2014年6月18日水曜日

書評:『友情を疑う』

清水真木『友情を疑う』、中公新書、2005年

本書は、哲学史における様々な友情論を紹介し、友人や友情に対して期待されてきた役割や価値を考えるものである。

私たちが手にする友人や友情に関する本は、その著者が自分の経験を基にして“上手く人と付き合う方法”を説くハウツーものが多いのではないだろうか。しかし、本書はそのような実践書の類ではない。友人や友情の意味を明らかにしようとした哲学者たちの遺した言葉を辿り、そもそも「友人」と呼ぶ人はどのような条件を満たしているかを論じる。人付き合いのハウツー本を多く読んできた人には新鮮に感じる内容であろう。

本書では、主に6人(アリストテレス、キケロ、モンテーニュ、シャフツベリ、ルソー、カント)の哲学者の思想が紹介されている。哲学は難しいというイメージを持っている人は、第1章や2章の内容は当時の社会状況の違いから理解しにくいかもしれない。だが、3章からは、私たちが体験したことがあるような具体例が多用されるので、とてもわかりやすい。自分の経験に引きつけながら、哲学者の考えに共感や批判といった自分なりの意見を持つことができるだろう。読後、「哲学はやはり難しく、全く理解できない」と感じる人は少ないはずである。哲学の面白さが伝わる一冊だ。
(秋葉)