2024年12月27日金曜日

課外活動:アーティゾン美術館訪問

年の瀬も押し迫った12月27日、ゼミ生有志とともに、東京駅近くにあるアーティゾン美術館を訪問しました。参加者に感想を寄せてもらいました。この美術館、学生は無料です。ぜひ気軽に訪れてほしいと思います。

Cさん

美術館の創設者・石橋正二郎氏の
胸像とともに
美術館を訪れてみての感想は、正直何を感じ取れば良いのか分からないと最初は思っていたが、絵や作品を通して、なぜこの人はこのような表現をこのようなやり方でするのだろうと考えるようになった。また、自分が直感的にいいと思った作品探しに時間を当てるようになった。特に6階のフロアにあった「めくる装置、3つのヴェール」と5階のフロアにあった「バルコニーの女と子ども」は、なぜ良かったのかと聞かれると言語化はできないが、心から感動する何かがあったことは確かだった。いずれにしろ美術館に行くこと自体が初めてだったので、様々な文化や思想に触れることができて良い経験となった。

Eさん

僕の人生で初めて美術館に行きました。学校で行く機会がなかったので、今後も縁がないものだと思っていました。

ゼミ生全体の人数が13人。今回の参加者は2人。(当日欠席が2人)参加希望者は4人なので全体の約3割。参加者のみで数えるなら、2人なので全体の約1.5割。ちなみにもう1人の参加者は美術館を間違えていたので、参加者数を1人にした場合は約0.8割。偏差値の低い高校が定員割れしたみたいな数字です。視力ならまあ普通くらいの数字です。

こぢんまりとした感じでした。(これはこれで結構よかったです)今回の展示で、私は絵画をじっくりと見ました。理由としては、絵を描く事が趣味なのが大きいです。画家によって絵のタッチが異なる点、「紙の材質も全然違うんだなぁ」と、鑑賞素人なのでとりあえず視界に映るありったけの情報を言語化して楽しみました。

私が印象に残っている絵画はエドワード・マネによる自画像です。写真を撮ったので添付しておきます。(撮影許可あったはずです)

なぜこの自画像が印象に残ったかというと、頭のてっぺんから足のつま先まで、等身大の自身の姿を描いているように見えたからです。突飛なデザインで自身をデフォルメしていない点は、正に自画像っぽくて好印象でした。(デフォルメされてても印象悪いとは思いませんが)当時は鏡を用いて自身を描いていた様なので、『ありのままの姿』感が凄く伝わってきました。それに追随するように、紹介文で「作者は生前、親しい間柄の人にしかこの絵を見せなかった」とありました。私の中でより一層、絵に『ありのまま感』が深まりました。

この世を去った後、遠い先の異国の地で、遙か未来の人間に見られている事を知ったら、作者はどう思うのかを考えてみたり。絵を見て色々考える余地が生まれる事を自分に教えてくれた気がしたので、思い出深い絵になったと思います。(思い出と言うにはまだまだ時間は経ってませんが)

絵画を広く見渡していると、「これは俺でも描けるだろ」みたいな絵をちらほら見かけました。美術作品を鑑賞する素人感がてんこもりな自分を恥じました。私は私で、ありのままの自分を受け止めます。これくらいなら親しい間柄じゃなくても全然バレていいです。

2024年12月18日水曜日

2024年度 後期第12回

こんにちは、経営学部3年のKです。12月に入り、銀杏の葉が黄金色に染まり、そして静かに散りゆく様子に季節の移ろいを感じています。さて、今回のブログでは、ゼミ活動の一環として行った映画鑑賞とディスカッションについてお伝えしたいと思います。

◯映画『ズートピア』を鑑賞して

第11回のゼミでは、ディズニー映画『ズートピア』を鑑賞しました。この映画は、動物たちが共存する理想の都市「ズートピア」を舞台に、多様性や偏見と向き合う物語です。今回私たちは、前回の映画鑑賞をふまえて班ごとに感想を話し合い、その内容を全員で共有しました。

『ズートピア』は一見すると可愛らしい動物たちの物語ですが、その裏には現代社会に通じる深いメッセージが込められています。班のメンバー全員が、それぞれの視点からテーマを捉えており、議論が非常に盛り上がりました。以下は、私たちの班で話し合った内容をまとめたものです。

◯映画を通じて感じたこと

まず、班内で最も多く挙がった意見は「差別や思い込みの怖さ」についてでした。映画では、主人公ジュディが「ウサギだから警察官には向いていない」と偏見を持たれたり、肉食動物が「危険な存在」と一方的に見なされる場面が描かれていました。このような描写を通じて、私たちは「無意識のうちに相手をカテゴライズしてしまう怖さ」を改めて考えさせられました。一人のメンバーは、「日常生活でも、外見や職業、背景だけで相手を判断してしまうことがある」と自身の経験を例に挙げていました。例えば、初対面の人と話す際に、先入観が邪魔をしてその人の本質を見抜けなかったことがあるといいます。この話題をきっかけに、「偏見を持たないためには何ができるのか」というテーマで議論が展開しました。

―偏見をなくすためのヒント

班内で意見交換をしていく中で、「偏見をなくすためには、まず自分が持つ思い込みに気づくことが大切だ」という意見が挙がりました。映画の中で、ジュディが肉食動物への偏見を反省し、自らの考えを改めるシーンが特に印象的だったというメンバーもいました。私たちは、自分自身の中にある無意識の偏見や固定観念に向き合うことが、より良い人間関係を築く第一歩だと感じました。また、「対話の重要性」についても話題に上がりました。映画では、ジュディと相棒のニックが互いの過去や考えを理解することによって信頼を深めていく場面があります。このように、相手の立場や背景を知ろうとする姿勢が、偏見を取り除くきっかけになるのではないか、という意見が出ました。特に、メンバーの一人が「普段は気づかない相手の視点を知ることが、自分の考えを広げるきっかけになる」と発言したのが私の印象に残っています。

◯感想共有を通じて得た気づき

班での意見交換を終えた後、感想を全体で共有する時間が設けられました。他の班からも「多様性の尊重」や「理想の社会を実現するための努力」といった意見が挙がり、非常に充実したディスカッションとなりました。その中で、映画を観るだけで満足せず、そのメッセージをどのように日常に生かすかを考えることが重要という意見を聞いて、これまで以上に深く映画を受け止めることができました。

◯最後に

今回の活動を通じて、映画がもたらす感動や教訓を共有することで、新たな視点や考え方を得ることができました。

『ズートピア』は、ただ楽しむだけのエンターテインメント作品ではなく、私たちに多くのことを考えさせる力を持った作品です。班での意見交換を通じて、自分一人では気づけなかった映画のメッセージに触れることができ、とても貴重な経験となりました。

ゼミの活動も残りわずかですが、今回のように仲間たちと意見を交わしながら学びを深めていきたいと思います。そして、映画で得た気づきを、これからの日常生活やゼミ活動にも活かしていければと考えています。

2024年12月7日土曜日

総合教育演習 ゼミ報告会で報告しました。

 担当教員の相澤です。12/7土曜日に総合教育演習のゼミ報告会が開催されました。教養のゼミが学習の成果を報告する年に一回の機会。相澤ゼミも参加しました。

私たちはテーマを決めて研究を行なってはいないので、研究発表ではなく、普段の活動を紹介する報告を行いました。一ヶ月ほど前からゼミ内外で報告の準備を進め、特にスライドの内容や発表のやり方、質疑応答の訓練はギリギリまでブラッシュアップを試みました。

緊張していた発表担当の三名でしたが、本番では華麗にスライドを操り、滑らかにゼミの魅力を伝えてくれました。たくさん質問をいただき、それにも卒なく答えることができました(たくさん想定質問を考えていたのですが、全然当たりませんでした...)。

担当教員としてもとても誇らしい出来でした。やり切った発表者たちは達成感を感じていたように思います。それを支えたチームワークにも拍手したいと思います。頑張った皆さん、お疲れ様でした。

2024年12月4日水曜日

2024年度 後期第11回:ゼミ報告会の準備

 こんにちは。3年のCです。皆さんいかがお過ごしでしょうか?天気の話題もありきたりで飽きてきたので少し別のことをお話しようかなと思います。皆さんは、1年の最後の祝日が11/23の勤労感謝の日だということはご存知でしたでしょうか?私は休みの日に非常に敏感なので、毎回確認していますが、なんと今年は祝日と土曜日が被ってしまったようです。勝手ながら1人でショックを感じています…笑。依然として寒さは続きますので、体調にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。

さて、12/7にゼミ報告会が行われる予定で、相澤ゼミも参加します。今回のゼミは、報告準備の話し合いを行いました。

前半は、小グループに分かれて作業しました。2、3年生が、自分が用意してきたスライドについて意図や狙いを報告しました。それを受けて、よりよいスライドにするためのディスカッションをしました。

私たちのグループでは、「読書のゼミだから、文章を縦書きにしてスライドを作るのが良いのではないか」という意見が出ました。また、見やすさを重視して年間スケジュールを入れる提案も出ました。それぞれの意見を交換することができたので、お互いの意見の共有にも繋がりました。

後半は、来週の予定とスライドの内容決め、また役割としてスライド作成班と発表班に分担をしました。皆がそれぞれの意見を持っているので、ゼミ生同士で1つのものに擦り合わせる良い機会となりました。また、盛り込む内容に関しても、「新書の発表の例を出したら良いのではないか」や「新書ってそもそも何だろうか?」といった話し合いもあり、聞き手に配慮する姿勢も見受けられました。

残り、約2週間で発表を迎えますが、ゼミ生同士で1つのものを協力して作り出す作業は久々だったので、非常に新鮮味を感じました。また、作業の中で話し合いなどの交流もあり、ゼミ生同士がより考えを1つにまとめられる活動となりました。

2024年11月27日水曜日

2024年度 後期第10回:卒論報告

 こんにちは、現代法学部4年のMです。12月に突入しました。キャンパス内の銀杏の葉っぱはゆっくりと色づき、そしてあっという間に落ちていきました。落ち葉の道を友達と歩くと、とても満たされた気持ちになります。さて、11/27のゼミでは、私たちは、去りし12月7日に開催されたゼミ報告会に向けて、準備を進めていました。また、卒論の中間報告も同時間に行いました。今回のブログでは、そんな盛りだくさんのゼミの様子をお届けします。

