2021年7月14日水曜日

2021年度前期第13回:新書報告8

こんにちは。相澤ゼミ経済学部2年のGです。残念ながら今学期最後のゼミは、緊急事態宣言によりZoomでの実施となりました。それでは、発表を見ていきましょう。

G:斎藤環『関係する女 所有する男』(講談社現代新書、2008年)

今回、私も発表をしました。本書はジェンダーの意味での男女の差異について、精神分析をもとに明らかにしています。

著者は、歌手一青窈の「(思い出を)男はフォルダ保存、女は上書き保存」という言葉に感心し、この言葉に則って男女の差異を分析していました。分析結果によると、「ジェンダー」と「性愛の価値基準」はお互い補強しあう関係にあり、男と女の性愛の価値観の差は、ジェンダー的価値観を社会的に根付かせるそうです。

私は本書を読み、ジェンダー的価値観は、日本の男女格差が縮まらない理由の一つになるのではないかと思いました。格差を縮めるには、柔軟な考えを持つことも必要ですが、この価値観を払拭するような女性の活躍も大切であると私は考えています。自分が社会人として働くときは、女性も活躍できる!と評価される成果を挙げたいです。

Yさん:安倍博枝『自分のことがわかる本』(岩波ジュニア新書、2017年)

本書は、ワークブック形式で、自分の良いところは何かを知ることがテーマになっています。まず、「ジョハリの窓」という4つの項目に分けられた自分の可能性について考えます。ジョハリの窓とは、自分自身が見た自己と、他者から見た自己を分析・理解する自己分析方法です。

1. 自分も他人も知っている自分の性質(開放)

2. 自分は気づいていないが他人は知っている性質(盲点)

3. 他人は知らないが自分は知っている性質(秘密)

4. 自分も他人も知らない性質(未知)

の4つの項目があります。これを踏まえて「自分発見シート」に取り組みます。自分発見シートとは、家族や友人に自分の内面・外面の良いところを書いてもらうシートです。内面はもちろんのこと、清潔感や笑顔といった内面の良さを表す外面の評価についても知ることで、自分の良さに気づくことができるそうです。

ワークに取り組んだ結果、Yさんは4つの自慢できる自分の良さを見つけました。他人に聞くことで自分が気づかなかった良さを知ることができるため、私も就活時に取り組んでみたいと思いました。

Mさん:串崎真志『繊細すぎてしんどいあなたへ HSP相談室』(岩波ジュニア新書、2020年)

HSPとは、人に対する繊細さ、五感覚の敏感さの両方を持つ人を指します。日本では五人に一人がHSPだそうです。本書はHSPの特徴を六つに分けて解説した上で、HSPの人とどのようにかかわればよいかを述べた本です。

1 他人の気持ちに左右されやすい

2 人の顔色をうかがってしまいやすい

3 教室に居づらい(人疲れしやすい)

4 共感能力が高い

5 空想が大好き

6 音や匂いに敏感

の6つの特徴があり、さらに内向的と外交的な傾向に分けられます。

HSPの人とかかわるときには、「気にしすぎ」という言葉をかけないことが大切だそうです。本人がわかっている点を周りから言うことでさらに負担をかけてしまいます。アドバイスを言いたくなるかもしれませんが、本人が落ち着くまで見守る必要もあります。

私自身もHSPというワードは聞いたことがありましたが、どのようなものかは知らなかったので、とても興味深い発表でした。HSPさんが日々を快適に過ごす方法についても述べられているので、心当たりがある人に読んでもらいたい一冊だと感じました。

Tさん:川上浩司『不便益のススメ』(岩波ジュニア新書、2019年)

本書は、不便であることによって得ることができる利益「不便益」について論じています。

不便益は様々な物事に活用されています。例えば、幼稚園です。園の庭はでこぼこしています。しかし、このでこぼこがあることで園児の想像力を働かせることができます。介護施設では、段差を設け手すりをなくすことで、主体性を持たせ身体能力の衰えを防いでいます。施設以外には、ヘリコプターではなく、自分自身が上ることで楽しさを味わうことができる登山も例に挙げられています。

Tさんは、新型コロナウイルスによって24時間営業ではなくなったコンビニを例に考えていました。不便に感じることが多いですが、いつでも物を買うことができなくなったため物を大事に扱うようになり、節約にもなっていると私も思いました。

便利であることも大切ですが、便利すぎることによって考える力が衰えてしまいます。本書は、手間がかかるからこそ得ることができる利益について論じているので、新しいものの見方、考え方をしたいという人におすすめです。

