2022年6月22日水曜日

2022年度ゼミ 前期第10回:新書報告(C班担当)

 こんにちは、三年のNです。暑さも増し、体調を崩しやすくなる時期です。暑さに負けないよう、水分補給などをしっかり行って夏本番を迎えましょう。今回はC班の親書報告をご紹介します。

Tさん:澤井悦郎『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書、2017年)

マンボウが大好きな著者が、マンボウの体のつくりや生態を解説しています。本書を紹介してくれたTさんには、マンボウのひみつについてクイズを交えながら紹介してもらいました。マンボウの生態は未だに謎が多く、その理由として、漁をする文化がないことや、3m2tの巨体が運搬を困難にしていることが挙げられました。また、広い地域に分布しているため調査が難航するそうです。

未だ謎の多いマンボウですが、伊勢長嶋ではマンボウを食べることができるそうです。ゼラチン質でプルプルとした食感が美味しいとのことなので、是非食べてみたいと思いました。

Mさん:上田一生『ペンギンの世界』(岩波新書、2001年)

ペンギンのスペシャリストである著者が、ペンギンの生活や生態、人との関わりの歴史を解説しています。今回、Mさんは、15世紀ごろにヨーロッパの探検家たちによって発見され、今日まで続いているペンギンと人との歴史について紹介しています。ペンギンは発見当初、「のろまな食料」とみなされていたそうです。また、ほかの鳥類と違い、飛ばないことから魚の仲間と考えられていました。このような誤解がペンギンに対する態度を冷酷にしていたそうです。しかし、19世紀の万博博覧会を機に徐々にペンギン愛護の機運が高まり、現在では動物園などで親しまれている動物になりました。

ペンギンは現在愛されている動物であり、過去に冷遇されてきた事実に驚きました。ペンギンへの態度が様変わりしたように、時代や環境で考えは変化していくと知りました。

N:幸田正典『魚にも自分がわかる 動物認知学の最先端』(ちくま新書、2021年)

本書では、魚の鏡像認知について、ホンソメワケベラを用いた実験を中心に報告されています。魚はかつて、人と比べて単純な脳を持つと考えられていましたが、現在では動物の脳構造は基本的に同じであることが最近の研究で分かっています。著者は、魚も人も脳構造に大きな差はない点に着目して魚の鏡像認知の可能性を見出しました。

鏡像認知とは、鏡に映った像を自分自身だと認識することです。マークテストと呼ばれる鏡を用いた実験手法が1970年代に確立し、動物が自分自身を認識できることが確認されました。マークテストはこれまで、オランウータンをはじめ、哺乳類や鳥類などで行われていました。魚は猿などの哺乳類に対して意思疎通が困難なため、本書ではこれまでの哺乳類などのマークテストとは異なるアプローチでの実験が報告されています。著者は、ホンソメワケベラが同種の魚についた寄生虫を払う習性を利用して、寄生虫に似た茶色の色素を注射して実験を行っています。ホンソメワケベラの習性を利用したことが功を奏し、ほぼ100%の個体がマークテストに合格し、魚が自己認識することが発見されました。

筆者は現在も魚の自己認識について研究を進めており、今後の展開にも期待したいです。

Oさん:村上靖彦『ケアとは何か』(中公新書、2021年)

本書では、ケアとはなにか、現象学の視点から個別具体の事例を取り上げて考察しています。著者は、「ケアとは生きることを肯定する営み」と定義し、相手との意思疎通の大切さ、相手の立場になって考えることを説いています。今回取り上げられた終末期患者の例として、「お寿司を食べたい心筋症患者」が挙げられました。通常、医療現場では高糖質の食事は命の危険にさらされるため制限されています。この事例ではケアの視点から、相手の意思を尊重してお寿司を食べることを認めています。当人の意思を尊重した結果、その患者の方は「好きに食べることができた」ことにとても満足されたそうです。また、こういった事例のなかには余命が伸びるといったポジティブな効果もみられたそうです。

適切な医療によって延命を図る以外にも、当人の意思を尊重することがその人の人生にとって良い場合もあるとわかりました。


以上が今回の新書報告でした。動物に関する発表が多く、皆さんの興味の傾向が見えてきたように感じられました。来週は今期最後のA班の報告になります。どのような本が報告されるのか、次回も楽しみです。皆さんお疲れ様でした。