2020年11月25日水曜日

2020年度後期 第9回:新書報告

 こんにちは。相澤ゼミ現代法学部4年のMです。朝と夜の冷え込みが増し、体調不良に余念がない今日この頃です。今回のブログでは11月25日に行われた新書報告の様子を紹介します。

相澤先生

野口雅弘『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』 (中公新書、2020)

太田浩一訳『宝石/遺産~モーパッサン傑作選~ 』(光文社古典新訳文庫、2018)

 藤堂嘉章訳『ジェームズ・ドーソンの下半身入門:まるごと男子!』(太郎次郎社エディタス、2015)

『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』は資本主義の発展と近代社会の特質をマックス・ウエーバーの主張とそれらが与えた影響が述べられています。

『宝石/遺産~モーパッサン傑作選~』は日本の近代文学者に大きな影響を与えたモーパッサンの主要な作品が6編収録されています。

『ジェームズ・ドーソンの下半身入門:まるごと男子!』は思春期の男子を対象とした

男子社会のサバイブの仕方且つ性教育、恋愛の指南が述べられており、男子特有の論理が紹介されています。

M(私):白川部達夫『日本人はなぜ「頼む」のか』(ちくま新書、2019)

日本史を振り返りながら「頼む」という言葉の持つ意味や人との関係を紐解いていく内容です。事例として、平安時代に、貴族の中でも主に女性が父親などの「経済的庇護者」に対して生活支援や宮中に上がってからの身の振り方等の指導を受ける際に使われました。これが鎌倉時代になると「御恩と奉公」という形で言葉の持つ意味合いが変化していきます。さらに江戸時代になると、「義理」概念を生む基盤となり、時代背景とともに人と人の結びつきの変化を表します。本書を通じて日本人のメンタリティの歴史を学ぶことで、情景等の奥深さを感じられます。

Sさん:河合清子「ねぶた祭“ねぶたバカ”たちの祭典」(角川oneテーマ21、2010)

巨大な人形の灯篭が印象的な「青森ねぶた祭」を紹介する本です。祭りの時期になると300万人もの観光客が訪れ、230億円の経済効果を生んでいます。祭りでは、ねぶたの周りで踊る「跳人」による「らっせーらー」の掛け声と共に、ねぶたが市内を踊り歩きます。ねぶた審査において優秀作品に選ばれたものは最終日に船に乗せられ、青森港を運行します。また、ねぶたの絵の題材には神話や武将の伝説を切り取ったものが多く、専門のねぶた師がそれを描き上げます。祭りの管理・運営が神社・お寺ではなく、市民の市民による活動である点や誰でも参加可能な点に魅力を感じました。  

Tさん:山本章子『日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019)

日米地位協定の変遷を紹介しています。この協定は沖縄県等に駐留している米軍の扱い方やそれに関する米国との取り決めを示すものです。駐留基地のない地域に住んでいる人々には関心の低い問題でしたが、米軍兵士による犯罪が報道されることで、その縮小と再編を望む声も増えてきています。現在では、米国との交渉が進み、協定内で明文化されている犯罪の扱いにおいて、アメリカ主導ではなく日本も関与できるようになりました。また駐留基地での訓練時の選択権についても同様の改善がなされています。米軍が駐留することによるメリット・デメリットからも非常に複雑な問題であるといえます。

Aさん:西條勉『『古事記』神話の謎を解く』(中公新書、2011)

上巻、中巻、下巻からなる古事記について、その上巻のおおまかな解説がされています。表面的なく裏に隠された物語の意味の紹介が印象的でした。その事例として、スサノオがクシナダヒメと共に出雲国で八岐大蛇を退治した話では、稲の神様である八岐大蛇と稲穂の神様を祭る巫女様の意味を持つクシナダヒメから、それ自体が神様を祭る行為の象徴であるそうです。古事記全体を通して矛盾点は多く、外国からの神話の影響も受けているとのことです。

Nさん:鬼頭昭三『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』(ブルーバックス、2017)

アルツハイマー病と糖尿病は密接な関係があるという説が紹介されています。二つの病気は発症の原因にインスリンが深く関わっています。糖尿病はインスリンの不足により血液中のブドウ糖濃度が上昇することで発症します。一方、アルツハイマー病はアミロイドβ(たんぱく質)の過剰蓄積によって記憶細胞の破壊が生じますが、インスリンそれを抑制する役割を持っています。従って糖尿病の発症によるインスリンの低下が、結果的にアルツハイマー病のリスクが高まるといわれています。実際に糖尿病患者の六割が、アルツハイマー病の予備段階である海馬の萎縮が確認されているそうです。インスリンの低下を引き起こさず、糖尿病を予防するには、日頃から健康的な生活(適度な有酸素運動、炭水化物の過剰摂取、質の良い睡眠)を心掛けましょう。

