2021年10月13日水曜日

2021年度後期第3回:新書報告1

こんにちは!経済学部2年のGです。緊急事態宣言が解除され、久々に対面で活動が行えました。グループ替えをして、前期とは異なるメンツで毎回新書発表をしていきます。それでは、今日の発表を見ていきましょう。 

Yさん:中谷内一也『リスク心理学 危機対応から心の本質を理解する』(ちくまプリマー新書、2021年) 

本書は、人はリスクをどのように評価し行動するかを解説しています。 

リスクとは、将来いずれかの時に望ましくないことが起こる可能性のことです。このリスクには2つの要素があます。それは、直感型思考と論理型思考です。これを二重過程理論といい、二つの思考は同時に稼働し、独立して働いているそうです。 

Yさんは、コロナ禍に起きた実際の出来事を例にとって、直感型思考と論理型思考の違いを分かりやすく解説してくれました。客観的なデータは冷静に判断しやすく、具体的な個別のデータは記憶に残りやすいという脳の特徴を知ることができました。また、論理型思考に比べ直感型思考はコストが低いそうです。このため、人は日常生活で発生するリスクを直感で判断することが多いことが明らかになっています。 

アクション映画やドラマでは、主人公が自分の直感を信じて結果的に命拾いをするというような描写がよくあると思います。Yさんも、いざという時は自身の直感を信じるそうです。情報に惑わされず強い意志をもって行動するには、直感を信じることも大切だと思いました。 

 O さん:外山滋比古『家庭という学校』(ちくま新書、2016年) 

本書は、著者が自身の経験と対比しながら、家庭教育の重要性や子供に与える影響を、1. 能力を引き出す、2. 苦労は買ってでもせよ、3. 親が自分で教える、4. 経験こそが大事、5. 子育てで難しいことの五つに分けて論じています。2の「苦労は買ってでもせよ」からは、お母さんの声変わりというテーマ話題が紹介されました。お母さんは、生まれて間もない赤ちゃんには優しい声で話しかけます。しかし、3歳頃から子どもにとって怖い印象を持つような声色に変化します。この変化は、自分の子どもが周囲に比べ遅れているのではないかという母親の焦りからくるそうです。この他、近年増えつつある早期教教育など、身近な例を挙げたテーマが多く共感しやすい内容でした。 

Oさんは本書を読み、自分の子どもには、本人がやりたいといったことをやらせてあげたいと考えたそうです。私ももし子育てする時が来たら、能力や好奇心を充分に伸ばすことができる環境にしたいと思いました。 

親は必要な教育であると考えても、子ども自身にとっては必要がないかもしれません。子どものための教育が、将来悪影響を及ぼす可能性も考えながら教育をすることが大切であると考えました。 

R さん:若桑みどり『お姫様とジェンダー』(ちくま新書、2003年) 

シンデレラや白雪姫など、プリンセスに憧れた時期がある女の子は多いと思います。本書はこのようなプリンセス物語が女の子らしさを強要しているのではないかとジェンダー学の視点から批判しています。 

プリンセス物語の主人公のヒロインは、多くがかわいらしい外見です。そして、女の敵は女という決まりがあるかのように、主人公を邪魔するキャラクターは女かつ不細工に描かれることが多いです。この外見の描き方は、顔がかわいらしくなければ幸せにはなれないという外見至上主義の風潮を作っていると述べています。また、素直で美しい心を持っていれば、いつか王子様が迎えに来てくれて幸せにしてくれるなど、努力をしない他力本願の人生プランが描かれる点も著者は批判しています。さらに、結婚が人生のゴールかのように結婚式で終わる物語ストーリーも、女の子に悪影響を与えているのではないかと述べていました。 

