2022年11月16日水曜日

2022年度後期第9回:卒論検討会

ゼミの教室がある6号館前の銀杏
 こんにちは。2年のHです。本校の文化祭である葵祭を終え、どこか落ち着いた雰囲気を取り戻した校内はイチョウの木が綺麗に色づいてきました。気持ちの良い秋晴れが続いており、どこかへ出かけたくなる季節ですね。そんななか、今回のゼミは、前半はいつも通りグループに分かれてそれぞれが読んできた新書を簡単に紹介しあうグループワークを行い、後半はいつもとは違いOさんの卒論検討会を行いました。

まず前半のグループワークでは、読んできた新書の出版社をもとに3つのグループに分かれました。私が参加したグループでは、福沢諭吉/齋藤孝『13歳からの『学問のすすめ』』(ちくまプリマー新書、2017年)、志村史夫『「水」をかじる』(ちくま新書、2004年)、児玉聡『功利主義入門』(ちくま新書、2012年)、加藤恭子編『日本人のここがカッコイイ!』(文春新書、2015年)とジャンルの異なる本が4冊紹介されました。グループメンバーそれぞれが読んできた本の紹介をしたあとには活発な質疑応答が行われました。その中でも「功利主義に対してどう思うか」と「日本人は本当に海外の人が言うように「優しい」のか」という質問に関しては、全員が考え、意見を述べるなど一番の盛り上がりを見せました。

功利主義に対しては、「それまでの経緯を一切見ず、結果さえ良ければすべて良いというのはどうなのか」や「全体の幸福のために少数を犠牲にすることは、はたして本当に全体の幸福につながるのだろうか」という意見が出ました。グループワーク内で結論は出なかったのですが、今回のディスカッションを経験したことでこれから功利主義に関する新書を読み、自分はどう思うのかを考えていきたいと思いました。

日本人は本当に優しいのかという問いに関しては、「確かに落とした財布が中身も無事で交番に届けられるということは優しいのかもしれないが、困っていても知らん振りされたり、ぶつかってしまったときに舌打ちされるなど優しくない面もたくさんある」や「日本人は優しいのではなく無関心、輪の中から外れたくないという意識から空気を読んで行動するからこそ優しいと見えるのではないか」といった意見が出ました。日本人として生まれ、日本で育っている私たちにとって当たり前のことでも、海外の人からしたら当たり前ではないのだなと実感するとともに、外の人から見た日本人は優しく、真面目だと見られていることに驚きました。さまざまなジャンルの本を知る機会となり、ディスカッションを交わすことができて貴重な経験となったと思います。

一号館横の銀杏並木

後半は、Oさんの卒論検討会を行いました。Oさんの卒論のテーマは、「ヤングケアラーの実態と支援に向けて」だそうです。Oさん自身の実体験から「ヤングケアラー」に対して問題意識が生まれました。そもそも「ヤングケアラー」とは、「障がいや病気のある親や祖父母など、ケアを必要とする家族がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」(一般社団法人日本ケアラー連盟サイト)を指します。近年、日本でもヤングケアラーという社会問題が顕在化し、2020年には厚生労働省が中学生を対象に調査を行いました。調査に参加した中学校の46,6%、全日制高校の49.8%にヤングケアラーがいるという結果がでました。そのような現状に対しOさんは、ヤングケアラーの存在を周知し、社会的な支援の必要性を論じました。

このOさんの発表を聞いたあとで、内容についての質疑応答を行いました。「ヤングケアラーと虐待の関係性はあるのか、虐待につながるのではないか」や「厚生労働省の調査は単発的に行われたのか、それとも継続的に行われているのか」という質問が出ましたが、まだ実態がつかめていない問題であるため厚生労働省の調査もまだ1度しか行われず、ヤングケアラーと虐待の関係性も掴みきれていないのだそうです。Oさんはヤングケアラーと虐待の関係性についてもう少し深掘りして調べ、考えていくと話していました。

この発表を聞き私は、ヤングケアラーという問題をよく知らなかったため、今回のOさんの発表は新たな発見となりました。そして、庇護されるべき立場にいる子どもが家族のために家事や介護、感情面のサポートを行い、自分の本分である学業や友だち付き合いにまで影響を及ぼしてしまうことに胸が痛くなりました。ここ数年で社会問題として取り上げられるようになったものの、私自身のように「ヤングケアラー」という言葉も実態も知らない人が多くいます。

さらにOさんが指摘するようにまだまだ支援が足りないという現状もあります。私も子どもが子どもらしく生きていく世の中をつくるために、Oさんのようにヤングケアラーの存在自体を周知させ、支援を充実させていくことが必要だと思いました。なお、私自身もまだまだヤングケアラーに関して知らないことが多いため、今後新書等を読み学んでいきたいと思います。

次回は、通常通り新書報告を行います。担当はD班です。楽しみにしていてください。