Iさん:西成活裕「渋滞学」(新潮選書、2006)

「渋滞」と聞いたときに、車の渋滞を思い浮かべる人が多いと思いますが、本書ではそれ以外に災害時の避難における人の流れや通信上の情報の渋滞、又は神経細胞のタンパク質を運ぶ役割を持つキネシンとダイニンの渋滞による健康障害など幅広く取り上げられています。中でも高速道路での渋滞は、事故や合流場所での遅延が原因ではなく、若干の坂道が影響しています。ドライバーが上り坂であることに気付かず、アクセルを踏む力が変わらないためスピードが落ち、その結果として不用意なブレーキが増えて自然渋滞が発生します。対策として、渋滞を感じる前から車間距離を置くことを意識することで、不用意なブレーキ防止につながります。渋滞解消に向けて安全運転をしましょう。

12/9は新書報告を行います。コツコツと取り組んでいきましょう。ここまでありがとうございました。

2020年11月21日土曜日

国立劇場で歌舞伎鑑賞

国立劇場のロビー。
 秋晴れの土曜日、ゼミ生3名と国立劇場へ歌舞伎鑑賞へ行きました。若者には縁遠い印象のある伝統芸能。敷居は高いですが、演劇としてもショーとしてもとても楽しいものです。

以下に、参加学生の感想を掲載します。

Sさん

私は今回初めて歌舞伎を鑑賞した。驚いた点は二つある。一つ目は服の優美さである。序幕で平清盛が身に着けていた衣装の美しさに思わず息を呑んでしまった。しかし服の優美さに負けず平清盛役の人の立ち姿は凛々しいものだった。摺り足というものがあるのもこの姿勢を崩さないようにするためなのかなと私は感じた。二つ目は語り手と三味線と演者のタイミングがずれないことである。バレエと違い語りの独特なリズムに合わせて動いているので合わせるのが困難に見えるがビシッと当たり前のように決めていくので驚いた。初めて鑑賞したので雰囲気を感じ取るので精いっぱいだったがいい経験になった。次に鑑賞するときには作品を事前に下調べしてから見てみようと思った。

Tさん

経済学部 4 年ゼミ生 T です。 今回の課外活動で初めて歌舞伎を観劇しました。率直な感想としては、私には難しかった かなと感じました。声や魅せる動き、演出は感動しました。ただ言語化できるほど理解が できず、難しかったなという感想に落ち着いた次第です。回数を追えば率直に楽しかった と感じることができるのかも知れません。また、テレビで見るような役者さんが実際に歌 舞伎されてる姿は感慨深かったです。テレビで見る役者さんの見方が変わりました。次の 課外活動も新しい発見がありそうで楽しみです。

Iさん

中学生以来の歌舞伎鑑賞で昔よりかは理解出来るものだと思っていましたが、難しくてちんぷんかんぷんでした。歌舞伎特有の間合いや言葉、三味線や小太鼓などの楽器など様々な要素があり奥が深いと感じました。

ですがなかなか観る機会がないので貴重な経験となりました!


2020年11月11日水曜日

2020年度後期 第7回&第8回:映画「ズートピア」を読む

 こんにちは。相澤ゼミ3年のIです。第7回と第8回のゼミは、「映画を読む」というテーマで行いました。第7回に映画『ズートピア』を鑑賞し、第8回で作品を考察するグループワークを行いました。はじめに、映画の概要を紹介します。

高度な文明を築いた動物たちが人間のように暮らす楽園「ズートピア」を舞台とし、夢を信じる新米ウサギ警官「ジュディ・ホップス」と、夢を忘れた狐詐欺師「ニック・ワイルド」の二人がズートピアで起こる事件の解決に挑むお話です。ズートピアでは、肉食草食問わず、あらゆる動物が生活を共にしていました。一見、ズートピアは、誰もが自由に過ごせるユートピアのような世界ですが、そこにも偏見による差別が起こります。このような現実の大都市にも起こり得る社会問題を描いています。ディズニー映画ですが、メッセージ性もあるため子供から大人まで幅広い年代の方が楽しめる映画となっています。

考察を行っていくうえで以下の4つの問い、項目について話し合いました。

  1. 映画のメッセージは何か?
  2. 1のようなメッセージを読み込む根拠となったシーン、演出はどのようなものか?
  3. 読み取ったメッセージへの自分なりの考察、意見
  4. その他面白いと思ったこと、気づいたこと

グループワークをして出た意見をそれぞれまとめていきます。

1. 映画のメッセージは何か?