最初に、卒論の中間報告についてです。今年度の相澤ゼミでは、2名の4年生が卒論を書いています。

1人目の報告者は、Kさん。研究テーマは「現代社会の引きこもりについて(仮)」。はじめに、引きこもりの定義が説明され、次にその現状や性別、年齢層などの情報に加え、「引きこもりの背景」、「引きこもりの当事者が求めていたこと」など、具体的な研究内容が報告されました。私がその中でも特に関心を持った点は、「引きこもりが先進国において多い」というデータです。日本では珍しくない社会問題として、日々、取り上げられる引きこもり。自分の暮らす国で問題になっていることに、普段は気を取られがちの私ですが、Kさんの報告で、国によってその人口差があることを知り、改めて先進国の負の側面を認識しました。

質疑応答の時間では、多くの質問が寄せられていました。その中には、次のように、引きこもりの深い部分を突くものもありました。

「そもそも引きこもりはどうしてダメなのか。」

その問いに対してKさんは、「引きこもりは本人にも家族にも辛いから」と答えていました。望んで引きこもりになった訳ではない当事者からすると、形容し難いもどかしさ、そしてその様子と毎日向き合う同居者にとって、その現状から一刻も早く抜け出したいと考えられると、私も思います。

最後に、Kさんはこれからの課題を一つ挙げました。引きこもりという現象には、多くの要因が絡み合っています。このような複雑な社会問題を扱うにあたって、取り扱う対象の限定する必要があります。そのため、今後は、論点を絞って卒論を書き進めていくそうです。


続いて、今回ブログ担当の私も卒論を書いているため、中間報告を行いました。テーマは、「あとがきのススメーその刺激と読書へのさらなる効能ー」です。「あとがき」について、自身の読書体験を元に研究しています。その目的は、「本編とは異なる立ち位置にある「あとがき」がもたらす読書時間の効能を探るため。」と設定しています。

主な作業としては、新書とエッセイ、5冊のあとがきを取り上げ、4つのスタイルに分類しました。その共通点を軸に、あとがきから感じ取れる、作家さんの個性や文体、感情を読み解いています。

発表の後、Kさんと同様に質疑応答、その他のコメントを頂く時間がありました。

私は1人のゼミ生からの、「客観的事実はどのように取り入れようと考えていますか。」という質問で特に悩みました。前述したように、個人的な読書体験を元に卒論を書き進めていたため、客観性については考えていませんでした。しかし、そのあとに他のゼミ生からの「自分は、あまりあとがきを読まない」というコメントから、自分の体験とは異なる読書時間もあることを踏まえて、あとがきについての考えをさらに深めていこうと気づくことができました。


 さて、次は12月7日に行われるゼミ報告会の準備です。相澤ゼミでは、2、3年生が主体となって本番に臨みます。パワーポイントの資料を作成する班、当日に壇上で報告をするメンバーに分かれて作業を進めています。

この日は、担当のゼミ生が作成してきたパワーポイントについての確認を行いました。相澤ゼミの基本的な情報や、活動内容、どんなことが身についたのか、などといった内容を先生と共有し、足りない部分のコメントをいただきました。特に、私たちが普段している新書報告の具体的な方法が、内容から抜け落ちていました。その点を次回のゼミまでに補い、全体の内容を通して、本番同様の発表ができる資料の作成、つまり完成形が来週までの課題となりました。

私たちは普段、個人で読んだ新書を個人で報告しています。ゼミ生同士での本格的な共同作業は、今回が初めて。ゼミ生同士お互いに探り合いながら、協力し頑張っています。

 ゼミも残すところ約2ヶ月、季節の早さを実感します。課外活動を含めた残りのゼミの時間も、今まで以上にしっかりと味わっていこうと思います。

2024年11月13日水曜日

2024年度 後期第8回

 こんにちは、経済学部2年のHです。葵祭も終わっていよいよ年末に近づいていますね!今回はE班の発表を紹介します。

Iさん 榎本博昭 『「対人不安」って何だろう』2018年

本書は、人と接する際に不安を感じる「対人不安」について、原因や事例を踏まえながら解説し、克服する方法を提示しています。

「対人不安」とは、人と接する際に、不安に感じることを指します。例えば、人とうまく話せなかったり、嘘がばれるのを恐れて、相手の言動に気を遣うなどといったことが挙げられます。著者は、人は皆、この「対人不安」を持っていると主張しています。原因は、何か自分が放った言葉で相手に見下されるのではないかと余計見栄を張ることで、気まずくなってしまうところにあるそうです。また、「対人不安」は日本人に多いようで、場所によって一人称が変わる「自己盤面依存症」というものが存在しています。

 「対人不安」を克服する方法は、自分をあまり意識せず、受け止めて他人に全力で興味を向けるべきだと主張しています。Iさんは性格的にすごく人に興味を持っていて、思いついたらたくさん質問をしてしまうようです。Iさんは、この「対人不安」を克服するコツとしてコミュニティに入って人と関わり続けたり、たくさん質問する練習をするのが良いのではないかと話していました。

 私は人と話す際にはこのような不安を感じてしまいます。Iさんの発表を通じて、私は「対人不安」を克服するためのヒントを得ることができたと思います。積極的に実践していきたいです。

Kさん 河合雅雄『不思議の博物誌』 中公新書 2003年

 本書は、身近な疑問や生物の営みなど32の小話で構成されています。その中からKさんは2つの話を選んで発表してくれました。

 1つ目はシングルライフとレイプです。この話ではオランウータンの生態について述べられています。オランウータンを含むサルは単独居住型と集団居住型に分けられます。オランウータンは、前者に該当し、行動範囲を縄張りとし、オスメス関係なく自由な点が特徴です。タイトルのシングルライフはこの単独居住からきているそうです。オランウータンは賢くて、がたいが良いのが特徴的ですが、時にはレイプと呼べる行動をするようです。メスのオランウータンは今後どうなるかわからない若いオスの個体を嫌います。つまり、エリートの遺伝子を求めると考えることができます。それに抗う形で、オスはレイプし、交尾をするそうです。

 2つ目は人とアリの資源管理です。人はモノや生き物の管理をしっかりやっていますが、アリも同様にしっかり管理をしているようです。人間は仮にその管理に失敗したとしても他の物に代えれば良いので自然淘汰されにくいとされています。一方、アリはアブラムシと共生関係にあり、アリがアブラムシを守っています。しかし、アブラムシを守っていく上で、蜜の配分などを間違えてしまうと自然淘汰されてしまいます。そのため、間違えても自然淘汰されない人間に比べて、アリのほうが資源管理が上手いと言われています。

 本書を読んだKさんは、身近なものをもっと知ったうえで、教養を深めていきたいと感想を述べていました。私も生活をしていく中で、知らないことに目を傾けてみたいと思いました。

 今回は2人が欠席となってしまいましたが、とても話題が豊富な発表を聞くことができました。身近な生活に今回聞いたことを活かしていきたいですね!次回はゼミ報告会に向けた準備の様子を紹介します。



2024年11月6日水曜日

2024年度 後期第7回

こんにちは。経済学部3年のEです。このブログのオープニングトークといえば決まって天気の話題、もしくはお洋服の話題になりがちです。この2つの話題は使い勝手が良いですからね。さて、後期の授業もそろそろ折り返しに差しかかりますね。時期的にも天気のお話は既に出し尽くしてしまったのではないでしょうか。では、「どのような話題が次からのブログのオープニングを飾るのか」を考えようとした僕ですが、ものの10分で諦めました。そして気が付きました。今回は「お洋服の話題で話を膨らませればいいじゃないか」と。早速、最近の服選びについて話そうかなと考えた僕ですが、「そろそろオープニングが長すぎるので本題に入るべきじゃないか?」とも思い、キーボードから手を離し、考える事をやめました。

今回から新書報告の2週目に入りました。今回はD班の新書報告となります。


Mさん、中原翔『組織不正はいつも正しい ソーシャル・アバランチを防ぐには』光文社新書、2024年

本書では、日本国内で実際に発生した不正事件を例に挙げながら、著者自身の不正に対する見解が述べられています。

著者によれば、不正の対義語である「正しさ」は、大きく分けて「固定的な正しさ」と「流動的な正しさ」の二種類があります。固定的な正しさには、不正が起きやすい特徴があります。その理由は、トップに立つ人が変わらないことによって考え方が固定化し、現場の人間や部下が異議を唱えても改善されないためです。これにより、不適切な状態が放置され、不正が発生しやすくなります。一方、流動的な正しさでは不正が起きにくいです。例えば、性別や国籍に関係なく多様な人材がトップや経営陣に加わることで、さまざまな視点が取り入れられ、組織の風通しが良くなるためです。その結果、不正の発生を防ぎやすくなるのです。

不正はよくありませんね。最近はChatGPTを筆頭に、生成AIがより身近になった気がしています。レポートをAIに書かせるような良からぬ輩もいるようです。まあ正直に言うと、僕も使いたい気持ちはあります。なぜ使わないのかというと、僕が普段書くような文章と、AIが書くお固い文章は明らかに違うのです。勿論、レポートなど、自分の個性を出す事が、心なしか憚れる様な場面では使いませんよ。でも、なんだか自分で見てて気持ち悪いなぁと思うのです。それだけの話です。つまり言い換えれば、僕の文章を完璧に再現してくれるAIが出現した場合、僕は手を出しかねません。(ちなみに、自分の文章をAIに読み込ませ、こんな形で文章を書いて、とでも頼めば恐らく再現可能です。)冒頭で「レポートを生成AIに書かせるような良からぬ輩がいるようです。」とかボヤいておきながら、僕も良からぬ輩とは然程遠くない位置にいるんです。「不正をして楽をしたい。」誰もが一度は思いつくのではないでしょうか。僕はそれでも決して、行動に移したりはしません。なぜなら、僕は誠実な男だからです。口にも行動にも出さず、こつこつやっていれば、周りは勝手に誠実で真面目な人間だと思い込むのです。心の中は、やましい気持ちでいっぱいなのに。でも、それでは本当に誠実な人間が損をしてしまいます。だから僕は、僕のことを「誠実で真面目だね」と勘違いして褒めてくれる人間に、こう言ってやるのです。「まさにその通りです。なんとお目が高い!」とね。不誠実な心を持ちながらも行動に出さない僕のような人間は、本当に誠実な人間が損をしないような居場所を作ろうではありませんか。

