2019年1月22日火曜日

2018年度 2期第13回ゼミ

 ゼミ生のRです。後期第13回目のゼミを行いました。
 
 今回は、ゼミ活動の総まとめとして新書報告をしました。

 初めに、相澤先生が4冊の新書を紹介されました。
 1冊目は田中浩『ホッブズ-リヴァイアサンの哲学者』(岩波新書、2016)です。本書は哲学者ホッブズの思想と生涯を描いています。当時の時代背景にも触れられているそうです。生涯や時代背景を学びつつ思想について知れる、ホッブズについて真の理解へと繋がるような一冊だと感じました。
    2冊目は小長谷正明『医学探偵の歴史事件簿』(岩波新書、2014)です。本書は歴史人物が罹っていた病とそれによる周囲との関連を医学視点で推理し、真相に迫る内容です。例を挙げると、ヒトラーやツタンカーメンなどの歴史人物について語られています。現代だからこそ持てる視点で、過去に遡って真相を解明していくという内容が非常に興味深かったです。
  3冊目は山口輝臣『はじめての明治史』(ちくまプリマ―新書、2018)です。東京大学駒場地区キャンパスでの連続講義が収録されています。近代日本について最新の研究を知ることが出来ます。明治史をより深く味わうことが出来るのはもちろん、活字とはいえ東大の講義に触れられるということはとても魅力的だと考えます。
    4冊目はプラド夏樹『フランス人の性-なぜ「#MeToo」への反対が起きたのか』(光文社新書、2018)です。本書はフランスに約30年在住の日本人女性が、フランス人のセクシュアリティについて解説したものです。現代のフランス人の生々しい声が取り上げられているそうで、内容に大変興味を覚えました。

 次にOさんが、飯倉章『第一次世界大戦史-諷刺画とともに見る指導者たち』(中公新書、2016)を紹介しました。本書は第一次世界大戦史を諷刺画を織り交ぜながら追う内容です。大戦前の国際関係、大戦中の出来事、大戦後の世界の変化というように、複雑な大戦史を流れとともに捉えていくことが出来ます。本書の一番の特徴は、戦いの痕跡を当時の諷刺画で補足していることだと考えます。画という形で歴史に触れることにより、戦闘の臨場感や重要人物のイメージが活字よりも生き生きと伝わってくるのではないでしょうか。歴史のうねりが大きく感じられる複雑な第一次世界大戦の流れを整理するという意味でも、価値のある一冊です。

 続いてKさんが、石田由香理,西村幹子『<できること>の見つけ方-全盲女子大生が手に入れた大切なもの』(岩波ジュニア新書、2014)を紹介しました。本書は視覚障害を持つ石田由香理さんの実体験から様々な壁を乗り越えていく過程が記されています。実の母親からの否定と受け取れるような厳しい言葉、周りと自分の間で感じてしまう壁など彼女の人生の険しさが伝わります。そんな人生のさなか、彼女はできることは目に見える行動だけとは限らないと気づくそうです。目に見えないこととは、存在や能力を指します。目に見えるものだけではなく、存在や能力を認めるということは誰にでも共通する大切な事だと考えます。彼女の強さとともに、そのような大事な事に改めて気づくことが出来る一冊だと感じました。

 そして私Rが、司馬遼太郎,ドナルド・キーン『日本人と日本文化』(中公新書、1972)を紹介しました。本書は、著者二人が日本人と日本文化という話題を中心に対談した内容を収録したものです。対談の内容を読んで一番感じたことは、二人が本当に自由に生き生きとやりとりをしているということです。読んでいるこちらも、まるで対談場所に同席しているような臨場感を味わいました。フランシスコ・ザビエルが日本で宣教活動をしていた当時の日本人やポルトガル人・スペイン人の視点など、興味深い話題が盛りだくさんです。日本史好きの方には特に読んでほしい一冊です。

 最後にNさんが、斎藤孝『読書力』(岩波新書、2002)を紹介しました。本書は「なぜ本を読まなければならないのか」という問いに、答えを示しています。著者の考えとして「読書は自己形成の手段である」ことが紹介されました。私もこの考えには賛成です。なぜなら、読書は他者との間接的な関わりだと考えるからです。これは、私の「自己は他者との関わりの中で形成されていくもの」という考えからきています。一方、著者が読書を娯楽的要素で捉えていないことには反対です。楽しむことによって得られる価値観なども、多く存在していると考えるからです。読書の本質を見つめ直す機会となる一冊だと感じました。

 新書紹介後のディスカッションも充実し、これまでのゼミ活動の成果発表として相応しい時間でした。新書紹介活動には、自分で読書をするだけでは気付かない価値観の発見など魅力がたくさんあります。今後も「読書の楽しさ」ということを積極的に味わっていきたいと思います。

2019年1月14日月曜日

新春歌舞伎鑑賞

担当教員の相澤です。今日は、ゼミの課外活動として国立劇場で新春歌舞伎「通し狂言 姫路城音菊礎石(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)」を鑑賞しました。

開幕前の劇場。
今年度は、異文化に触れることを目的にヨーロッパの演劇やバレエ作品を鑑賞してきました。しかし、翻って日本の文化は知っているかか問われると、実はなかなか接する機会がないのが現実です。そこで今日は、知っているようで知らない、名前は聞いたことがあるけれど実際に見たことはない「歌舞伎」に触れることを目的として、劇場に皆で向かいました。

劇場ロビーも初春の設え。
歌舞伎一家の
某女優さん母子もいらして
テンション上がりました!
さらに今日は、私の友人で日本に留学中のスウェーデン人学生もゼミ生と一緒に鑑賞しました。幕間では、歌舞伎についてだけでなく、日本とスウェーデンの社会の違いについておしゃべりをして、ここでも小さな異文化体験・国際交流を行いました。

幕間にお菓子を
つまみつつ国際交流。
さて、肝心の歌舞伎ですが、新春公演だけあって鮮やかな舞台が目を引きました。内容もトリッキーで、オーディオガイドを借りた学生は説明を聞いてよく理解できたようですが、借りなかった学生(と私)は筋を把握できない部分もあって残念な気がしました。なじみのないものを楽しむためにはガイドという手助けがあった方がいいというのも、今日の学びですね。

とはいえ、歌舞伎の伝統的な演出と今日的な華やかな演出が混ざった舞台は、初見の学生たちにとって印象深いものであったようです。