2018年6月1日金曜日

2018年度第6回ゼミ

ゼミ生のOです。

 第6回ゼミを行いました。今回は、各自が読んだ新書を発表した後に教科書『はじめよう、ロジカル・ライティング』を読みました。

 新書発表では、最初にNさんが堤未果『貧困大国アメリカ』(岩波書店、2008年)を紹介しました。この本は、アメリカの裏に隠された格差を医療、街、社会制度の面から論じています。アメリカと言うと、「自由な国」や「アメリカンドリーム」というイメージが強いですが、その裏には高額な医療費によって治療を受けられない人が大勢いるという医療格差の問題があります。本書によれば、この背景には、自由競争による貧困層の増加と、それに伴う財政赤字の発生があるとのことでした。報告を聞いて、充実した医療制度と財政面をうまく両立するのは、非常に難しい事だと感じました。これからの将来、高齢化が進む社会で生きる私達が、真剣に考えなければならない問題だということが伝わりました。

 次に相澤先生からは、鈴木透『スポーツ国家アメリカ 民主主義と巨大ビジネスのはざまで』(中央公論新社、2018年)を紹介しました。この本は、スポーツの歴史、実践からアメリカ社会を読み解こうとしています。誰もが平等にフェアプレー精神のもとで競い合い、楽しむはずのスポーツ。しかし、多民族国家アメリカでは、長らく黒人や女性は競技に出場すらできない事がありました。今では、日本人メジャーリーガーがいたり、多くの黒人選手も活躍していますが、スポーツの理念とは異なることが過去に平然と行われていて悲しいと感じました。今の日本大学タックル問題とも関連しますが、スポーツをする人みんなが、フェアプレー精神と敬意を持つ事が重要だと思います。

 次に私Oが、木村幹『韓国現代史』(中公新書、2008年)を紹介しました。本書は、日本統治時代を経て成立した「大韓民国」の歴代大統領の経験や体験を通して描かれています。建国してすぐに起きた朝鮮戦争(1950~)、日韓関係、国内政治、などの難しい問題に対して、時の大統領は何を考えていたのかがわかる一冊です。現在、北朝鮮との緊張関係から一転して、対話への動きを見せる朝鮮半島情勢。韓国の政治史を見ると、朝鮮戦争以降、幾度となく「対話と圧力」を繰り返してきた事がわかります。急変する国際政治を考える上では、過去の歴史に学べる事が多いということが伝わりました。

 次にRさんからは、釘原直樹『人はなぜ集団になると怠けるのか「社会的手抜き」の心理学』(中公新書、2013年)を紹介しました。この本は、集団で仕事をすることのデメリットについて書かれています。本書で語られている「社会的手抜き」とは、集団で作業を行う場合、1人当たりの努力量が低下する現象です。社会的手抜きの要因としては、自分の努力が集団全体に影響せず、一生懸命仕事をする必要が感じない事。他者が努力せず、自分だけが努力するのが馬鹿らしいと感じる事などが上げられています。私は、集団で作業をした方が効率が良いと思っていましたが、実際には集団の方が手を抜きやすい事は勉強になりました。

 最後にKさんが、髙谷清『重い障害を生きるということ』(岩波書店、2011年)を紹介しました。この本は、1960年代後半、障がい者に対する理解が不十分だった時代の著者の苦悩など、障がい者と社会とのあり方について書かれています。60年代と現代では、障がい者に対しての理解が進み、障がい者福祉が発達しています。しかし、まだまだ完璧に理解しているとは言いがたいです。長い間、障がい者福祉に立ち会った人の経験を知る事は、「人の命」について考えさせられ、良い社会を築き上げる中でのヒントになるのではないかと考えました。

 新書発表の後は、教科書を使って「つなぎの言葉」についてやりました。文章を書く中で、適切なつなぎ言葉を使わないと、後の文章との関係や意味がうまく伝わらなくなってしまうと感じました。