この文章を読んで心が動いてしまったそこのあなた。(そんな人いないと思いますが)斜に構えて文章を読むことをお勧め致します。要するに、僕は「本当は不正をしてでも楽をしたい。でも、そんなことをする勇気が無い人間」なのです。ただの腰抜けです。腰抜けは今日も、自分をよく見せるために長ったらしい文章で誤魔化し、取り繕うのでした。


Cさん 太田肇『ムダな仕事が多い職場』ちくま新書、2017年

本書は、日本企業に存在する無駄な仕事の多さに注目し、欧米企業との比較を通じて日本企業の問題点を指摘しています。

まず、欧米企業の特徴は組織としての存在を保ちながらも、個人の成果に焦点が当てられることです。また、年功序列のような縦の関係に縛られない側面があります。一方、日本企業では上下関係が明確で、個人よりもチームで成果を上げる協調性が重視されます。

著者は「マイクロ化」に触れ、日本企業における無駄の多さを指摘しています。たとえば、企業に送るメールの文章作成に過剰に時間をかけることなどが挙げられます。売上や業績に直結しない作業が増え、結果的に仕事量が膨大になる傾向があるのです。

欧米やその他の国々と日本では「完璧」の定義に違いがあります。欧米企業は合理主義を重視し、効率を最優先します。そういった国では、製造部品に多少の傷があっても実際の使用に問題がなければそのまま出荷することがあります。これに対し、日本企業は精神主義に基づき、部品に傷がある場合は全品回収するなど、時間と労力を惜しまない姿勢を取ります。

上記のような完璧の定義の違いで、僕はひとつだけ、思い出した事があります。小学1年生の頃、僕は毎日のように、テープが擦り切れるほど「トイ・ストーリー」を見ていました。(僕の家はレコーダーなので擦り切れませんが。)それは、僕が一番好きな「トイ・ストーリー2」を初めて観た時の事です。主人公のウッディが飛行機に乗り込む場面です。乗客の荷物が積まれる場所から乗り込むのです。このシーンで、搭乗員が乗客の荷物を積むのですが、信じられないくらい雑に放り投げるのです。ご丁寧に、荷物の中にあるガラス製品らしきものが割れる効果音付きです。有難いことに、幼少期から飛行機への搭乗機会に恵まれていた僕は、子供心に「もう二度と飛行機なんて乗ってたまるかよ。」と強く思ったことを覚えています。勿論、日本でそんなことはありませんけどね。これも他国との完璧の違いでしょうか。…じーっくり考えました。全然違いますね。これはカルチャーショックに近いかもしれません…。


Tさん 貞包英之『消費社会を問いなおす』ちくま新書、2023年

まず、消費社会とは「産業が高度に発達し、生きていく為に必要な消費だけでなく、文化的な欲求を満たす為の財やサービスの消費などが大量に行われる社会」を指します。つまり、生活に最低限必要な衣食住だけでなく、推しや趣味といったような、生活レベルより余剰な消費を沢山する社会です。著者は、消費社会の本質的な姿や、消費社会が抱える問題に向き合いながら、どのようにして消費社会を維持していくかを論じています。

消費には「合理的な選択」と「非合理的な選択」が存在します。例えば、生活必需品を購入するのは合理的な選択と言えます。一方、アイドルの握手会に参加するためにアルバムを大量に購入したり、ギャンブルにのめり込んだりするのは非合理的な選択と見なされる場合があります。非合理的な選択が貧困を招くこともありますが、それは個人の自由であると著者は述べるのです。そして、「豊かになる自由」があるならば、「貧しくなる自由」もまた保障されるべきだと主張しています。

たとえば、国家がすべての世帯に一軒家、家具、安定的な食事を提供する代わりに、自由に使えるお金を制限したとします。この場合、人々の生活水準は平等になるものの、個人が自由に楽しむ余裕が奪われてしまいます。それは、物質的には豊かであっても、人生の充実が得られるかは疑問が残ると言えるのです。消費には格差を生む側面があるものの、個人が好きなものを買い、自由を享受できるメリットも存在します。著者は、これらの要素の間で折り合いをつけるべきだと提案しています。

消費社会には課題があるものの、「それ自体が悪ではない」というのが著者の主張です。

僕はまさしく、この消費社会に生かされている典型的な人間です。「僅か数秒でもいい。僕は推しのアイドルのお目にかかりたいのだ!!」という純粋で強い気持ちが、僕の購買意欲を刺激し、CDを大量に購入させました。今思えば、当時の僕は思春期ど真ん中の中学3年生で、とても可愛いく素敵なアイドルとまともに話すことが出来ませんでした。しかし、「受験を終えれば、あの人に会える!」という気持ちが僕を何度も蘇らせてくれたのです。単純に、生存する事のみに焦点をあてるとするなら、僕の行いは無駄な消費だと言えるでしょう。なぜなら、お金を大量に消費しただけでなく、思春期を拗らせてしまい、まともに推しと話せなかった挙句、握手すらできなかったのだから。ですが、僕はこの経験を無駄にはしなかったのです。「結局、君は何がいいたいのかな?」とそろそろ思っているそこの貴方。要は、「自由に使えるお金が無い人生なんてつまらない。みんなと同じだなんて面白くない。」と、僕は思うのです。大抵の人が同様に思っている事を、僕は長ったらしく伝えたのでありました。

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皆様、お気づきでしょうか。実はD班は全員で5人います。今回は2人が欠席なのでブログの作業量は、ほぼ半減したと言えるでしょう。正直に言うと、僕は物凄くうれしいです。しかし、僕は気づいてしまいました。なにを隠そう、実は今回のブログ担当の方も授業を欠席しており、僕は急遽代打として頼まれたのです。勿論、快く引き受けました。

一方で、本来自分がブログを担当する筈だった授業の予定を確認しました。なんということでしょう。「未定」とあり、新書報告の日ではありませんでした。(新書報告になる可能性は否めませんが。)そこで僕は考えました。「本来、僕が担当する筈だった回で書き記すブログの作業量」と「今回のブログの作業量」、果たしてどちらが多いのでしょうか。いいや、そんな野暮なことは考えるべきではありませんね。どんな仕事も引き受けたからには、きちんと誠意をもって行うことが僕のモットーです。(果たして今回のブログにおける、新書報告以外の文章が誠意をもって紡がれた文章とみなされるかはわかりませんが。そもそもこのブログって活動内容を報告するもので、僕の感想はほとんどいりませんしね。)

さて、話は変わりまして、僕がこの相澤ゼミのブログに登場するのは前期第4回以来です。実は、その回も代打でブログに登場したのです。1年に2回のみ担当することのできる相澤ゼミのブログ。その貴重な2回において、全て代打で登場したのは僕だけなのではないでしょうか。そして今回の僕のブログは、歴代のブログにおいて一番稚拙な回だったと評されるのではないでしょうか。

無名の人間が、さも自分を大きく見せているかのように、自分の事を喋り散らかしたり、意見を言ったり、面白くもないのにユーモアを交えたりすると、共感性羞恥心を覚えたり、内容によっては「こいつ、痛いな。」なんて思ったりする事って、よくありませんか?それでも今回は、そうしてみたいと思ったのです。21歳にもなって、他人の事を「痛い奴」なんて思うのは、恥ずかしいことだと、そう思ったのです。というのは綺麗ごとで、本当はまともに文章を書くことが苦手だから、自分のエピソードを交えたような、こういう戦法を取りました。いやあ恥ずかしい、恥ずかしい。

次回は、E班の新書報告です。

 

2024年10月30日水曜日

2024年度 後期第6回

ゼミ生のIです。肌寒くなってきて、いよいよ冬を感じられる時期になりました。今回は、先週みんなで読んだ『好きを言語化する技術』の実践グループワークを行いました。

私は今回ゼミ生を、好きなSNS(TikTok、Instagram、X)でグループ分けを行いました。

今回、グループワークが始まる前に、参加者は、「好き」を見つけるのが大変で、探すのに苦労していたことがわかりました。それでもそれぞれ、ジャンルは同じでも、年代や個性を感じられる「好き」が出てくるのでワクワクしていました。自分のグループでは、漫画の「銀の匙」、『MIX』『お風呂』などが挙げられました。参加者の文章スタイルは、「ガッチリとした形式的な文章」と「話し口調の文学的な表現」に分かれており、それぞれの性格が反映されていて興味深かったです。

発表では、自分の好きなことを話すのは楽しい反面、対面で話す際には相手が疲れないよう、内容をコンパクトにまとめる意識が、必要だと感じました。文章においては、好きな表現や漢字を自由に使えるため、自己理解が進み、自分に対する柔軟な見方ができるようになると感じます。

発表後に、発表者の言葉を言い換えて伝えることで、発表内容への理解を深める、良い練習になりました。また、好きなアーティストや漫画などをただ紹介するだけでなく、「どう感じたか」「いつ楽しむか」「誰からすすめられたか」なども含めると、聞き手も質問しやすく、場がさらに盛り上がるのではないかと感じました。

これからは、発表内容に対して、質問や共感を引き出しやすくするために、話の幅を広げたり、背景や個人的な感想を交えたりするのが、効果的だと思います。聞き手側も、発表内容に対して質問をすることで、会話を盛り上げ、発表者の視点をより深く引き出すことができると思います。

2024年10月23日水曜日

2024年度 後期第5回

こんにちは、経営学部4年のTです。朝晩は冷え込みますが、昼は日差しが暖かく洋服選びが難しい季節です。脱着のしやすい上着の出番ですね。後期第5回目は、先生が指定した本を読む特別編です。前半となる今回は、三宅香帆『「好き」を言語化する技術』でグループワークを行いました。

