2020年6月3日水曜日

2020年度前期 第6回

相澤ゼミ経営学部3年のNです。今回は前回と同じく新書報告を行ったので、その活動を発表順に記載していきたいと思います。

相澤先生:三井誠『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書、2019)
この本は昨今アメリカで起こっている科学不信について取材、考察したものです。科学先進国のアメリカから「地球は本当に丸いのか?」「本当に人はサルから進化したのか?」という話が出てくるのは驚きがありました。また、こういった事例はアメリカだけでなく世界中で起こっているのではないかという先生のコメントには驚かされました。一方、質疑応答でTさんが仰っていたような「科学的という言葉を信用し過ぎなのも危険ではないか」といった指摘にも共感しました。「科学的に~」と言われると説得力があるように思ってしまいますが…本当にそのデータが正しいのか疑問に思わないのは危険かもしれないと感じました。データは、都合のいいように見せることもできるため、ニュース等で報じられていることも鵜呑みにしすぎないことが大切であると感じました。

Tさん:鎌田雄一郎『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書、2019)
この本はゲーム理論について初心者向けに書かれたものです。前回Tさんが紹介された『多数決を疑う』は集団の意思決定が主(集団の利益優先)だったのに対し、今回の『ゲーム理論入門の入門』は個人の意思決定が主(個人の利益優先)であり、その違いが面白かったとの事でした。「意思決定」という同じ分野であっても視点を変えると違った面が見えてくるため、同じ分野の本であっても読み比べを行ってみる事が大切であると再認識しました。こうした話は難しいイメージがありますが(実際、話の内容は結構難しかったようですが)、Tさん曰く読みやすかったとのことなので、自分でも読んでみたいと思いました。

Iさん:森島恒雄『魔女狩り』(岩波新書、1970)
この本は中世ヨーロッパで行われていた魔女狩りに関して書かれた本であり、根拠のない告発から拷問にかけられていった人々の実態等が描かれています。こうした魔女狩りは宗教権力の衰退とともに下火になりますが、それまでに多くの無実と思われる方々が犠牲になりました。実際に行われた拷問に関することも詳細に書かれており、読んだIさんもショックを受けていました。当時信じられていた事が、後世から見れば非現実的なものであるという事象はこの他にもあり(前回Sさんが紹介された『ガリレオ裁判』での天動説等)、現在の価値観を信じすぎて排他的にならないよう、気を付けていきたいと感じました。

自分(N):小林快次『恐竜時代Ⅰ 起源から巨大化へ』(岩波ジュニア新書、2012)
この本は恐竜の進化を当時の気候や生態系に絡めて考えるものです。恐竜が巨大化していった過程等を知るとともに、何故そうなったのかという背景や実際の発掘調査についても知ることが出来面白かったです。この本を読んで私は、物事の結果だけでなく「何故それらが起きたのか」という背景を知ることが大切であると感じました。背景を知らなければ本質を理解できず、「理解したつもり」で終わってしまうからです。これからは、話を聞いて「理解したつもり」にならないようにしていきたいと感じました。

Aさん:渡部泰明『古典和歌入門』(岩波ジュニア新書、2014)
この本は和歌について解説したものです。和歌の意味だけでなく、制作背景や込められた思い等も書かれているようで、和歌をあまり知らない方・より深く知りたい方のどちらも面白味を感じる本ではないかと思いました。質疑応答にて現在の国歌の元となった和歌を紹介してもらえたのですが、意味を理解することで今まではどこか遠い存在であった国歌が少し身近に感じられるようになりました。和歌の解説書となると、単調で少し退屈に感じる…というイメージがあったのですが、この本であれば楽しく学ぶことが出来るのではないかと感じました。

Mさん:左近司祥子『哲学のことば』(岩波ジュニア新書、2007)
この本は「恋する気持ち」「死を考える」といった項目ごとに哲学者の言葉を紹介し、それに対して著者の解説・見解を述べる本です。特に私の中で印象に残っているのは、「恋する気持ち」の解説で述べられている「目」に対する考え方です。これは「相手の目になって物事を見ることで、違った世界を見ることが出来る」「目と目を合わせることで相手へ自身の思いを伝えることが出来る」という考え方です。目は口程に物を言うという言葉にあるように、人の目というのは相手に対して様々な印象を与えるという事を改めて考えさせられました。また、視野を広く持つことは様々なことへの対応が可能となることから、恋だけでなく普段の日常生活に直結する考えであると感じました。Mさんは、哲学は難しいものではありますが、生活に身近なもの・活かせる部分があり、面白かったとコメントしていました。著者の方の解説や例え話もついているので、哲学の入門として読んでみるのに最適な本かと感じました。

新書報告を行ってみて私が感じたのは、多角的に物事を見ることが出来るということです。新書報告で他のゼミ生の発表を聞くことによって、一人で読んでいた場合には出会わない本・自身とは違う考え…といったものに触れることができます。それによって、自分一人では知ることのできなかった知識や考え方を得ることが出来ます。こうした学習を続けていく事で、自分一人でも多角的に物事を見られるようになっていくのではないでしょうか。

最後に授業形態に関する報告をしたいと思います。新型コロナウイルス流行に伴い、相澤ゼミではZOOMを活用した新書紹介・ネット記事を読むといった活動をしばらくの間行っていきます。次回は講談社(ブルーバックス)の新書紹介です。岩波新書と比較して何か違いがあるのかといった点にも注目していきたいと思います。ありがとうございました。