては、なにより美しかったです。そろった動きがとても綺麗だったし、バレエダンサーそれぞれの、指先まで研ぎ澄まされたような踊りがとても綺麗でした。さらにオーケストラの音楽も、物語を作り上げるのに欠かせない役割を担っていました。聞いたことのある曲もあり、見ていて楽しかったです。細かいところまで作り上げられていて、抜け目のなさ感じました。とても良い経験になりました。


全員集合


Iさん

オーケストラの壮大さにまず驚きました。一番遠い四階席だったが、波が押し寄せてくるような音の迫力に圧倒されました。

男性も女性も踊りにしなやかさと強さを兼ね備えていて、その美しさに鳥肌がたちました。大勢で踊っていても一糸乱れず。本当に人間が踊っているのか、と不思議な感覚を持ちましたが、聞こえてくる足音から人間が確かに踊っていることを思い出されました。

特に印象に残っている場面は、女性と男性が何十周も回り続けていたところです。回る速度も美しさも決して最後まで変わることがなくただただ圧倒されました。

今回の初めてのバレエ鑑賞に大きな衝撃を受け、今後も劇場に足を運びたい気持ちが強まりました。心が豊かになる時間を見つけることができて大変感謝しています。

Rさん

新国立劇場バレエ団のバレエを見れるということでとても楽しみにしていました。予想以上を上回る美しさで感動しました。話全体は予習していましたが、言葉での説明などはないのに、分かりやすくて表現力が凄さに驚かされました。4回席の中央から見たので上から全体が見れる角度だったのですが、かなりの人数がいるのに全くズレていなくて本当にすごいなと思いました。集団行動的な凄さがありました。また、あれだけの人数なのに、ジャンプをした時に全く音がならないということは、体幹が引き締まってるということだと思います。普段からの筋トレなどしてるんだなと思いました。本当に優雅で美しさの全てが詰まった公演でした。

Zさん

今日のバレエは体調的な問題があり、私はモニター越しに鑑賞しました。また、あらすじは読んできていたものの、話の流れは漠然とつかむことしかできませんでした。しかし、それでも十分に「白鳥の湖」という作品を堪能することができました。特に大人数のバレリーナによるパフォーマンスには引き込まれました。個々人の踊りももちろん一挙手一投足に美しいのですが、大勢の演者によって生み出される一体感は特に美しく感じ、魅了されました。今回の鑑賞でバレエに対する関心が強くなったので、可能な限り、別の作品を鑑賞してみたいと思いました。

Gさん

初めてのバレエ鑑賞とても楽しかったです。歌やセリフがなくても踊りで物語が伝わり、没入感がありました。生のオーケストラの演奏・キラキラ輝く豪華な衣装・幻想的な舞台セットなど、踊り以外にもたくさん魅力がありました。また、主役が登場する場面や踊り終わりで拍手をすることを知らなかったため、バレエ独特の文化を体験することができてよかったです。今回は4階席で、舞台全体を見渡せる素敵な席で鑑賞しました。機会があれば、より舞台に近い席でダンサーの表情に注目しながら鑑賞してみたいです。

Kさん

あらすじを予習して鑑賞したバレエだったが1,2章は難しく理解できない部分もあった。しかし三章四章は演出がわかりやすく理解できた。4階席だったので演者の表情まではわからなかったが、オーケストラの音楽はとても響いてよく聞こえてよかった。機会があれば、表情まで見える位置で鑑賞したいと思った。

三章の花嫁選びのシーンでは3人の候補とその国の民族舞踊のような音楽、衣装の違いがとても綺麗で見ているのが楽しかった。また白鳥たちの揃った踊りに感動した。

Yさん

今回初めてバレエを鑑賞しました。言葉を使わなくても、踊りと音楽と舞台美術だけで白鳥の湖の世界観を表現できることに衝撃を受けると同時にとても感動しました。私は高校生の頃に楽器を演奏していた過去もあり、オーケストラの演奏にも興味を惹かれました。ただ演奏が素晴らしいだけではなく、キャストの動きと音楽がピッタリはまるように演奏し、舞台美術の雰囲気や魅力を最大限に引き出す計算され尽くした繊細さに圧倒されました。今回は後ろの席だったのでキャストの表情まで見ることはできませんでしたが、次バレエを観るときはキャストの表情が見える席で鑑賞してみたいです!

Mさん

まず1番に、バレリーナの方々の表現力に驚いた。4回席から見ていてもからだのしなやかさや大きな動きがとてもわかる。観客全員に伝えるとはこのことなのだなと思った。

第1幕と第2幕は少しストーリーのわかりづらさがあったものの、王妃が登場する際の空気感や演奏は印象的である。一方で、第3幕と第4幕はわかりやすかった。オデット以外の白鳥の揃った動き(特に足先)は忘れられない。

悲しい結末であるが、演技に対する感動と合わせるとしみじみ思うところである。また行ってみたいと思えた。

2021年10月27日水曜日

2021年度後期第5回:新書報告3

 ゼミ生のKです。10月も後半になり寒くなってきました。10月27日、今学期3回目の新書報告はC班です。

Oさん:門脇厚司『社会力を育てる 新しい「学び」の構想』岩波新書、2010年

人間を好きになることが社会性を持つために大切だということを学びました。大学生活では人と関わる機会が多く、社会性を身に着けやすい環境にあると思うので、積極的に人と関わって社会性を身に着けたいです。

Yさん:勝間和代『断る力』文春新書、2009年

断る力を培うためにはまず、自分の強みを知り適切に断ることが大切だと感じました。自分の力を自覚できると、自分の得意不得意がわかり、相手に頼みやすくなる、ということに共感しました。しかし、本には20代はトライ&エラーが必要であるとも書かれていたそうなので、私自身はもうしばらくはとりあえずなんでも頑張ってチャレンジしてみようと思いました。

Zさん:宮下紘『プライバシーという権利 個人情報はなぜ守られるべきか』岩波新書、2021年 

プライバシー一つで政治思想まで偏らせることが出来ることに驚きました。その例として「ケンブリッジアナリティカ事件」という事件を知りました。これはケンブリッジ・アナリティカ社という英国企業がFacebookを通して大量の個人情報を取得し、アメリカ大統領選挙でトランプ陣営なとの複数の選挙活動をサポートしたという事件です。私たちは常に自分自身で自分のプライバシーをどこに信頼して預けるのか考えていかなければならないと感じました。

K:岩男壽美子『外国人犯罪者 彼らは何を考えているのか』中公新書、2007年

この本は著者と法務省が刑務所にいる外国人犯罪者と日本人犯罪者に犯罪を犯してしまったことについて、大規模なアンケートを取った結果の本です。犯罪の動機や刑罰の正当性について、受刑者がどのようなことを考えているのか知ることができました。この情報から、今後外国人犯罪者に対して、日本人犯罪者と違った犯罪傾向に対策もできるのではないかと思った。

Rさん:阿川佐和子『聞く力』文春新書、2012年

聞くときには安易にわかりますと言わない、質問はたくさん準備しないほうがいい、素朴な質問が大切、オウム返しをすることが大切、、など聞く力をつけるための具体的な方法を知ることができました。文春新書の報告を聞くのは今回が初めてでしたが、Y君の断る力も合わせて、人生の生きていくうえで大切になること、方法を教えてくれる部分が大きい新書だなと感じました。

Tさん:山口二郎『政治のしくみがわかる本』岩波ジュニア新書、2009年

民主主義は当たり前のものではない、自分から変えられる世の中であると考え多角的物事を見ていくことが大切だそうです。Tくんが印象に残った言葉として「理想は可能性の現実だ。」というのを紹介してくれました。理想がないと現実で成功はないというとても良い言葉だと感じました。また政治を考えていくうえでは、メディアに注意する、などの基本的なことがとても重要で大切なことだとことも必要だと感じました。


2021年10月20日水曜日

2021年度後期第4回:新書報告2

 こんにちは。ゼミ生2年のYです。東京はぐっと気温が下がってきました。みなさま、あったかくして過ごされていますか?今週の相澤ゼミは体調不良による欠席者が数名出ました。季節の変わり目は体調を崩しやすいので皆さんも気をつけて生活していきましょう!

さて、後期第4回目の授業は、D班の新書報告を行いました。早速紹介していきます。

Nさん:藤沢房俊『ガリバルディ』(中公新書、2016年)

本書は、イタリアの独立運動で活躍したガリバルディの生涯を紹介しています。歴史的な事実を踏まえてガリバルディの背景を考察し、ガリバルディに対する評価について著者の肯定的な主張と否定的な主張の両方を知ることができたそうです。

恥ずかしながら、私は今回の報告でガリバルディという存在について初めて知りました。独立運動で活躍した人物と聞いて、最初は気難しい人なのかなという印象を受けました。しかし、Nさんの報告を聞いて、破天荒だけど周囲から愛されていたという話を聞き、ガリバルディのギャップに興味を惹かれました。イタリアの歴史に興味がある人に是非読んでいただきたいです。

Mさん:星野保『すごいぜ!菌類』(ちくまプリマ―新書、2020年)

本書は、カビやキノコ、酵母などの菌類の生態について紹介しています。Mさんは、菌の増え方と菌の進化について面白い報告してくださいました。

報告の中で印象に残ったのは、菌にも感情があるような活動をすると著者が主張していたという話です。一般的に菌は、長い年月をかけて進化していくそうですが、状況によっては早く進化することが可能だそうです。例えば、農薬耐性をつくるための菌類は早く進化することができます。菌自身が生き残るために、他の菌類が活動していないときに活動をするので、まるで菌にも感情があるみたいだと著者は述べています。人間の感情とは少し違うかもしれませんが、菌類も環境に適応しようとしながら一生懸命生きているのだと考えると愛着が湧いてきました。生物が好きな方は楽しめる一冊になるでしょう。

Iさん:加賀乙彦『ある若き死刑囚の生涯』(ちくまプリマ―新書、2019年) 

本書は、1968年に起こった横須賀線電車爆破事件の犯人である死刑囚が、約7年間の牢獄生活を綴った日記を紹介しています。生々しい言葉を通じて、死刑囚の心情の変化や生活の実態を知ることができます。

報告を聞いて印象に残ったのは、一般囚と比べて死刑囚が自由な生活をしているという点です。本書によると、日記を書いた死刑囚は好きな格好をして、娯楽も楽しめるという生活を死刑が宣言させる前日までしていたそうです。この死刑囚は、牢獄生活を通して、短歌の才能を開花させ周囲から評価されるようになりました。しかし、どんなに実績を重ねたとしても、その先に死刑が待っていると考えると、ある意味残酷で絶望的だと感じました。先週の新書報告でも死刑制度についての報告がありましたが、そこからさらに死刑について考えるきっかけになりました。

みんなで進次郎池へ。快晴でした。

今回は報告がいつもより早く終わったので、残り時間に皆で新次郎池に散歩しに行きました。私は初めて新次郎池に行ったのですが、自然豊かな風景を見ると、とても穏やかな気持ちになりますね。私の地元にも新次郎池と似た景色を見られる公園があり、そこで過ごす時間が大好きだったので懐かしく感じました。私の東経大お気に入りスポットが1つ増えて特別な1日になりました!

本当にサプライズ!心遣いに感激でした。
ますますハッピーになりました。ありがとう。(相澤記)
そして先週のゼミで、相澤先生が結婚したことを報告してくださいましたので、サプライズでゼミ生からお花をプレゼントしました。新次郎池の綺麗な自然に囲まれながら先生のお祝いをして、写真撮影や雑談などをすることができて楽しい時間を過ごせました。

相澤先生、ご結婚おめでとうございます!!

