2021年6月23日水曜日

2021年度前期第10回:新書報告5

こんにちは。新ゼミ生4年のMです。前回、前々回は新書報告をお休みしてのグループワークでした。オンライン上での活動が続いていたため、グループワークはゼミ内の交流を深める良い機会になったと感じます。今回からはまた新書報告に戻ります。それではAグループの発表を見ていきましょう。

Oさん:清水真木『友情を疑う 親しさという牢獄』(中公新書、2005年)

タイトルに驚きを感じた本書ですが、哲学者たちによる提言を交えて「友人との理想的な対人関係」について書かれている一冊です。同じ価値観を持つ人と出会うことは難しく、友情に懐疑の目を向ける必要があるということがわかりました。

生涯を終えるまでに数えきれない人との出会いが生まれる一方で、自分なりの友情の定義に当てはまる人とどのくらい出会うのかと考えると、ワクワクかつ不安に感じられます。アリストテレスの言葉にあった「人間らしい」とはこのことではないでしょうか。アリストテレス以外の哲学者の提言も知り、共感できる部分、できない部分を探していくのも面白いと思います。友情とは何かを考える一助となるはずです。

Tさん:竹田青嗣『ニーチェ入門』(ちくま新書、1994年)

本書は、現代に繋がる「生」「道徳」について書かれています。キリスト教には自分のためではなく人のためという考えがありますが、ニーチェによるとこれはきれいごとであり、自然に反しているそうです。つまり、「いかに生きるか」を自分自身で選択する必要があります。

マジョリティに属し、周りに流される現代人は多いと思います。このような社会であるからこそ、周りの考えを取り入れつつも、自分が大切にしたいことを疎かにしないことが吉ではないでしょうか。

初心者には難しい本書ですが、何度も読み込み、自分の現状と照らし合わせられた時に面白さを感じられると思います。

Rさん:四方田犬彦『「かわいい」論』(ちくま新書、2006年)

様々な対象に向けて「かわいい」という言葉が使われていますが、「かわいい」が持つ意味や捉え方について考えさせられる一冊です。

大学生への調査によると「かわいい」は勇気がでる言葉、または下に見られている言葉とされ、性別により捉え方が異なります。由来は「うつくし」であり、昔は対象が小さいものだったそうです。また、海外では偉大なものに対して使われ、表記は「KAWAII」となっています。つまり、「かわいい」は万能な言葉である一方で、完璧な言葉ではないのです。

現代では「エモい」という言葉が流行していますが、状況に当てはまる最適な言葉がないからこそ、使われやすいのだとわかりました。他にも、万能な言葉がないか探してみると面白いかもしれません。

Iさん:南野忠晴『シアワセなお金の使い方 新しい家庭科勉強2』(岩波ジュニア新書、2015年)

自分だけでなく、周りの人も幸せになるようなお金の使い方とはどのようなものでしょうか。本書は、社会をつくる一員としてのお金の使い方について書かれています。

Iさんはお金の使い方を説明する際、食品を例にとり説明してくれました。加工食品は安くて簡単なことから手に取りやすいですが、添加物が含まれていることもあります。フェアトレード商品を購入し、消費者と生産者のwinwinな関係を築くことで、未来のあり方が変化すると言えます。

お金を上手に使えるようになるためには、自分なりの考え方を持つことが必要になります。送料無料や1つ無料、まとめ買いという謳い文句に流されるのではなく、本当に必要なものを購入するのです。無駄をなくすことが、社会と地球環境の豊かさへと響くと考えさせられました。

今回取り上げられた4冊には、「利己と利他」というテーマが共通する部分がありました。新書報告という形で読書体験を共有するからこそ、発見できることではないでしょうか。また、報告者と質問者の2人の間でとどまることなく、ゼミメンバー全員で意見交換をすることができました。初回と比べて、積極的な参加が実感できます。

さて、次回からは久しぶりの対面授業となります。対面での新書報告は初めてとなりますが、オンライン同様、多種多様な考えを知る場にできるようにしていきましょう。