 最初のグループワークでは、『「好き」を言語化する技術』を読んで印象に残った部分や共感した部分を共有しました。同じ班になったSさんは、「普段は相手の意見に合わせがちだけど、自分の意見を持っていいんだと思った」といいます。人から否定されることを恐れて自分の「好き」を表に出さないSさんですが、本書の「推しと自分の間に、他人を介在させない」「みんなと違う意見だと分かったうえで書く」などの言葉を見て自分の意見を持っていいと感じたそうです。

私は本書の中で「相手との情報格差を埋める」という指摘に共感しました。他人の話を聞く時、知らない人物・単語・想像できない状況が出てきてしまうと、話についていくことができず退屈になってしまう場合があります。相手に楽しく話を聞いてもらうためには、必要な情報をコンパクトに伝える必要があると考えました。

 班替えをした後に臨んだ二回目のグループワークでは、先生が提示した二つのお題をもとに話し合いを行い、ゼミ生全員でシェアしました。一つ目のお題は、「好きを言語化する意義」です。私の班では、自己理解・自己肯定感につながる、人生の豊かさを再認識できる、などの意見が出ました。自分の「好き」を理解することが、趣向や性格を理解することに繋がるという考えです。他班では、「外に発信することで他とのつながりを得る」などの意見が出ていました。SNSで簡単にコミュニケーションが取れる時代、推しを語ることで生まれるコミュニティーは少なくありません。

 二つ目のお題は、「好きを言語化するための技術集」です。本書で挙げられていた好きを言語化するためのテクニックの中から、重要と考えるものを話し合いました。私達の班では好きの言語化を三段階に分けて考えました。

 第一段階...感情をメモする、問いで始める、伝える相手を決める。

 第二段階…とりあえず最後まで書ききる、自分の言葉で書く。

 第三段階...見直し、修正を行う。

他にも、感想を具体的に言語化する等の意見が出ました。これらの技術を取り入れ、好きを言語化していきたいです。


次回は、今回のグル―プワークを基に各々の「好き」を文章にして共有するワークを行います。どんな「好き」が出てくるのか楽しみです。

 

2024年10月16日水曜日

2024年度 後期第4回

 こんにちは。経済学部2年のKです。最近は秋が来たかと思えば、暖かい日が続いたりお洋服選びが大変です。早く可愛い長袖のお洋服が着たいですね。今回は、F班の発表をご紹介します。


Hさん 斎藤兆史『これが正しい!英語学習法』ちくまプリマー新書、2006年

本書では、英語教育の専門家である斎藤氏が、実践的な英語学習法を紹介しています。

英語教師としての経験も持つ著者は、受験英語に対して批判的な視点を示しつつ、効果的な英語学習の本質を探っています。 著者は英語学習には「大道」と「承継」があると言います。「短期間で英語をマスターできる」といった宣伝文句に惑わされることなく、基礎を着実に築くことの重要性を強調しています。 また、本書で紹介されている学習法は、継続性と実践が大切だと言います。そのため、毎日の学習習慣を確立し、音読や書き取りなど、実際に声を出したり手を動かしたりする活動を重視しています。これらの方法は、単に知識を蓄えるだけでなく、英語を実用的なスキルとして身につけることを目指しています。

報告を聞いて、受験勉強や、資格勉強においても大切なのは継続することだと感じました。


Sさん 中尾政之『失敗は予測できる』光文社新書、2007年

本書は、工学的観点から失敗のメカニズムと予防策を詳細に解説しています。工学部教授である著者は、ジェットコースターの部品など具体的な事例を用いて、実際に起きた事故や事件を分析しています。 著者の研究によると、失敗の96%は事前に防ぐことが可能であり、予測不可能なものはわずか4%に過ぎないとのことです。つまり、ほとんどの失敗は適切な予防策を講じることで回避できるのです。 本書で強調されているのは、失敗を防ぐために具体的な対策を事前に講じることの重要性です。著者は「第三構成要素」という概念を提唱しており、これは失敗する前に打開策を考える能力を指します。この能力を養うことが、失敗を回避するための重要なコツだと言います。

「第三構成要素」というワードを聞いて、失敗をマイナスに捉えすぎないことが大切だと感じます。失敗してからどう行動するか、どう次に生かすかがマイナスに捉えないコツだと思いました。


Mさん 上田一生『ペンギンの世界』岩波新書、2021年

本書では、ペンギンの生態について解説されています。中でも、ペンギンが羽を持ちながら飛べない理由について、興味深い説明がなされています。

著者によると、ペンギンは過去に飛ぶ能力を持っていました。

その証拠として、ペンギンの手の骨が丈夫であることや、しっぽが短いことが挙げられています。これらの特徴は空を飛ぶ能力と関連しているとのことです。

さらに、DNA分析の結果、ペンギンの遺伝子がアホウドリと非常に似ていることが明らかになっています。これも、ペンギンが飛ぶ鳥から進化したという説を裏付けています。

にもかかわらず、ペンギンが飛べなくなった理由は、その生息環境が関係しているとされています。ペンギンは主に南極という限られた環境に適応し、そこでは天敵が少なくなっていったため、飛ぶ必要性が徐々に失われていったと考えられています。

このように、本書はペンギンの進化の過程や、その特異な特徴がどのように形成されてきたかを解説していま

ペンギンの生態について調べたことはありませんでしたが、面白いですね。皆さんペンギンのおもしろ動画をよく見るそうで、盛り上がっていました。


Tさん 岩波明『精神医療の現実』角川新書、2023年

この本は、精神医療の現実と精神医療の歴史について記述されています。

その一つに女性医師の問題、医学部入試の女性差別の問題が取り上げられています。その背景には、女性が医師として働くことの難しさや医師不足があります。女性医師が増えない理由として、家事育児と常勤としての働き方の両立が困難であることが挙げられます。30代に入ると、女性医師は結婚しないか子供を持たない選択をすることが多いようです。 

また、本書では造語と誤用の問題も指摘されています。例として、PTSDという言葉の誤った認識が挙げられています。本来は死に直結するような出来事が結びつけられる言葉ですが、現代では些細なことでもPTSDと言われる傾向があるとのことです。 また、ゲーム脳の誤認も取り上げられています。ゲームは脳に悪影響があると広く認識されていますが、著者はなんでもやり過ぎは毒になると指摘しています。

本書で記述されていた通り、医療や社会全体の人材不足は深刻です。消費者が今までのサービスクオリティの見直しが必要になってくると感じました。


次回は三宅香帆さんの『「好き」を言語化する技術』の感想をみんなで共有していきます。

2024年10月9日水曜日

2024年度 後期第3回

こんにちは。経営学部2年のSです。ようやく秋の風を感じる季節となりました。寒暖差が激しく、体調を崩す人が多くなっています。体調に気を付けてお過ごしください。今回はE班の新書報告です。

Kさん 本川達雄 『ウマは走るヒトはコケる』中公新書、2024年

本書は、動物の歩行について論じています。Kさんは、動物の歩行を安定性の観点から「静的安定」と「動的安定」の二つにわけて説明していました。

ます、静的安定は、杖をついているような状態に例えられます。この状態は安定した姿勢を保つことができると述べていました。四足歩行の動物のほとんどがこの種の安定性を利用しています。

Kさんの解説に従って、実践。
また、動的安定は二足で立っている状態のことです。これは、動物は目や耳から感知する情報を活用し、継続的に動くことで安定を維持します。人間の歩行がこれに該当すると述べていました。

さらに、Kさんが歩き方について実践をしてくれました。人間は普段、「こけているような歩き方」をしていると述べていました。これは、歩行中の位置エネルギーと運動エネルギーの関係があると述べていました。

この発表を通して、散歩しながら自分の歩き方を確認したり、動物園で動物の歩き方を観察してみたいと思いました。普段している何気ない「歩く」と言う行動を、考えてみるのも良いなと感じます。


Eさん 本村凌二『競馬の世界史』中公新書、2016年

本書は、競馬の長い歴史と時代による変化を簡潔にまとめ論じています。紀元前の戦車競争から始まり、中世ヨーロッパでの発展、そして世界への伝播を説明しています。

Eさんは、昔と現代の競馬の違いについて述べていました。かつては年齢の高い馬が多く、長距離レースが主流でしたが、現代では若い馬による短距離レースが一般的になっています。これは、予測困難で面白いレース展開を求めるためです。

また、サラブレッドの血統に関する情報も述べていました。現代の競走馬は、血統を辿ると3頭の馬に辿り着くことには驚きまし
た。そして、現代の競走馬に遺伝的な多様性がみられることがわかりました。

この発表は、競馬がスポーツとしてどのように進化してきたか、そして社会の変化とともにどのように形を変えてきたかを論じていました。

今では馴染みの深いものとなっている競馬も、その歴史を辿ると、今とは違った一面を見ることができました。また、血統を辿って競馬を観るという新しい視点にも気づくことができ、競馬への見方が大きく変わりました。


そして今日は発表者が2人欠席してしまったため、授業の後半では、簡単なグループワークを行いました。お題は「日本の文化を否定する異文化の人にどのように返答すればよいのか」というものでした。僕は、文化を否定するのではなく、文化を受け入れるしかないと思いました。自分のグループ、他のグループでは、僕と同じ意見もあれば違った意見もあり、自分の考えを深めることができました。このようなグループワークは、自分の新たな視点を見つけることができるいい機会になりました。

次回はF班の新書報告をご紹介します。


2024年10月2日水曜日

2024年度 後期第2回

 こんにちは。経済学部4年のKです。10月に入り猛暑続きだった今年の夏もようやく終わりを見せています。秋の風を外で感じながら読書をしてみるのも良いかもしれませんね。さて、後期第1回目の新書報告はD班です。

Kさん 山岡淳一郎 『ルポ 副反応疑い死』ちくま新書、2022年

本書は、新型コロナウイルスワクチンの副反応で亡くなった遺族に対して著者が取材を行い、ルポとしてまとめられたものです。本書によれば、ワクチンの副反応で亡くなった人数は公表されているだけでも1900人います。しかしその中の4人程度しか国から認められず、補償金も出されませんでした。補償金の高さや国の政策批判につながることが原因だろうと著者は述べています。