以上が第4回目のゼミの報告でした。来週のゼミはC班の新書報告を行います。どんな報告を聞けるのか今からとても楽しみです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、来週の相澤ゼミブログでお目にかかりましょう。


2021年10月13日水曜日

2021年度後期第3回:新書報告1

こんにちは!経済学部2年のGです。緊急事態宣言が解除され、久々に対面で活動が行えました。グループ替えをして、前期とは異なるメンツで毎回新書発表をしていきます。それでは、今日の発表を見ていきましょう。 

Yさん:中谷内一也『リスク心理学 危機対応から心の本質を理解する』(ちくまプリマー新書、2021年) 

本書は、人はリスクをどのように評価し行動するかを解説しています。 

リスクとは、将来いずれかの時に望ましくないことが起こる可能性のことです。このリスクには2つの要素があます。それは、直感型思考と論理型思考です。これを二重過程理論といい、二つの思考は同時に稼働し、独立して働いているそうです。 

Yさんは、コロナ禍に起きた実際の出来事を例にとって、直感型思考と論理型思考の違いを分かりやすく解説してくれました。客観的なデータは冷静に判断しやすく、具体的な個別のデータは記憶に残りやすいという脳の特徴を知ることができました。また、論理型思考に比べ直感型思考はコストが低いそうです。このため、人は日常生活で発生するリスクを直感で判断することが多いことが明らかになっています。 

アクション映画やドラマでは、主人公が自分の直感を信じて結果的に命拾いをするというような描写がよくあると思います。Yさんも、いざという時は自身の直感を信じるそうです。情報に惑わされず強い意志をもって行動するには、直感を信じることも大切だと思いました。 

 O さん:外山滋比古『家庭という学校』(ちくま新書、2016年) 

本書は、著者が自身の経験と対比しながら、家庭教育の重要性や子供に与える影響を、1. 能力を引き出す、2. 苦労は買ってでもせよ、3. 親が自分で教える、4. 経験こそが大事、5. 子育てで難しいことの五つに分けて論じています。2の「苦労は買ってでもせよ」からは、お母さんの声変わりというテーマ話題が紹介されました。お母さんは、生まれて間もない赤ちゃんには優しい声で話しかけます。しかし、3歳頃から子どもにとって怖い印象を持つような声色に変化します。この変化は、自分の子どもが周囲に比べ遅れているのではないかという母親の焦りからくるそうです。この他、近年増えつつある早期教教育など、身近な例を挙げたテーマが多く共感しやすい内容でした。 

Oさんは本書を読み、自分の子どもには、本人がやりたいといったことをやらせてあげたいと考えたそうです。私ももし子育てする時が来たら、能力や好奇心を充分に伸ばすことができる環境にしたいと思いました。 

親は必要な教育であると考えても、子ども自身にとっては必要がないかもしれません。子どものための教育が、将来悪影響を及ぼす可能性も考えながら教育をすることが大切であると考えました。 

R さん:若桑みどり『お姫様とジェンダー』(ちくま新書、2003年) 

シンデレラや白雪姫など、プリンセスに憧れた時期がある女の子は多いと思います。本書はこのようなプリンセス物語が女の子らしさを強要しているのではないかとジェンダー学の視点から批判しています。 

プリンセス物語の主人公のヒロインは、多くがかわいらしい外見です。そして、女の敵は女という決まりがあるかのように、主人公を邪魔するキャラクターは女かつ不細工に描かれることが多いです。この外見の描き方は、顔がかわいらしくなければ幸せにはなれないという外見至上主義の風潮を作っていると述べています。また、素直で美しい心を持っていれば、いつか王子様が迎えに来てくれて幸せにしてくれるなど、努力をしない他力本願の人生プランが描かれる点も著者は批判しています。さらに、結婚が人生のゴールかのように結婚式で終わる物語ストーリーも、女の子に悪影響を与えているのではないかと述べていました。 

最近は、そばかすや肌の色など外見にとらわれない女の子を主人公にしたプリンセス物語が多くなっています。私は、最近のプリンセス物語はヒロインの外見の良さだけではなく、心や人を信じる強さも魅力の一つであることから、女の子らしさを強要しているわけではないと考えました。本書は、ただ物語を見ているだけでは思いつかない考えが述べられています。新しい視点でプリンセス物語を見るきっかけになる1冊なので、プリンセス物語好きな人は読んでみてください。 

K さん:政野淳子『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書、2016) 

本書は、国会では具体的に何が行われていて、どういう役割を果たしているのか、その問題点を指摘しつつ、国民はどうするべきかを解説しています。 

政治とは、異なる人の意見を調整してよい方向に収めることを意味します。政治を行っている国会の仕組みは非常に複雑で難解です。Kさんは、選挙を例にあげて説明してくれました。今月の31日に行われる衆議院議員選挙は、わずか12日前の10月19日に公示されます。これは、有名な政党に所属していない・現議員ではない立候補者に非常に不利な仕組みです。また、選挙立候補者準備する供託金制度にも問題があります。この供託金は各選挙によって額が異なりますが、一定の得票数を得られない場合は没収されてしまいます。よって、より選挙費用を多く持っている人が有利になる仕組みになっています。 

以上の決まり以外にも、法律でさらに細かい決まりごとが沢山あります。この難しい政治に国民がかかわる方法が投票です。国会の仕組みを知ることで、自分の意見と合う公約を掲げている候補者を見つけることができます。その候補者の投票することで、国民も政治を行うことができます。 

今回の報告で選挙の仕組みを知り、選挙制度自体が候補者に平等ではないということを知りました。この状況を変えるためにもまずは投票を行うべきであると考えています。まだ1度も投票に行ったことがない、興味はあるけどよくわからないという人にぜひ読んでほしい一冊です。私も投票前に本書を読み、知識を身に着けて当日に挑みたいと思っています。 

T さん:デイビッド・T・ジョンソン、笹倉香奈訳『アメリカ人のみた日本の死刑』(岩波新書、2019年) 

世界的にみると死刑制度は確実に衰退しており、2018年時点で世界の3分の2の国が法律上廃止しています。このように廃止の風潮がある中、先進国では日本とアメリカが例外として制度を保ち続けています。本書は、日本とアメリカを比較し、日本の死刑制度の問題を分析しています。 

アメリカは、中央集権ではないことから、死刑制度がある州とない州があります。では、なぜ日本は死刑制度が廃止されないのでしょうか。それは、3つの理由が考えられると著者は言います。 

一つ目は、死刑廃止の機会を失ったことです。第二次世界大戦終戦時、アメリカが日本の戦犯を死刑にさせるために無くならなかったのではないかと述べています。 

二つ目は、政権与党の自民党が保守的かつ、自民党以外の政党が政権を取った期間に、死刑制度に関する改革や運用を変えることができなかったことです。 

三つ目は、日本が経済国として発展し力をつけた結果、他国から簡単に制裁を加えられなくなったからではないかと考えています。 

以上の理由から、日本では死刑制度が維持されています。アメリカは全員一致しなければ、死刑判決は下せません。しかし、日本の裁判では、過半数が認めれば死刑になってしまいます。このような裁判のあり方が日本の死刑制度における問題点であると分析しています。 

Tさんは、人権的に問題があり、殺せばいいというわけではないという理由から死刑制度を廃止するべきだと考えているそうです。私も冤罪であった可能性や人権を考えると、死刑制度は廃止するべきであると考えます。被害者の遺族の気持ちを考えると、死刑を望む気持ちは理解できます。しかし、加害者を死刑にしたところで、亡くなった方は生き返りません。遺族には、誰かを殺すように強く願ったこと、願ったとおりに人が死んでしまった事実しか残りません。罪を犯した人が生きて罪を償うことが最善なのではないかと考えます。 

以上が今学期初の新書報告でした。久しぶりの新書報告で、とても有意義な時間を過ごすことができたと思います。次回はDグループの報告です。今週に続き、楽しい活動にしましょう! 

2021年10月6日水曜日

2021年度後期第2回:グループワーク「ゼミ宣伝会議」

  お久しぶりです!経済学部四年のゼミ生Tです。今回のゼミは、オンラインで行われました。今日までがオンラインで、次回からは対面授業に戻ります。

 今回は、「ゼミ宣伝会議」と題して、グループワークを行いました。大学全体のゼミの履修率を上げ、自分に合ったゼミを見つけて、学生らしい学習体験をしてもらうにはどうすればよいかを考えること目的です。ゼミ生には事前に次のようなワークシートが配布されていました。

  1. ゼミとは何か?
  2. ゼミを取る理由と、ゼミの利点
  3. 宣伝方法、アプローチ
  4. ゼミって大変そうと考えている人に対する、背中を押す言葉や、アプローチ

これらの問いの答えを授業前に考えておき、それをもとに議論していきました。

 グループワークにあたっては、学年によってゼミに対する考え方が違うということを踏まえて、学年別にグループを分けました。そして、ワークシートの4つの問いを順番にグループ内で話し合い、その後全体に共有しました。

 一つ目の問いに対する回答として次のようなものが挙がりました。

  • 少人数でコミュニケーションを取りながら、特定の分野を深く学ぶところ
  • 一方的ではなく、相互的な場面が多いので、主体的な姿勢が求められるため、講義などとは学びの深め方が違う
  • 自分の目で見て体験できたり、フィールドワークもあるので、実践的な学びもできる。

それぞれの学年で共通する部分も多く、ゼミ生のゼミに対する認識は大きく変わらないことがわかりました。


 次に、二つ目のゼミに入る理由や、ゼミの利点についての回答です。「ゼミとは何か」に重なる部分も多くありました。

  • 主体性、コミュニケーション能力、調べる力やプレゼン力など多くの点で成長できる。
  • 興味が似た人が集まり、友達ができる。
  • 生徒から学生になれる
  • 周りの意見を得られるので、価値観、視野が広がり、自分を知る機会にもなる
  • ゼミならではの貴重な体験ができる。(相澤ゼミでいえば、美術館、演劇、歌舞伎などの学生にとっては、少しハードルを高く感じることも、課外活動を通して経験できる)

各グループの回答を聞いて、講義と違って、ゼミは相互的な場面が多く、自分から動かなければいけないので、その分いろいろなことを学べるのだと思いました。私は、人と関わることでの成長はとても大事だと思うので、それらを伸ばせるゼミは学生生活において重要なものだと思いました。

 三つ目のゼミの宣伝方法や学生へのアプローチの仕方については、二つの段階に分けて考えました。ゼミを履修率をあげるには、ゼミそのものを知って興味を持ってもらう段階と、自分に合ったゼミを選ぶ段階があると整理して考えました。

まず、認知のためにできることとして、次のようなアイディアが出ました。

  • 東経大のアプリを作って、アプリの広告でゼミを全面に押し出す
  • ゼミのイベントや説明会を開き、義務化して強制参加にしてみる
  • 放送などを使って少し奇抜な宣伝を試みる(「ゼミに入らないともったいない」などの言葉をしつこく流してみるとか)

次に、自分に合ったものを選んでもらうための方法としては、次のようなアイディアが出ました。

  • SNSを活用
  • 体験期間を設ける
  • ポスターや動画
  • 自分に合ったゼミを見つけるために、YES NOチャートを作ってみたり、先生の人物像をまとめたものを作ってゼミ選びの材料にしてもらう

実現は簡単でないものもありますが、なにか手掛かりになる案もあったと思います。

最後の四つ目の問いは、時間の関係上間に合わなかったので、グループワークの感想と一緒にmanabaのアンケートから回答することになりました。

全体を通して、有意義なグループワークができました。なんのためにゼミ活動をしているのか考えるきっかけになったり、ゼミの良さを考えることで、ゼミを頑張る意欲になったりすると思います。

2021年10月2日土曜日

2021年度後期第1回:夏休みの読書報告

担当教員の相澤です。後期の授業が始まりました。それぞれが充実した夏休みを過ごし再会できたことを嬉しく思います。緊急事態宣言の影響により、今週と来週は遠隔で実施します。

今回のテーマは、夏休みに読んだ本の中から一冊選んで紹介するというものです。いつもはゼミで紹介する本は新書に限定していますが、今回は新書縛りを外して自由に選択してもらいました。その結果、各ゼミ生の興味関心がよりわかりやすく伝わる選書になった気がします。

