こんにちは!経済学部3年のHです。テストやレポートの締め切りが迫ってきましたね! 今年も残すところ半分を切りました。今回はC班による発表の様子をご紹介します。
Mさん 林直樹『リストカット』講談社現代新書、2007年
Mさんは、リストカットを中心とした自傷行為について取り上げてくれました。1960年代のアメリカを起点とし、1970年代に日本にも広がったこの行為は、必ずしも「死にたい」からではなく、「苦しみから逃れたい」「自己感覚を取り戻したい」といった心理的要因が背景にあるといいます。
特に注目すべきは、生物学的要因として「覚醒度の異常」があるという点です。つまり、脳が過度に興奮している状態を、傷つけることで無理やり落ち着かせているという解釈です。
Mさんは、「自殺とは違う」という視点や、「寄り添うことの大切さ」を強調しており、私たちが「リスクカットをする人は精神状態が不安定」のような偏見を持つことなく、それに向き合うべきテーマだと考えさせられました。私にとっても、全く無視できないことだと感じたのでもし近くにそういう人がいたら寄り添ってあげれるようになりたいです。
Iさん 小島庸平『サラ金の歴史』中公新書、2021年
Iさんは、「サラ金(サラリーマン金融)」の歴史とその社会的背景を紹介してくれました。
「サラ金」と聞くと、どこか怖い・怪しいといったイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、その実態は社会の変化とともに姿を変え、特に1970年代以降の高度経済成長期に、給与所得者層の資金ニーズに応える形で普及していきました。当初は無担保・無保証で少額融資を行う画期的な制度でしたが、その裏側には、厳しい取り立てや高金利といった「負の側面」も存在していたのです。
Iさんは、特に「取り立てる側の苦労」に注目していました。サラ金の社員たちは、厳しいノルマに追われ、精神的に追い詰められるケースも多く、うつ病などを発症する人も少なくなかったそうです。このように、加害者のように見られがちな取り立て人も、実は上からの圧力に苦しむ“被害者”だったという視点は新鮮でした。
現在では、違法な取り立て行為は厳しく取り締まられ、「借りる側の保護」が強化されてきています。
Iさんは、単なる“悪者”として語られがちなサラ金に対して、その内実や背景、取り巻く人々の苦悩まで丁寧に読み解いており、現代社会における「お金」と「信用」の意味を考えさせられる発表でした。今回の発表を通じて、サラ金に対して借りる側の立場だけでなく、貸す側の立場も考えてみようと思いました。
Sさん 南雲治嘉『色の新しい捉え方~現場で「使える」色彩論』光文社新書、2016年
Sさんは、「色とは何か?」という根本的な問いからスタートし、色の定義やその心理的・生理的影響について紹介してくれました。色は単に「光が物体に反射して目に届いたもの」ではなく、脳でどのように処理されるかによって意味が変わる、「感覚」と「解釈」が交差する現象だという視点が印象的でした。
特に興味深かったのは、「色が人の感情や行動に与える影響」を脳科学の観点から捉えるという点です。例えば、青色はリラックス効果や集中力の向上につながるとされており、食欲を抑える働きもあるため、ダイエットのために「青い皿」を使うという方法も紹介されていました。
また、近年注目されている「パーソナルカラー診断」にも触れ、肌や髪、瞳の色に合わせた自分に似合う色を知ることで、印象が良くなったり、自信がついたりすることもあるという話には多くの共感が寄せられました。単に「流行っているから」ではなく、根拠のある色彩の知識として日常生活に取り入れられる実用性が魅力的です。
最後にSさんは、「これからは“感覚的”にではなく、“目的に応じた”色の使い方をしていきたい」と語ってくれました。私たちの日常は、無数の「色」に囲まれていますが、その色が私たちの気分や行動、健康にまで影響していると考えると、色彩の知識はまさに“日常に役立つ教養”であると実感させられる発表でした。
Iさん 山田鋭夫『ゆたかさをどう測るか—ウェルビーイングの経済学』ちくま新書、2025年
Sさんは、現代社会における「豊かさ」の定義について問題提起しました。一般的には経済成長を示す指標としてGDPが使われますが、果たしてそれだけで人々の幸せや生活の質を測れるのでしょうか?
たとえば、原発事故後の復旧費用や医療費がGDPに加算される一方で、失われた健康や安心は数値に現れません。また、アンダーグラウンド経済や格差の拡大なども無視できません。
こうした限界に対して、著者は「ウェルビーイング」や教育・健康といった別の指標に注目すべきだと主張します。特に著者は、非営利の市民団体や教育機関といった“人を育てる”分野への投資が、真の豊かさにつながるのではないかと提案していました。
Sさんの発表を聞いて、普段当たり前のように使われているGDPが、本当の「豊かさ」を測るには不十分であることに気づかされました。数字に表れない幸せや生きやすさにも目を向けていきたいと思いました。
今回の4人の発表はどれも自分たちの生活に密接する部分が多かったように感じました。自分には関係ないと考えるのではなく、今回とりあげた問題やテーマは自分の近くにあると思って過ごしていきたいです。