Kさん:磯野真穂『ダイエット幻想 やせること、愛されること』(ちくまプリマー新書、2019年)

本書は、文化人類学からどうして人はダイエットをしようと考えるのかを考察しています。

痩せたいという思いは自身の考えとして中から現れるものではなく、他人による言葉や世間の風潮など、自分の外からやってきて中に植え付けられます。これは、自分もかわいいと思われたいという一種の承認欲求によるものです。社会的に女の子は、痩せているほうがかわいいという価値観が共有されます。よって、承認欲求を満たそうと過度なダイエットを行い続けた結果、摂食障害になることが多いそうです。また食事をとらないなど、手軽に行うことができることもダイエットをしたいと思う要因の一つであるそうです。

コロナ禍で自宅トレーニングや減量レシピが流行りましたが、この流行りも痩せなくてはいけないと思い込ませる原因になっているのではないかと発表を聞きながら考えました。肥満は万病のもとといいますが、痩せすぎも免疫力を落とし、病気になる原因のひとつです。これからダイエットをしようと考えている人は、始める前に本書を読み、一度冷静になってから取り組んでみてください。健康が一番大事です。

Nさん:坂井榮八郎『ドイツ史10講』(岩波新書2003年)

本書は、古代ドイツから現代ドイツ(東西統一)までの歴史を10個の項目に分け書かれた本です。Nさんが特に興味を持ったのは、中世ドイツではなぜ絶対的指導者が存在しなかったのかという点でした。中世ドイツは国としての枠組みに当てはまらず、複数の部族の集まりだったそうです。勢力を持った部族の集まりだったため、指導者として登場すると部族全体で制圧する、いわゆる、出る杭は打たれる状況でした。このため、指導者は現れなかったそうです。

本書は、予備知識が必要であるため、ドイツ史初心者には向かないそうです。歴史に興味がある人、余事知識がある人は楽しみながら読むことができると思います。

Wさん:金森修『ゴーレムの生命論』(平凡社新書、2010)

ゴーレムとは、現代でいうロボットのことで、人間が作り出そうとする人間の代わりになるものを指します。本書は、ユダヤ教の世界を手掛かりに、人間はなぜ新たな生命体を作れないのかという問いを考察した本です。

神は土に命を吹き込み人を作りました。しかし、人が作ったものに生命が宿ることは無く、魂は存在しません。人が神になれないのは、罪を犯したからだとされている点にWさんは着目し、その罪は何かをゼミ生で考えました。Wさんは、人は肉食で殺生を行っているからと考えていました。

私は、アダムとイヴが食べてはいけないと言われていた知恵の実を食べたこと、つまり、神の意志に背いたことが罪ではないかと考えました。人が作り出そうとしているゴーレムは、人に従順なものです。この考えを踏まえると、人は神に従順であったと考えることができると思います。よって、知恵の実を食べるという行為が神に従順ではなくなったことの証明になり、人は生命を作り出すことはできないのではないでしょうか。

宗教、聖書に興味がある人はぜひ本書を読んで、人はなぜ人以外の生命体を作り出せないのかを考えてみてください

Sさん:堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書、2020年)

本書は、フィンランド人の働き方・生き方を全6章に分けて述べた本です。

フィンランドには、カハヴィタウコというコーヒー休憩の文化があるそうです。これは、仕事の効率アップのために法律上の決まりとして必ず設けられているブレイクタイムです。ただ休憩をとるのではなく、快適な空間にすることも重要になっています。最近は自宅勤務が増えたことにより、その場所に行きたくなるような心地良い空づくりが行われ、町のおしゃれなカフェのような休憩室が多いそうです。

午後4時に仕事が終わるにもかかわらず、1人あたりのGDPが日本の1.25倍あると聞いて驚きました。フィンランドのような独特な文化ではありませんが、日本では近年、作業効率を上げるためにお昼寝休憩という10分程度の休憩を設ける企業が増えているそうです。

本書は働き方以外に、仕事に対するフィンランドの考え方も紹介しています。フィンランドのような働き方はなぜできるのか、気になる人はぜひ読んでみてください。今後の日本での働き方の参考になるかもしれません。


以上が今学期最後の新書報告でした。前回の欠席者を含めた発表だったので、たくさん発表を聞くことができとても有意義な時間になりました。2学期初めの回は、夏休みに読んだ本の紹介です。対面で活動できることを期待しています。今学期、おつかれさまでした!