2022年7月13日水曜日

2022年度ゼミ 前期第13回:新書報告(C班担当)

 こんにちは。3年のRです。今回は毎週続けてきた、新書報告の前期最後の回になります。C班から全部で4冊の紹介がありました。それではご紹介していきます。

Tさん:菅屋潤壹『汗はすごい:体温、ストレス、生体のバランス戦略』(ちくま新書、2017年)

暑い季節に突入しましたが、本書は暑い環境に必ずつきまとう「汗」について、その本質や仕組みを説明した1冊です。汗そのものの成分は99%が水分で、残りの1%がアンモニアや塩素だそうです。水分が蒸発することで体が冷え、冷却効果をもたらすとのことです。暑い環境にいると、人はオーバーヒートして熱中症になってしまいます。汗は体温を下げ、熱中症を防ぐ効果があります。

また、人間は暑い環境に繰り返しいることによって「暑熱順化(熱に慣れること)」して、暑い環境でも長く生存できるようになるそうです。Tさんはこの本を読んで、サウナと暑熱順化は関係しているのではないか、夏の暑い環境でも過ごしやすくなるのではないかと考えたそうです。その他、冷や汗の存在や性別による汗の量の違いなどについても紹介がありました。

汗は人間とは切り話せない存在です。この季節にぜひ知りたい情報を得ることが出来ました。

Iさん:内山真『睡眠のはなし:快眠のためのヒント』(中公新書、2014年)

汗とともに、人間と切り離せない存在が睡眠でしょう。本書は、その睡眠についてメカニズムや関連する現象など、睡眠にまつわる様々なことを解説した1冊です。Iさんは寝付きが悪く、金縛りに遭うなど睡眠に関して困っているとのことで、改善方法が知りたいと思い、本書を選んだそうです。

発表では寝付きが悪くなる原因を2点挙げられていました。1つは温度・光・音などの外部からの刺激、もう1つは精神的理由です。精神的理由とは、脳が常に警戒する状態になっていて、リラックスできずに眠りが浅くなってしまうことを指しています。寝付けない日が続くと不眠恐怖症につながるとのことでした。対策として、ベッドや布団の上を「寝ない場所」として脳に誤った認識をさせないために、本当に眠くなるまでベッドに入らないという方法があるそうです。その他にも、夢や金縛りとレム睡眠・ノンレム睡眠の関係など、Iさんにとって役に立つ情報が多くあったそうです。

私は、わりとすぐに寝れてしまい、睡眠で困ったことはありませんが、日常生活でも重要な睡眠について向き合う良い機会となりました。

Mさん:宮武久佳『正しいコピペのすすめ:模倣、創造、著作権と私たち』(岩波ジュニア新書、2017年)

私たち大学生はコピペについて何度も注意されますが、社会においてもコピペは問題になっているそうです。コピペの問題点やコピペをしてしまう理由などをまとめた1冊です。

研究者の世界でコピペは気にかけなければならない問題です。また、大学の教員にとって、学生から提出されるレポートのコピペという問題があります。他にも近年、STAP細胞の論文不正や、東京五輪・パラリンピックのエムブレム類似問題など、コピペに関連する事象が社会的な話題となることが増えています。著者はこの理由として、類似したコンテンツを探し出す技術が向上しているためだとしています。

コピペや関連する事象が問題となる一方で、本のタイトルにある正しいコピペとして「引用」の存在を提示しています。他の人の文章をコピペしても、厳しいルールに基づいて記載すれば、問題のない正しいコピペである「引用」として認められます。

著者は、真似ること自体がタブー視される風潮があるものの、歴史を鑑みても、真似ること自体は悪いことではないとした上で、著作権の法律がプロのみに適用されていたときと変わらないために混乱が起きている。ネットの発達も鑑みて、みんなの著作権といえる仕組みが必要なのではないかと問題提起したとのことです。

私たちがレポートを書くときにも、引用とコピペの間には大きな差があると思います。その違いを改めて認識することができました。

Oさん:庵功雄『やさしい日本語:多文化共生社会へ』(岩波新書、2016年)

Oさんは、別の新書で登場した「やさしい日本語」に興味を持ち、本書を読んだそうです。

著者は日本語学の研究者で、本書では多文化共生における日本語教育の重要性や、日本の諸問題の解決策について論じています。

日本の諸問題として、両親かその一方が外国出身である人の子供、いわゆる「外国にルーツを持つ子どもたち」にとって日常生活で日本語を身につけることや日本語によるコミュニケーションが難しく、学校生活や学習に弊害がある実態が挙げられています。実際に彼らはクラスでの孤立など学校生活に問題が生じるほか、進学率も低下していて、高校の進学率も2割ほどにとどまるそうです。著者は、道具としての日本語を習得する機会がないと、自己実現を果たすことが難しくなってしまう現実があるとしています。

そのような、日本語が必ずしも得意ではない人々にも伝わりやすい日本語として「やさしい日本語」があるそうです。ルーツは、阪神淡路大震災のとき、日本語と英語でしか情報共有されず、情報を得ることが難しい人々がいたことから、考えられ始めたそうです。「やさしい日本語」の一例としては、「容器をご持参の上で中央公園にご参集ください。」を「いれるものをもって中央公園に あつまってください。」とすると理解しやすくなるとのことです。

著者は「やさしい日本語」の存在に加えて、お互い様の気持ちを持つことや先入観を取り払うことが、バイアスや偏見の解消につながり、多文化共生社会が実現できるのではないかと指摘したそうです。

私は日本語を難しい言語だと思っていますが、最低限の要素まで簡単にすることでコミュニケーションの壁が下げられるのではないかと感じました。

今回で、前期の新書報告は終了となります。前期にゼミ生が読み、全体あるいは小グループに報告した新書の冊数を数えてみると合計で130冊近くになるようです。みなさんお疲れ様でした。次回は、前期のゼミ最終回です。