2020年1月8日水曜日

2019年度後期 第11回

こんにちは、ゼミ生のAです。今回は最後の新書発表をしました。

まず最初にKさんが、岡田温司『天使とは何か キューピット、キリスト、悪魔』(中公新書、2016年)を紹介しました。この本は、天使はいたるところにいる、では本物の天使とは何かという問いを立てて、エンジェルやキューピットなどと比較しながら解き明かしていく内容となっていました。天使とはキリスト教やユダヤ教における神の使者で、キューピットは異教の愛の神のこと、また矢を持っている。悪魔とは元々は天使だったなど、その存在については小さい頃から知っていたものの細かい定義などは考えたこともなかったためとても興味深かったです。

2番目にNさんが、山岸俊夫『安心社会から信頼社会へ』(中公新書、2006年)を取り上げました。この本の内容は、集団主義的な安心社会の崩落は私たちの社会に大きな影響をもたらす。そのため集団主義的な性格を持つという日本社会は変わる必要があることを述べるものとなっていました。話を聞いて、確かに日本は集団主義社会(内集団のひいきの程度が高い社会)だなと感じました。しかし2020年にはオリンピック、その後も数え切れないほど日本は外国と関わりを持つことはあるので、今の当たり前を崩すのは必要なことなのだなと思いました。

3番目にMさんが、長谷川櫂『日めくり 四季のうた』(中公新書、2010年)を紹介しました。この本は、俳句の実作者でもある著者が、1日一詩の形で俳句、短歌、漢詩などを紹介し、どう呼んだらいいか、何を読むべきかを教える内容となっていました。閑吟集の「ただ人は情けあれ 夢の夢の夢の 昨日は今日の古 今日は明日の昔」という詩は、一見そうとは分からないものの恋に関する詩となっていて、「夢の夢の夢の」と同じ音が3音続く表現もとても素敵だなと感じました。

4番目に私が、内山真『睡眠のはなし』(中公新書、2014年)という本を取り上げました。この本の内容は、なぜ眠くなるのか、どのくらい眠れば健康的なのかなど、人間にとっての睡眠の意味を解き明かすものとなっていました。小さい頃、親から早く寝なければ身長が伸びなくなるよなどと言われた人がいると思います。しかし実際には時間帯関係なく、深く眠ったら成長ホルモンはその分多く分泌されるので、睡眠習慣の悪さで成長ホルモンが不足されるということは考えられないそうです。この本を読んで、必ずしも早めに眠らなければいけないという固定観念がとれて、とても面白かったです。

5番目にHさんが、見田宗介『現代社会はどこに向かうかー高原の見晴らしを切り開くこと』(岩波新書、2018年)を紹介しました。この本は、この後の時代の見晴らしをどのように切り開くことができるのかを、データに基づく分析のもと応答するといった内容になっていました。ヨーロッパの人々は日本人と比べ、生活の満足度が高いという結果が出ています。その理由は、自分が世の中に受け入れられていると人々が考えているからだそうです。日本には物が溢れとても生活が便利な国だと感じていますが、どのようにすれば日本人もそういう考えを持てるようになるのか疑問に思いました。

6番目にOさんが、河合雅司『未来の地図帳』(講談社現代新書、2019年)を取り上げました。この本の内容は、少子高齢化に伴う「人口減少化」が進む日本で、今後どのように人口減少が進んで影響が出るのか。著者が膨大な統計データを元に将来の日本の姿を論じていくものとなっていました。その地域で高齢化・人口減少が進むと、税収が減少する。税収が減少すると、自治体職員の削減が始まる。自治体職員が削減されれば、行政サービスが行き届かなくなる。行政サービスが行き届かなくなるなど不便な面が増えたら、若者は住む場所を変えさらに高齢化・人口減少が進むと負の連鎖が出来上がってしまうそうです。東京に住んでいる私はそういったことを考えたことがなかったですが、できる限り早く手を打つべき問題なのだなと感じました。

最後にTさんが、吉川洋『人口と日本経済』(中公新書、2016年)を紹介しました。この本は、人口減少が進み働き手が減っていく日本は、財政赤字の拡大、地方の消失は免れないのではないだろうか。しかし本当の鍵を握るのはイノベーションであり、日本経済の本当の課題に迫るという内容になっていました。日本経済は人口減少でどんどん悪くなると考えられていますが、経済の良し悪しを決めるのは人口ではないそうです。実際に昔のGDPと人口の変化を比べてみると比例していなく、昔は将来性が上がっただけで、人口関係なくそういう意味でGDPが上がったのだそうです。景気は右肩下がりですが悲観ばかりするのではないと言われ、これをネガティブに考えるのではなく大丈夫なのだとポジティブに考え、自分にできることを1つずつ確実に行なっていきたいなと感じました。

1年間新書発表を続け、ただ本を読むから分からない言葉などがあったら調べて、より深く理解しながら読むこと。また、読んだことを文章にしレジュメでまとめる作業なども、始めたばかりの頃に比べてとても簡単に行えるようになりました。今回の講義で新書発表はラストになってしまいますが、これからも新書は長く読み続けていきたいです。