  • Oさん:湯浅誠『つながり続ける こども食堂』(中央公論新社、2021年)
  • Zさん:ダン・アリエリー『予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ』(早川書房、2013年)
  • Wさん:メンタリストDaiGo『図解 自分を操る超集中力』(かんき出版、2017年)
  • Gさん:冲方丁『はなとゆめ』(Kadokawa、2016年)
  • Iさん:アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮社、2020年)
  • Bさん:山田知生『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版、2018年)
  • Kさん:八木牧夫『ちゃんと歩ける東海道五十三次 東』(山と渓谷社、2019年)
  • Mさん:コンテンツツーリズム学会『地域は物語で「10倍」人が集まる コンテンツツーリズム再発見』(生産性出版、2021年)
  • Nさん:星新一『ボッコちゃん』(新潮社、1971年)
  • Yさん: 大河内薫『貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版、2021年)
  • Rさん:モーム『月と6ペンス』(新潮社、2014年)

私は今回、小説作品の紹介を面白く聴きました。小説の魅力を他人に伝えることは難しいものですが、上手にポイントを押さえて面白さや読みどころを紹介してくれたと思います。小説の紹介には、新書報告以上に紹介者のキャラクターが滲み出る気がしました。

次回は引き続きオンラインでグループワーク、その後は教室での新書報告に戻る予定です。徐々に読書のペースをつかんでほしいと思います。

2021年7月14日水曜日

2021年度前期第13回:新書報告8

こんにちは。相澤ゼミ経済学部2年のGです。残念ながら今学期最後のゼミは、緊急事態宣言によりZoomでの実施となりました。それでは、発表を見ていきましょう。

G:斎藤環『関係する女 所有する男』(講談社現代新書、2008年)

今回、私も発表をしました。本書はジェンダーの意味での男女の差異について、精神分析をもとに明らかにしています。

著者は、歌手一青窈の「(思い出を)男はフォルダ保存、女は上書き保存」という言葉に感心し、この言葉に則って男女の差異を分析していました。分析結果によると、「ジェンダー」と「性愛の価値基準」はお互い補強しあう関係にあり、男と女の性愛の価値観の差は、ジェンダー的価値観を社会的に根付かせるそうです。

私は本書を読み、ジェンダー的価値観は、日本の男女格差が縮まらない理由の一つになるのではないかと思いました。格差を縮めるには、柔軟な考えを持つことも必要ですが、この価値観を払拭するような女性の活躍も大切であると私は考えています。自分が社会人として働くときは、女性も活躍できる!と評価される成果を挙げたいです。

Yさん:安倍博枝『自分のことがわかる本』(岩波ジュニア新書、2017年)

本書は、ワークブック形式で、自分の良いところは何かを知ることがテーマになっています。まず、「ジョハリの窓」という4つの項目に分けられた自分の可能性について考えます。ジョハリの窓とは、自分自身が見た自己と、他者から見た自己を分析・理解する自己分析方法です。

1. 自分も他人も知っている自分の性質(開放)

2. 自分は気づいていないが他人は知っている性質(盲点)

3. 他人は知らないが自分は知っている性質(秘密)

4. 自分も他人も知らない性質(未知)

の4つの項目があります。これを踏まえて「自分発見シート」に取り組みます。自分発見シートとは、家族や友人に自分の内面・外面の良いところを書いてもらうシートです。内面はもちろんのこと、清潔感や笑顔といった内面の良さを表す外面の評価についても知ることで、自分の良さに気づくことができるそうです。

ワークに取り組んだ結果、Yさんは4つの自慢できる自分の良さを見つけました。他人に聞くことで自分が気づかなかった良さを知ることができるため、私も就活時に取り組んでみたいと思いました。

Mさん:串崎真志『繊細すぎてしんどいあなたへ HSP相談室』(岩波ジュニア新書、2020年)

HSPとは、人に対する繊細さ、五感覚の敏感さの両方を持つ人を指します。日本では五人に一人がHSPだそうです。本書はHSPの特徴を六つに分けて解説した上で、HSPの人とどのようにかかわればよいかを述べた本です。

1 他人の気持ちに左右されやすい

2 人の顔色をうかがってしまいやすい

3 教室に居づらい(人疲れしやすい)

4 共感能力が高い

5 空想が大好き

6 音や匂いに敏感

の6つの特徴があり、さらに内向的と外交的な傾向に分けられます。

HSPの人とかかわるときには、「気にしすぎ」という言葉をかけないことが大切だそうです。本人がわかっている点を周りから言うことでさらに負担をかけてしまいます。アドバイスを言いたくなるかもしれませんが、本人が落ち着くまで見守る必要もあります。

私自身もHSPというワードは聞いたことがありましたが、どのようなものかは知らなかったので、とても興味深い発表でした。HSPさんが日々を快適に過ごす方法についても述べられているので、心当たりがある人に読んでもらいたい一冊だと感じました。

Tさん:川上浩司『不便益のススメ』(岩波ジュニア新書、2019年)

本書は、不便であることによって得ることができる利益「不便益」について論じています。

不便益は様々な物事に活用されています。例えば、幼稚園です。園の庭はでこぼこしています。しかし、このでこぼこがあることで園児の想像力を働かせることができます。介護施設では、段差を設け手すりをなくすことで、主体性を持たせ身体能力の衰えを防いでいます。施設以外には、ヘリコプターではなく、自分自身が上ることで楽しさを味わうことができる登山も例に挙げられています。

Tさんは、新型コロナウイルスによって24時間営業ではなくなったコンビニを例に考えていました。不便に感じることが多いですが、いつでも物を買うことができなくなったため物を大事に扱うようになり、節約にもなっていると私も思いました。

便利であることも大切ですが、便利すぎることによって考える力が衰えてしまいます。本書は、手間がかかるからこそ得ることができる利益について論じているので、新しいものの見方、考え方をしたいという人におすすめです。

Kさん:磯野真穂『ダイエット幻想 やせること、愛されること』(ちくまプリマー新書、2019年)

本書は、文化人類学からどうして人はダイエットをしようと考えるのかを考察しています。

痩せたいという思いは自身の考えとして中から現れるものではなく、他人による言葉や世間の風潮など、自分の外からやってきて中に植え付けられます。これは、自分もかわいいと思われたいという一種の承認欲求によるものです。社会的に女の子は、痩せているほうがかわいいという価値観が共有されます。よって、承認欲求を満たそうと過度なダイエットを行い続けた結果、摂食障害になることが多いそうです。また食事をとらないなど、手軽に行うことができることもダイエットをしたいと思う要因の一つであるそうです。

コロナ禍で自宅トレーニングや減量レシピが流行りましたが、この流行りも痩せなくてはいけないと思い込ませる原因になっているのではないかと発表を聞きながら考えました。肥満は万病のもとといいますが、痩せすぎも免疫力を落とし、病気になる原因のひとつです。これからダイエットをしようと考えている人は、始める前に本書を読み、一度冷静になってから取り組んでみてください。健康が一番大事です。

Nさん:坂井榮八郎『ドイツ史10講』(岩波新書2003年)

本書は、古代ドイツから現代ドイツ(東西統一)までの歴史を10個の項目に分け書かれた本です。Nさんが特に興味を持ったのは、中世ドイツではなぜ絶対的指導者が存在しなかったのかという点でした。中世ドイツは国としての枠組みに当てはまらず、複数の部族の集まりだったそうです。勢力を持った部族の集まりだったため、指導者として登場すると部族全体で制圧する、いわゆる、出る杭は打たれる状況でした。このため、指導者は現れなかったそうです。

本書は、予備知識が必要であるため、ドイツ史初心者には向かないそうです。歴史に興味がある人、余事知識がある人は楽しみながら読むことができると思います。

Wさん:金森修『ゴーレムの生命論』(平凡社新書、2010)

ゴーレムとは、現代でいうロボットのことで、人間が作り出そうとする人間の代わりになるものを指します。本書は、ユダヤ教の世界を手掛かりに、人間はなぜ新たな生命体を作れないのかという問いを考察した本です。

神は土に命を吹き込み人を作りました。しかし、人が作ったものに生命が宿ることは無く、魂は存在しません。人が神になれないのは、罪を犯したからだとされている点にWさんは着目し、その罪は何かをゼミ生で考えました。Wさんは、人は肉食で殺生を行っているからと考えていました。

私は、アダムとイヴが食べてはいけないと言われていた知恵の実を食べたこと、つまり、神の意志に背いたことが罪ではないかと考えました。人が作り出そうとしているゴーレムは、人に従順なものです。この考えを踏まえると、人は神に従順であったと考えることができると思います。よって、知恵の実を食べるという行為が神に従順ではなくなったことの証明になり、人は生命を作り出すことはできないのではないでしょうか。

宗教、聖書に興味がある人はぜひ本書を読んで、人はなぜ人以外の生命体を作り出せないのかを考えてみてください

Sさん:堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書、2020年)

本書は、フィンランド人の働き方・生き方を全6章に分けて述べた本です。

フィンランドには、カハヴィタウコというコーヒー休憩の文化があるそうです。これは、仕事の効率アップのために法律上の決まりとして必ず設けられているブレイクタイムです。ただ休憩をとるのではなく、快適な空間にすることも重要になっています。最近は自宅勤務が増えたことにより、その場所に行きたくなるような心地良い空づくりが行われ、町のおしゃれなカフェのような休憩室が多いそうです。

午後4時に仕事が終わるにもかかわらず、1人あたりのGDPが日本の1.25倍あると聞いて驚きました。フィンランドのような独特な文化ではありませんが、日本では近年、作業効率を上げるためにお昼寝休憩という10分程度の休憩を設ける企業が増えているそうです。

本書は働き方以外に、仕事に対するフィンランドの考え方も紹介しています。フィンランドのような働き方はなぜできるのか、気になる人はぜひ読んでみてください。今後の日本での働き方の参考になるかもしれません。


以上が今学期最後の新書報告でした。前回の欠席者を含めた発表だったので、たくさん発表を聞くことができとても有意義な時間になりました。2学期初めの回は、夏休みに読んだ本の紹介です。対面で活動できることを期待しています。今学期、おつかれさまでした!

2021年7月7日水曜日

2021年度前期第12回:新書報告7

 こんにちは。相澤ゼミ経営学部4年のNです。今回のゼミでは体調不良の方が発生してしまい、発表者3名での活動となったため、残った時間はグループワークを行いました。まずは新書報告についてまとめていきます。

Oさん:澁谷智子『ヤングケアラー 介護を担う子ども・若者の現実』(中公新書、2018年)

ヤングケアラーの現状や具体的な支援について論じられた本です。ヤングケアラーとは、家族に介護が必要な者がおり、大人が担うようなケアを行っている18歳未満の子供の事です。ヤングケアラーの子供が介護に追われ、修学を続けるのが困難になることが問題となっています。対策として、子供が気軽に相談できるような環境づくりが求められており、実際に、イギリスでは学校生活を続けられるような支援や、学校を離れても再度学びなおしが出来る仕組みが作られているとのことでした。一方、日本ではまだ問題が認知され始めた段階で、明確な対策が整っていないのが現状のようです。発表を聞き、自身が大学に通えている事に改めて感謝を覚えました。また、少子高齢化が進む現在、政府だけでなく我々一人一人がこの問題に関心を持ち、対策を考える必要があると感じました。

Iさん:榎本博明『<自分らしさ>って何だろう? 自分と向き合う心理学』(ちくまプリマ―新書、2015年)

今の自分にどこか納得がいかない、目指すべき大人像が見えにくい…。そうした、自分はどんな人間なのかという疑問に関して、心理学者の著者の考えが述べられている本です。著者曰く、自分らしさの発見には他者との関わりが大切なようです。他者と自身を比較したり、他者とじっくり話し合うことで自身も気づかなかった内面を発見できるのではないかとのことでした。発表者からも、自分らしさを見つけるのに役立つので、就職活動前に是非読んでほしい一冊と紹介を受けました。また、面白く、読みやすかったと発表者はコメントしていたので、次回図書館に行った際に探してみようと思いました。

