2022年11月30日水曜日

2022年度後期第10回:新書報告(D班)

こんにちは、2年のHです。先月から始まったサッカーワールドカップでの日本代表の活躍が素晴らしいですね。寒い日が続いていますが、白熱した試合を観戦し感動しました。さて、今回はD班の新書報告を紹介していきたいと思います。

Kさん:秦正樹『陰謀論‐民主主義を揺るがすメカニズム』(中公新書、2022年)
本書では、陰謀論を信じてしまう人の傾向やどのような人が陰謀論を信じているのか、を解説した一冊です。陰謀論とは、重要な出来事に関する説明で「邪悪で強力な集団による陰謀が関与している」と断定したり信じたりすることです。どのくらい陰謀論を信じている人がいるのかというと、4人に1人は陰謀論を信じていると述べています。陰謀論を信じやすい人の特徴をいくつか紹介していました。私が印象に残った特徴は、政治・時事的な問題に関心がある人ほど陰謀論を信じやすいことです。私は政治・時事的なニュースに関心があるため、毎日ニュースを見るようにしています。陰謀論を信じやすい特徴に当てはまっているので解決策として、客観的に報じているニュースを見たいと感じました。
本書を通して、陰謀論を信じている人が一定数いることに驚きました。一般的な考え方と陰謀論的な考え方の違いは何か、改めて考えたいと思いました。陰謀論について興味があるので、読んでみたいと思いました。

Hさん:小菊豊久『マンションは大丈夫か‐住居として資産として』(文春新書、2000年)
本書は、マンションの値段が上がっている理由や日本の集合住宅の歴史などについて解説した一冊です。私が印象に残った内容は、住居を買うときの日本と海外の違いについてです。日本は土地と建物を買います。しかし海外は住居を買うときに内装込みで買わず、土地と建物の外装だけ買うことに驚きました。海外は個人の好みが強みすぎるため、このようなスタイルになっているそうです。もし住居を買うとしたら私は、土地と内装込みの建物を買いたいと思いました。私はこだわりがないため、内装込みで買いたいです。
本書を通して、マンションに住んだことはないもののマンションの良さを見つけることができました。マンションは管理費を払うので、一軒家より安全性が高いことが分かりました。日本は地震が多いので、マンションで暮らすほうが良いと感じました。

Tさん:勝間和代『断る力』(文春新書、2009年)
本書は、断る大切さについて述べられている一冊です。人から何かを頼まれるとき断ることについて申し訳ないと思ってしまい、受け入れてしまいます。しかし著者は、頼まれたことを受け入れることは、自分の人生を他人に委ねてしまっていると述べています。そもそもなぜ、断る力を手に入れなければいけないかというと、自分の時間と能力が有限であるからです。断る力を身につける方法として、あるワードを自問することが大切だそうです。そのワードとは、「友達は何人必要か」です。なぜならすべての人に好かれることは不可能であるからです。
本書を通して、全ての要求に対して断るのではなくて、パワハラなど理不尽なことを要求されたときに断る力は有効であると感じました。また、嫌われることを恐れて自己主張ができなくなるのであれば、すべて従う必要はないと思いました。人からの頼みを断ることが苦手な方に読んでほしい一冊です。

Kさん:齋藤孝『思考を鍛えるメモ力』(ちくま新書、2018年)
本書は、メモの本質について解説している一冊です。著者は、メモを取る目的として「本質をつかまえる力を磨くため」と述べています。Kさんの新書報告では、メモ力の鍛え方と効率的なメモの取り方について紹介してくださいました。
特に印象に残ったのは、メモ力の鍛え方です。メモ力初心者にありがちなのが、「守りのメモ力」といって相手の言葉や板書されたものをそのままメモすることです。では良いメモのやり方はどのようなものかというと、「攻めのメモ力」をすることです。攻めのメモ力とは、相手の話を聞いて自分の考えも含めてメモすることです。些細な疑問や自分の意見を一緒にメモすることで、さまざまなアイデアや価値を生み出すことができると著者は述べています。
私は今まで、相手の言葉と板書されたものをそのままメモしていました。しかし今回の報告を聞いて、攻めのメモをしたいと思いました。メモすることは後で見返すだけのものと思っていましたが、クリエイティブ力を養うこともできると聞いて、考え方が変わりました。メモのやり方を見直してみたいです。
今回も興味深い報告がたくさんありました。新しい知識や新しい考え方を得ることができて良かったです。来週のゼミはE班です。残り数回のゼミ活動ですが、楽しんでいきましょう。