ワクチンの副反応で亡くなった方の中には若いプロのスポーツ選手もいると聞いてとても驚きました。その選手はいわゆるスポーツ心臓を患っていてワクチンにより症状が悪化しなくなってしまったようです。大きいメディアに踊らされるのではなく情報を吟味する審美眼を磨いていく必要があると、この発表を聞いて痛感しました。


Cさん 杉山尚子『行動分析学入門ーヒトの行動の思いがけない理由』集英社新書、2005年

本書は行動分析学について入門から応用まで幅広い内容が記されています。本書によれば、人の行動の要因は大きく分けて4つあるそうで、その一つをCさんは解説してくれました。それは人は行動の結果良い反応が得られたときにその行動を繰り返すということです。例えば、夫はいつも愚痴ばかり言うとしますそれに対して妻は毎回反応してしまいます。行動分析学的に言うと妻が反応しているから夫は良い反応を得たとして愚痴という行動を繰り返してしまうのです。つまり何も反応しなければいつかは夫は愚痴を吐き出さなくなるのです。

他人を変えることは難しい事です。他人をみるより、まず自分が変えられる範囲のことを変えていけば少しは良い方向に物事が進むのかもしれません。C産の出してくれた例で言うと、妻が夫の愚痴を無視していれば夫は愚痴を吐かなくなり、少しは家庭内を良い雰囲気にすることができるかもしれません。そんな本書の本筋とは少しずれたことを発表を聞いて感じ取りました。


Tさん 本田由紀『教育の職業的意義ー若者、学校、社会をつなぐ』ちくま新書、2009年


本書は、教育課程において職業的意義を説くことの重要性を論じています。

小、中、高と私たちが受けてきた教育課程では社会のことや仕事に関する教育が足りていないという主張です。そして本書によれば、最も教育の職業的意義を妨げているのがキャリア教育です。キャリア教育とはチーム力やコミュニケーション力などの会社で役に立つといわれている力をはぐくむ教育です。しかし「チーム力、コミュ力が大切だ」といわれても学生はピンときません。とても抽象的だからです。著者はそういったフワフワしたキャリア教育ではなく何か一つ専門性を学生に持たせることが重要であると主張しています。

著者の主張に共感する部分が多くありました。発表を聞いて、学生の内に専門性を持つことで確固たる自分を形成することにもつながるのではないかと思いました。


Mさん 山口仲美 『千年たっても変わらない人間の本質」幻冬舎新書、2024年


本書は、日本語学者である著者が古典を紹介し、その古典から現代にも通じる人間の本質を記したものです。今昔物語集にあるお話では、乱暴者がお坊さんに合い説法を聞いたことをきっかけに心を入れ替え修行をし、最後には見事な死にざまで亡くなったという話があるそうです。このお話から、人はきっかけがあれば変わるという教訓を学ぶことができます。著者はそれに加えて、変わるきっかけだけではなくそのきっかけを受け入れる素養がない人は変われないと付け加えています。

Mさんの報告を聞いて古典から多くの教訓を得ることができると思いました。一方でMさんも触れていたことでしたが、特に恋愛観は当時と今ではかけ離れた慣習、状況があり、現代に当てはめることは無理があると感じた部分もありました。


今回はワクチンという流行のものから教育、人の行動、人の本質と昔から語られているようなテーマの新書もあり、興味が尽きない発表ばかりでした。次回以降もどんな新書発表が行われるのか楽しみです。


2024年9月25日水曜日

2024年度 後期第1回

 担当教員の相澤です。まだまだ暑い日が続きますが、大学は2期が始まりました。今日のゼミでは、2期の班決めやスケジュール確認をしました。

とことんアナログです。
班決めは、公平を重視して、あみだくじで行いました。引き続き新書報告を行いますが、この班をベースに行なっていきます。

後半は、夏休みの思い出報告と夏休みに読んだ本の報告を行いました。夏休みに読んだ本については、新書に限らなかったためか、多くの方が小説を紹介してくれま
した。偶然同じ作者の本を紹介するゼミ生たちもいて、知らなかったお互いの趣味が垣間見得たのではないでしょうか。

今学期は、新書報告に加えて、映画を読み解くグループワークなども織り交ぜる予定です。楽しく学ぶをモットーに、みんなでゼミを盛り上げていきたいと思います。

2024年9月5日木曜日

八ヶ岳で夏のゼミ合宿

 担当教員の相澤です。9/4から一泊二日、八ヶ岳で夏のゼミ合宿を行いました。経済学部の中村ゼミと合同という初の試みでしたが、両ゼミあわせて12名の学生が参加してくれました。

参加者はそれぞれの移動手段で現地に集合。初日の午後は、相澤ゼミで卒論を執筆予定のKさんとMさんによる構想発表と、中村ゼミ生によるゼミ論文構想発表を行いました。イノベーションをテーマにした中村ゼミと読書をテーマにした相澤ゼミではだいぶ趣が異なりますが、違う専門分野の学生が集まったからこそ、多様な観点から質疑応答を交わすことができ、充実したディスカッションになりました。

勉強会終了後は、卓球をしたり、散歩をしたり、思い思いにリラックス。全員で夕食を取った後は、懇親会をしつつ、星空を眺めたり、温泉を楽しんだり、八ヶ岳の夜を楽しみました。


相澤ゼミで合宿を行うのは数年ぶりでしたが、参加者同士が仲良くなる貴重な機会となりました。2期の活動がますます楽しみです。

2024年7月22日月曜日

相澤ゼミの本棚(2024年度1期)

 担当教員の相澤です。大学図書館で、展示「相澤ゼミの本棚」が始まりました。

相澤ゼミは、グループワークを通して読書の仕方を学び、自己表現能力(書く力・話す力)を高めることを目指すゼミです。毎週、全員が新書を必ず一冊読み、報告・ディスカッションを行なう「新書報告」という活動をメインに行なっています。

ゼミでは、1期に新書報告を9回行いました。つまり、ゼミ生はこの三ヶ月余りの間に9冊の新書をそれぞれ読んだことになります。7/17の1期最終回では、読んだ新書の中から自分の推しを選び、POPを作るワークを行いました。推したい気持ちを伝えるべく、文章やデザインを工夫しました。

そのPOPを使った展示がこの「相澤ゼミの本棚」です。想像以上の力作POPが揃ったのは、私にとって嬉しい驚きでした。

ゼミ生たちの気持ちがこもったPOPと推し本ラインナップです。ぜひ、図書館一階の本棚をのぞきに行ってみてください。

2024年7月10日水曜日

2024年度 前期第14回

 担当教員の相澤です。今日はC班の報告で、以下の五冊が取り上げられました。

kEさん:井戸まさえ『日本の無戸籍者』岩波新書、2017年

Iさん:阿岸祐幸『温泉と健康』岩波新書、2009年

Kさん:渋井哲也『ウェブ恋愛』、2006年

Sさん:香山リカ『「だましだまし生きる」のも悪くない』光文社新書、2011年

Tさん:土井隆義『友だち地獄———空気を読む世代のサバイバル』ちくま新書、2008年

今回は前期の新書報告最終回でした。学期を通して9回の新書報告を行いました。つまり、ゼミ生たちはこの3ヶ月の間に9冊の新書を読み、それぞれについて口頭報告ないし書き込み報告を行なったことになります。他の授業や課外活動もある中、読書の時間を捻出し、内容を理解し、言葉にまとめる作業はなかなか大変です。学生たちの頑張りを心から讃えたいと思います。

学生を見ていると、報告数をこなすことによって、読書のコツやまとめるコツ、そして報告のコツをつかんできたと感じました。学生自身も徐々に手応えを感じているようです。

来週は、前期の活動を振り返る個人面談を行います。面談を通じて、今学期の頑張りを次に繋げられればと思います。

2024年7月3日水曜日

2024年度 前期第13回

 こんにちは。現代法学部3年のSです。梅雨入り以降、雨・湿気・暑さの三重苦に悩まされています。今後はさらに気温が上昇すると予想されます。こまめな水分補給を心がけ、熱中症には十分ご注意ください。さて、今回はB班による新書報告です。

Cさん 稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる』ちくまプリマー新書、2020年

本書は、雑草生態学の専門家である著者が、生物の生存戦略を例に挙げながら、人間社会における個性・多様性の意義を論じています。

著者は大きなカテゴリーで勝者(No.1)を目指すのではなく、特定分野で唯一無二(Only 1)かつ最高(No.1)を目指すべきだと主張しています。この考えを裏付ける例として、ゾウリムシの生存競争が挙げられます。ゾウリムシとヒメゾウリムシを同じ水槽で飼育すると、餌の奪い合いでヒメゾウリムシのみが生き残ります。一方、ゾウリムシとミドリゾウリムシは、水底と水面という異なる場所の餌を食べることで共存できるそうです。著者はこの生物の戦略を人間社会に適用し、大きな市場での競争より、特定分野(ニッチ)での専門性発揮が重要だと説きます。

また、本書は多様性喪失のリスクについても警鐘を鳴らしています。例として、品種改良したジャガイモの栽培を挙げています。収量の多い単一品種のみを広く栽培した結果、その品種が特定の病気に弱く、病気の蔓延により壊滅的な被害を受けたそうです。この例は、生物多様性の重要性と、単一の「優れた」特性に頼ることの危険性を示しています。

生物の生存戦略から人間社会の多様性の意義を導き出す視点が、斬新で興味深いと感じました。「No.1」かつ「Only 1」という概念は、同調圧力や画一性が強いとされる日本社会に一石を投じる内容だと思います。

Mさん 山本芳美『イレズミと日本人』平凡社新書、2016年

本書は、文化人類学者である著者が、イレズミと日本社会との関係を考察しています。

イレズミは、1960-70年代の任侠映画の流行により、ヤクザの暴力的イメージと結びつけられました。このマイナスイメージから、銭湯や温泉施設での利用禁止が広まりました。しかし、著者はイレズミの多面的な側面に注目しています。鳶職では職人文化として、親方のイレズミを弟子が継承することがあるそうです。また、琉球王国時代の沖縄では、女性の指のイレズミが伝統的でした。しかし、本土との統合後、本土出身者からの差別を避けるために、イレズミを消して沖縄出身であることを隠していたそうです。

