2019年12月11日水曜日

2019年度後期 第10回

 ゼミ生のOです。今年最後のゼミを行いました。今回は、最初に1214日に行われる総合教育ゼミ発表会の仮発表をしました。その次に前に課題として読んだ芝健介『ホロコースト』(中公新書、2018)から各自が感じた事をディスカッションしました。最後には、前回の授業で出された「ありがとう」と「お疲れ様」の違いについて意見を交わし合いました。


 最初に、発表担当のゼミ生がPowerPointを使ってゼミ生と相澤先生の前で仮発表をしました。仮発表は、今までゼミ生同士が自主的に集まって準備した結果、以前の仮発表よりもさらに上達した印象を受けました。本番では、今まで練習してきた成果を発揮できる事を願っています。

 仮発表の次には、課題図書として読んで来た『ホロコースト』についてのディスカッションをしました。まず、この本を読む目的としてナチスが政権獲得以降に行われたユダヤ人等に対しての「迫害の実態」を知る事にあります。相澤ゼミでは、来年2月にフランス・パリに海外研修に行きます。研修先では、ホロコースト記念碑訪問をするのでかつてヨーロッパで起きた負の歴史を知る為の事前学習という目的です。
 本の内容としては、1930年代のナチス政権後のユダヤ人に対する迫害がどのように行われてたのか、時系列に述べています。当初、ナチスはドイツ国内にいるユダヤ人を「追放」する目的で様々な抑圧を加えます。この時点では、まだ大規模な「虐殺」が目的ではないことが意外に思えます。しかし、1939年にポーランド侵攻でさらに多くのユダヤ人を抱える事になると、次第に「追放」する事が困難になりました。1941年には、当時ポーランドの次に多くのユダヤ人を抱えていたソ連に侵攻します。独ソ戦以降になると、虐殺の対象はユダヤ人のほか障害者、同性愛者、共産主義者、ソ連軍捕虜へと拡大して行く事になります。この様にして、「追放」から「絶滅」へと目的が変わるほか、虐殺対象者の拡大というのがこの一冊からは伺えます。
 ディスカッションでは、「1930年代のユダヤ人は一時的なものだと思っていた」という事や「ユダヤ人の規定は曖昧だった」というような、本を読んだ上での気づきがありました。一方で、「国を持たない民族は弱いのか」や「当時のユダヤ人は人として見られていたのか」というような意見も出ました。

 今回のディスカッションでホロコーストについて考えると、「小さくすれば差別というのは日常にありふれている」という意識を芽生えさせられました。
 最後に、「ありがとう」「お疲れ様」という言葉の意味についての考えをディスカッションしました。そこでは、「お疲れ様」はコミュニケーションや労いの意味があると感じ取れます。一方で、「ありがとう」は感謝の他、「~してくれた事を認めてくれた」時に使う言葉ではないかという意見が出ました。普段私達は全然意識せずに使っている言葉ですが、改めて意味について考え直すと実は「多様な意味」が含まれている事に驚かせられました。

 今回は年内最後の授業でしたが、来年には海外ゼミ研修があるので、今まで読書で身につけた知識を現地で確かめて行きたいと思います。