2021年5月16日日曜日

2021年度前期第4回:新書報告1

こんにちは、経営学部3年新ゼミ生のWです。

今回のゼミはいよいよ今年初の新書報告でしたが、緊急事態宣言の延長に伴い、残念ながらオンライン授業となってしまいました。まだゼミが始まって日の浅い中で、オンラインで言葉のキャチボールをするのは難しく感じました。私自身がZOOMでの会話に不慣れだったため、初めはなかなか質問が出来ませんでした。しかし、徐々に質問の量も増えていき、とても充実したゼミになったのではないかと感じています。それでは今回の報告です。

*相澤補足: 本年度はゼミ履修者の人数が増えたため、二つのグループに分けて交代で新書報告を行います。

Oさん:菅原克也『英語と日本語の間』(講談社現代新書、2011年)

日本では、TOEICを筆頭とした英語検定試験の点数のみが注目されています。そこで英語力が培われていないことを危惧した政府が英語教育の政策を出しました。その政策に対して、著者が批判しながら自分の主張を述べる形で、この本は書かれていたそうです。政府は英語の授業は全て英語でやるべきとしました。それに対して著者は、それでは授業自体が成り立たず英語嫌いを助長するとして、英語を日本語に訳すことを中心に授業するべきだと述べていました。たしかに、そもそもの英語力がない学生たちの授業を英語だけで行えば、授業自体のレベルを下げることになり、英語力を伸ばすことにはあまりつながらないと私は感じました。

Iさん:盛岡孝二『就職とは何か-〈まともな働き方〉の条件』(岩波新書、2011年)

この本では、欧米諸国と日本の就職活動の開始時期を基に、日本の就活の特異性やそのことがもたらす影響について書かれていたそうです。大学在学中に就職活動をするのは日本のみであり、それは企業の優秀な人材を早いうちに引き抜きたいという考えから来ているそうです。その結果、本来学生が力を注ぐべき学業を満足に行えず、人材レベルが下がってしまうとのことでした。私は、日本のみが学生のうちに就活を始めるという指摘にとても驚きました。同時に、欧米諸国のように、学生がまずは学業に全身全霊をかけられるようにするのが、就職活動の本来のあるべき形ではないかと考えました。

Gさん:藤田正勝『哲学のヒント』(岩波新書、2013年)

この本では、「生」「私」「死」「実在」「経験」「言葉」「美」「型」の8つのテーマが取り上げられています。そして「死」と「実在」が対比関係であるように、それぞれが前後のテーマと関係のある形で本全体が構成されているそうです。私はこの8つのテーマの中で、言葉で表現する美しさと言葉そのものの美しさの関係について述べられている「言葉」と「美」の箇所に興味を持ちました。哲学初学者でもわかりやすい内容となっているそうなので、それぞれのテーマの前後関係に着目しながら読んでみたいと思います。

Zさん:本川達雄『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』(中公新書、1992年)

この本は、様々な動物のサイズの比較を基に、生物学における時間ついて書かれていたそうです。大きい動物は心臓の動きが遅く、時間の流れがゆっくりで、寿命は長い。小さい動物は心臓の動きが早く、時間の流れが早くて寿命は短い。このように聞くと、大きい動物の方が繁栄力が強いと思ってしまいます。しかし際は、寿命が短い生物は限られた時間の中で子孫を残すため、次の世代に移るのが早いと考えられ、これは進化のスパンが早いと言い換えられます。その結果、進化の度に環境に適応して繁栄力が高くなる、小さい動物の方が繁栄力が強いという内容に感激しました。ぜひ読んでみたい一冊です。

Kさん:阿満利麿『人はなぜ宗教を必要とするのか』(ちくま新書、1999年)

この本は日本と宗教の関係について、江戸時代の「浮世」といった歴史的背景をもとに書かれていたそうです。日本では宗教に重きが置かれていないという前提に立った内容でしたが、江戸時代の五代将軍徳川綱吉は儒教に心酔していたために「生類憐れみの令」や「服忌令」を発令したり、神社仏閣の建設を積極的に行っていたと学習した記憶があります。そしてその建設費用と明暦の大火からの復興費用が重なった結果、貨幣改鋳が行われています。だとすれば、たしかに日本にも宗教による文化はあったのではないかと私は感じました。

Tさん:石井洋二郎『フランス的思考 野生の哲学者たちの系譜』(中公新書、2010年)

この本はサド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトらフランスの思想家6人の思考を読み解いていた本です。結論では、思考すること自体を楽しむよう提案されているそうです。私は発表を聞いて、「利己主義」の考えを貫いたサドが、自身の最期には孤独になっていたという内容にとても興味を惹かれました。自分のことにしか目がいかず、他者のことを顧みない結果が行き着く先は孤独である。これは現代でも同じことが言えそうだと感じました。

次回もオンラインで新書報告を行うことが決まっています。初回よりも積極的に質問が飛び交う、密度の濃いディスカッションができることを楽しみにしています。