2022年5月18日水曜日

2022年度ゼミ 前期第5回:特別企画講義「女性運動の思想史」

 こんにちは。3年生のDです。梅雨の走りともいわれ、雨がよく降る今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。5月と言えど、晴れると少し汗ばむほどの陽気。気温差が激しく体調を崩しやすい季節ですので、どうぞ皆様、お体に気をつけて、健やかな毎日をお過ごしください。

さて、今回のゼミは「SDGsとダイバーシティ」という特別講義に参加しました。相澤先生がゲスト講師として担当された「女性運動の思想史」という講義を受講しました。

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」との関連で、日本の妊娠中絶に関する様々な課題とそれらにまつわる女性運動を、フランスと比較しながら、わかりやすく解説してくださいました。今回のブログでは、講義内で解説されていた「フランスと日本の中絶の違い」についてご紹介します。

フランスと日本の中絶における違いは、大きく分けて四点あげられます。すなわち、「中絶の可否の判断」「中絶にかかる費用」「中絶可能な時期」「中絶方法」です。

「中絶の可否の判断」について、日本では、女性と配偶者の求めに応じた医師の判断がひつようなのに対し、フランスでは中絶を行う女性の判断のみで中絶することができるそうです。

「中絶にかかる費用」について、日本では、自由診療であり、数十万円かかる費用はすべて自己負担だそうです。それに対し、フランスでは保険払い戻しの対象で社会が費用を負担しています。女性の自己負担はないそうです。

「中絶可能な時期」について、妊娠22週未満です。一方フランスは妊娠15週未満と定められています。

「中絶方法」について、日本では、掻爬法と呼ばれる安全面で劣るとされる手法が主流となっています。それに対し、フランスでは薬剤や真空吸引法といった女性の身体的・精神的負担が少ないとされるより安全な手法が採用されています。

こうしてみると、日本よりフランスのほうが、より女性に寄り添った環境が整えられているように感じます。日本では中絶に関する話題はセンシティブな話題として避けられがちです。その結果、このような環境の違いが生まれてしまっているのではないかと思います。

講義の内容を踏まえて、授業の後半では、講義を企画した中川先生及び学生との質疑応答がなされました。中川先生から「出産に関する経済的な困窮」という問題提起がされた際、相澤先生がおっしゃった「フランスで出産した友人は健診の時に一度も財布を出さなかった」という話に驚かされました。フランスの経済的なケアはそこまで進んでいるのかと、とても印象に残っています。

また、ある学生からの「現在の日本の中絶、避妊など性に関する教育は変えるべきなのでしょうか」という質問に対して、正しい知識は自己防衛につながると述べたうえで、「フランスはしっかりと性教育が実施され、避妊へのアクセスが良いにもかかわらず、中絶の割合が日本よりも高いという現実があるため、この事実をどう考察するべきかまだ結論が出せていません」と回答していました。このフランスの現実を聞いて、性教育を充実させるだけで解決に至るほど問題は単純ではないと、改めて中絶に関する問題の複雑さを実感させられました。

中絶という行為には、倫理的問題や技術的・経済的課題など解決すべき障害が山積しています。これらを乗り越えるためにも、私たち一人一人が当事者意識をもって中絶に向き合わなければなりません。デリケートな問題として話題にすることを避けるのではなく、もっと活発に議論を交わしていくことが今の私たちに必要な姿勢ではないでしょうか。

今回の講義は、ジェンダー平等に関する問題を深く考察するとても良いきっかけになりました。SDGsでは今回紹介した目標5の他に16個の目標が策定されています。それぞれの目標に付随する社会問題にも目を向け、自分の視野をもっと広げていきたいです。