Zさん:野矢茂樹『入門!論理学』(中公新書、2006年)

論理学とは何かについて述べられた本です。数式を用いずに否定(Aでない)、論理積(AかつB)、論理和(AまたはB)、条件(AならばB)といった論理記号が分かり易く解説されているようです。発表者の方も言っていたことですが、論理学は意外と身近にあり、知らない内に学び、使っていたのだと知ることが出来ました。

今回は発表者が3人しかおらず新書報告後に時間が余ったため、残りの時間はグループワークにて「新書報告の苦労と対策」を話し合いました。以下、グループワークで議題に上がった3点に関してまとめてみました。

1. どんな本を読んだらよいか分からない。

  • 予備知識があるテーマの本を選ぶと、理解しやすく読みやすい。
  • 岩波ジュニア新書やちくまプリマ―新書など、比較的読みやすい出版社から選ぶ。

2. 一度読んだだけでは分からない。何を報告すればいいか分からないorまとまらない。

  • 報告の材料になりそうな箇所には付箋を貼りながら読む。
  • キーワードとページ数をメモしながら読む。
  • 発表時のテンプレートを作る(例:本のテーマや概要を述べる→印象に残った個所や重要と感じた箇所を紹介する→自身の感想やコメントを述べる)。

3. 本を読む時間が取れない。

  • 電車の中やスキマ時間を活用する。
  • 本を読む時間を決めて習慣化させる(モーニングルーティーンに組み込む等)。

グループワークを通して、自分と同じことを、他の方も感じていたことに驚きました。他の方は課題を淡々とこなしていると思っていた自分にとってはなかなか衝撃的で、苦労していることと、それに対する対策を共有し合えて良かったと感じました。また、話し合いの中で、一気に読み進めるか少しずつ読み進めるか等、他のゼミ生の考え方を知ることが出来たのも良かったです。情報の共有や他のゼミ生の考えを知ることが出来、非常に有意義なグループワークでした。

次回は1学期最後のゼミですが、緊急事態宣言の影響からZoomでの実施となります。最後に対面で行えないのは残念ですが、遠隔でもゼミが行えることに感謝しつつ、楽しんで発表を行いたいです。

2021年6月30日水曜日

2021年度前期第11回:新書報告6

こんにちは。新ゼミ生2年のBです。緊急事態宣言が解除されて久々の対面授業となりました。オンライン上での活動が続いていたため、対面での新書発表はとても新鮮なものに感じました。それでは、Bグループの発表を見ていきましょう。

Mさん:山中裕美『食品表示の罠』(ちくま新書、2015年)

本書は、食品表示にはどのような落とし穴があり、また、どのような面で役立っているのかが書かれています。

食品表示は必ずしも表示されているとは限らないことを知っていたでしょうか。例えば、デパ地下で売られているお惣菜には、食品表示が記載されておらず、アレルギー源のみ記されています。これは、食品衛生法によるものです。

また、アイスクリームには適度な摂取は良いが、そのなかでもいいものとそうでない物があります。それは食品表示を見ることによって判断できます。しかし、食品表示を毎回確認しながら購入するのは大変ですよね。そんな時は、できるだけ高価な商品を購入したり、自身でアイスクリームを作ることが打開策となるそうです。

Yさん:田上孝一『はじめての動物倫理学』(集英社新書、2021年)

本書は、CAFOで動物を育てることは、環境にも倫理にも悪いため違った方法で飼育するべきであると説いています。CAFOで飼育することで、有害ガスであるメタンが発生したり、環境廃棄物が出たりするそうです。また、動物に対して残酷なものであるとも伝えていました。

本書を読んだコメントとしてYさんは、動物の福祉に配慮した飼育がなされるべきであり、そのような環境が必要であると述べていました。更に、動物の立場になり飼育していくべきと説いていました。

Kさん:原田隆之『入門 犯罪心理学』(ちくま新書、2015年)

本書は、心理学者の視点から見た犯罪はどのようなものかついて記されている。

発表では、著者が「バカじゃないの殺人」と呼ぶ事例が紹介されました。これは「バカじゃないの」と聞き間違ったことで殺人が起きてしまったというなんとも理不尽な事件です。著者はこの事例について、「もともと凶悪な性格を持っていたのではないか」「外部による影響」「育ってきた環境」など様々な観点から加害者の心理を読み解いていました。

Kさんは以前にも犯罪を違った観点から分析したものを紹介していたため、今回の報告を聞いて更に犯罪学の面白さを感じる一冊であったと思いました。

Wさん:山崎元『エコノミック恋愛術』(ちくま新書、2008年)

本書は、恋愛に沿って経済学を記している一冊です。

恋愛と経済は似た者同士である。情報を集め、戦略を練り、判断をする。この点から、恋愛と経済学は類似性があることがわかる。本書は、浮気をゲーム理論の観点から検証したりなど、恋愛にまつわる問題を経済学から解説をするものです。

恋愛は、誰もが経験する分野であり、決まりきった答えがないことが特徴と言えるかもしれません。経済好きの恋愛下手に優しい一冊になっていると思います。手に取って読むべき新書です。

長野出身のNさんから
みんなにお土産を頂きました!
Nさん:伊藤誠二『痛覚のふしぎ』(講談社ブルーバックス、2017年)

本書は、痛みが人間にとってどんな事態となっているのかが記されている一冊です。

人間はどこかにぶつけたりした際、体の一部で痛みを感じます。では、なぜ痛みは発生するのでしょうか。これには、体に異常が出ていることを本人に気づかせる役割があるのです。これ以上悪化しないように、体がブレーキをかけていると表現してもいいかもしれません。

また、痛みは心身と関連性があるそうです。これは、自身の感情がどのような状態にあるかによって感じる痛みが違うということです。

痛みに弱い人は、痛みの在り方・構造を理解することで違った自分に出会えるのではないでしょうか。

さて、次回はA班初めての対面での発表となります。オンラインでの発表とは違った感覚であると思いますが、学びを深めながら楽しく行っていきましょう。

2021年6月23日水曜日

2021年度前期第10回:新書報告5

こんにちは。新ゼミ生4年のMです。前回、前々回は新書報告をお休みしてのグループワークでした。オンライン上での活動が続いていたため、グループワークはゼミ内の交流を深める良い機会になったと感じます。今回からはまた新書報告に戻ります。それではAグループの発表を見ていきましょう。

Oさん:清水真木『友情を疑う 親しさという牢獄』(中公新書、2005年)

タイトルに驚きを感じた本書ですが、哲学者たちによる提言を交えて「友人との理想的な対人関係」について書かれている一冊です。同じ価値観を持つ人と出会うことは難しく、友情に懐疑の目を向ける必要があるということがわかりました。

生涯を終えるまでに数えきれない人との出会いが生まれる一方で、自分なりの友情の定義に当てはまる人とどのくらい出会うのかと考えると、ワクワクかつ不安に感じられます。アリストテレスの言葉にあった「人間らしい」とはこのことではないでしょうか。アリストテレス以外の哲学者の提言も知り、共感できる部分、できない部分を探していくのも面白いと思います。友情とは何かを考える一助となるはずです。

Tさん:竹田青嗣『ニーチェ入門』(ちくま新書、1994年)

本書は、現代に繋がる「生」「道徳」について書かれています。キリスト教には自分のためではなく人のためという考えがありますが、ニーチェによるとこれはきれいごとであり、自然に反しているそうです。つまり、「いかに生きるか」を自分自身で選択する必要があります。

マジョリティに属し、周りに流される現代人は多いと思います。このような社会であるからこそ、周りの考えを取り入れつつも、自分が大切にしたいことを疎かにしないことが吉ではないでしょうか。

初心者には難しい本書ですが、何度も読み込み、自分の現状と照らし合わせられた時に面白さを感じられると思います。

Rさん:四方田犬彦『「かわいい」論』(ちくま新書、2006年)

様々な対象に向けて「かわいい」という言葉が使われていますが、「かわいい」が持つ意味や捉え方について考えさせられる一冊です。

大学生への調査によると「かわいい」は勇気がでる言葉、または下に見られている言葉とされ、性別により捉え方が異なります。由来は「うつくし」であり、昔は対象が小さいものだったそうです。また、海外では偉大なものに対して使われ、表記は「KAWAII」となっています。つまり、「かわいい」は万能な言葉である一方で、完璧な言葉ではないのです。

現代では「エモい」という言葉が流行していますが、状況に当てはまる最適な言葉がないからこそ、使われやすいのだとわかりました。他にも、万能な言葉がないか探してみると面白いかもしれません。

Iさん:南野忠晴『シアワセなお金の使い方 新しい家庭科勉強2』(岩波ジュニア新書、2015年)

自分だけでなく、周りの人も幸せになるようなお金の使い方とはどのようなものでしょうか。本書は、社会をつくる一員としてのお金の使い方について書かれています。

Iさんはお金の使い方を説明する際、食品を例にとり説明してくれました。加工食品は安くて簡単なことから手に取りやすいですが、添加物が含まれていることもあります。フェアトレード商品を購入し、消費者と生産者のwinwinな関係を築くことで、未来のあり方が変化すると言えます。

お金を上手に使えるようになるためには、自分なりの考え方を持つことが必要になります。送料無料や1つ無料、まとめ買いという謳い文句に流されるのではなく、本当に必要なものを購入するのです。無駄をなくすことが、社会と地球環境の豊かさへと響くと考えさせられました。

今回取り上げられた4冊には、「利己と利他」というテーマが共通する部分がありました。新書報告という形で読書体験を共有するからこそ、発見できることではないでしょうか。また、報告者と質問者の2人の間でとどまることなく、ゼミメンバー全員で意見交換をすることができました。初回と比べて、積極的な参加が実感できます。

さて、次回からは久しぶりの対面授業となります。対面での新書報告は初めてとなりますが、オンライン同様、多種多様な考えを知る場にできるようにしていきましょう。


2021年6月16日水曜日

2021年度前期第9回:グループワーク「ポピュラーミュージックの歌詞を鑑賞する」

 こんにちは。ゼミ生2年のZです。第9回のゼミは、いつもの新書報告ではなく、歌詞の解釈を行いました。曲は、大瀧詠一「君は天然色」です。テレビのCMなどに使われるなどポピュラーな楽曲です。

「君は天然色」が収録されている
アルバムジャケット
最初に、アイスブレイクとして事前にゼミのSlack上にゼミ生が各自で上げていたプレイリストについて少人数のグループで雑談しました。その後に本題である歌詞の解釈に移ります。解釈ではまず、部分的な解釈から始めました。歌詞の登場人物や場面がどのようなものであるかといったあらかじめ問われていた課題を歌詞の描写から解釈します。部分的な解釈というプロセスを重ねて、徐々にストーリー全体の考察を行いました。

歌詞のストーリーについては複数の解釈が出ました。「若い男性が別れた恋人(女性)を思い、また会いたいと願う歌」、「亡くなった恋人(女性)がいる男性が恋人の思い出を懐かしんでいる歌」、「家族や友達など恋人ではない大事な人の思い出を語る歌」などです。

相澤先生が紹介した作詞家である松本隆さんのインタビュー記事によれば、実際の歌詞は「君は天然色」のが亡くなった妹について書かれたものとのことでした。比較的近い解釈が出た点について、相澤先生も鋭いと話されていました。

ストーリーを考察する過程で少人数のグループになって話し合いましたが、同じ歌詞を読んでも解釈の内容は人によって異なっていることが印象的でした。例えば、歌詞の場面はいつか(春夏秋冬、朝昼夜など)について話し合った時、私は歌詞全体の印象から昼ではないかと考えましたが、他のゼミ生は自分と違い、夜だという解釈を提示しました。このことに自分は歌詞の感じ方が人によってどれほど異なるかを痛感しました。解釈の違いは少人数での話し合いだけではなく、グループごとによるゼミ全体の発表でも同様でした。

自分は多人数での歌詞の解釈は初めて行いましたが、歌詞の解釈がとても多様性に富んでいるという点はとても興味深く感じました。今回のゼミでの体験は自分にとって貴重な経験であり、また機会があればやってみたいと感じました。

次回のゼミはこれまで通りの新書報告です。充実したゼミ活動にしましょう。

2021年6月9日水曜日

2021年度前期第8回:グループワーク「作品を鑑賞するとはどういうことか」

 こんにちは。ゼミ生2年のYです。最近、ぐっと暑くなってきましたね。ブログを書いている現在の私の部屋の気温は32℃です。暑すぎます。これからもっと気温が上がっていきますから、皆さんも水分をこまめに補給して、体調に気をつけて生活していきましょう!