2022年11月16日水曜日

2022年度後期第9回:卒論検討会

ゼミの教室がある6号館前の銀杏
 こんにちは。2年のHです。本校の文化祭である葵祭を終え、どこか落ち着いた雰囲気を取り戻した校内はイチョウの木が綺麗に色づいてきました。気持ちの良い秋晴れが続いており、どこかへ出かけたくなる季節ですね。そんななか、今回のゼミは、前半はいつも通りグループに分かれてそれぞれが読んできた新書を簡単に紹介しあうグループワークを行い、後半はいつもとは違いOさんの卒論検討会を行いました。

まず前半のグループワークでは、読んできた新書の出版社をもとに3つのグループに分かれました。私が参加したグループでは、福沢諭吉/齋藤孝『13歳からの『学問のすすめ』』(ちくまプリマー新書、2017年)、志村史夫『「水」をかじる』(ちくま新書、2004年)、児玉聡『功利主義入門』(ちくま新書、2012年)、加藤恭子編『日本人のここがカッコイイ!』(文春新書、2015年)とジャンルの異なる本が4冊紹介されました。グループメンバーそれぞれが読んできた本の紹介をしたあとには活発な質疑応答が行われました。その中でも「功利主義に対してどう思うか」と「日本人は本当に海外の人が言うように「優しい」のか」という質問に関しては、全員が考え、意見を述べるなど一番の盛り上がりを見せました。

功利主義に対しては、「それまでの経緯を一切見ず、結果さえ良ければすべて良いというのはどうなのか」や「全体の幸福のために少数を犠牲にすることは、はたして本当に全体の幸福につながるのだろうか」という意見が出ました。グループワーク内で結論は出なかったのですが、今回のディスカッションを経験したことでこれから功利主義に関する新書を読み、自分はどう思うのかを考えていきたいと思いました。

日本人は本当に優しいのかという問いに関しては、「確かに落とした財布が中身も無事で交番に届けられるということは優しいのかもしれないが、困っていても知らん振りされたり、ぶつかってしまったときに舌打ちされるなど優しくない面もたくさんある」や「日本人は優しいのではなく無関心、輪の中から外れたくないという意識から空気を読んで行動するからこそ優しいと見えるのではないか」といった意見が出ました。日本人として生まれ、日本で育っている私たちにとって当たり前のことでも、海外の人からしたら当たり前ではないのだなと実感するとともに、外の人から見た日本人は優しく、真面目だと見られていることに驚きました。さまざまなジャンルの本を知る機会となり、ディスカッションを交わすことができて貴重な経験となったと思います。

一号館横の銀杏並木

後半は、Oさんの卒論検討会を行いました。Oさんの卒論のテーマは、「ヤングケアラーの実態と支援に向けて」だそうです。Oさん自身の実体験から「ヤングケアラー」に対して問題意識が生まれました。そもそも「ヤングケアラー」とは、「障がいや病気のある親や祖父母など、ケアを必要とする家族がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」(一般社団法人日本ケアラー連盟サイト)を指します。近年、日本でもヤングケアラーという社会問題が顕在化し、2020年には厚生労働省が中学生を対象に調査を行いました。調査に参加した中学校の46,6%、全日制高校の49.8%にヤングケアラーがいるという結果がでました。そのような現状に対しOさんは、ヤングケアラーの存在を周知し、社会的な支援の必要性を論じました。

このOさんの発表を聞いたあとで、内容についての質疑応答を行いました。「ヤングケアラーと虐待の関係性はあるのか、虐待につながるのではないか」や「厚生労働省の調査は単発的に行われたのか、それとも継続的に行われているのか」という質問が出ましたが、まだ実態がつかめていない問題であるため厚生労働省の調査もまだ1度しか行われず、ヤングケアラーと虐待の関係性も掴みきれていないのだそうです。Oさんはヤングケアラーと虐待の関係性についてもう少し深掘りして調べ、考えていくと話していました。