Mさんは、イレズミをしている人を単に外見で判断するのではなく、イレズミの歴史的・文化的側面を理解した上で、一人の個人として見ることが重要ではないかと話しました。また、このような理解が広まれば、日本のイレズミ文化がより良い方向に発展するかもしれないと語っています。

海外ではアートとして認知されつつあるイレズミですが、日本での受容にはまだ課題が多いように感じます。本書は、イレズミを通して多様性と偏見について見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊だと思います。

Hさん 岩田慎平『北条義時』中公新書、2021年

本書は、2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で注目を集めた北条義時の生涯を描いた歴史評伝です。著者は日本中世史、特に鎌倉幕府と武士に関する専門家です。

著者は義時の人生を三段階に分けて考察しています。まず、生誕から源頼朝との出会いと挙兵までの時期です。ここでは、伊豆の田舎出身の北条家が、頼朝との邂逅を機に台頭していく過程が詳述されています。次に、頼朝が征夷大将軍に就任した後の権力闘争期が描かれます。頼朝は、謀反の疑いがある者は親族であっても容赦なく処罰していたそうです。例えば、頼朝の弟にあたる義経の自殺も頼朝の意向によるものと示唆されています。最後に、義時自身が実権を握った執権時代が記述されています。頼朝の死後、義時が実権を掌握し、承久の乱で勝利するまでの政治的展開が述べられています。興味深いことに、義時も実権を握ると、かつての頼朝のように謀反の疑いがある者を厳しく罰していったそうです。​​​​​​​​​​​​​​​​

著者は、頼朝や義時のような権力者が人を信用できなくなる心理を分析しています。彼らは常に権力争いに晒されているため、味方と敵を正確に判断する必要があります。誤った判断は自身の命に関わるため、疑心暗鬼に陥りやすいと著者は指摘します。

北条義時の生涯を通じて、権力者の心理と行動を分析する視点が興味深いと感じました。私利私欲に走り、時に残虐な決断を下す権力者の姿は、現代の政治にも通じるものがあると思います。本書は、歴史上の人物を通して権力の本質と人間性を垣間見れる一冊だと感じました。

今回も多種多様な新書報告が行われ、非常に充実した内容となりました。生物学、文化人類学、歴史学といった幅広い分野の書籍が紹介され、それぞれが私たちの日常生活や社会に関連する興味深いテーマを扱っていました。次回はC班による前期最後の新書報告です。締めくくりの寂しさはありますが、どのような本が紹介されるか楽しみに待ちたいと思います。​​​​​​​​​​​​​​​​


2024年6月28日金曜日

課外活動:読売交響楽団演奏会

 今年最初の課外活動として、6月28日の夜にサントリーホールで開催された読売交響楽団の演奏会に出かけました。あいにくの雨模様でしたが、ホール内は熱い空気にあふれていました。

プログラムは、ハイドン:交響曲第22番 変ホ長調「哲学者」、ヴィヴァルディ:「四季」から"春"(ギター独奏)、武満徹:「虹へ向かって、パルマ」、ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」です。

私自身にとっても二年ぶりの演奏会。生の音の迫力に圧倒された、大満足の二時間でした。以下は参加学生10名の感想です。

Cさん

コンサートを鑑賞した感想は、自分たちがいつも聴いている音楽とは違って、音そのものに滑らかさを感じることができた。また、様々な楽器から奏でられる音で人物像や感情、状況を表現している様子を感じることができた。

その中でも、『虹へ向かって、パルマ』が非常に印象に残っている。この曲の良かったところが、音で哀しみを表現していて、聞いていて人物像が容易に想像できるところである。

自分はコンサートには滅多にいかないので、今回のような経験は知見を広げるにも非常に役に立った。次回もこのようなイベントがあれば是非参加したいと思う。

Eさん

私は恐らく初めてオーケストラに行きました。会場の雰囲気より先に、きらびやかな照明に息を呑みました。

私はつい最近、西洋音楽史という本を読んだので今回のオーケストラが楽しみでした。ストラヴィンスキーの『春の祭典』では、強音が11回連打される場面がありました。まさに、いけにえが選ばれる情景が浮かびました。強烈なリズムや打楽器の乱舞、静かな音色で以て、なんとなくですが、音楽による感情表現の一端に触れたような気がします。プロの演奏家や長くオーケストラに足を運ぶ方が、演奏のどのような場面で音楽による繊細な感情表現を味わっているのか、とても気になりました。また、豊かで繊細な感情表現を味わった先に、どのような気持ちが湧き上がるのだろうと疑問が生まれました。

驚いた事でいうと、長尺で行われる割れんばかりの鳴り止まない拍手や、演奏終了直後に聴衆が発した長友ばりのブラボーの声です。その場にいる全員が、演奏家たちに向けた拍手喝采は、言い表せない程に美しかったです。

MKさん

先日、サントリーホールで開催されたクラシック音楽コンサートに行ってきました。演奏されたのはハイドン、ヴィヴァルディ、武満徹、そしてストラヴィンスキーの作品でした。それぞれの演奏が本当に素晴らしく、印象に残るひとときでした。

まず、ハイドンの作品から始まりました。この曲は特にホルンとオーボエの掛け合いが素晴らしかったです。演奏者たちの繊細なアンサンブルが見事でした。次に演奏されたヴィヴァルディの作品は、ギター独奏という珍しい編成でした。軽やかで明るい旋律がギターの音色で表現され、華やかな演奏でした。私は吹奏楽でフルートをやっていたこともあり、その技術と表現力の凄さに圧巻されました。武満徹の作品では、現代音楽ならではの独特な響きが印象的でした。細やかな音色が素晴らしく、特に各楽器の掛け合いが絶妙で、作品全体の神秘的な雰囲気を一層高めていました。最後に演奏されたストラヴィンスキーの作品は、圧倒的な迫力と複雑なリズムで、圧倒されました。特にフルートの高速連符や不規則なリズムの中での正確な演奏は全体のダイナミックさを際立てていました。

今回のコンサートを通じて、普段では聞けないような多彩なクラシック音楽の世界に触れることができました。またクラシック音楽の幅広さと奥深さを再認識し、改めて音楽の素晴らしさを知る良い機会となりました。

KTさん

コンサートに参加するのが初めての経験だったので会場の雰囲気や拍手の量など感じる全てが新鮮だった。体験して特に驚いたのが指揮者の動きが思っていたよりも大きく全身を使って指揮を行っていたことだ。手だけでは無く身体を大きく使っていたのでコンサート初心者の人でも音の一体感を視覚的に感じ取ることができた。楽団の方だけでは無く聴いている観客にも一体感があった。拍手のタイミングや咳払いを音が止むまで耐えている観客を見て聴いている人もコンサートの一部となって作り上げていることがわかった。おそらく観客の方々は音だけでは無く指揮者の動きや会場の荘厳な雰囲気、観客の一体感を感じるために足を運んでいるのだと理解した。とても新鮮な経験をすることができた。

Kさん

オーケストラは初めて観ましたが、とても感動しました。今までなんとなく音楽を聴いて、これがなんの楽器なのか、意識したことはありませんでした。しかし、今回のオーケストラで一つ一つの音を注目して見ることが出来たので、とても楽しめることが出来ました。またの機会があれば行きたいと思います。

EMさん

初めてのオーケストラのコンサート、私は授業の関係で2部から参加しました。30分間の演奏はあっという間でした。繊細で大胆なオーケストラの迫力に、いつの間にか自分の心臓はドキドキ。特に指揮者の後ろ姿は、なんだかスポーツ観戦のような激しさを感じました。人生初のオーケストラで興奮体験を味わえて幸せでした。

RMさん

演奏中観客は皆静かにしていたが、演奏が終わってから咳をしたりして配慮が感じられていい気持ちになりました。また演奏が終わったあとの拍手も長く、演者に感謝を伝える手段としてとても良い方法だなと思いました。私が特に気に入ったのは武満徹「虹へ向かって、パルマ」で、ギターの村治佳織さんの圧倒的な演奏に胸を打たれました。

Hさん

今までオーケストラのコンサートには行ったことがなかったのでとても貴重な経験になりました。クラシックの曲を沢山知ることができたのはもちろんのこと、指揮の特徴、自分の知らない楽器など普段知ることの出来ない学びを得ることが出来たと思います。

RSさん

今回は初めてのコンサートでした。普段はコンサートにいって演奏を聴くという機会がないので、いい経験になりました。いつもイヤホンで聴く音楽とは全く違う音質でした。遠い距離で演奏しているのに、音が近くに聞こえ立体感がありました。こんな貴重な体験はなかなかないのでまた行きたいと思いました。

STさん

初めてのクラシックコンサートで、ストラヴィンスキーの「春の祭典」に圧倒された。指揮者がタクトを持たず、踊るように指揮する姿に驚きつつ、音楽の迫力に引き込まれた。バレエ音楽のストーリーを知らずに聴いたことは心残りだが、音楽の魅力を十分に感じられた。次は作品背景も学んでから、より深く音楽を味わいたい。



2024年6月26日水曜日

2024年度 前期第12回

経済学部2年のIです。6月も最後の週になり1年の半分が終わろうとしています。本当にあっという間で怖いです。さて、今回はA班の新書報告です。

Kさん 長沼 毅 井田 茂 『地球外生命』岩波新書、2014年

本書は、地球外生命体がいるかどうかを、生物学者2人が生物学と天文学の観点から検討しています。生物学的には、人間のような知的生命は多細胞であり、大きなエネルギーを持っていなくてはならないので、知的生命が存在できる環境を地球外に見つけるのは難しい、と推察しています。天文学的には、宇宙は広いからどこかしらにはいるのではないか、という考察でした。2人が研究を始めた理由は、我々は人間以外でしかわかり合えない孤独な生命なのか、という疑問からなのだそうです。

