2019年11月20日水曜日

2019年度後期 第8回

ゼミ生のNです。今回は『急に具合が悪くなる』宮野真生子・磯野真穂(晶文社、2019)を基に議論を行いました。最初に全員で印象に残った個所を挙げていきました。それを出発点に相澤先生が問いを提示する形で議論を進めていきました。

まず初めに議論の対象となったのは、選ぶとは何かについてです。(pp.50-51)著者はがんを患っており、緩和病棟を探すことになるのですが果たしてこの時の決定は選んだということができるのかというものです。あるゼミ生からこれはどちらかというと腑に落ちるという表現が正しいのではないかという意見が出ました。これは本文に「『出会い』をもとに『ここにしよう』という気持ち」(p.26)という記述があることから指摘されました。

次に話し合ったのはなぜ死を意識するのかについてです。(pp.26-27)このブログを読んでいる方々にも言えることですが、病気で死ぬ可能性と交通事故で死ぬ可能性とでは何が違うのでしょうか。この問題について、ゼミ生で話し合ったものの、明確な答えは出ませんでした。私はこの差は現実感の問題ではないかと考えています。病気というのは医師に診断され病名が付くことによってはじめて病気になります。つまり、病名が付され死ぬ可能性があると医師から告げられることによりそれが、自分の問題になり現実的になります。それに対して交通事故などで死亡は毎日のようにニュースで伝えられています。しかし、それはあくまで多くの車の中の一部のことでしかありえず、自分の問題とはなりえず、現実性が惹起されないのではないのでしょうか。それゆえ、いつ死ぬかわからない病気といつ巻き込まれるかもわからない交通事故で死ぬ可能性は本来同じはずなのですが、現実性の意識の程度が異なり、さらには死ぬ可能性の意識が異なってしまうと私は考えています。

今回の議論を通して私は、命の有限性について考えさせられました。この本の著者である宮野先生はまだまだご活躍が期待されていましたが、病気によって亡くなられました。私はワンダーフォーゲル部いわゆる山岳部に所属しておりまさに命を懸けるという言葉がふさわしいような登山を行っています。命を無駄にしないように常に最善の状態で日々の活動を送りたいと考えました。

*相澤追記:11/26に磯野真穂さんをお招きして図書館でブックトークを開催、ゼミ生も参加しました。その様子はこちらからどうぞ。