 大きく2点が挙げられました。まず一点目は、「偏見」や「差別」が存在しているということです。二点目は、それらによる先入観を跳ね返すべきだ、ということです。

2. 1のようなメッセージを読み込む根拠となったシーン、演出はどのようなものか?

 具体的なシーンがグループワークの中でいくつも挙げられましたがここでは、私が重要だと思った点を紹介します。

まず、ジュディが警官になりたいと言うと、草食動物で小さいウサギという理由でなれるわけがないと馬鹿にされていたり、肉食動物は凶暴で野生化するといって恐れられたりと、それぞれの立場から自分とは異なるモノに対して偏見や先入観を抱いていた、という点です。

また、ジュディが大きな手柄をあげて表彰され記者会見をする場面があります。ウサギという種族のせいで差別的に扱われ、それを取っ払うたに中身や能力で補う努力をするなどたくさん苦労をしてきたにもかかわらず、ジュディ自身が肉食動物に対して偏見を持っていることを露わにするコメントをしていました。

そしてジュディとニックの元々は対照的だったふたりが相棒関係になったり、ノロマと思われていたナマケモノのフラッシュが速度超過の違反をしたり、全体を通して、先入観を跳ね返すような行動を描くシーンが多く見られました。

3. 読み取ったメッセージへの自分なりの考察、意見

 ここでは、ゼミ生の中で大きく分かれた点と、共通した点がありました。まず、他者を見る際の点として2つに大きく意見が割れました。一つ目は、他社に対して偏見や差別をするのは相手を知らないからしてしまうので、まず相手を知ろうとすることが大切である、という考えです。二つ目は、現実的に考えて大きな枠組みとして偏見を持ってしまうのは仕方がないので、その中でいかに個人にフォーカスして向き合うことができるかが大切という意見です。しかしこちらの意見に対しては、カテゴライズしてしまうのはそもそも良くないのではとの反論も出ました。

次に、個人がどう行動するかという点では共通した意見となりました。映画の主題歌である「try everything」や映画中にしきりに出てきたズートピアというユートピアな世界のキーワードとしての「誰もが何にでもなれる➡何にでもなりたい」ということから、偏見や差別を取っ払うための行動や挑戦が大切であるということです。

4. その他面白いと思ったこと、気づいたこと

  • 副市長の陰謀から、“恐怖”を利用することでコントロールしやすくなるというのは現実にも通じる。
  • リアルにし過ぎて現実味を帯びさせないために、人間と近い種の動物が出てこなかったり、肉食動物の食事シーンがなかった。

などの意見が挙げられました。

私の感想

『ズートピア』は僕自身、観るのは二回目でした。一回目は娯楽としてただただストーリーを楽しむという見方でしたが、今回は、グループワークをするという目的があったので、より深く考えながら鑑賞でき、違った楽しみ方が出来ました。また、このように様々な視点から楽しむことの出来るズートピアは優れた映画なのだとも思いました。

そして、今回のグループワークを通して、他の人の考察を聞いたり意見交換をする中で今までにしたことのない深い映画鑑賞となり、「映画を読む」ことが出来たと思います。機会があればまたこのようなグループワークをして深く映画に触れ合いたいと感じました。

次回は、久しぶりの新書報告です。本の世界を楽しみたいと思います。


2020年11月4日水曜日

2020年度後期 第6回:GW「読書について考える」

 こんにちは。相澤ゼミ経営学部3年のNです。今回のゼミでは、ゼミ生の皆さんと「何故本を読まないのか」という問いを考えるグループワークを行いました。

この背景には、私の総合研究教育ノートが関係しています。私は、総合教育研究ノートにて学力と読書の関係性について考察しようとしています。資料を調べていくうちに、読書が学力向上に関係するといわれているのに、何故学生は本を読まないのかが気になりました。そこで、相澤先生とゼミ生の皆さんにご協力頂き、今回グループワークを行っていただきました。最初にゼミ生の読書の実態を話してもらい、その上でどうやったら本を読めるようになるかを皆で考えました。以下、提示した問いとゼミ生の回答、私のコメントをまとめていきます。

Q1:ゼミ生の読書習慣の実態

  • ゼミで読む新書を除けば、週に一冊読むか読まないかといった所。一番多い人で月7冊程。
  • ジャンルは多岐にわたる(新書、ハウトゥー本、ビジネス系、小説、歴史)。