地球外生命体は本当にいるのでしょうか。いたらいたでどういう生物なのか気になりますが、公表しないでほしい気持ちもあります。みんなが想像力を働かせて、地球外生命体について語る場も好きなので、複雑です。

Tさん 澁谷智子『ヤングケアラー 介護を担う子ども・若者の現実』 中公新書、2018年

本書はヤングケアラーの現実を解説しています。Tさんは、ヤングケアラーの問題点を4つ紹介してくれました。1つ目は、ヤングケアラーを知らない人が多いという問題です。2つ目は、介護は大人がやるものという誤解を持っている人がいることです。3つ目は、ヤングケアラーは学校に行けないことが多いということです。4つ目は、ヤングケアラー向けの制度がまだ整備されていないことです。本書は、イギリスのようなヤングケアラーの制度が整っている国を見習って、日本もヤングケアラーの問題を解決していくことを主張しています。

私は、ヤングケアラーは言葉自体は知っていましたが、問題がどういう現状なのかをあまり把握していませんでした。子供だけで親の介護をするのは時間的にも経済的にも大変だと思うので、介護職をもっと増やしてみたり給料をあげてみるのも一つの手なのかなと思いました。

Mさん 瀬田貞二『幼い子の文学』中公新書、1980年

本書は、東西のなぞなぞ、わらべ唄、民話、幼い子の言葉の技術について解説しているものです。筆者は、言葉の技術の積み重ねこそがなぞなぞやことわざに発展していったと主張しています。その一例として、子供が勝手に花に名付けすることを挙げています。彼岸花という花には別名でキツネの松明という名前があります。これは、子供が名付けたとされており、このような名付けが発展していって、なぞなぞになったと主張しています。

発表を聞いて、なぞなぞやことわざなどの文化が芽生えたのは、子供の言葉遊びから来ていると思うと、こどもの発想力はすごいなと感心してしまいます。

Kさん 翁邦雄 『人の心に働きかける経済政策』岩波新書、2022年

本書は行動経済学の入門書です。公共政策は、仮定に仮定を重ねた机上の空論であり、役に立たないことが多いので、心理学と経済学(行動経済学)で解決していこうというのが本書の構成です。行動経済学が応用できる場面として、Kさんは選挙を挙げていました。選挙では現在バイアスが現れてしまうらしいです。現在バイアスとは、長期的なことよりも現在に近い短期的な利益に目がいってしまうバイアスです。選挙では、長期的な戦略より短期的戦略の方がよく見えてしまうことがあります。また、Kさんはコンビニの商品の配置も行動経済学が使われていると述べ、行動経済学を学んで日常に潜んでいる行動経済学を自分でも見抜けるようにしておくことをお勧めしていました。

この発表を聞いて、行動経済学は企業や社会にも使われていることを知ったので、自分でも学んで騙されないようになりたいと思いました。


今回は、地球外生命体とヤングケアラー、文学、行動経済学と幅広い分野の発表がありました。次回もどんな本が紹介されるか楽しみです。

2024年6月19日水曜日

2024年度 前期第11回

 こんにちは、経営学部のKです。本格的に夏が到来し、学校生活もますます活気づいてきました。皆さんはこの夏をどのように過ごす予定でしょうか?私は旅行やインターンの計画を立てています。さて今回は岡村靖幸の「カルアミルク」の歌詞解釈グループワークを行いました。

事前に解釈をワークシートに記入して、
グループワークに臨みました。
まず、グループごとに、各個人が「カルアミルク」の歌詞について自分なりの解釈をシェアしました。この歌詞は一見シンプルながらも深い意味を含んでおり、個々の解釈が非常に多様でした。私のグループでは、あるメンバーが歌詞の中に出てくる深夜や六本木を舞台にしている点に注目し、都会の孤独や寂しさを描いていると解釈していました。また別のメンバーは、語り手の心理状態に焦点を当て、過去の恋愛を振り返ることで現在の状況と折り合いをつけようとしていると解釈しました。

私の意見として「仲直りしたいんだ もう一度カルアミルクで」という部分に着目しました。この歌詞からカルアミルクという存在は二人にとって思い出のお酒だったことがわかります。私自身も物や場所が思い出に結びつくことがあり、その一瞬で過去の感情や出来事が鮮明に蘇る経験があります。きっとこの二人にとってもカルアミルクは、そんな特別な存在なのだと想像しました。この歌に出てくる二人が本当にカルアミルクでもう一度仲直りできれば良いなと曲を聴きながら強く感じました。

ワーク盛り上がり中

その後、各グループ内で意見を統合し、グループ内の統一意見をまとめました。私たちのグループでは歌詞が持つ様々な意味に焦点を当て、恋愛の複雑さを描きつつも、相手に対する気持ちが共に変わっていく感情の移り変わりをこの曲では表現しているという見解に落ち着きました。また、「カルアミルク」という飲み物自体が甘さとほろ苦さを持つことから、恋愛の甘さと苦さを象徴していると考えました。

最後に、全体で各グループの意見をシェアしました。他のグループの解釈も非常に興味深く、グループによって人物の年代や性格、「僕」と「語りかけられている」の関係性の予測に様々な意見が出ました。あるグループは登場人物がどのような人物なのか推測し、その性格や背景に基づいて物語の展開や結末を予測していました。また別のグループでは、誕生日にお酒をプレゼントするのはどうなのだろうか?と疑問視する声も上がりました。「誕生日という特別な日に、お酒を選ぶことの意図は何だろうか?それはお酒そのものに深い意味があるのか、それとも単に過去の思い出を共有するための手段なのか?」という議論が展開されました。これに対して、別のグループは「カルアミルクが二人の関係を象徴しているからこそ、誕生日という特別な日に選ばれたのだ」という見解を示していました。

今回のワークを通じて、歌詞解釈の奥深さと、人によって全く異なる視点が生まれることを改めて実感しました。特に、他者の意見を聞くことで自分の見解が広がり、新たな発見がありました。これからもこのようなディスカッションを通じて、様々な視点を取り入れながら学びを深めていきたいと思います。

次回はA班の新書報告をご紹介します。


2024年6月18日火曜日

2024年度 前期第10回

 こんにちは。経営学部3年のCです。6月に入り、東京では気温も30度近くまで急激に上がって、日差しの強い季節になりました。これから暑い日が続くと思いますので、皆さん熱中症にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。さて、今回はC班の新書報告です。


Iさん 辰濃和男『ぼんやりの時間』岩波新書、2010年

本書は、様々な作家の例を出しつつ「ぼんやりすること」を推奨しています。その中でも、Iさんは、例として「4時間労働の夢」を挙げていました。「4時間労働の夢」とはラッセルが書いた論文で、8時間労働は過重労働なので、4時間労働に減らすといった内容だそうです。4時間労働にすることで、残りの4時間で文化を豊かにする為に、各々で探究をすることが述べられていました。また、Iさんは発表の中で、現代に生きる人のアニメやSNSでの動画など受け身でぼんやりしていることにも言及していました。ぼんやりすることは、「目的を持つことなく周りを観察すること」で本書に定義付けられています。しかしここで注意してほしいことは、自分が受け身であると文化が豊かにならないので、五感で感じ取ることを大切にしつつも「ぼんやりすること」が重要だと述べていました。

現代人は情報社会と言われるほど、あらゆるところに脳を圧迫させる情報が転がっています。そんな時にこそ、自分の五感を大切にしてぼんやりすることが私たちに求められているのかもしれません。


Sさん 志村季世恵『大人のための幸せレッスン』集英社新書、2006年

本書は大人のための「幸せ」について論じています。まずSさんが挙げた最初の説明として、幸せには3つの種類があると述べています。

1つ目が、「プレゼントなどのギフト面においての幸せ」です。

2つ目が、「自分の頑張りによって得られる努力面においての幸せ」です。

3つ目が、「マイナスなことでも幸せに感じようとする思考面においての幸せ」です。

本書は、主に3つ目の幸せについて深掘りをする内容でした。そもそも、人間は考えながら物事を行い、マイナスの方向に思考が傾いてしまうそうです。そこで、コツとして、五感の幸せを感じながら物事を行うことが重要になります。例として挙げられていた、ご飯の話もご飯を食べている時にテストのことを考えるのではなく、食べているものの味や食感を感じることが幸せに繋がると述べていました。

私たちに備わっている五感は、幸せになるためには不可欠なものなのではないかと感じるようになりました。現代人は周りのことばかり気にしていて、自分のことに目を向けていない実状があると思います。そんな時こそ、振り返って自分自身を意識してみることが大切だと理解できました。


Tさん 四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書、2006年

本書は「かわいい」についての概念の話や社会的な文化や思想に基づいて、「かわいい」を考察する内容です。その中で、Tさんが挙げてくれた2つの印象的な話を紹介します。1つ目は、「人間は未成熟なものを好む」です。例えば、小さいものや保護しないといけないものは未成熟といえます。また、学生が主人公となっているアニメも一人前ではない点で未成熟だと思います。人間はこの点で「かわいい」を感じるそうです。2つ目は、「かわいいに近しいのはグロテスク」です。これが何故なのかというと、ちいかわのような人間ではないキャラクターを例にあげると、それがこの三次元に等身大として登場したときにあまりのリアルさにグロを感じてしまうからです。しかし、実際にはそのキャラクターも「かわいい」と評価されています。このようにグロテスクなのにもかかわらずかわいいと思われる理由があります。それは、人間がそれを保護しているから、或いは加害しない・無防備な存在だから、だそうです。

また、Tさんはかわいいをポジティブな言葉と定義しました。しかし、かわいいは意味やニュアンスが多面的であるため、未熟や支配欲のようなマイナスの使われ方もあると言及していました。

「かわいい」には人それぞれ背景や感覚があることを学びました。ただ、未熟なものをかわいいと感じる点においては人間に共通しているのではないかと思います。しかし、なぜ未熟なものが好きなのかと質問された時に、「支配できるから」というマイナスな考えであったり、「小さいものを保護したい」というプラスな考えであったり、感じ方はその人によって変わるのではないかと感じました。