この発表を聞き私は、ヤングケアラーという問題をよく知らなかったため、今回のOさんの発表は新たな発見となりました。そして、庇護されるべき立場にいる子どもが家族のために家事や介護、感情面のサポートを行い、自分の本分である学業や友だち付き合いにまで影響を及ぼしてしまうことに胸が痛くなりました。ここ数年で社会問題として取り上げられるようになったものの、私自身のように「ヤングケアラー」という言葉も実態も知らない人が多くいます。

さらにOさんが指摘するようにまだまだ支援が足りないという現状もあります。私も子どもが子どもらしく生きていく世の中をつくるために、Oさんのようにヤングケアラーの存在自体を周知させ、支援を充実させていくことが必要だと思いました。なお、私自身もまだまだヤングケアラーに関して知らないことが多いため、今後新書等を読み学んでいきたいと思います。

次回は、通常通り新書報告を行います。担当はD班です。楽しみにしていてください。

2022年11月9日水曜日

2022年度後期第8回:新書報告(F班)

こんにちは。3年生のDです。おだやかな小春日和が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。すっきりとした秋晴れの日にはどこかに出かけたくなりますよね。紅葉が一段と色を増す美しい季節ですので、ぜひ皆様も日本の秋を満喫してお過ごしください。

また、これからインフルエンザが流行する時期でもあります。くれぐれも体調を崩さぬよう、体調管理を今まで以上に気をつけて生活していきましょう。さて、本日はF班の新書報告を紹介します。

Uさん:宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書、2010年)

本書は、「民主主義」が抱える哲学的な問題点を、民主主義と以前の貴族制を比較しながら解説している本になっています。特に私の印象に残った問題点は、皆平等を掲げている点です。古今東西、人間は生まれ育つ家庭や生まれ持った身体的特徴などが異なるため、人生において平等ではない点が多くあります。

貴族制の時代では、生まれた身分や家庭によって育つ環境に圧倒的な格差があることは、周知の事実であったため、平民が貴族に嫉妬したり不満を抱くことは少なかったと言います。それに対し、現代では平等ではない点や生まれ持った差があるにも関わらず、人々は皆平等であるという風潮が強いため、人々の間で嫉妬や不満、ひがみなどのネガティブな感情が生まれてしまい、幸せを感じにくくなっているそうです。これに対し著者は、生きがいややりがいなどのリスペクトを確立し、それを他者との交流を通して配分することで幸せに近づくことができると述べています。私も他人のことばかり気にしすぎず、自分に焦点を当ててアイデンティティや自分の軸をより強固にしていきたいと、この報告を聞いて感じました。

Oさん:柏木恵子『子どもという価値 少子化時代の女性の心理』(中公新書、2001年)

本書は、少子化が進む現代において、「子どもを持つ」とはどういう意味があるのかと問い、子どもという存在の価値や考え方の変化について考察している本となっています。

日本では以前から、「子どもは宝物である」というような表現をよく耳にします。これは果たして本当なのでしょうか。本当なのであれば子どもにはいったいどんな価値があるのでしょうか。という点の考察がとても印象に残りました。ある研究データによると、日本や先進国では、子どもの価値というのは、実用的な価値や経済的な価値ではなく精神的な価値であると考えられているそうです。そして、子どもを持つ理由や意味は、「跡継ぎや労働力を確保する」「子孫を残すことで社会を繁栄させる」等の社会的理由から、「単純に子どもが欲しいから」といった個人的な理由に変化しているそうです。この変化の背景として、子どもが生まれることに対する捉え方の変化が挙げられます。昔は「子どもは授かりものである」というように自然現象として捉えられていました。しかし現代では「子どもを産む」というように、主語が母親や夫婦に置き換わり、子どもは計画的に産むものであるという捉え方が増加しています。この考察を聞いて、子どもの社会的な意義が弱まったことによって、子どもを欲しくない人や子どもを育てたくても育てられない人は子どもを作らないという選択ができるようになり、結果的に少子化に繋がっているのではないかと思いました。生まれてくる子どもの幸せを考えるあまり、そもそも子ども自体が減ってしまっているのは難しい問題だと思います。

Nさん:竹田いさみ『海の地政学』(中公新書、2019年)