さて、第8回目のゼミは、グループワークを行いました。グループワークのテーマは「作品を鑑賞するとはどういうことか」です。授業前に各自で次のネット記事を読み、課題に取り組んでから授業に臨みました。先生から指示された課題記事はこちらです。稲田豊史「「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来」

今回のブログでは、このグループワークの中でどのようなことを話し合ったのか、そしてどのような意見が出てきたのかを紹介していきます。

最初に、記事から読み取れる「作品鑑賞とはどのようなものか」をゼミ生と確認しました。近年、「再生速度調整機能」や「10秒飛ばし、10秒戻し」が導入されている動画配信サービスが増えています。この記事は、この機能の登場によって、作品鑑賞の在り方が「作品を倍速にして観ること。また、自分の気になる展開のみを観て、その瞬間の娯楽を楽しむこと」になったと指摘しています。広辞苑によると、鑑賞とは「芸術作品を理解し、味わうこと」と定義されています。この定義を踏まえると、現代の鑑賞に対する考え方が本来のものから大きく変化していることが分かります。

次に、「なぜそのような仕方で作品鑑賞されるのか」を確認しました。記事では端的に「まだるっこしいから」と書かれていました。年代問わず、このように思ったことがある人は多いと思います。このように考えられるようになった背景が3点紹介されていたので一つずつ見ていきましょう。

わざわざ出かけて作品を鑑賞することは、
とてもコスパが「悪い」かもしれません。
しかし、映画館にしろ美術館にしろ劇場にしろ
行ったからこそ体験できることがあります。
コロナ禍が落ち着いたら、ゼミ生と出かけて
作品を鑑賞する機会を作りたいと思います。
写真は熱海のMOA美術館。このロケーション!

①映像作品の供給過多:現在では、多くの映像作品を、安い価格で視聴できるようになりました。しかし、あまりにも観られる作品が多いため、膨大な量の映像作品を視聴するのにはいくら時間があっても足りないのが現状です。そのため、少ない時間で作品を鑑賞できることが求められていると考えられます。

②「コスパ」を求めるようになった:作品を「速く」「効率的に」観たいという「時間的コスパ」を追求する人が増えています。また、最近の若い人は、短時間で何かのエキスパートになりたいと考える傾向にあるそうです。とにかく無駄を省き、回り道をしたくないと感じている人が多いと記事は論じています。

③すべてをセリフで説明する作品が増えた:これは、自分の状況や描写をセリフで丁寧に説明する映像作品が増えている事態を表しています。登場人物の表情や風景から読み取れるものをセリフにしてわかりやすくすることで、セリフのないシーンを飛ばしてもよいという発想が生まれるのだと著者は考察しています。

このような背景が挙げられていましたが、皆さんはどう思いますか?私は特に、①と②に共感しました。限られた時間の中で自分の気になる映像作品を観ようとすると、どうしても時間が足りません。また、一度映像を観始めると続きが気になるので、早く物語の展開を知りたいという気持ちに駆られます。そのため、倍速機能を使って映像作品を観ることが増えたのだと私も思いました。③は、言われてみると確かにそうかもしれないと感じました。私自身、映像を観ていなくてもセリフを聞いていれば登場人物の感情や場面が分かる作品を多く観ていることに気がつきました。

そして、3つ目の背景を説明した「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきている」という文章に注目したゼミ生がいました。そこから「謎は謎のままでよいのか」、「謎を楽しむとはどのようなことなのか」が議論となり、盛り上がったので紹介します。

「歌詞は抽象的なものが多く、歌詞の意味の受け取り方は人それぞれで正解がない。ここにも、謎であるからこその面白さがあるのではないか。」

「ドラマなどの最後に、その後がどうなっているかわからない状態で終わることがある。

その先は視聴者一人一人の想像に任せるような謎を残すことで、ストーリーに幅を持たせている。だからこそ、謎があったほうが面白いのではないか。」

「芸術作品は、説明されすぎていない、わからないからこその美しさがあるのではないか。作者は、何かに影響を受けて作品を作ると思うが、それがすべて説明されて理解できてしまえば、美しさはなくなってしまうだろう。」

といった意見が挙げられました。ディスカッションを通じて、これらの意見には「解釈の余地を残す」という共通点があることに気がつきました。確かに、わからないことを想像して自分なりの展開を作るのは楽しいですよね。「謎」について色々な意見を聞くことで、新たな発見になりました。それぞれが自分なりの考察を深めることのできた、とても有意義な議論となりました。

最後に、「自分自身にとって作品を楽しむ・鑑賞するとはどういうことか」を共有しました。これも、人によって全然違う考え方をしていて、自分にはなかった発想を知ることができました。

私にとって鑑賞とは「何度も作品を観返し、自分なりの考察を深めるもの」です。繰り返し味わうことで、一度鑑賞しただけでは理解できなかった表現の意味や感情の変化などをより深く読み取ることができます。また、作品に触れた年齢や自分の置かれている状況によって、同じ作品を鑑賞したとしても全然違う印象を受けることもあります。作品を通して自分と真剣に向き合うことができるような味わい深い作品に出合えた時は本当に幸せだと感じます。


写真は、彫刻の森美術館の作品。現代美術は
「鑑賞」しがいがあります。(相澤)
他のゼミ生からは、「作品の物語のみを楽しむこと」、「間の取り方のような構成を楽しむこと」、「作品を飛ばしながら見ることも楽しみのひとつだ」という意見も出ました。また、「映画館や美術館のような鑑賞するための場所に行くこと」、「意見を共有して新たな価値観に触れること」、「歴史的背景を知ること」など、作品から読み取ること以外からも鑑賞の楽しみを見出している人がいて、とても興味深かったです。ブログを読んでくださった皆さんは「鑑賞」をどのように楽しんでいますか?この記事が考えるきっかけになったら嬉しいです。

今回は、初めてゼミでグループワークを行いました。新書報告だけでは話すことのできなかったゼミ生と交流し、人柄や性格を知ることができ、非常に楽しい時間になりました。残念ながら、緊急事態宣言によりZoomでの授業となりましたが、機会があれば、今度は対面授業でグループワークをやりたいです!

来週のゼミも新書報告はお休みで「歌詞の解釈」をする予定です。どんな歌詞を扱うのかはまだ知らされていないので今からとても楽しみです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、来週の相澤ゼミのブログでお目にかかりましょう。以上、Yでした。



2021年6月2日水曜日

2021年度前期第7回:新書報告4

こんにちは。新ゼミ生の3年のOです。今回のゼミは、オンラインでの新書報告や質疑応答にもだんだん慣れてきて、前回よりも議論が活発になったように思います。それでは新書報告へ参りましょう。

Yさん:蟹江憲史『SDGs(持続可能な開発目標)』(中公新書、2020年)

最近話題になっているSDGsについて、Yさんが本書を用いて詳しく教えてくれました。本書では、SDGsの目的と取り組みが丁寧に書かれているそうです。2030年までに持続可能な世界を作るため、経済、社会、環境の3つの観点から取り組むべき17の項目が取り上げられています。Yさんが最も印象に残った項目は12番目の「つくる責任、つかう責任」だそうです。先述の3つの観点全てが関わっているからだそうです。私たち学生にとっても、就職する際にSDGsに取り組んでいるかどうかを選ぶことは、将来自分がより良い世界で生活するために重要だと思いました。

Kさん:福島章『犯罪精神医学入門 人はなぜ人を殺せるのか』(中公新書、2005年)

もし私が本棚からこれを見つけたら、タイトルの強烈さに思わず手を引っ込めてしまうだろう一冊です。本書では、2001年に起きた大阪教育大学付属池田小学校事件を中心に、残虐な罪を犯してしまう人について考察しています。幼少期からの虐待経験や、本人の過激な性格、不安定な精神状態が重なり合うと、エネルギーを爆発させ凶悪殺人事件を起こしてしまうとされています。これは2005年と少し古めの本ですが、人を殺してしまう人の根本的な特徴は今も変わらないそうです。そのような人は見た目では判断しにくいため、私たちは他の人との接し方に気を配りながら生活するべきだと思いました。

Wさん:益田安良『金融開国 グローバルマネーを手なずけろ』(平凡社新書、2000年)

金融について主体的に勉強しているWさんからの報告です。本書では、社会のグローバル化に伴う金融開国(日本の金融機関の国際化)について書かれています。私たちが日常的に利用している銀行の間では、かつて内部競争が起こっていたこと、変動相場制によりその競争が国際市場へ広がったこと、さらに現在では地方銀行の合併が行われているという流れをつかむことができました。Wさんによれば、経済を勉強することのメリットは、その仕組みが分かることで、実社会でも役に立つ点なのだそうです。私も一読したいと思いました。

Nさん:北村暁夫『イタリア史10講』(岩波新書、2019年)

本書は、古代から戦後までのイタリアの歴史について10個の項目に分類して書かれた本です。Nさんが最も印象に残ったのは19世紀のイタリア統一の歴史で、それまで周りの強国に支配されバラバラだった小国が、一つにまとまった点が面白かったそうです。

イタリアを一言で表すと「地域ごとで異なる文化を持ち、特色も違う国」とNさんは考えていました。偶然にも76年前の6月2日(報告日)がイタリアの建国記念日ということもあり、イタリアに親近感が持てました。

Mさん:梓澤和幸『報道被害』(岩波新書、2007年)

本書において報道被害とは、ある事件や事故について、マスメディアの取材陣が当事者を問い詰めたり、スクープを出そうと躍起になって追い回したりする結果、被害者の人権が侵害されてしまう事態を指します。報告を通して、取材する側だけでなく取材される側にも自由があることを意識することによって、被害を抑えられることが分かりました。SNSの普及により、現在は情報の受発信が容易です。だからこそ、自分の力で知り得た生の情報をもって物事を判断することが重要だとMさんの報告から教えられました。

今回で新書報告はA、Bグループとも2周しました。新書報告後の質疑応答の中では、一つの問いについてみんなが意見を出し合い、議論に発展する場面が増えてきたように思います。自分が質問するだけでなく、他の人の質問を聴くことでも、自分とは異なる着眼点を知ることができるため、毎回とても楽しいです。

次回は、新書報告を一回お休みし、グループワークを行います。どんな内容なのか今から楽しみです。

2021年5月26日水曜日

2021年度前期第6回:新書報告3

こんにちは、現代法学部2年新ゼミ生のSです。緊急事態宣言の延長が決定しオンライン授業も約1ヶ月延長が決まりました。慣れない時間がまだ続きそうですね。今回のゼミは、第3回新書報告でした。今回はAグループの発表となり、ゼミ生の皆さんはすでにオンラインでの授業に適応しているという印象でした。

Oさん:金菱清『震災学入門-死生観からの社会構成』(ちくま新書、2016年)

この本は10年目に起きた東日本大震災の被害者視点に立ち、災害後についてつづられています。災害時には国が様々な政策を試み、導入しました。これは政府が被災者たちを「助けたい」という行動に見え、客観的には正しい行動に見えます。しかし、そのような政策は外部からの押し付けのように感じるという被害者の視点が紹介されています。

Oさんは、中でも、心のケアについて論じた部分を面白いと感じたそうです。ここでの心のケアとは、記憶・痛み温存法というものだそうです。これは自分の幸せな記憶やその他の記憶を紙媒体などに書き起こし、脳とは別の記憶媒体に保存します。これにより記憶との対話を行い、気持ちを落ち着かせるという方法だそうです。このケアを知り、Oさんは何事も人とって書き起こすという作業は重要な意味を持っていると感じたそうです。

