2022年10月5日水曜日

2022年度後期第3回:新書報告(Ⅾ班)

こんにちは。二年のKです。10月に入り、季節の変化を日々実感する毎日です。肌寒い日が増えてきたので体調にお気をつけて過ごしてください。さて、本日は後期最初の新書報告を紹介していこうと思います。

Hさん:土井成紀『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版、2022年)

本書は、昨今耳にするようになったメタバースについてビジネスの視点で解説した一冊です。そもそもメタバースとは何でしょうか。メタバースとは「インターネット上の仮想空間」や「仮想空間において行われるサービス」のことを指すそうです。メタバースはその性質上ゲームやヴァーチャル事業と相性がよく、とても期待されている事業でもあります。そんな事業には、これから多くの企業が参戦することが予想されています。中でもGAFAと呼ばれる大企業は確実に参加するといわれています。メタバースによって私たちの生活が現実から仮想の世界に移っていく未来も、そう遠くはないのかもしれません。

最新技術にかかわる話で興味深い内容でした。発表の際にメタバースを映画「サマー・ウォーズ」に登場するOzに例えていて、とても理解しやすかったです。

Tさん:五十嵐敬喜『土地はだれのものか~人口減少時代の所有と利用』(岩波新書、2022年)

現在の日本では少子高齢化と都市部への人口集中が進んでおり、空き家問題が発生しています。この空き家問題に解決のめどはたっていません。解決が難しい理由として、地方公共団体の数の減少や空き家に対する措置の難しさが挙げられます。空き家への対応が難しい事情が二つあります。一つ目は費用が掛かるということです。壊すのにも一定以上のお金がかかり、またその予算にも限りがあります。二つ目に土地の所有権の強さがあります。このような多くの課題を抱えている空き家問題には全く新しい解決方法を提示することが急務であると著者は述べています。

自分の周りにも空き家が存在しているため他人ごとではなく親身に発表を聞くことができました。空き家はその土地を有効活用できていないという点でも大きな損失であり、解決が急がれる問題であると感じました。

Kさん:除本理史、佐無田光『君の街に未来はあるか?〔「根っこ」から地域をつくる〕』(岩波ジュニア新書、2020年)

日本はわかりやすく東京一極集中の状態です。政治、経済が都市部に集中する一方で、人口等も地方と首都圏では格差が存在しています。しかし、こういった現状とは裏腹に地方に移住したいと思っている人は増加傾向にあります。移住を希望する人たちに実際に行動してもらうためには強い地域性を築くことがカギになります。そして地域の根っこをつくるには二つのことが重要になります。まずは住人が地域の良さを知ることです。その次に商業的なプロモーションをするのではなく本当の良さだけを発信することが重要です。もし地域の特産がなければ新しく作ることも一つの方法だと著者は述べています。

発表を聞き、地方の人達による地域おこしへの努力がひしひしと伝わってきました。日本は東京だけで成り立つわけではありません。地方それぞれとの連帯があってはじめて国が機能します。地方の人口減少は深刻な問題であり、その地方に住む人々だけではなく日本全体で考えるべきだと思いました。

Oさん:山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?相対性主義と普遍主義の問題』(ちくまプリマ―新書、2022年)

本書では「みんな違ってみんないい」という言葉を通して相対主義と普遍主義の立場を解説しています。相対主義とはみんな違ってみんな良いという相対的なものの見方や考え方をする立場です。普遍主義とは事実が確固として存在するという立場です。発表では「正しさ」とは何なのかという話題から派生して、正しい情報を見分けるポイントを二つ介していました。一つ目は情報の出どころを確認すること、ネットだけではなく本などからも情報を得ることが大事です。二つ目は複数の意見と比べ判断することです。

新書発表をしている私たちは人一倍情報の扱いに敏感であるべきです。本から得た情報というだけで無条件に信じ込むことは危険だからです。本の情報は古すぎないか、著者の専門は何なのかに気を付けて本を選ぼうと改めて思いました。

Kさん:三井秀樹『ガーデニングの愉しみ 私流の庭づくりへの挑戦』(中公新書、1998年)

本書は大学の講師がガーデニングに励む奮闘記です。著者がガーデニングを通して気づいたことをまとめています。庭師には自分なりの理想の庭像があります。その理想を目指して庭造りをするためそれは重労働であり、計画性が必須の作業になります。しかし相手は植物。そう簡単にはいきません。植物が自分の想像通りに育つことは稀です。そんなときの対応で庭師は二つに分けることができます。植物の偶然性を管理しようとする模型職人とその偶然性に付き合い、受け入れようとする庭師の二つです。ガーデニングを楽しむためには後者のメンタリティが必要であると著者は述べています。そしてガーデニングをするうえで最もダメな考えが「育て方は正しかったのか」という自問自答です。失敗はあっても間違っている育て方などはないと著者は述べています。

植物についての発表でしたが多くのことに通じることだったと思います。私たちの力ではどうしようもないものが多く存在します。その時真っ向からぶつかるか、受け入れ、うまく付き合うかで人生の彩も変わるのかもしれません。

今回の新書報告では以上の5冊が紹介されました。どれも興味深く、印象に残る部分が多かった発表でした。

相澤追記:私の都合で、今回のゼミをもってお休みをいただきます。残りのゼミは、早尾貴紀先生がご担当くださいます。ここまで頑張ってくれたゼミ生に感謝するとともに、今後の活躍を期待します。