本書では、前半で海洋の重要性に気づき、次々と海へ進出していった国々の世界史、後半では領海や排他的経済水域などの海洋に関する法律や制度、条約などが解説されています。Nさんは、前半の国々の世界史の中から、海洋の覇権を取ったイギリスについてお話してくださいました。

まずイギリスは、大航海時代にスペインの船から人材や資源を略奪しながら、奪った人材や資源を国力とすることによって成長していきます。その後、どんどん強大になったイギリスの海軍は、アメリカ、インド、オーストラリアの海運の要所を次々と抑えることによって覇権を握っていきます。そして20世紀に入り、第一次世界大戦が始まると、世界各国は植民地との情報網を築くため、海底にケーブルを開通させ始めました。その頃イギリスはすでに世界中に海底ケーブル網を構築していました。そこで世界中の他国のケーブルを自国に繋げ、情報を傍受したり、切断したりすることで、第一次世界大戦を優位に立ちまわり戦勝国になることができたそうです。

私は、19世紀の頃からすでに海底ケーブルという電信技術が確立され、20世紀にはそれが世界中に張り巡らされていたことにまずとても驚きました。世界史を海洋という視点から見ることはとても新鮮で面白かったので、後日私もこの本を読んでみようと思います。

Hさん:原田隆之『入門―犯罪心理学』(ちくま新書、2015年)

本書は、タイトルの通り犯罪心理学という学問を初心者にもわかりやすく解説している本です。日本では、窃盗や交通違反などの軽犯罪も含めると年間240万件ほど犯罪が発生しているそうですが、これは直近10年間で減少傾向にあるそうです。罪を犯しやすい人には8つの危険因子と呼ばれる共通点が挙げられます。

Hさんの報告では、この中でも特に影響力の高い4つの危険因子を紹介してくださいました。1つ目は、犯罪歴です。犯罪歴がない普通の人に比べて、犯罪歴がある人は再犯率が高い傾向にあるそうです。2つ目は、反社会的パーソナリティです。これは、物事に対して無責任だったり、周囲への攻撃性が高かったりする人物が該当します。3つ目は、反社会的認知です。これは、犯罪に対して罪悪感や抵抗感がなく、目的を達成するためなら罪を犯しても構わないという考え方のことを言います。4つ目は、反社会的交友関係です。素行の悪い反社会的な人物と関わりが深い人は、比較的罪を犯しやすいそうです。

この報告を聞いて、犯罪心理学という学問も面白い分野だと思いました。上記の他にも、受刑者にとって人気の刑務所だったり、殺人事件の発生率だったりと興味深いデータをいくつも示してくれたためになる報告でした。

Kさん:渡辺弥生『感情の正体』(ちくま新書、2019年)

本書では、発達心理学の観点から感情の正体について、考察と解説がなされています。まず、感情の正体に関して、ジェームズ・ランゲ説というものがあります。要約すると「悲しいから泣くのではなく泣くから悲しい」ということです。つまり、泣くという身体的な現象が起こった後に悲しいという感情が生まれるという説になっています。

続いて、感情のコントロールの方法には、東洋的なアプローチと西洋的なアプローチの二つがあるようですが、Kさんは東洋的なアプローチについて紹介してくださいました。東洋的な感情のコントロールの方法として、マインドフルネスというものがあるそうです。やり方はとても簡単で、意識を呼吸に集中するだけでいいそうです。人は大人になると過去や未来のことを考えすぎて、余計な悩みや心配事をたくさん抱えてしまう傾向にあります。だからこそ今に意識を集中させ、余計なことは考えないようにすることによって、感情を上手くコントロールすることができるようになります。

この他にも、青年期に問題行動が増える要因や自尊心と承認欲求に関するお話などもあり、とても興味深い新書報告でした。


今回の新書報告は、皆さんそれぞれが全く分野の違う新書だったため、様々なジャンル、学問の知識を学ぶことができました。来週の相澤ゼミは、4年生のOさんの卒論検討会を予定しています。どんなお話が聞けるのかとても楽しみです。


2022年11月2日水曜日

2022年度後期第7回:新書報告(E班)

