2022年10月19日水曜日

2022年度後期第5回:新書報告(F班)

 こんにちは!3年のSです。昼間も寒いですが、夜は特に冷え込むようになってきました。羽織やストールなど、暖かくできるアイテムを身に着けてお過ごしください。それではF班の新書報告を紹介します。


Uさん:瀧口美香『キリスト教美術史』(中公新書、2022年)

本書は、読者に芸術鑑賞を楽しんでもらうために、主にキリスト教美術を味わうのに必要な知識を三つ紹介しています。

一つ目は、偶像崇拝です。キリスト教は一神教で、唯一の神を信仰します。従って、描き手によってイメージが変わってしまう絵画は禁止されていました。では、なぜ教会や美術館に絵画が展示されているのか。それは、絵で表現すると、書物に比べ簡単に布教することができたからです。このため、聖書を基にした絵画が数多く描かれてきました。

二つ目は、表現技法の発展です。絵画に限らず、建築技術も時代と共に発展しました。例えばステンドグラスです。電気がなく、日光で明かりを得ていた人々は、窓からさす光を有効活用しようと窓ガラスに注目しました。その結果、自然と融合した美しい作品であるステンドグラスが生み出されました。このように、時代背景と技法の発展には密接な関係があります。

三つ目は、東西の違いです。絵画は、大きく二つに分けることができます。それは、奥行きがない絵と、遠近法が用いられた写実的な絵です。東の地方では、一神教の意識が強く、画法を統一して描いていました。西の地方では、より伝えやすくするために、描き手が想像する姿で自由に描かれました。よって、西の地方では時代と共に技術が発展し、写実的な絵画が今も残っています。美術展によっては、西と東で絵画を分けて展示している場合もあるそうです。

以上がキリスト教美術作品を楽しむために必要な三つの知識です。家族でよく美術館に行くので、全員で1度読んでみたいと思います。美術館に行く予定がある方、興味がある方は是非読んでみてください。


Kさん:渡辺正峰『脳の意識 機会の意識』(中公新書、2017年)

本書は、脳神経科学の専門家である著者が、脳と意識の関係を解説した一冊です。

意識とは、感覚的体験を指します。感覚的体験とは、何かを思い出そうとする何とも言えない感覚、アイデアをひらめいたときの感覚です。この感覚が脳のどの部分で起こっているのかを見つけると、感覚的体験のメカニズムを知ることができます。また、メカニズムの解明によって、自我や意識の本質を理解できると考えられています。

脳と意識の関係を探るために、1990年代後半から実験が行われてきました。その結果、意識と連動する脳の位置は特定できましたが、意識を担う部分の特定にはいまだに至っていません。そこで著者は、脳を機械で再現することで、脳の意識のメカニズムを見つけ出せるのではと考えました。なぜなら、脳の仕組み自体は少し複雑な電気回路であり、自我と意識を除くと、機械と同じような仕組みになっているからです。再現していく過程で脳と機械の違いを見つけ、意識のメカニズムが発見できると著者は予測しているそうです。

現在でも、脳と意識の関係についてわかっていることはほとんどありません。しかし、いつの日か意識の神秘が解き明かされ、私たちの意識が機械に乗り移ることもできるのではないか、とKさんは話していました。SF映画にありそうな話ですが、Kさんの報告を聞いて実現するかもしれないと思いました。機械に意識を移せるようになれば、身体が古くなっても新しいものに交換できるようになります。将来、不死の時代が来るかもしれません。


Nさん:岡村均『時計遺伝子-からだの中の「時間」の正体 』(講談社ブルーバックス、2022年)

本書は、体内時計とは何か、深夜にコンビニに行くと元気になるのはなぜか、その理由を時計遺伝子との関係から解説しています。

時計遺伝子とは、体内時計をコントロールする遺伝子です。時計遺伝子は24時間間隔で、光の明暗を用いて体を管理しています。例えば、朝に起きて夜に寝る生活リズムが挙げられます。哺乳類は目の奥に「視交叉上核」という時計の役割を持った領域が存在します。視交叉上核は、光の情報を目から受け取ります。起床時に浴びる太陽光は目覚めの信号と決まっているため、目を通して視交叉上核に送ることで身体を動かし始める仕組みになっています。

では、なぜ深夜にコンビニに行くと元気になってしまうのか。それは、コンビニの光が太陽光に似ているからです。目からコンビニの光を浴びることで視交叉上核が反応してしまい、朝が来たと勘違いします。実際は、朝の太陽光ではないため、昼間のように活発ではありません。しかし、2時間程活動が延びてしまい、夜更かしの原因になります。

以上が時計遺伝子と体内時計の関係です。明るい時間に活動し、暗い時間は休むリズムが、狩りを行っていた時代から現代まで受け継がれていると考えると、不思議な感覚になりました。健康に大切な早寝早起きを心掛けたいです。


Tさん:伊藤比呂美『女の一生』(岩波新書、2014年)

本書は、質疑応答形式で書かれた、女性の一生を見るかのような一冊です。Tさんは二つの質問と答えを紹介しました。

一つ目は、若い女性によるダイエットに関する質問です。流行りの服は細身で、華奢な女の子がかわいく着こなしているから自分も痩せる必要がある。しかし、どうしたらよいかわからないとの質問でした。著者の答えは、「なぜ痩せたいかを考える」でした。細身で華奢な女の子がかわいいのは、世間が作り上げた価値観だからかわいくて当たり前。あなたはその価値観にとらわれずに、自分が着たい服をきるべきと答えが述べられていたそうです。

二つ目は、恋愛がうまくいかないという性と恋愛に関する質問でした。著者の答えは、「自分と他人をしっかり区別できるようになる必要がある」でした。男女の恋愛でよく起きる失敗は、自分と他人を同じように扱ってしまうことです。まずは、私は私と認識できるようになること。次にあなたはあなた、と区別することで恋愛上手になれるそうです。

Tさんは女性について知ることができると思い、本書を読んだそうです。今の自分が知りたかったことは書かれていなかったと話していましたが、これからも様々な人と関わる機会があります。私は、今知識を生かせるタイミングが無くても、将来参考になる日が来るのではないかと思いました。他の質問と答えが気になったので、読んでみたいと思います。




以上F班4人の新書報告でした。他の班に比べ報告人数が少ないですが、1冊の内容が濃く、どれも印象に残る報告でした。次週はD班による2回目の報告です。体調に気を付けてゼミ活動に取り組みましょう!