2022年11月2日水曜日

2022年度後期第7回:新書報告(E班)

 こんにちは。ゼミ生2年のMです。11月に入りました。気温が下がることに加えて年末に向け慌ただしくなってくる時期ですので、皆様も体調にお気を付けください。さて、本日はE班の新書報告を紹介します。

M :伏木亨『人間は脳で食べている』(ちくま新書、2005年)

こちらは私の報告になります。

本書では食べ物の「おいしさ」のメカニズムを研究する著者が、現代における「おいしさ」について語っています。おいしさは「やみつきになる(繰り返し食べたくなる)おいしさ」「文化、習慣によるおいしさ」など、本来多層的に構造されているものです。しかし、情報過多の環境で生きる現代人は「おいしさ」の一つである「情報のおいしさ」に頼り過ぎてしまっています。「情報のおいしさ」とは、包装や成分表示、価格、ブランドなどの情報から味に先入観を持つことです。口に入れるものへの評価を脳の情報に依存している現代人は、まさに「脳で食べている」状態です。著者は情報以外の要素から食べ物の価値を測る力が鈍くなってしまっているという現状に、危機感を抱いています。

本書を通して、自分も含め現代人は想像以上に「脳で食べている」のだとわかりました。自分にとっての「おいしい」とは何なのか、食への向き合い方をもう一度見つめ直してみたいと思いました。食に関心のある方に手に取っていただきたい一冊です。

Yさん:齋藤孝『極上の死生観 60歳からの「生きるヒント」』(NHK出版新書、2020年)

本書では「死生観」について語られています。私はフロイトの話と、寿命の話が印象に残りました。フロイトは無意識研究などを行った精神科医です。Yさんが紹介した「人は死を恐れているようで死を望んでいる」というフロイトの言葉は、人はいつか死ぬために生きている、すなわち「死生観」を考えることは人生を考えることでもあると捉えられるように感じます。若いうちから死生観を考え始めても遅すぎるということはないのかもしれません。

また「最近は医療技術が進歩し寿命が伸びているが、本当にそれは良いことなのか」というYさんの一言に共感を覚えました。テレビで「人が400歳生きる時代が来るかもしれない」と言う研究者を見たことがあるのですが、400年も生きられるだけの心身の強さが人にあるのだろうか、時間が有り余る人生に意義はあるのだろうかとほんの少し疑問を感じたことを思い出しました。

Sさん:柴田重信『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書、2022年)

本書では食事や運動の時間と脂肪を落とすことの関係を解説しています。特に私の印象に残っているのは、運動する時間についての説明です。

脂肪を落とすためには、副交感神経が活性化する夕方に運動することが有効です。朝食前も直接脂肪が燃やせるという点では有効ですが、エネルギー切れの恐れがあるため夕方が望ましいそうです。また、望ましい運動は30分程度の少し息が切れるウォーキングで、10分を3回に分けても効果はあるとのことでした。

食事に関しては、1日3食食べて体内時計のリズムを整えることが重要です。食べる時間と食べない時間をしっかりと区切らないと、体内時計のリズムが乱れてしまったり、栄養を過度に吸収してしまったりするそうです。

実践してみたい知識が盛り沢山な発表でした。3食食べることは、簡単そうに見えて案外できていない方もいるのではないでしょうか。私も今一度自分の食生活を見直してみようと思いました。

Hさん:増本康平『老いと記憶』(中公新書、2018年)

本書では、加齢と記憶、認知の関係について解説しています。年齢で衰える能力の一つに「ワーキングメモリー」があります。「ワーキングメモリー」とは、思考や判断などの際に必要な情報を一時的に保持、処理する短期記憶能力です。例えば、「ワーキングメモリー」が衰えると読書が難しくなります。これは、どの部分まで読んだのか、その時点まで本から得た知識を覚えていられないからです。また、加齢により衰えるのは記憶力そのものではなく、記憶を頭から引き出す力だそうです。記憶力の低下を防ぐ方法として、著者は脳トレには否定的です。人と人とのコミュニケーションなどにより脳を働かせることが有効だと主張しています。

歳を取っても記憶力そのものが衰えるわけではないことに驚きました。私自身が老いるのはまだ先ですが、身近な高齢者との関わり方を考える上でも一度読んでみたい本です。


今回は身体に関する話題が多かったように感じます。どれも興味深いものでした。来週の報告も楽しみです。