2018年11月7日水曜日

2018年度 2期第6回ゼミ


 ゼミ生のOです。今回は最初に、この日行われた経営部一年生向けの『アカデミック・コンパス』の報告をRさんとNさんからしてもらいました。その後は、各自が読んできた新書を発表しました。

 新書発表では、最初に相澤先生が佐藤仁『教えてみた「米国トップ校」』(角川新書、2017)を紹介しました。本書は、アメリカと日本の大学の良い所と悪い所を比較しています。日本の大学の良い点では、学生と教員の距離が近い事が挙げられます。理由は、日本の大学では教授の先生のゼミや授業が受けられるからです。比較対象としているアメリカの大学では、非常勤講師が主に授業を担当しています。一方、アメリカの大学の良い点では、教員が研究に専念できる点です。日米の大学、それぞれ優れた所がある一方で、まだまだ改善すべき事があります。大学教育で何が正しいと正解を出す事は難しいと感じさせられる一冊でした。

 次に私Oが井上史雄『日本語は年速一キロで動く』(講談社現代新書、2003)を紹介しました。本書は、日本語の方言がどれくらいの速さで他地域に伝わっていくのかという問いに答える本です。その一例として「ウザッタイ」が上げられます。「ウザッタイ」は元々多摩地域で話されていましたが、1980年代に東京山の手に進出し、全国へと広がりました。本書からは、私達が普段使っている言葉の中には、地方の方言由来の言葉が多い事に気づかされました。

 Rさんは、浜田寿美男『虚偽自白を読み解く』(岩波書店、2018)を紹介しました。本書は、虚偽自白はどのようにして生まれ、虚偽を暴く為にどのようにすれば良いのかを論じる本です。著者がこれまで関与してきた事件を中心に虚偽自白を読み解いています。日本の取調べでは、自白調書の形で記録され、被疑者自身の手で署名・押印します。無実の人が厳しい取調べを繰り返されると、署名・押印を拒否する余力は残っていません。この様な方法から、無実の人が真実を語っても、信じてもらえないという無力感が虚偽自白に大きく影響しているとのことでした。虚偽自白による司法の問題点を考えさせられます。

 Nさんは、千住淳『自閉症スペクトラムとは何か』(ちくま新書、2014)を紹介しました。本書で言う自閉症スペクトラムとは、他者との関わりやコミュニケーションに困難さを抱える事を言います。社会における障がい者への理解が難しい理由として、自分と似たグループを作り、他者を排除したり、多数派が正当だと考えてしまうという人間の心理が挙げられます。Nさんの報告を聞いて、障がい者への差別をなくすには、私達が障がいを持っている人の「考え」を理解する必要があると感じました。

 Kさんは、坂本真士『ネガティブ・マインド なぜ「うつ」になる、どう予防する』(中公新書、2009)を紹介しました。本書は、鬱という感情を発生させる心の動きを「ネガティブ・マインド」と名付け、その仕組みを認知心理学や社会心理学の知見を元に明らかにしています。鬱になりやすい人と状況とは関連があります。例えば、人から色々言われて、ダメな自分にばかり目が行ってしまうような事態です。そのため、鬱にならない為には、気晴らしや人とのつながりで思考パターンを変える事が重要とのことでした。

 葵祭休みで2週間ぶりのゼミでしたが、各自興味深い新書を紹介してくれました。今後ゼミ生がどんな新書を紹介してくるのか楽しみです。