Iさん:長谷川宏『幸福とは何か』(中公新書、2018年)

この本は時代を古代ギリシャ・ローマ、西洋近代、20世紀に分け、各時代を代表する哲学者の幸福論をまとめたものです。

古代ギリシャからアリストテレスが代表として挙げられています。アリストテレスは、幸福を最高善と捉え、人生の最高的理想と考えていたそうです。アリストテレスの幸福論は現代にも大きな影響を与えていますが、私はエリート主義の幸福論という印象が強いと思いました。

西洋近代からはアダム・スミスの思想が紹介されています。アダム・スミスは、様々な人と行動を共にし、平穏無事な生活が幸福と考えているそうです。平穏無事とは、最低限のお金、生活、友人があればいいとう考えです。これは、紹介された幸福論の中で、私が一番賛同できる幸福論だなと感じました。

20世紀を代表する哲学者としてアランが挙げられていました。アランは、経済の成長は人の幸せに直結しないと唱えていたそうです。幸福は人からもらえず、自分で作るしかないと主張していたそうです。

この本では他にも多くの哲学者の幸福論があげられているそうです。Iさんは各哲学者の幸福論には当時の様々な時代背景も影響されていて、そこも踏まえながら読むとおもしろく読めると言っていました。

Zさん:『物語 東ドイツの歴史 分断国家の挑戦と挫折』(中公新書、2020年)

この本は、東ドイツ誕生から東西統合までの40年の歴史をつづっています。

東ドイツはソ連に支配されていたため、ソ連の影響をとても受けていたようです。冷戦の影響も強く受けていました。そのころ、西ドイツと東ドイツは比較されることが多く、東は荒廃し西よりも貧困していたと言います。西の方は経済・教育環境がよく、東から西への脱出者が続出したため、ベルリンの壁が建てられたという経緯がありました。その後、ソ連が資金不足に陥り、東ドイツとの関係が薄くったことで、西ドイツとの関係が密接になり始めたそうです。その結果、東と西の違いをなくそうという考えが、東西統合を果たしました。

ドイツの歴史で、失敗と言われるようなことが多いイメージで、知識を持っていいない人でもわかりやすくドイツについてまとめられているそうです。

Gさん:小西雅子『地球温暖化の最前線』(岩波ジュニア新書、2009年)

この本は、2009年当時の温暖化の要因と考えられるものがつづられています。京都議定書に関してもつづられているそうで、とても分かりやすくまとめられており、中学生にこれを読ませて学習させた方がいいとSさんは感じたそうです。

日本は過去に温暖化対策として様々な対策を提案していたそうです。その中で、Sさんが興味深かったものとして、「環境税」というものがあったそうです。環境税の一部として、「炭素税」というものがあり、CO₂の排出量に伴い税をかけるというものだそうです。しかし、産業界などから大反対を受け、断念となったそうです。しかし、この「環境税」はもし導入したらどうなっていたかは気になります。

近年「炭素税」を導入しようという動きがあるというニュースもありますが、まだ産業界からの反論に対して優勢に立てているわけではないので、今後の動きが気になります。

私の感想として、地球温暖化について、現在でなく過去について、どのような対策があったのかが気になる人は読むと為になる本だと思いました。

Bさん:湯浅景元『自立できる体をつくる』(平凡者新書、2019年)

「人生の後半、老後に老いないからだをつくるには?」というのがテーマの本だそうです。ここで言われる自立できる体とは、日常生活を自分で行えるという意味です。

人が一番老いを感じるのは、見た目など外から認識できるものに集中するというのがゼミ内で多数の意見として出ていたが、著者は体の内部に着目すべしと主張しています。身体が衰えてからではすでに遅いので、その前に対策をするべしとしています。日々、ウォーキングやストレッチを行うなどと、将来のために今から若さを追及することが大切だそうです。

40・50代までは体力をつけることが出来るそうで、まだまだ誰でも間に合います。私自身、コロナ禍で運動することが減っているので、エレベーターではなく階段を歩くなどと、日常生活の中でもふとした時にトレーニングになることを探し、行っていきたいと思いました。

Rさん:岡田暁生『音楽の危機』(中公新書、2020年)

現在、流行している新型コロナウイルスにより、音楽の価値やあり方が変化しているということが論じられています。

コロナ禍においてブスクリプションを解禁するアーティストが増え、ライブもオンラインで開催され始めました。著者は、サブスクリプションやCD、オンラインライブは、「空白」であるとし、コンサートとは全くの別物と述べているそうです。

著者は、コンサートやオーケストラは空気を共有すること、聞こえないものを会場のみんなで共有できるという点を高く評価しています。そのため、コロナ禍でコンサートやオーケストラが開催できないことが「音楽の危機」だそうです。人は音楽に癒され、救われることがあります。音楽は生命維持という役割ではないけど、心を豊かにする方法としてとても大切です。それゆえ、コンサートやオーケストラという音楽を一部の人しか聞くことが出来ないことは「音楽の危機」だと言えます。

私はサブスクリプションやCDが「空白」というのは賛同しかねますが、このコロナ禍が収まるまでライブができないことは、著者の言う「音楽」を聴くことが好きな人にとって、甚大な危機であると納得しました。


今回の新書発表では、一人の発表に対して、時間の関係で打ち止めになるほど多くの人が意見を言えていて、充実したゼミになったと感じました。発表の内容は、だれもが一度は考えたことがあるような興味をそそられる本が多かったです。ぜひ皆さんも一度読んでみてはいかがでしょうか。


2021年5月19日水曜日

2021年度前期第5回:新書報告2

 はじめまして。ゼミ生の3年のRです。第4回目授業も前回に引き続き、Zoomを使ったオンライン授業で新書報告を行いました。今回はB班の発表でした。

Mさん 堀田秀吾『なぜ、あの人の頼みは聞いてしまうのか?――仕事に使える言語学』(ちくま新書、2014年)

 日頃の言葉の言い回しが人を動かす言葉になっていくことが書かれています。Kさんの発表で印象に残ったのが、ジョークやお笑いはわざと伝える量を少なくすることによって笑いが生まれる点です。なんとなく見ていたお笑いもこのようなテクニックが使われていたことに驚きました。これらの知識を得ることによって、広告やキャッチコピーなどを見るのも楽しくなりそうです。

毎回、報告本に関連する書籍も
紹介しています。『女のからだ』
に関連して、日本のピル受容に関
する私の論文が収録されている『性』
(ナカニシヤ出版、2016年)紹介
しました。(相澤)
Kさん 荻野美穂『女のからだ フェミニズム以後』(岩波書店、2014年)

 この著者は人文学の博士であり、フェミニズムについて健康面から論じた本です。アメリカのフェミニズムは男性中心から逃れ、女性自身が中絶の決定権を獲得する目標としたのに対し、日本のフェミニズムは戦後の経済的困難による女性の自由を求めたものであるという違いが指摘されていました。また、日本は中絶の合法化は他国と比べて早く、ピルの承認は遅いという特殊な国であるということも知りました。私は、避妊や中絶問題について私たちの年代が積極的に考えなくてはいけないテーマだと改めて思いました。相澤先生が紹介してくださった、セクシャリティをテーマとした論文「ピルと私たち -女性の身体と避妊の倫理―」もあわせて読んでみたいと思います。

Yさん 宮田光雄『メルヘンの知恵―ただの人として生きる』(岩波新書、2004年)

 子供向けの4つの童話を哲学の観点から考え、「人として生きる」にはどうすればいいのか考える本です。Yさんが取り上げたのは「裸の王様」でした。この有名な童話の内容は、現代を生きる私たちの身近に起きていることにもつながると著者は述べていました。童話の中で人々が、「王様は裸だ」とわかっているのに指摘できないように、他者の様子を伺い、合わせ過ぎてしまう経験は誰にでもあると思います。私も人に合わせすぎてしまい、あの時、しっかり相手に伝えておけばよかったなと後から思った経験があります。大人になると難しいことではあると思いますが、人の短所も個性であると受け入れ、言うべきことは言う態度が大切であると感じました。

Tさん 鈴木貞美『日本人の生命観』(中公新書、2008年)

 この本には、各時代における生き方や、命に対する考え方の移り変わりが書かれています。古代は命に対し、排他的であり、排除する考え方でした。それから、仏教が日本に輸入されたことにより、輪廻転生の考え方が一般的になりました。武士の時代になると、「散り際の美徳」という最後の死まで美しく生きることが重要とされてきました。明治時代になると自由や平等といった民主主義が取り入れられ、現代の考え方に移り変わっていったと述べられています。この本は、文学や心理学の視点からも日本人の生命観について書かれているとのことで、一読してみたいと思いました。

 Wさん 箭内 昇『メガバンクの誤算 銀行復活は可能か』(中公新書2002年)

 日本と欧米のメガバンクの間に大きな格差が生じている事態について書かれています。この本の中では、日本と欧米の銀行を飲食店に例えています。日本の銀行は田舎町の和食屋である一方、欧米は、隣町にあるラーメン、洋食などの様々な食べ物を扱う飲食店のようなものだと述べています。田舎町の和食屋を利用していた人も、メニューが豊富である隣町に行ってしまうということです。つまり、日本の今の手法では、アメリカの大銀行に顧客が流れていくことを示唆しています。新型コロナウイルスの流行によって株式の取引が拡大しているため、時代にあった銀行の在り方を目指していく必要があると思いました。

Tさん 三橋順子『女装と日本人』(講談社現代新書、2008年)

 この本は、女装を軸に社会がどのように移り変わっていったのか書かれています。古代から女装をする人は存在していました。古代の人々は女装に対して、普通とは違い、人ではない存在に近いと考えました。そこから神に近い存在だと考えたそうです。古代神話にも女装をする人はいて、神聖なものとして考えられていたそうです。次の課外活動は歌舞伎を見に行くので、関心を深めるために女装という視点から歌舞伎を考えてみたいという意見がありました。

今回で全員が発表を終えることができました。次回も引き続き新書報告です。各自の発表を活かし、より良い討論ができるようにしましょう。


2021年5月16日日曜日

2021年度前期第4回:新書報告1

こんにちは、経営学部3年新ゼミ生のWです。

今回のゼミはいよいよ今年初の新書報告でしたが、緊急事態宣言の延長に伴い、残念ながらオンライン授業となってしまいました。まだゼミが始まって日の浅い中で、オンラインで言葉のキャチボールをするのは難しく感じました。私自身がZOOMでの会話に不慣れだったため、初めはなかなか質問が出来ませんでした。しかし、徐々に質問の量も増えていき、とても充実したゼミになったのではないかと感じています。それでは今回の報告です。

*相澤補足: 本年度はゼミ履修者の人数が増えたため、二つのグループに分けて交代で新書報告を行います。

Oさん:菅原克也『英語と日本語の間』(講談社現代新書、2011年)

日本では、TOEICを筆頭とした英語検定試験の点数のみが注目されています。そこで英語力が培われていないことを危惧した政府が英語教育の政策を出しました。その政策に対して、著者が批判しながら自分の主張を述べる形で、この本は書かれていたそうです。政府は英語の授業は全て英語でやるべきとしました。それに対して著者は、それでは授業自体が成り立たず英語嫌いを助長するとして、英語を日本語に訳すことを中心に授業するべきだと述べていました。たしかに、そもそもの英語力がない学生たちの授業を英語だけで行えば、授業自体のレベルを下げることになり、英語力を伸ばすことにはあまりつながらないと私は感じました。

Iさん:盛岡孝二『就職とは何か-〈まともな働き方〉の条件』(岩波新書、2011年)

