2025年11月12日水曜日

2025年度 後期第7回:新書報告

こんにちは。経営学部3年のSです。

すっかり寒くなり、温かい食べ物が恋しくなる季節となりました。先日、凍えながら食べたおでんが絶品でした。また、インフルエンザが流行っていますので、体調にはお気をつけてお過ごしください。さて、今回はE班による新書報告です。

Kさん:増田隆一『ヒトとヒグマ』岩波新書、2025年

 本書は、近頃ニュースでも取り上げられるクマについて、その生態や人間生活との関係について考察した一冊です危険な動物としてのイメージが強いクマですが、歴史的に見ると信仰の対象として敬われてきた点には驚きました。

 まず、クマは餌の少ない冬に冬眠を行います。そして冬を超えると、また地上へ出てきます。この一連の行動を昔の人々は死から蘇ったと認識しました。クマをカムイ(神)として扱いました。崇拝方法は地域によって違いがあり、アイヌでは儀礼、ヨーロッパでは祭りを行いクマを崇めていました。

 他にも、人的被害を減らすためにクマの個体特定が必要です。そのために、AIによる顔認証や唾液による特定などが期待されています。

 この報告を聞いて、このようにクマを単なる害獣として見るのではなく、歴史的な関係や文化を踏まえて理解することの大切さを理解できました。クマ被害が増える中、それでも駆除しづらい現状の背景が見えた気がしました。

Hさん:野口恵子『失礼な敬語』光文社新書、2013年

 本書は、フランス文学者であり、人間の言葉について考察している著者が、敬語の使い方や正しい意味、敬語を惰性で使っていないかについて解説した一冊です。Hさんは敬語の中でも「〜させていただく」に着目して、報告してくれました。

 「〜させていただく」には二つの意味があります。一つ目は、「訪問させていただいてもよろしいでしょう」といった表現に使われる、相手への恩恵や感謝を伝える意。二つ目は、「会社をやめさせていただいてもよろしいでしょうか」といった表現に使われる、自己主張の意味があります。このように、同じさせていただくでも場面や使い方によって異なる意味になることがあります。

 また、「送金させていただきます」や、「卒業させていただきます」のように無用な敬語も存在します。これは、「送金しました」で伝わる言葉を敬語を使いたいという思いから、意味のない「させていただきます」を使ってしまう例です。

 この報告をきいて、普段なにげなく使っている敬語でも、意味や場面を間違えると失礼になってしまうことを改めて実感しました。相手との関係や状況に応じて使い分けることの大切さを感じました。私は現在就職活動中なので、吸収できるものが多い発表でした。

Sさん:田中修『雑草散策』中公新書、2025年

 本書は、植物生理学を専攻している筆者が、雑草の季節ごと違いや生存戦略をまとめた一です。Sさんは雑草の例として、どくだみとススキを紹介していました。

 まず、どくだみは特殊な匂いを発することで知られています。そんなどくだみの漢字表記には二つの説があります。一つ目は特殊な匂いを毒とし、その毒をためているという説から「毒留」。二つ目はどくだみの殺菌作用により、毒を清める効果から「毒矯」と表記する説です。また、どくだみの匂いには虫から食べられないようにしたり、病原菌からドクダミ自体を守る効果もあります。

 次に、ススキを見てみましょう。ススキは葉にケイ酸をためていて、そのケイ酸により葉を硬くしています。その硬さは葉で手が切れるほどです。そんなススキは、枯れた後も地中にのこり、これがプラントオパールとよばれる物に変化し、宝石と呼ばれています。このプラントオパールをみれば、ススキの年代も分析できます。

 この報告を聞いて、このような普段気にすることのない雑草に目を向けることで、Sさんは散歩が楽しくなると言っていました。私もただ歩くのではなく、この発表を思い出して、日常に隠れている雑草に目を向けたいと感じました。また、私は野菜が好きなので、食べることのできる雑草を探してみたいです。

Iさん;宮下紘『プライバシーという権利-個人情報はなぜ守られるべきか』岩波新書、2021年

本書は、現代社会で度々問題となっている個人情報について、その危険性や現代技術との関係、制度について解説した本です。

 Iさんはまず、ナチスドイツによる国勢調査を、個人情報の危険性例として挙げていました。些細な情報が積み重なることでユダヤ人を特定する材料となり、大虐殺へとつながってしまった歴史があります。これは、個人情報が権力によって使用されてしまう危険性があることを表しています。

 個人情報にはどこまでが保護されるべき情報なのかを明確にする必要があります。本書では、「公然と知られてはならないこと」が保護対象となるとしています。また、必要以上に個人情報を管理しすぎると、面会ができない、緊急時には、支援が届かないといった事態が起きる場合があります。緊急時には生命の保護を優先することが大切です。

 この報告を聞いて、個人情報を守ることは、ただのプライベートの問題ではなく、人権や歴史的な問題とも深く関係していることに驚きました。個人情報は自分の情報すべてであり、プライバシーは自分の知られたくない情報です。この違いを知れたことで、自分の中で曖昧だったものがハッキリしました。

 今回の発表は、比較的新しく発行された本が多くありました。内容もタイムリーな話題であふれ、より知識を深めることができました。さて、今学期の新書報告も残り1回となりました。私自身、1年間取り組んできて、読書スピードが上がり、自己表現能力に自信がつきました。最後の新書報告でも、聞き手が何か一つ賢くなる発表を意識して臨みたいと思います。

と書きましたが、次回は映画を鑑賞します。