2022年10月12日水曜日

2022年度後期第4回:新書報告(E班)

 こんにちは、3年のNです。すでに10月も半ばになり、肌寒さが増してきたように思います。そして、今回から新体制での新書報告になります。

Sさん:高水裕一『宇宙人と出会う前に読む本』(講談社ブルーバックス、2021年)

本書は、宇宙人のような異なる知的生命体に出会ったときに、どのように向き合うかについて解説した一冊です。宇宙にあるカフェで会話をしているという物語仕立てで話が進み、比較的とっつきやすい本という印象を受けました。宇宙人との対話の例として、地球に住む我々が自己紹介をする際、「地球出身です」と答えても、相手は「地球」という単語を知らないため理解できず、コミュニケーションが円滑に行われない、というものが紹介されました。当たり前に感じている自分たちの常識が、どこでもそのまま通用するわけではないことを思い知らされます。地球の枠組みを超えた宇宙人という存在を考えることによって、より広い基準での教養が身に着けられると思います。

Sさんは、例えば宇宙人が攻めてきたときにコミュニケーションを取れれば分かり合える場合もあるのではないか、と話していました。地球人同士のスケールでも同じ、自分のもっている常識を見つめなおすことは、異なる価値観の相手とのコミュニケーションの際に必要だと感じられました。

Yさん:小坂国継『西田幾多郎の哲学ー物の真実に行く道』(岩波新書、2022年)

「自分の本質とは何か」を問い続けた西田幾多郎の哲学を解説した一冊です。Yさんが紹介してくれたのは「純粋経験」についてです。これは主観と客観が未分化の状態のことを指します。Yさんの説明を聞いて、私は、経験の蓄積によって得られた感覚を抜きにして、そこに映る事象そのものを捉えることだと理解しました。

哲学の話題は難しく、どう理解したらよいのかわからないことが多くあります。主観を抜きにした純粋経験というものはあり得るのかという質問もありましたが、Yさんは、純粋経験とはなにか、本質とはなにかを問い続けることが大切と。今回はゼミ生の活発な質問もあり、ゼミ内でよかったと思います。

Tさん:本田創造『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書、1991年)

日本国内でも話題になったBLM (black lives matter)に関心を持ったTさんが紹介してくれました。アフリカ大陸にルーツを持つ黒人の歴史について書かれた書で、奴隷制に関連した話題を紹介しています。16~17世紀、黒人は奴隷であり、人ではなく資産として扱われていました。18世紀には奴隷貿易が中止されましたが、奴隷制自体は存続しました。19世紀に反対協会が設立され、奴隷制に反対する勢力が徐々に出てきました。その後、奴隷解放宣言によって奴隷制が廃止されたのが1863年です。奴隷制がなくなったものの黒人に対する人種差別は続きました。様々な権利運動の活発化した1970年代に入り、黒人への人種差別はようやく改善の方向に向かいだしたそうです。

この新書は2001年に出版された本で、少し情報が古いため、現在も残る問題については記述しきれていませんでした。今起こっているBLMなどの問題については、この本に書かれていることを踏まえつつ、改めて考えていく必要があると感じます。

Mさん:齋藤孝『読書力』(岩波新書、2002年)

本書は、読書をする習慣がない人向けに、著者の考える読書法を紹介した書です。著者は、読書をするうえで特に、娯楽小説や推理小説ではない学術的な読書を読むことを推奨しています。理由として、学術的な書は、娯楽小説などと比較してある程度緊張感をもって取り組むことができると述べています。また、著者は、練習や積み重ねによって上達するものであるという点で、読書とスポーツを似たものだと捉えています。Mさんは本書のなかで、上手な読書をするための4ステップを紹介してくれました。

巻末には著者おすすめの文庫本が100冊紹介されているそうなので、機会があればいくつか読んでみたいです。秋学期が始まるこのタイミングで改めて読書のやりかたについて確認できてよかったと思います。

Iさん:伊勢武史『2050年の地球を予測する』(ちくまプリマー新書、2022年)

生物学の博士である著者が、環境問題の基礎知識を解説している一冊です。Iさんはそのなかから球温暖化について取り上げて紹介してくれました。

地球温暖化は二酸化炭素やフロンの増加によって発生する問題です。環境保全への取り組みが進んでいますが、それでも平均気温は上がり続けています。著者は対策の一つとして、環境保全とビジネスを組み合わせることを提案しています。私は、著者は生物学者ながら、柔軟な姿勢で環境問題に取り組んでいると感じました。

著者は、本書を読んで環境問題に対する姿勢を読者に少しでも身に着けてほしいと考えています。普段はあまり意識しない環境問題ですが、Iさんの紹介を聞き、私も普段から心構えを持っておこうと思いました。 


今回の新書報告も様々な分野の話題が取り上げられました。この時期は気温の変化も著しく体調には気を遣うと思います。次週も気を付けて報告に取り組みましょう。