この本では、欧米諸国と日本の就職活動の開始時期を基に、日本の就活の特異性やそのことがもたらす影響について書かれていたそうです。大学在学中に就職活動をするのは日本のみであり、それは企業の優秀な人材を早いうちに引き抜きたいという考えから来ているそうです。その結果、本来学生が力を注ぐべき学業を満足に行えず、人材レベルが下がってしまうとのことでした。私は、日本のみが学生のうちに就活を始めるという指摘にとても驚きました。同時に、欧米諸国のように、学生がまずは学業に全身全霊をかけられるようにするのが、就職活動の本来のあるべき形ではないかと考えました。

Gさん:藤田正勝『哲学のヒント』(岩波新書、2013年)

この本では、「生」「私」「死」「実在」「経験」「言葉」「美」「型」の8つのテーマが取り上げられています。そして「死」と「実在」が対比関係であるように、それぞれが前後のテーマと関係のある形で本全体が構成されているそうです。私はこの8つのテーマの中で、言葉で表現する美しさと言葉そのものの美しさの関係について述べられている「言葉」と「美」の箇所に興味を持ちました。哲学初学者でもわかりやすい内容となっているそうなので、それぞれのテーマの前後関係に着目しながら読んでみたいと思います。

Zさん:本川達雄『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』(中公新書、1992年)

この本は、様々な動物のサイズの比較を基に、生物学における時間ついて書かれていたそうです。大きい動物は心臓の動きが遅く、時間の流れがゆっくりで、寿命は長い。小さい動物は心臓の動きが早く、時間の流れが早くて寿命は短い。このように聞くと、大きい動物の方が繁栄力が強いと思ってしまいます。しかし際は、寿命が短い生物は限られた時間の中で子孫を残すため、次の世代に移るのが早いと考えられ、これは進化のスパンが早いと言い換えられます。その結果、進化の度に環境に適応して繁栄力が高くなる、小さい動物の方が繁栄力が強いという内容に感激しました。ぜひ読んでみたい一冊です。

Kさん:阿満利麿『人はなぜ宗教を必要とするのか』(ちくま新書、1999年)

この本は日本と宗教の関係について、江戸時代の「浮世」といった歴史的背景をもとに書かれていたそうです。日本では宗教に重きが置かれていないという前提に立った内容でしたが、江戸時代の五代将軍徳川綱吉は儒教に心酔していたために「生類憐れみの令」や「服忌令」を発令したり、神社仏閣の建設を積極的に行っていたと学習した記憶があります。そしてその建設費用と明暦の大火からの復興費用が重なった結果、貨幣改鋳が行われています。だとすれば、たしかに日本にも宗教による文化はあったのではないかと私は感じました。

Tさん:石井洋二郎『フランス的思考 野生の哲学者たちの系譜』(中公新書、2010年)

この本はサド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトらフランスの思想家6人の思考を読み解いていた本です。結論では、思考すること自体を楽しむよう提案されているそうです。私は発表を聞いて、「利己主義」の考えを貫いたサドが、自身の最期には孤独になっていたという内容にとても興味を惹かれました。自分のことにしか目がいかず、他者のことを顧みない結果が行き着く先は孤独である。これは現代でも同じことが言えそうだと感じました。

次回もオンラインで新書報告を行うことが決まっています。初回よりも積極的に質問が飛び交う、密度の濃いディスカッションができることを楽しみにしています。

2021年4月28日水曜日

2021年度前期 第3回:発表の仕方・聴き方と文章の書き方

ゼミ生のKです。緊急事態宣言発令に伴い東京経済大学も今週の授業からオンライン授業へと切り替わり、今回のゼミはオンライン授業1回目でした。今回の授業では、発表の仕方・聞き方と文章の書き方を学びました。

まず発表の仕方では、相手の立場になって物事を考えることやコミュニュケーションを大切にすること、分かりやすく伝えるコツ六つを先生から教えていただきました。

  1. 大きい声ではっきり話す。
  2. ゆっくり話す。
  3. 難しい言葉は使わない。
  4. 相手を見て話す。
  5. 相手が複数いる時は、みんなに視線を配る。
  6. ジェスチャーも活用しよう。

分かりやすく伝えるコツはどれもあたりまえのことでしたが、どれか一つでも疎かになっていると急に相手に伝わらなくなると感じました。全てを頭に入れて発表するのはすごく難しそうですが、出来るようになれば今後一生使える能力になると思います。これから始まる新書発表でしっかりと技術を磨きながら、プレゼンを行う機会には大切にしたいです。

スライドを共有しつつレクチャー

文章の書き方については、基本的なルールを学んだあと、グループごとに別れて例文の書き直しワークを行いました。書き直したものを見ると、どのグループも最初に学んだ基本的なルールを抑えつつ、グループごとの個性が現れていていました。とても面白かったです。文章に正解はないと思います。しかし、何か伝えたいことがあったり、伝えたい内容が凄く大切な内容であれば、読みやすい文章や続きを読みたくなるような文章でないと相手に伝わらないと思います。文章に関しても今後もっと力を付けていきたいです。

今回のゼミでは今後の新書発表で大切な基礎を学びました。しっかりと活かして今後さらにこの力を伸ばしていきたいです。来週から始まる新書発表が楽しみです。

相澤追記:今日の授業とほぼ同内容の動画をYouTubeで公開しています。

発表の仕方・聴き方 / レポートの書き方(基本編) / レポートの書き方(実践編)


2021年4月21日水曜日

2021年度前期 第2回:新書を探してみよう!

経営学部4年の新ゼミ生のIです。

初めての顔合わせから1週間が経ち、再び気持ちの良い水曜日を迎えました。こじんまりした教室にまだまだ交流が浅いゼミメンバーが居ると思うと、少しだけ緊張してしまいます。しかし、キャンパスに再び賑やかさが戻った風景を見ると、教室に向かう足取りは自然と軽くなりました。

相澤ゼミの真の本拠地かもしれない図書館
集まって早々、相澤ゼミの本拠地6号館407教室を飛び出し、相澤先生を先頭に皆で図書館に向かいました。本を読むことが絶対条件の相澤ゼミにとって、むしろ図書館が本拠地なのかもしれないですね。たくさんの本に出会いましょう!

今回は、図書館のグループ学習室で三つの活動を行いました。始めに、相澤先生から「ゼミで紹介する新書の探し方」を教えていただきました。次に、それを踏まえて、ゼミ生が図書館の新書コーナーへ行って実際に新書を探してみました。最後に、グループ学習室に再集合し、一人ひとり選んだ新書の紹介や選んだ理由を話し合うグループワークを行いました。

さらりと「新書の探し方」と書きましたが、早速学ぶことが沢山ありました。本には学術的な意味で『格』があり、その格が学術的な質を担保してくれるのだそうです。ゼミでは一定の水準をクリアしたものを紹介する為、この格を意識する必要があるのです。そこで、本を選ぶときには①出版社➁著者に注目すると良いことを教えてくださったのですが、出版社ごとに扱う本の強みや特徴があるらしいのです。沢山の本を常日頃読まれる相澤先生が、違いがわからない私達ゼミ生にわかりやすく説明してくださいました。また、これまで本の後ろにある著者のプロフィールを確認したことが無かったのですが、学術的な知見を得るには本のテーマと著者の専門と一致しているかを確認する作業が大切なことを教えていただきました。

図書館一階のブックウォールで
相澤先生が選書した「フーコー特集」を開催中です。
少し賢くなったゼミ生は得た知識をもとに新書コーナーへ行き、新書を三冊ピックアップしました。初めての新書選び、意外と難しくてなかなか選ぶのに時間がかかるゼミ生がたくさんいました!その後、グループに分かれて選んだ新書とその理由を紹介し合いました。「人の話を聞いたら必ず質問をする」という、話をする人と話を聞く人の間に存在する気持ちの良いルールを守りました。質問を重ねながら一人ひとりが選んだ本やその理由を知ると、不思議とその人の好みや性格がなんとなく見えてきました!まるで一味違った自己紹介のようで、ゼミ生一人ひとりの理解を深めることができ非常に面白かったです。

2回目の集まりでしたが、前回よりも会話が弾み明るい雰囲気になってきたと感じました。これからのゼミ活動がますます楽しみです。

2021年4月14日水曜日

2021年度前期 第1回:オリエンテーション

  経済学部4年のゼミ生Tです。ついに、2021年度の相澤ゼミが始まりました!新型コロナウイルスは収束しておりませんが、対面で初回授業が行われ、顔合わせができました。

距離を取りつつ、
連絡先を交換中。
 私は2年生の時に、相澤ゼミに所属していたのですが、1年空いてからの相澤ゼミはガラリと変わっていました。1番の違いは、人数です。なんと今年度はゼミ生が14人で、先生を含めて15人で活動していく形になります。大変な面もあるかと思いますが、賑やかになりそうで楽しみです。

 初回の授業はオリエンテーションで、今後の授業の進め方などを相澤先生からきいたあと、3人程のグループに分かれて、ゼミ生同士で自己紹介交流を行いました。

 今年度のゼミはこれまでとは違い、人数が多いので、AとBの2つのグループに7人ずつで分けて授業を進めていくこととなりました。メイン活動である新書報告は、毎週全員が新書を読むことに変わりないのですが、発表グループと書き込みグループに分かれます。Aグループが発表の際は、Bグループはスレッドに書き込む。反対に、Bグループが発表の際は、Aグループがスレッドに書き込むという形で進めていきます。また、課外活動なども、これからあるようなので積極的に参加できたらと思います。

 自己紹介交流は、一人に対して、一人1つ質問をしていく形で行われました。質問をすることは、相手の話を聞いていることと、相手に興味があることを示す重要な行動であるということを相澤先生がおっしゃっていました。私もその通りだと思いました。人と関わる上で、ポジティブなアクションは、とても大切になると思います。話を聞いてくれる人の話を聞きたいし、知ろうとしてくれる人を知りたいのは当然のことかと思うので、まずは自分から質問をしたり声をかけたりして自発的に動けたらとても良いと思いました。

 自己紹介の内容は基本的な情報のほかに「好きなこと」や「新書報告で読みたい本」、「ゼミでどんなことがしたいか」などでした。クラシック音楽が好きなゼミ生や、食べることが好きなゼミ生、走ることが好きなゼミ生など色んな人がいました。全員とは話すことはできませんでしたが、交流を深めることができました。それでも、まだまだお互いを知らないと思うのでゼミ活動を通して知っていきたいと思います。

 最後に、今年度も全員が無事にゼミ活動を終えられるように祈っておきます!

