2018年6月6日水曜日

2018年度第7回ゼミ


ゼミ生Nです。第7回ゼミ活動の報告を行います。今回の講義内容は、新書紹介をはじめに行い、次に合宿の取り決め、最後に宿題にあった接続詞の答え合わせという流れとなります。

まず、Rさんが読んできた新書について発表を行いました。紹介した新書は、青木仁の『快適都市空間をつくる』(中公新書、2000年)です。本書の問題意識として、日本の都市、とりわけ東京が暮らしにくいのはなぜか、そしてどうすれば解決できるかというものです。著者は、東京の暮らしにくさの理由として、明治以降の産業優先による都市開発を挙げている。Rさんは著者が提案する問題解決策の内2つ紹介しました。その解決策とは、1つ目が歩くことの復権、2つ目が消費の復権です。私が簡単に説明すると、前者では歩くことを辞め自動車に代替されることによる影響、後者では従来の生産に偏った都市形成から消費に根差した都市開発に向ける重要性を主張されていました。聞いていて、時代の流れによって変化する都市の役割、再創造など興味深い内容でした。たしかに、今の東京を思い浮かべると、多くの店や飲食店が立ち並ぶ光景が目に浮かびます。それは、意図的に従来の都市の形から消費型の都市の形に変化した結果だと考えると、なんとも壮大な都市計画だと感じてしまいます。普段関心の持たなかった都市環境に目を向けようと強く感じるとともに、現在の消費型の都市から将来はどのような都市形態に変貌するのか興味がわいてきます。

次にOさんが読んできた新書について発表を行いました。紹介した新書は、『北朝鮮』という北朝鮮の情勢を取り扱った本です。発表では、オリンピックを巡る政治対決、冷戦の終結から核ミサイル開発など、現代の私たちに関わる北朝鮮問題について紹介し、馴染みやすい内容となっていました。北朝鮮が米国との対抗、交渉のカードとして核兵器を持つに至った背景や思惑など、今より北朝鮮という国の姿を知ることができました。最近、北朝鮮と米国の動きが進展し、より注意深く北朝鮮情勢に関心を持たなくてはならないように感じます。発表を聞いていて、この機会に北朝鮮について学ぼうと思いました。

次に、このブログの筆者、Nの発表です。私が紹介した本は春日武彦の『自己愛な人たち』(講談社現代新書、2012年)という新書です。内容は、様々な事例をあげ、それに対して精神科医の立場から「自己愛」について分析、解説したものとなっています。想像や説明では納得いかない他人の理解しがたい部分を感じさせられます。私たち人間は人間である以上、ある程度の「自己愛」がなくては生きていけません。ある人にとって、他人に認められることで「自己愛」を満たす者もいれば、自分の体を傷付けることによって生の実感を得て、それが結果的に自分の存在証明につながり「自己愛」を満たす者もいます。このように人間の心は一筋縄ではいかない複雑さを持ち合わせ、それぞれ共存していることを本書では感じることができます。なので読み終えた時、なんとも言えない不完全燃焼な気持ちになりました。しかし、人間の愛情を理解しようとすること自体がおこがましい行為であり、理解しがたいものこそ人間の愛情であり「自己愛」であると著者は伝えたいのだろうか。人間の愛情は理解を超える存在なのかもしれません。

最後は、Nさんが読んできた新書、飯島裕一の『健康不安社会を生きる』(岩波新書、2009年)です。新書の内容は健康に関するものです。発表では3章ある内容を簡潔に説明していました。第1章では、健康に対する定義が明確になるほど健康の体を維持する考えから不健康な部分を探す考えにシフトいく現象について、第2章では、「フードファディズム」といわれる食べ物が病気や健康に与える影響を過大評価する問題についてそれぞれ説明されました。そして、最後の第3章ではメタボの問題や運動の関わり合いなどを紹介されました。私自身、どの章の内容も興味深いと思いました。特に、第1章の健康定義の明確化によってもたらされる健康意識の変化については面白いというより不気味な印象を受けました。何かを追求し続け、最後には常軌を逸するまでに陥る、よく小説などで展開されるお話パターンです。必要以上に健康にこだわった生活習慣はどのような姿なのか覗いてみたいと思いました。

以上が新書発表の内容でした。それぞれ、異なるジャンルの新書だったので学ぶこともたくさんありました。ありがとうございます。