 こんにちは。ゼミ生2年のMです。11月に入りました。気温が下がることに加えて年末に向け慌ただしくなってくる時期ですので、皆様も体調にお気を付けください。さて、本日はE班の新書報告を紹介します。

M :伏木亨『人間は脳で食べている』(ちくま新書、2005年)

こちらは私の報告になります。

本書では食べ物の「おいしさ」のメカニズムを研究する著者が、現代における「おいしさ」について語っています。おいしさは「やみつきになる(繰り返し食べたくなる)おいしさ」「文化、習慣によるおいしさ」など、本来多層的に構造されているものです。しかし、情報過多の環境で生きる現代人は「おいしさ」の一つである「情報のおいしさ」に頼り過ぎてしまっています。「情報のおいしさ」とは、包装や成分表示、価格、ブランドなどの情報から味に先入観を持つことです。口に入れるものへの評価を脳の情報に依存している現代人は、まさに「脳で食べている」状態です。著者は情報以外の要素から食べ物の価値を測る力が鈍くなってしまっているという現状に、危機感を抱いています。

本書を通して、自分も含め現代人は想像以上に「脳で食べている」のだとわかりました。自分にとっての「おいしい」とは何なのか、食への向き合い方をもう一度見つめ直してみたいと思いました。食に関心のある方に手に取っていただきたい一冊です。

Yさん:齋藤孝『極上の死生観 60歳からの「生きるヒント」』(NHK出版新書、2020年)

本書では「死生観」について語られています。私はフロイトの話と、寿命の話が印象に残りました。フロイトは無意識研究などを行った精神科医です。Yさんが紹介した「人は死を恐れているようで死を望んでいる」というフロイトの言葉は、人はいつか死ぬために生きている、すなわち「死生観」を考えることは人生を考えることでもあると捉えられるように感じます。若いうちから死生観を考え始めても遅すぎるということはないのかもしれません。

また「最近は医療技術が進歩し寿命が伸びているが、本当にそれは良いことなのか」というYさんの一言に共感を覚えました。テレビで「人が400歳生きる時代が来るかもしれない」と言う研究者を見たことがあるのですが、400年も生きられるだけの心身の強さが人にあるのだろうか、時間が有り余る人生に意義はあるのだろうかとほんの少し疑問を感じたことを思い出しました。

Sさん:柴田重信『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書、2022年)

本書では食事や運動の時間と脂肪を落とすことの関係を解説しています。特に私の印象に残っているのは、運動する時間についての説明です。

脂肪を落とすためには、副交感神経が活性化する夕方に運動することが有効です。朝食前も直接脂肪が燃やせるという点では有効ですが、エネルギー切れの恐れがあるため夕方が望ましいそうです。また、望ましい運動は30分程度の少し息が切れるウォーキングで、10分を3回に分けても効果はあるとのことでした。

食事に関しては、1日3食食べて体内時計のリズムを整えることが重要です。食べる時間と食べない時間をしっかりと区切らないと、体内時計のリズムが乱れてしまったり、栄養を過度に吸収してしまったりするそうです。

実践してみたい知識が盛り沢山な発表でした。3食食べることは、簡単そうに見えて案外できていない方もいるのではないでしょうか。私も今一度自分の食生活を見直してみようと思いました。

Hさん:増本康平『老いと記憶』(中公新書、2018年)

本書では、加齢と記憶、認知の関係について解説しています。年齢で衰える能力の一つに「ワーキングメモリー」があります。「ワーキングメモリー」とは、思考や判断などの際に必要な情報を一時的に保持、処理する短期記憶能力です。例えば、「ワーキングメモリー」が衰えると読書が難しくなります。これは、どの部分まで読んだのか、その時点まで本から得た知識を覚えていられないからです。また、加齢により衰えるのは記憶力そのものではなく、記憶を頭から引き出す力だそうです。記憶力の低下を防ぐ方法として、著者は脳トレには否定的です。人と人とのコミュニケーションなどにより脳を働かせることが有効だと主張しています。

歳を取っても記憶力そのものが衰えるわけではないことに驚きました。私自身が老いるのはまだ先ですが、身近な高齢者との関わり方を考える上でも一度読んでみたい本です。


今回は身体に関する話題が多かったように感じます。どれも興味深いものでした。来週の報告も楽しみです。