2019年10月23日水曜日

2019年度後期 第5回

 ゼミ生のMです。二期第5回目のゼミを行いました。今回は、2月に行うフランスでのゼミ研修に向けた事前学習の一環として、前回選んだ美術書の内容を発表しました。その後、ルーブル美術館にあった作品が写真で載っている本を眺め、自分のお気に入りの作品について話し合いました。

 まず、Hさんが木村泰司さんの『名画の読み方 世界のビジネスエリートが身につける教養』(ダイヤモンド社、2018)を発表しました。この美術書は絵画の読み方について書かれた本でしたが、この本によると絵画を窓口にして、神様に祈ろうということでした。例えば、キリスト教では偶像を崇拝することを禁止していました。それでも神に祈りを捧げたかった信者たちは、イエス・キリストが描かれた絵画に祈りを捧げたのです。時代によっては絵画が神様の代わりになったと思うと面白いですね。

次は、私Mが佐藤晃子さんの『名画のすごさが見える 西洋の鑑賞辞典』(永岡書店 2016)を発表しました。この美術書では、美を意識させるためにわざと胴体を伸ばしたような絵画を描いた画家や、鉄道というタイトルの絵画なのに鉄道をわざと描かず、雰囲気だけで鉄道を連想させる絵画といった少し不思議な絵画を紹介しました。絵画というのは身体を描くとき、正確に描写しなくてはいけないものだと思っていたのですが、絵画の美しさのためにわざと崩すということに驚きました。
 
その次に、Nさんが池上英洋さんの『西洋美術史入門』(筑摩書房、2013)を発表しました。この美術書では、美術史というものについて紹介しました。そもそも美術というのは教育が行き届かず、文字が読めない民衆たちに何かを伝える手段としても活用されていました。文字で伝えることができなくても絵画を通し、視覚で伝えるというやり方でした。絵画は鑑賞するためだけのものだと思っていましたが、時代によっては異なる目的のために描かれていたことを知りました。

そのあとに、Oさんが中野京子の『美貌のひと』(PHP新書、2018)を発表しました。この美術書では美しい人が描かれた絵画40作品を紹介し、またその絵に映る人物や、人間関係、社会的背景などについても説明している。例えば、「スザンナと長老たち」という絵画では真ん中に女性がいてその隣りに男がいるという絵画ですが、その人々の背景を知っていれば、その絵が不当な裁判にかけられるかわいそうな女性とそれを助けようとする男性ということが分かります。一目見ただけでは分からない奥深さがあることを知りました。

そして、Aさんが中野京子さんの『怖い絵』(朝日出版社、2007)を発表しました。この美術書には、一見するとただ美しい女性が描かれているだけの絵に実は怖い意味が隠されていることを教えてくれます。今回発表された絵画は、フランスの印象派の画家として知られているエドガー・ドガの「エトワール」という油絵です。この絵画にはバレリーナが躍っている様子が描かれているのですが、その後ろの方には黒服の男がいるという少し怪しい部分があります。これはこの時代のバレリーナたちが娼婦のようなもので見に来ている黒服はパトロンだということを知っていればまったく違う意印象になってしまいます。私もこの話を聞く前と後ではこの絵画への見方が180度変わりました。

今回の発表で絵画鑑賞にはある程度の知識がないと本当にその絵が伝えたいことが分からないことに気づきました。ルーブル美術館に行く前にもう少し絵画について勉強しておこうと思いました。