2021年5月19日水曜日

2021年度前期第5回:新書報告2

 はじめまして。ゼミ生の3年のRです。第4回目授業も前回に引き続き、Zoomを使ったオンライン授業で新書報告を行いました。今回はB班の発表でした。

Mさん 堀田秀吾『なぜ、あの人の頼みは聞いてしまうのか?――仕事に使える言語学』(ちくま新書、2014年)

 日頃の言葉の言い回しが人を動かす言葉になっていくことが書かれています。Kさんの発表で印象に残ったのが、ジョークやお笑いはわざと伝える量を少なくすることによって笑いが生まれる点です。なんとなく見ていたお笑いもこのようなテクニックが使われていたことに驚きました。これらの知識を得ることによって、広告やキャッチコピーなどを見るのも楽しくなりそうです。

毎回、報告本に関連する書籍も
紹介しています。『女のからだ』
に関連して、日本のピル受容に関
する私の論文が収録されている『性』
(ナカニシヤ出版、2016年)紹介
しました。(相澤)
Kさん 荻野美穂『女のからだ フェミニズム以後』(岩波書店、2014年)

 この著者は人文学の博士であり、フェミニズムについて健康面から論じた本です。アメリカのフェミニズムは男性中心から逃れ、女性自身が中絶の決定権を獲得する目標としたのに対し、日本のフェミニズムは戦後の経済的困難による女性の自由を求めたものであるという違いが指摘されていました。また、日本は中絶の合法化は他国と比べて早く、ピルの承認は遅いという特殊な国であるということも知りました。私は、避妊や中絶問題について私たちの年代が積極的に考えなくてはいけないテーマだと改めて思いました。相澤先生が紹介してくださった、セクシャリティをテーマとした論文「ピルと私たち -女性の身体と避妊の倫理―」もあわせて読んでみたいと思います。

Yさん 宮田光雄『メルヘンの知恵―ただの人として生きる』(岩波新書、2004年)

 子供向けの4つの童話を哲学の観点から考え、「人として生きる」にはどうすればいいのか考える本です。Yさんが取り上げたのは「裸の王様」でした。この有名な童話の内容は、現代を生きる私たちの身近に起きていることにもつながると著者は述べていました。童話の中で人々が、「王様は裸だ」とわかっているのに指摘できないように、他者の様子を伺い、合わせ過ぎてしまう経験は誰にでもあると思います。私も人に合わせすぎてしまい、あの時、しっかり相手に伝えておけばよかったなと後から思った経験があります。大人になると難しいことではあると思いますが、人の短所も個性であると受け入れ、言うべきことは言う態度が大切であると感じました。

Tさん 鈴木貞美『日本人の生命観』(中公新書、2008年)

 この本には、各時代における生き方や、命に対する考え方の移り変わりが書かれています。古代は命に対し、排他的であり、排除する考え方でした。それから、仏教が日本に輸入されたことにより、輪廻転生の考え方が一般的になりました。武士の時代になると、「散り際の美徳」という最後の死まで美しく生きることが重要とされてきました。明治時代になると自由や平等といった民主主義が取り入れられ、現代の考え方に移り変わっていったと述べられています。この本は、文学や心理学の視点からも日本人の生命観について書かれているとのことで、一読してみたいと思いました。

 Wさん 箭内 昇『メガバンクの誤算 銀行復活は可能か』(中公新書2002年)

 日本と欧米のメガバンクの間に大きな格差が生じている事態について書かれています。この本の中では、日本と欧米の銀行を飲食店に例えています。日本の銀行は田舎町の和食屋である一方、欧米は、隣町にあるラーメン、洋食などの様々な食べ物を扱う飲食店のようなものだと述べています。田舎町の和食屋を利用していた人も、メニューが豊富である隣町に行ってしまうということです。つまり、日本の今の手法では、アメリカの大銀行に顧客が流れていくことを示唆しています。新型コロナウイルスの流行によって株式の取引が拡大しているため、時代にあった銀行の在り方を目指していく必要があると思いました。

Tさん 三橋順子『女装と日本人』(講談社現代新書、2008年)

 この本は、女装を軸に社会がどのように移り変わっていったのか書かれています。古代から女装をする人は存在していました。古代の人々は女装に対して、普通とは違い、人ではない存在に近いと考えました。そこから神に近い存在だと考えたそうです。古代神話にも女装をする人はいて、神聖なものとして考えられていたそうです。次の課外活動は歌舞伎を見に行くので、関心を深めるために女装という視点から歌舞伎を考えてみたいという意見がありました。

今回で全員が発表を終えることができました。次回も引き続き新書報告です。各自の発表を活かし、より良い討論ができるようにしましょう。