2018年12月19日水曜日

2018年度2期第11回ゼミ

 ゼミ生のKです。2期第11回ゼミを行いました。今回は最初に、今後のスケジュールについての確認をしてから、相澤先生が小島毬奈『国境なき助産師が行く』(ちくまプリマー新書、2018)の紹介をしました。本書は、上下関係が厳しく自分に裁量の自由が認められない日本の医療現場に不満を抱えながら助産師をしていた筆者が、国境なき医師団に入り、様々な経験をしたことが記されているノンフィクション新書です。
 その経験の中でも特に「文化の違い」によって新たな気づきを得る筆者の様子がよく分かります。例えば、一緒に働く自分と価値観の違う人と付き合う時には、「人と過去は変えられない」という言葉を意識していたそうです。変えられないことは受け入れて生きていくしかありません。
 
 次に、相澤先生の特に印象に残った内容として、筆者が過酷な状況だった南スーダンで経験したことを紹介しました。南スーダンにはレイプなどの性被害により、妊娠してしまう女性がいるので、医師たちが体を守るために有効な避妊具を勧めるのですが、現地の女性からは拒まれてしまいます。なぜかというと南スーダンの歴史的な文化には女性が自身の意思に基づく選択をするという概念がないからでした。私は生死を分ける場面に至っても自己決定できないことに驚き、反発する気持ちは起きないのかと疑問に思いました。しかし、現地の人には当たり前のことであり自分の意思で選択した経験がないから、反発心が起こらないのではないかと相澤先生から聞き、納得できました。
 
 それから、筆者の経験をもう一つ紹介しました。経済的に貧しい国では、医師団が持っている「ペン」などが価値のあるものになります。そのため、現地の人は欲しがり、手に入れると高値で転売してしまうことがよくあります。その行為だけを見ると悪いことかもしれません。しかし、生活に苦しんでいる背景に目を向ければ、貪欲に生活を少しでも楽にしようとする行動は自然のようにも思います。そのため、私たちは人や行為を責めるよりも、その行為者を取り巻く環境に目を向けることが必要だと筆者は訴えていました。

 
 相澤先生の新書紹介が終わると、12月8日に行われたゼミ報告会の振り返りをしました。私たちのゼミの良かったところは、声の大きさ、ゆっくり話せた点、時間配分、『自由論』の読解内容、演劇鑑賞の感想内容、予想外の質問への落ち着いた対応などが挙げられました。反省点は、声の抑揚がなく強調部分が分からなかった点、具体的な研究報告の欠如、目線が原稿に行き過ぎた点、スライドの量や内容などが挙げられました。
 
 私Kは発表者でしたが、最も意識したゆっくり話すこと、前に立ってからグダグダした様子を見せないことについては、達成できたので良かったです。授業内で出た反省点を忘れずに今後に生かしていきたいと思います。また、ゼミ報告会の全体を通して、聞き手の視点に立つことと、練習、本番を重ねて得られる経験が良い発表をするために重要ななことだと分かりました。

 
 そして最後に残った時間でJ・S・ミル『自由論』(光文社、2012)の読み合わせを行いました。私が印象に残った箇所は、「ほかの人間の行動の自由に干渉するのが正当化されるのは、自衛のためである場合に限られる」という部分です。なぜなら、今の日本の法律につながる考え方だったからです。特に刑法36条第1項の正当防衛の規定にそっくりだと思いました。今につながるシンプルな原理を19世紀に生きたミルが考えていたのだと知れて、さらに本書への興味がわきました。