最近は、そばかすや肌の色など外見にとらわれない女の子を主人公にしたプリンセス物語が多くなっています。私は、最近のプリンセス物語はヒロインの外見の良さだけではなく、心や人を信じる強さも魅力の一つであることから、女の子らしさを強要しているわけではないと考えました。本書は、ただ物語を見ているだけでは思いつかない考えが述べられています。新しい視点でプリンセス物語を見るきっかけになる1冊なので、プリンセス物語好きな人は読んでみてください。 

K さん:政野淳子『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書、2016) 

本書は、国会では具体的に何が行われていて、どういう役割を果たしているのか、その問題点を指摘しつつ、国民はどうするべきかを解説しています。 

政治とは、異なる人の意見を調整してよい方向に収めることを意味します。政治を行っている国会の仕組みは非常に複雑で難解です。Kさんは、選挙を例にあげて説明してくれました。今月の31日に行われる衆議院議員選挙は、わずか12日前の10月19日に公示されます。これは、有名な政党に所属していない・現議員ではない立候補者に非常に不利な仕組みです。また、選挙立候補者準備する供託金制度にも問題があります。この供託金は各選挙によって額が異なりますが、一定の得票数を得られない場合は没収されてしまいます。よって、より選挙費用を多く持っている人が有利になる仕組みになっています。 

以上の決まり以外にも、法律でさらに細かい決まりごとが沢山あります。この難しい政治に国民がかかわる方法が投票です。国会の仕組みを知ることで、自分の意見と合う公約を掲げている候補者を見つけることができます。その候補者の投票することで、国民も政治を行うことができます。 

今回の報告で選挙の仕組みを知り、選挙制度自体が候補者に平等ではないということを知りました。この状況を変えるためにもまずは投票を行うべきであると考えています。まだ1度も投票に行ったことがない、興味はあるけどよくわからないという人にぜひ読んでほしい一冊です。私も投票前に本書を読み、知識を身に着けて当日に挑みたいと思っています。 

T さん:デイビッド・T・ジョンソン、笹倉香奈訳『アメリカ人のみた日本の死刑』(岩波新書、2019年) 

世界的にみると死刑制度は確実に衰退しており、2018年時点で世界の3分の2の国が法律上廃止しています。このように廃止の風潮がある中、先進国では日本とアメリカが例外として制度を保ち続けています。本書は、日本とアメリカを比較し、日本の死刑制度の問題を分析しています。 

アメリカは、中央集権ではないことから、死刑制度がある州とない州があります。では、なぜ日本は死刑制度が廃止されないのでしょうか。それは、3つの理由が考えられると著者は言います。 

一つ目は、死刑廃止の機会を失ったことです。第二次世界大戦終戦時、アメリカが日本の戦犯を死刑にさせるために無くならなかったのではないかと述べています。 

二つ目は、政権与党の自民党が保守的かつ、自民党以外の政党が政権を取った期間に、死刑制度に関する改革や運用を変えることができなかったことです。 

三つ目は、日本が経済国として発展し力をつけた結果、他国から簡単に制裁を加えられなくなったからではないかと考えています。 

以上の理由から、日本では死刑制度が維持されています。アメリカは全員一致しなければ、死刑判決は下せません。しかし、日本の裁判では、過半数が認めれば死刑になってしまいます。このような裁判のあり方が日本の死刑制度における問題点であると分析しています。 

Tさんは、人権的に問題があり、殺せばいいというわけではないという理由から死刑制度を廃止するべきだと考えているそうです。私も冤罪であった可能性や人権を考えると、死刑制度は廃止するべきであると考えます。被害者の遺族の気持ちを考えると、死刑を望む気持ちは理解できます。しかし、加害者を死刑にしたところで、亡くなった方は生き返りません。遺族には、誰かを殺すように強く願ったこと、願ったとおりに人が死んでしまった事実しか残りません。罪を犯した人が生きて罪を償うことが最善なのではないかと考えます。 

以上が今学期初の新書報告でした。久しぶりの新書報告で、とても有意義な時間を過ごすことができたと思います。次回はDグループの報告です。今週に続き、楽しい活動にしましょう!