皆高い頻度で本を読んでいるのではないかと感じました。こうした意識の高さは相澤ゼミならではかもしれません。読む本のジャンルは多岐にわたりましたが、こうしたジャンルの違いは学力にも影響を及ぼすのか、興味がわきました。


Q2:読書媒体と入手方法

  • 媒体は電子、紙どちらも半々の意見。
  • 入手方法も、購入、借りるが半々。

私はもっと電子書籍で読む方が多いと思っていましたが、意外と紙で読む方も多く驚きました。私的な見解ではありますが、実際に書店や図書館へ足を運ぶと、ネット検索では発見しにくい本に出合うこともでき、面白みがあります。一方、電子書籍は紙の本に比べて購入の手間がない、かさばらないといった利点があるため、場合に応じてどちらも活用していくのが大切かもしれません(かく言う自分は電子書籍をほとんど読まないのですが…)。


Q3:そもそも「本を読みたい」と思っているか

  • ゼミ内では読みたい派が多数。読みたい理由は、読書による学びというより、読むこと自体が楽しいという印象。
  • 読まなくてもよい(必ずしも読書の必要性はない)派の意見は、学びの面が強い印象。学ぶ必要のある専門知識や、実生活に役立てられそうな知識を得るため読むという意見。

本を読みたい派は娯楽として、読まなくてもよい派は知識が得られるからという意見でした。一方で、両者ともに、本を読むのは良いことだと考えていました。そこで、どのような意味で本を読むのは良いことだと考えているのかという点を深掘りしていきました。


Q4:本を読むことによって得られるものは何か

  • 読みたい派の意見
    • 読んでいて楽しい(没入感、文字だけだからこそ想像するのが楽しい)。
    • 古人の考えを知れるのが面白く、自身の考えを深められる。
  • 読まなくてもよい派の意見
    • 新しい知識や語彙力を得られる。
  • 双方から出た意見
    • 読書に時間をかけても無駄に感じない(知識が得られるから。苦労して読んだことの達成感)。
    • 信憑性の高い情報が得られる。ネット検索だけでは得られない深い情報を得られる。

やはり、本を読みたい派は本を読むことに楽しさを見出している一方、読まなくてもよい派は新しい知識や語彙力を得られる点に本を読む意義を見出していました。また、こうした状況から、本を読みたい派は内向き(物語を自分で楽しめるか。自分の中で楽しみを見つけられる)、本を読まない派は外向き(他者と何かをするときに役立つ。知識として蓄えられる)に本を捉えているのではないかという意見が出て、非常に興味深かったです。ゼミ生以外の方にも、この説が当てはまるのか調べてみたいと感じました。

一方、自身が読んだ本を他人と共有することで、気づかなかった本の面白みや、他人との共感によってもっと読書を楽しめるという意見も出てきました。しかし、こうした他人との共有を行う際、小説は難しく、新書は比較的行いやすいという説明がありました。小説のようにストーリー性のあるものは、そのストーリーを相手も理解していないと面白さが伝わりにくいため、共有が難しい。その点、新書等は知識として蓄えられやすく、他者との話につなげやすいとのことでした。本ゼミでは小説ではなく新書の報告を行っていますが、それにはこうした理由があったということを理解しました。


Q5:学生にもっと本を読んでもらうにはどうすればよいか

  • 範囲等を指定して強制的に読んでもらう。
  • 本を作ってもらう(本を作るには知識必要だから必然的に読む)。
  • 共通の小説を読んでもらって、意見交換をする。

やはり一番有効なのは強制的に本を読んでもらうことかと思います。しかし、それでは自主的に本を読んでもらう段階まではいかず、一時的なものに終わってしまう可能性が大きいでしょう。「必ず一週間に一冊読む」ということを習慣づけ、それを守れる方なら続けていけるでしょうが…。その点、共通の本を読んで意見交換を行うというのは、有効かもしれません。同じ本でも、自分だけでは気づかなかった面が見えてきてその本の面白み、ひいては本全般に対する興味に繋がるのではないでしょうか。

今回のゼミを通して、他の方が本に対してどのような考えを持っているか知ることが出来ました。また、自分自身、何故本を読むのかといったことを改めて考えさせられ、非常に面白かったです。ご協力いただいた相澤先生とゼミ生の皆さん、本当にありがとうございました。

次回のゼミでは映画『ズートピア』を鑑賞し、次々回で感想を述べあうこととなっています。私もまだ視聴したことがないので楽しみです。皆さんもお楽しみに!