2019年11月6日水曜日

2019年度後期 第6回

最近鼻風邪が辛く、朝もなかなか布団から出られなくなってきました。一月前に比べて朝は寒く、日が暮れるのもだんだん早くなり、もう11月であといくつ寝ればお正月なのだろうかと数えてしまう今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。ゼミ生のHです。

今回のゼミ活動は新書発表を行いました。紹介された本はバラエティに富んでおり、ゼミメンバーの好みが現れた回になっだと思います。

始めはKさんが井出洋一郎著『ギリシア神話の名画を楽しく読む』という本を発表してくれました。この本はギリシア神話の名画を著者の考えを織り交ぜながら読んでいく本になっています。ギリシア神話とは紀元前の古代ギリシアから伝わる神話。Kさんはその中からアポロン、アテナ、ヘラクレスの3人を紹介しました。美男で優等生、プライドの高い太陽の神アポロンは有能さを誇張し過ぎて誰もよってこない印象を与える神で、ムキになると復讐の神になってしまうという著者の見解がありました。学問、芸術、武芸をつかさどるアテネ国家の守護神アテナは絵画だと武装姿の若くて凛々しい女戦士といった感じですが、官能的なビーナスに比べると地味に描かれることが多いそうです。神話最大の半神にして波乱万丈の国民的英雄ヘラクレス。ルーブル美術館には逞しいヘラクレスが女性の服を着させられ、女性の仕事であった糸紡ぎの仕事をさせられている絵が書かれているそうです。

次にNさんによる鈴木正崇著「山岳信仰ー日本文化の根底を探る』という本を発表してくれました。著者は宗教系の学者で山と宗教との結びつきを研究している方です。山岳信仰とは山に対して畏敬の念を抱き、神聖視して儀礼を執行する信仰のことです。その信仰が仏教と融合し、修験道に結びついていくと考えられています。日本の山の多くは山岳信仰されているそうです。

次はTさんが串崎真志著『悩みとつきあおう』という本を紹介してくれました。この本は心理学から悩みについて考えている本です。悩みが解決するイメージは3つあり、悩みがなくなること、悩みとともに生きること、共に悩む仲間と出会うことです。感情を擬人化してみたり、うまくいったことを繰り返したみたりするとうまく悩みと付き合っていくことが出来るそうです。私は悩みが多いので参考になりました。

つぎにAさんが田中修著『つぼみたちの生涯』という本を発表してくれました。この本は、つぼみたちがどんな生涯を過ごしているか、身近な植物たちの生き方、生きる仕組みを紹介しています。植物をめぐる不思議な出来事の一つに、春に咲くはずの花が秋に咲いてしまうということがあります。これは、夏に毛虫が葉を食べてしまい、つぼみや葉を越冬芽という寒さから守るための硬い芽に成長することができなくなるために起こるそうです。夜の長さを感受するための葉や越冬芽になる葉がなくなり、そのままつぼみが成長して秋に咲いてしまうということなのだそうです。花が咲くことと気温があまり関係していないことに驚きを覚えました。

次はMさんが武長脩行著『「友だちがいない」は"恥ずかしい"のか』という本を紹介してくれました。ニュースなどで「孤独」の人は世間を騒がすような事件を起こすなどとマイナスのイメージがあリマス。しかし「孤独」は人生を豊かにするものだということを論じている本です。著者は、「孤独」と「孤立」と「孤絶」は全く別物だと考えています。「孤独」とは一人でいる状態を、「孤立」は自分が寂しいと思う状態を、「孤絶」は意識的に周りとの関係を断ち、人里離れた場所に閉じこもる状態を指している言葉だそうです。「孤独」は自立に繋がる部分があるので「孤独力」を日々鍛えることも重要になってくるそうです。

次にOさんが山我哲雄著『キリスト教入門』という本を紹介してくれました。日本では馴染みがないキリスト教。この本は、何も知識がなくてもキリスト教がどのような宗教なのかを理解できる入門書になっています。キリスト教はユダヤ教を改革して作られたそうです。キリスト教には宗派があり、カトリック、プロテスタント、東方正教会と大きく三つに分けられます。カトリックは教皇が最も権威があり、中央集権的な形をとっています。プロテスタントは聖書を重視した宗派です。東方正教会は国、地域で教会が独立した連合体で、イコンという聖画像を窓口に神を祈ることをしている宗派です。

次に私が若新雄純著『創造的脱力 かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』という本を発表しました。現代社会においてちょっとの隙もない完璧な答えを出すことは不可能に近いので、社会的システムや人間関係をゆるめるというアプローチをかけることを提案している本です。その一例として、福井県鯖江市の鯖江市役所がJK主役のまちづくりを行いました。普段ただ喋ってることから問題を取り上げ、サービスを提供するという過程の中で、市役所の職員の名前を下の名前で呼ぶというJKのゆるいコミュニケーションが頼り易い関係性を生み、信頼関係を築いていくということを紹介していました。

前述の通りさまざまなジャンルの発表になりました。つぼみが花を咲かせる仕組みや山と宗教との繋がり、「孤独」が自立に繋がるということは意外と知らないことが多く勉強になりました。他ジャンルからの知識を得られることは非常に楽しいものなので今後の新書報告が楽しみです。