2019年10月9日水曜日

2019年度後期 第3回

 ゼミ生のOです。2期第3回ゼミを行いました。今回は2期に入って最初の新書発表をしました。


最初にTさんが岩本麻奈『フランスの教育・子育てから学ぶ 人生に消しゴムを使わない生き方』(日本経済新聞出版社、2017)を発表しました。フランスの教育やフランス人の考え方を日本と比較しながら語られている本です。フランスの学校のテストでは、答えまでのプロセスやロジックを評価し、選択問題よりも論述問題に重点が置かれています。選択問題での点数で評価する日本とは異なった評価基準がされる事が分かりました。

続いてKさんが鴻上尚史『「空気」を読んでもしたがわない』(岩波ジュニア新書、2019)を紹介しました。この本では、「世間」と「社会」との関係や「なぜ先輩に従わなければいけないのか」と言うような日本社会の「空気」について著者なりの考えが語られています。普段私達が生活している中では、あまり社会の空気について深く考えませんが、実はかなり不思議な事でもあると気づかされる一冊でした。

次にAさんが養老孟司『ぼちぼち結論』(中公新書、2007)を紹介しました。本書は、元々著者が書いているエッセイを新書化した本です。データ捏造問題、自由と不自由、子どもの自殺、温暖化問題など多種多様な社会問題や社会の「常識」の怪しさを指摘しています。この中の温暖化問題では、世界で最もエネルギーを使い最も多くの温室効果ガスを排出しているアメリカが削減すべきだとしています。日本は自国の削減よりもアメリカの排出削減の手伝いをすべきだと指摘していました。

次に私Oが池田利道『23区格差』(中公新書ラクレ、2015)を紹介しました。本書は、東京一極集中が進む東京23区における区や地域の違いや格差を様々なデータを元に紹介しています。災害面では、東部(下町地域)ではリスクが高いのに対し西部では低い事が挙げられます。また、所得に関しては、港区が904万円に対し足立区が323万円のように、同じ23区内であっても大きな違いがあり、非常に多様性に満ちた地域だと気づかされます。

次にNさんが野村啓介『ヨーロッパワイン文化史』(東北大学出版会、2019)を紹介しました。ここでは主にフランスのワインの歴史とワインに纏わる人々との関係性について述べています。フランス宮廷では、ワインは「質」が求められていたのに対し一般庶民の間では質より「量」が求められていました。同じワインに対しても身分や階級で求められているものが異なる事にワインの奥深さが感じられます。

次にMさんが岩波書店辞典編集部『四字熟語ひとくち話』(岩波書店、2007)を紹介しました。本書は、岩波書店編集者が選んだ四字熟語をおもしろおかしく、うんちくを踏まえて紹介しています。私自身あまり四字熟語については知りませんが、本書は難しそうな四字熟語も一つ一つわかりやすく解説されているので、四字熟語に対する知識がつけられそうです。

最後にHさんが三宅理一『パリのグランド・デザイン』(中公新書、2010)を紹介しました。フランスが誇る「花の都」パリの街並みがいつの時代に誰によって整備されていったのかを「グランド・デザイン」という思想から掘り下げています。17世紀後半のルイ14世の時代には、街を美しく都市整備していく事はもちろん道路整備など実用性も確保する事を目指しました。区画整備などの困難も有りながらもそれを克服できた事が現在まで続く美しいパリの街並みに繋がっていると感じました。

2期に入って新書の発表は今回が最初でしたが、とても興味深い本が多かったです。2期の新書発表も気を抜かずに頑張っていこうと思います。