2014年5月1日木曜日

書評:『アイルランドを知れば日本がわかる』

林景一『アイルランドを知れば日本がわかる』角川oneテーマ21、2006年

日本にとってあまり馴染みのないアイルランド。本書で著者は駐アイルランド大使を務めた経験から、独自の視点でアイルランドを紹介している。

前半ではアイルランド人が多く移住したアメリカの時代背景、ジャガイモ飢饉や英国の侵略を逃れた歴史を持つ多数のアイリッシュ系の人の活躍がかかれている。また今後もアメリカとの「特別な関係」が維持されると述べられている。中盤では隣国イギリスとの長い歴史的背景を追い、歴史の古さ、侵略併合から和平に至るまでの流れがかかれている。さらに、英愛関係の検討を通じて日韓関係が改善する手がかりを見出そうとしている。後半は文化、スポーツなど日本人に知られていない史実や日本との接点、日本におけるアイルランドの重要性か語られている。

本書では、興味深いエピソードや著者自身の体験が多く語られている。文化、政治、歴史と幅広く触れられていてアイルランドを知るにはうってつけの一冊だ。ただしタイトルのその通り日本がわかる内容ではなかった。
(郷野)