2021年1月27日水曜日

相澤ゼミの紹介

 担当教員の相澤です。

2020年度のゼミ生と私で、ゼミを紹介する文章を書きました(私の文章は、『父母の会ニュース』に掲載されたもの)。ゼミ生は一年間の実体験を踏まえて書いています。ゼミ選びの参考にしていただければ幸いです。

担当教員 相澤

相澤ゼミでは、「読書の仕方を学び、あなたの自己表現能力を高めよう」をモットーに、ゼミ活動を行なっています。

ゼミの主たる活動は「新書報告」です。ゼミ生は全員毎週新書を一冊読み、ゼミで3分間発表します。発表テーマは、その本から学んだ点、面白いと思った点など何らかの意味で他のゼミ生とシェアしたいことを選ぶよう伝えています。他のゼミ生は、発表を聞いて質問をし、全員でディスカッションを行います。この作業を繰り返すことによって、読解力、内容をまとめる力、人前で話す力、質疑応答する力を鍛えます。新書報告を一年間繰り返し、読書による知識のインプットと発表・ディスカッションによるアウトプットを習慣づけます。

毎週一冊本を読まねばならないと聞くと、ゼミ生は本好きばかりとも思われるかもしれません。しかし、実は根っからの本好きは少数派。「本を読んだ方がよいとわかってはいるけれど、自分では読めない」という理由で、このゼミを選んでくれる学生が多くを占めます。

本を読む習慣のない学生は、最初は苦労するようです。しかし、発表やディスカッションを通して自分の読書経験が深まることを実感し、読書の面白さや意義を自然と理解していきます。

楽しく読書するためには、いろいろな事柄に興味を持つことが重要です。そのために、本ゼミでは、芸術文化に触れる課外学習の機会も多く設けています。今年度は、美術館で展覧会を鑑賞したり、クラシックコンサートに出かけたりしました。本を通じてだけでなく、様々な形で経験値を増やすこともゼミの目標です。

ゼミ生には、学生時代に自分の興味関心や知識を広げる経験をたくさんしてもらいたいと思っています。というのも、自分の中に表現材料を蓄積することによって、人生がより充実したものになると考えるからです。読書は自分の内面を豊かにするための最たる手段です。本ゼミの活動を通して、人生の楽しみ方のバリエーションを増やしてほしいと願っています。

経済学部2年 Yさん

相澤ゼミでは、愉快な仲間たちとともに、日々意見を交わしあっています。主な活動内容としては、本の発表や、グループディスカッションです。また、なんと劇場や演劇などの課外活動は学校の負担で見れてしまいます。のんびり本好きなあなたも、アウトドア派のあなたも、このゼミの一員になりませんか。

経済学部4年 Tさん

本ゼミのアピールポイントは自分の考えを言語化する力を伸ばせることだと思います。本ゼミでは、毎週の新書報告、グループディスカッション、課外活動で構成されています。新書報告は、新書を通読、要約、併せて自身の考えを報告します。全てを要約するのは難しいものの、情報を取捨選択しながら考えを咀嚼することが必須です。グループディスカッションにはゴールがありません。その答えのない問いに対して、グループの意見も踏まえて自分の意見を考えます。実際にディスカッションを通して、それもありだなと感じることは多々ありました。私の場合、課外活動は新しい体験が大半を占めました。新しい知見が自身の考えの裏付けにもなり得ると思います。上記の活動を踏まえ、自分の考えを言語化する力を伸ばせたと実感しています。

経営学部2年 Aさん

新書を週一冊読んで報告する活動は、読書の習慣と他者の報告に質問する力がつきます。みんなの前で話すことで読んで得た知識が記憶に残り、質問と応答により報告では手の届かなかったところにまで話が広がっていきます。そういう活動はとてもおもしろく、楽しいです。

経営学部3年 Iさん

本を読むのが苦手なそこのあなた!一緒に本の楽しさを体感してみませんか。こんにちは。相澤ゼミです。このゼミでは自己表現能力(書く力・話す力)を高めることを目指し、グループワークを通し読書の仕方を学びます。本が苦手な方は読むのが億劫かもしれませんが、そのうち楽しさに気づくはずです!また、定期的に芸術鑑賞会が開かれるかもしれません。一緒に芸術の扉を開いてみませんか!

経営学部3年 Nさん

相澤ゼミでは新書報告という活動を通し、新書を読んでゼミ生同士の意見交換を行っています。読書・発表共に最初は大変かもしれませんが、慣れると楽しいです。また、活動を通じて読解力や表現力が鍛えられます。

経営学部4年 Sさん

私は相澤ゼミに所属したことで本を読むことの楽しさと伝える力を学びました。ただ本を読むだけでなくゼミ生にプレゼンすることによって自分の中にその本がしっかり記憶されることに気づくことが出来ました。学びという部分で新たな一面を発見できるような楽しいゼミだと思います。

現代法学部4年 Mさん

学生の中に読書が苦手な人、上手な文章が書けない人、人前での発表で緊張してしまう人は多いと思います。それらを克服できる環境が相澤ゼミにはあります。毎週行われる新書報告や課外活動による異文化交流など、新しい自分に出会えるチャンスが待っています。読書を通じて、自分の宝を見つけましょう。

2021年1月13日水曜日

2020年度後期 第14回:個別面談

 担当教員の相澤です。

毎学期、ゼミの最終回は個別面談を行います。ゼミで学んだこと、成長できたことを確認しつつ、次の目標を立てる機会にしています。今回も、事前にふりかえりシートを記入してもらい、それを見ながら全員とお話ししました。

ゼミ活動を通じて一年お付き合いすると、私も各学生の特徴が見えてきます。面談では、私の見つけた各学生の長所を伝えています。自分の特徴を知って、今後に役立ててほしいという期待を込めています。

2020年度の総合教育演習はこれで終了ですが、学生生活、そして人生は続きます。ゼミでの経験を活かして、楽しく学び続けてくれることを心から願っています。

2021年1月6日水曜日

2020年度後期 第13回:哲学書を読む

担当教員の相澤です。2021年のゼミ初めは、「哲学書を読む」 というテーマで実施しました。私の専門はフランス哲学です。ゼミでは専門の話をすることはありませんが、ゼミ生にぜひ、哲学書を読む体験をしてほしく、このテーマを設定しました。

第12回ゼミ時に、読みやすい哲学書のリストを渡し、冬休みの間に自分の気になった本を読み準備を進めてもらいました。ゼミでは、自分の気になった一節と自分の感想と考えを紹介してもらい、皆でディスカッションしました。

以下は、ゼミ生による哲学書のテキスト紹介です。なお、引用の出典を示すにあたり、電子書籍にはページ数が存在しないことがわかりました。そのため、電子書籍で読んだ場合には出典を省略しています。

Nさん:ヴォルテール『寛容論』(斉藤悦則訳、古典新訳文庫、2012)

「宗教は、この世、およびあの世で、われわれを幸せにするためにできたものである。あの世で幸せになるために、何が必要か。それは、正しくあることである。では、この世で、われわれの貧しい本性でも望みうるかぎりにおいて幸せであるために、何が必要か。それは、寛容であることである。」(電子書籍)

思想の違う相手と真に理解し合うのは難しいが、だからといって相手を攻撃して良いわけではない。重要なのは、自身とは違う考えがあっても良いといする寛容さなのだと感じた。

また、読む前は 寛容=相手を理解する というイメージがあったが、必ずしも理解する必要はないという点に共感を覚えた。コロナ等へ過剰なまでに反応してしまう昨今の世の中にこそ、こうした寛容さが必要なのではないかと感じた。


Sさん:プラトン『饗宴』(久保勉訳、岩波文庫、2012)

「愛とは善きものの永久の所有へ向けられたものということになりますね。」(電子書籍)

愛とは手に入れようとする欲望である。自分が良いと思ったものを手元に置いておきたいというエゴイズムな感じだと知りました。この本では愛の神であるエロースについてソクラテスを含む7人で語り合うというのが趣旨です。エロースを語る上で大切なのが愛です。そして愛は美しいものという前提で人間は美しいものを求めることで神に近づこうとしていると主張しています。私が読みながら考えたのは現代の恋愛にも通じることです。本文の中で愛は永遠に続くという旨の文があります。それは恋愛をして子を成していくというサイクルが続いていくということです。

 最後にこの本を通じて恋愛の核心に触れました。ただ話し合っている人物がほとんど男性なので女性側からの意見だと違うこともあるのか知りたいと思いました。


Iさん:『自由論』(斎藤悦則訳、光文社古典新訳文庫、2012)

「他人の意見と対照して、自分の意見の間違いを正し、足りない部分を補う。これを習慣として定着させよう。そうすると、意見を実行に移すときも、疑念やためらいが生じない。それどころか、この習慣こそが意見の正当な信頼性を保証する、唯一の安定した基盤なのである。」(54頁)

これは反対意見も重要だということを言っていると思うのですが、SNSを利用していると周りの意見に目もくれず自分勝手な意見もあり、それが誹謗中傷へと繋がっていると感じました。確かに、自分に近い意見ばかり見るのほうが楽だし、ネットの仕様上そうなってしまいがちだが、自分と異なる意見も受け入れることで、より自分の意見が確固たるものになるので大切なことなのだと思いました。


Tさん:『自由論』(斎藤悦則訳、光文社古典新訳文庫、2012)

「現代は、ひとびとが「信仰はもたぬが、懐疑論には脅える」時代だといわれてきた。じっさい、ひとびとは、自分の意見の正しさに確信がもてないが、意見をもたなければ何をすべきかわからなくなると確信している。そういう時代に、ある意見を世間の攻撃から保護すべきだとの声が出てくるのは、その意見が正しいからというより、その意見が社会にとって重要だからである。 ある種の信念は、ひとびとの幸福のために不可欠とまではいえないにせよ、きわめて有用であるから、そうした信念を是認するのは社会の利益を守ることであり、政府の義務であるとされる。社会的必要性があり、そのまま政府の義務に属することがらならば、政府は、一般の世論にも支えられた政府の意見をほぼ間違いないものと考え、それにしたがって活動してよい、というか、活動しなければならない、とされるのだ。そして、こういうまっとうな信念をぐらつかせたがるのは悪人だけだ、との発言も多い。そのとおりだと考える人はもっと多い。悪人を抑えつけ、連中だけがやりたがっていることを禁じるのは、少しも悪いことではない、と考えられている。 この考え方に立てば、言論を抑圧することは、人の意見が正しいかどうかではなく、社会にとって有益かどうかの問題として、正当とされる。有用性の問題にしてしまえば、人の意見が正しいかどうかを間違いなく判定するという責任からも免れられる、と安心できる。 しかし、そんなことで安心するような人間は、判定のポイントがただ単にずれているだけだとは気づかない。ある意見が有益であるかどうかは、それ自体が意見そのものと同様に、見方が分かれる問題であり、議論の対象となりうるし、議論を必要とするものなのである。ある意見を有害だと決めつけるためには、誤りだと決めつける場合と同様に、絶対に間違いを犯さない判定者が必要である。そして、本来なら糾弾される側に自己弁護の機会を十分に与える必要がある。」(電子書籍)

以上はある意見、主張を保護・排撃するのに対し、その意見、主張が正しいかどうかを判断軸にせず、社会にとって有用か有益かで判断していることへの疑問です。

私自身は有用または有益であればそれでいいと思っていましたが、その正しさを確認や精査する機会やプロセスはいずれにせよ必要だと感じました。そうでなければ正しさへの解釈は一方通行であると思ったからです。


Yさん:『ソクラテスの弁明』(久保勉訳、岩波文庫、1950)

「アテナイ人諸君、私にメレトスの訴状に言うような罪過がないことは、多くの弁明を要すまいと思う。それは以上述べたところで十分であろう。しかし最初に述べた通り、私に対する多大の敵意が多衆の間に起こっていることが真実であることは確かである。そうしてもし私が滅ぼされるとすれば、私を滅ぼすべきはこれである。それはメレトスでもアニュトスでもなく、むしろ多数の誹謗と猜忌とである。それはすでに多くの善人を滅ぼしてきた、思うにまた滅ぼしていくであろう。わたしがその最後であろうというような心配は決して無用である。」(40頁)

 この言葉は、容疑にかけられたソクラテスが聴衆に発した言葉です。その中で、人を殺すのは罪や悪人ではなく、多数の誹謗や妬みというソクラテスの主張は印象深かったです。現代のSNSでは、誹謗中傷が度々話題になっていると思います。自分自身でもネットを見ると、毎日といっていいほど見かけます。また、その多くが事実に基づいたものではなかったり、ただ自分が好きではないからというように見えます。ネット社会の現代では各々が、言葉や妬みで人を殺せることを自覚すべきだと思いました。


Aさん:プラトン『饗宴』(中澤務訳、光文社古典新訳文庫、2013)

「『思っていることは正しいのに、それをきちんと説明することができない——そんな状態だ』と彼女は言った。『おわかりか。これでは、知っているとはいえぬ。なぜなら、きちんとした説明もできぬものを、どうして知識といえようか。しかし、愚かさでもない。なぜなら、真実を言い当てているのに、どうして愚かさといえるのか。」(122頁)

ソクラテスはディオティマからエロスについて教わっている時に、彼女の質問にうまく答えることができません。また、「エロスは美しい」と言うアガトンの意見はソクラテスの質問攻めにより論理破綻を起こします。彼らはエロスについて全くの無知ではありませんが、この時点ではまだよく理解していません。そして、この状態が自分にも当てはまると考えました。エロスを賛美する賢者たちの会話から、あることを理解するには本を読むだけでなく、それについての説明も質問もできる場が必要だとも思いました。