2019年7月10日水曜日

2019年度前期 第11回

こんにちは、ゼミ生のHです。第11回行いました。今回は新書発表を行いました。

最初にMさんが、手塚治虫『ぼくのマンガ人生』(岩波新書、1997)を紹介しました。漫画の神様と呼ばれる手塚治虫氏の半生を振り返り、彼がマンガに込めたメッセージを読み取っていくという内容になっているそうです。医学生だった頃の経験から書いた『ブラック・ジャック』には「患者の病気だけではなく心を救おう」というメッセージが込められているそうです。私はブラック・ジャックが好きで、その作中に負傷したイリオモテヤマネコと赤ちゃん、裕福な太った男の人が出てくるシーンがありました。ブラック・ジャックは絶滅危惧種であるイリオモテヤマネコから先に治療を始め、その後に赤ちゃんを直し、最後に裕福な太った男を手術をしていきました。そこには戦争体験から得た人と動物の命も平等であるというメッセージが込められていると感じました。

 次にAさんが上杉忍『アメリカ黒人の歴史 奴隷貿易からオバマ大統領まで』(中公新書、2013)を取り上げました。黒人たちがアメリカ社会の底辺から社会的上昇をとげた公民権運動を経て現代まで、差別にさらされながらも、境遇改善への努力を重ねてきた黒人たちの歩みを辿った本だそうです。人種エチケットや人種ラインなど人種を分けるルールが存在していて、白人領域に入ってしまった黒人が暴行を受けていたり、他にも色々と公私問わずに差別がありました。そうであったにもかかわらずに自分達の公民権の獲得のために運動を起こした事は、今の世界を形作った大きな出来事だと私は思いました。

 次はKさんが高良倉吉『沖縄問題 リアリズムの観点から』(中公新書、2017)を紹介してくれました。琉球という国は中国にも日本にも属さない独立な王国であったそうですが、日本が現代国家として領土を明確にするために消滅してしまったそうです。琉球語は日本語がルーツになってることから文化的な親和性や一体性があり、領土の侵略よりは奴隷解放に近い形で日本になったとのことです。発表を聞いて、確かに琉球語が日本語がルーツになってるという事には納得出来ました。他にも日本と沖縄の時代区分や米軍基地があっても優遇されているわけではないという知らなかった事も知れたいい機会になりました。

 次にOさんが宮田律『物語イランの歴史』(中公新書、2002)を取り上げてくれました。古代には、広大な帝国を築いたイラン(ペルシャ)が、優れた技術を持ち独自の文化を守り続け、今後どのような方向へと向かっていくのかをイランの歴史を辿りながらイランの真実の姿を伝える一冊になっているそうです。イラン人には大帝国を築いたプライドがあり、周辺の「アラブ」や「トルコ」と言った民族に対する優越感をもっているそうです。元はイスラエルと良好な関係であったそうですが、イラン革命後は他のイスラーム国家と同様に敵として対立関係になってしまったという。私はイランという国を良く知らず、石油が取れるくらいの知識しかありませんでした。今回の発表を聞き、日本とは良好な関係ということを知り良い印象を持ちましたが、今後ニュースなどでイランが取り上げられた時は注意して見てみようとおもいました。

 最後は私が、池上俊一『お菓子でたどるフランス史』(岩波ジュニア新書、2013)を紹介しました。この本は文化立国フランスを彩るものの中で、世界中の人たちを魅了してきた「お菓子」を辿りフランスを精髄に迫っていこうという本になっています。17世紀、砂糖は贅沢品でありました。その砂糖をふんだんに使って作られるお菓子は自分の地位を示すのに使われてきました。イギリスがヨーロッパ大陸の国から経済制裁として輸入を制限されている時、砂糖を巡って戦争が起こるほど喉から手が出るくらいに貴重な食べ物でした。時代が進み、食卓上では視覚を重視しされ始め、お菓子の美しさが食事に花を添えるようになりました。街のお菓子屋さんにはブルジョワたちが甘い宝石のようなお菓子を求め列を作ったそうです。ゼミ研修でフランスに行った時にはお菓子屋さんを気にして街を見てみたいと思います。

 今回は「歴史」という共通項を持った話が多く、様々な視点から歴史を紐解き、作者や発表者の意見を聞けた良い新書発表になったと思います。歴史に関わる知らない知識が多くあったので、これからは歴史というものにアンテナを張りながら現在との比較なども行なっていきたいと感じました。