今回も興味深い新書報告で、私自身も知識を深めることができました。次回は、歌詞解釈の授業を行います。ゼミ生の色々な解釈を共有できるので、非常に楽しみにしています。

2024年6月5日水曜日

2024年度 前期第9回

 こんにちは。経営学部4年の寺内です。寒暖差が激しく、体調を崩す人が増えています。皆様もお体に気を付けてお過ごしください。今回は通常の新書報告に加えて、お互いのメモを見せあうグループワークを実施しました。始めに、B班の新書報告を紹介します。


Hさん 横田増生『中学受験』岩波新書、2013年

 本書は、予備校講師を務めていた著者が中学受験の良い点・悪い点を紹介しています。中学受験と聞くと、「勝ち組」や「いじめが少ない」などを想像しがちですが、著者はそう良いことばかりとも限らないと主張しています。その根拠について、発表では「中学受験は親の受験」「中学受験は勝ち組か」「中学受験組にはいじめが無いのか」という三点を取り上げて説明していました。

「中学受験は親の受験」とは、高校受験や大学受験は子どもが決定権を持つのに対して、中学受験では親の意向が強く反映されることを指しています。

これは、中学受験時は子どもが小学生であり判断能力が低く、親が受験や部活などで有利であると考え受験させる場合や授業料が高額であるためです。親にとって大きな負担になることはもちろんですが、子どもにとって「親の意向で受験させられた」意識になることが重要です。受験や部活に注力しすぎるあまり遊ぶ時間が犠牲になり、親を恨むケースがあると言います。

 この他にも、私立学校であってもいじめは発生することや、偏差値の高い中学校に入学してもその後の成績が振るわない場合があることが指摘されています。こうして著者は、中学受験が必ずしも良い進路につながるとは限らないと主張しています。

著者は結論として、「勝ち組」「入ってしまえば楽」という固定観念に囚われず、中学受験が自分達に本当に必要かどうか見極める必要があるとしています。

 近年都内では中学受験の割合が増加しており、昨年度の私立中学進学者は全体の約2割でした。「周りが受験しているから」と成り行きで決めず、家庭の状況や子どもの意思を考慮することが大切ですね。


Tさん 村山綾『「心のクセ」に気づくには』ちくまプリマ―新書、2023年

 本書は、社会心理学をもとに、生活に潜む様々な心のバイアスについて解説したものです。著者は、人間は自分の経験や心情で物事を判断しがちだが、実際は社会全体にとって都合のいい理由づけをしていると主張しています。

  Tさんは、本書の議論の中で「相補的世界観」という考え方に興味を持ったそうです。これは、簡単に言うと人には良いところも悪いところもあり、その判断は社会によってされているという理論です。例として、「天は二物を与えず」ということわざが挙げられます。私達の価値や性格は一定の基準があるわけではなく、属する集団や時代によって変化する流動的なものです。他人を単純に順位付けして自分を比較してしまうと自分の存在に絶望してしまいますが、自分にはこんな良いところもあると思うことで生きていく理由になるとのことです。

  Tさんはこの本を読んで、人間は無意識のうちに偏見やバイアスに呑み込まれがちだと考えたそうです。私達も、普段何気なく考えていることには無意識のうちにフィルターや色眼鏡がかかっていることを自覚し、差別や偏見をしないよう意識したいですね。


Mさん 鈴木謙介『サブカル・ニッポンの新自由主義─既得権批判が若者を追い込む』ちくま新書、2008年

  本書は、社会学を専門にしている著者が既得権への批判から若者の在り方を解くものです。既得権とは既得権益のことで、特定の個人が法的根拠に基づき以前から獲得している権利と利益のことです。本書では、既得権・社会の在り方について若者の意識を交えて政治的に批判するとともに、若者の文化としてのサブカルチャーを解説しています。

  Mさんが特に興味を持ったのは、「ジモト」の概念だそうです。本書では、地元を「ジモト」と表記しており、「単なる地理的なものではなく個人の共同性における承認先」を意味します。これを説明する例として、サブカルチャーの1つである宮藤官九郎監督の作品「木更津キャッツアイ」が挙げられています。鈴木によれば、この作品の中で、宮藤官九郎は地元を「死を過剰に怯えるものではなく、無意識に自己肯定するものでもなく以前と変わらずに肯定感を与えてくれる環境を維持してくれる場所」と表しています。Mさんは本書を通して、誰かと交流しなければ地元と思ってはいけないわけではなく、ただそこに居て生活しているだけで地元だと思ってもいいかもしれないと感じたそうです。

 私の友人にも「地元愛」が強い人が数名いて、たかが育った環境というだけで何故そこまで思い入れがあるのか不思議に思っていました。自分を無条件に受け入れてくれる、大きな実家のようなものだと考えると、地元の見え方が少し変わってくるかもしれません。


Yさん 古郡廷治『あなたの表現はなぜ伝わらないのか』中公新書、2011年

 本書は、他者に何かを伝えるための言葉の重要性とその技術を論じています。Yさんは、話し言葉と書き言葉それぞれのコツについて報告してくれました。

書き言葉において意味を正確に伝えるためには、表現手段をどう使い、どんなメディアを用いるかが重要だと言います。例えば、私達は「お手洗い」と言われたとき、すぐにトイレをイメージすることができます。これは、日本の文化的な背景や、私たちが育ってきた環境が比較的似ているためです。アメリカの公共の場所ではトイレを「restroom(直訳:休憩室)」と表記する場合が多くあります。しかし、日本ではこの発想・文化にあまり馴染みがないため、日本人話者には伝わりにくい表現になってしまいます。

著者はこのような例を挙げつつ、相手に意味を伝えるためには、相手の文化的背景や自分の属している社会を考えることが重要であると論じます。さらに言えば、正確に意味を伝えるためには、自分の知識と相手の知識が共通しているかどうかが重要になります。

 話し言葉に関してYさんが大事だと思ったところは、「聞き手の知識レベル・関心・属性に合わせる」「分かりやすく話す」「公共の場にふさわしい言葉を話す」という三点です。発表では、聞き手の関心に合わせることの例として「ボディービルダーの人にDNAの難しい話をするより、プロテインの話をしたほうが受け入れられやすいのではないか」という話を挙げていました。分かりやすく話すという点では、スピーチなど予め考えておいた文章を話す場面でも、多少話し言葉に変えて話すと良いと言います。

 自分が考えている内容をそのまま相手に伝えることは、意外と難しいものです。100%のうち50%しか伝わらなかったり、意味が湾曲して相手が不快な気持ちになってしまったりします。相手の属性や気持ちをよく考え、聞き手ファーストで話すことが大事ですね。

 以上4人の新書報告が終わった後、メモグループワークを行いました。小グループで、報告のメモを見せ合いました。メモの方法・内容は様々で、iPad内のアプリを自由帳のように使う人、メモ帳に箇条書きする人、メモアプリに打ち込む人など各々がやりやすい方法でメモを取っていました。意見交換の際には、メモを取りやすい発表の特徴として、発表の概要をはじめに話すことや、順序立てて発表することが挙げられていました。メモが取りやすいということは、要点が分かりやすいということです。メモの取り方を工夫することも必要ですが、発表の仕方も重要ですね。

 今回は新書報告に加えてグル―プワークも行い、非常に充実した授業でした。次回はC班の発表です。皆さんお疲れ様でした。

2024年5月29日水曜日

2024年度 前期第8回

 こんにちは。経済学部2年のHです。今回はA班の新書報告をご紹介します。

Kさん 曽村保信『地政学入門‐外交戦略の政治学』 中公新書 1984年


本書では政治と地理が融合された地政学という学問について論じられています。地政学とは地球を1つの単位と見なし外交戦略に生かしたり、地理的要因を分析して、国際関係や国内外の情勢にどのような影響を与えるかといった問いを考察する学問です。


本書のタイトルである地政学は、イギリスのマッキンダ―が開祖であるとされています。マッキンダ―は「ハートランド」という考え方を提唱しました。ハートランドとは東欧に位置しています。これを大国がとってしまうと、国際関係に大きく影響が出て、最悪の場合は戦争に発展してしまうとマッキンダ―は主張しています。


Kさんは、シーパワーとランドパワーの関係にも触れました。シーパワーは海軍の強さを指していて、島国であるイギリスなどが得意としています。ランドパワーは陸軍を指していてロシアなどの陸面積が広い国などが得意としています。このシーパワーとランドパワーの関係は均衡していましたが、鉄道や情報技術の発展によりランドパワーが強くなりました。それにより国と国の間の関係が崩れ、第1次世界大戦が起きたとされています。


本書が書かれたのは1984年ですが、現在、ロシアによるウクライナ問題が起きています。一方的に他の国の領土を占領したり、攻撃したりすることは地政学に大きく関わっていると思います。自分には関係ないと思わず、こういった戦争が世界で起きている現実に向き合っていきたいです。


Tさん 小林亜津子『初めて学ぶ生命倫理』 ちくまプリマ―新書 2011年


本書は教科書的な役割をせず、様々な事例を紹介することを通じて、命とは何なのか考えるきっかけを作る内容となっています。その中からTさんは2つの例を取り上げて報告してくれました。


1つ目の事例は拒食症の10歳の女の子の話です。この女の子は拒食症で歩けなくなり、入院し余命半年と告げられました。だからと言ってご飯を食べるわけでもなく点滴も抜いてしまいます。そこで女の子の両親は治療を受けさせようと訴えたことで裁判になります。結果、裁判では認められ、治療が行われ2年かけて健康になることができました。健康になったことで女の子は両親に感謝するという話です。


2つ目の事例は白血病の15歳の男の子の話です。この男の子とその両親はキリスト教のエホバの証人の信者で、輸血を拒否します。そのため、治療を受けさせようと病院側が家族を訴えます。その結果、それが認められ治療をすることになります。しかし、18歳で治療を拒否できるようになるため、男の子は治療を拒否し、間もなく亡くなったといいます。


こういった生死の判断というのはとても難しいと感じます。自分だったらどうするかを考えながら、生命倫理というものについて考えることができました。


Kさん 広田照幸『日本のしつけは衰退したか』 講談社現代新書 1999年


本書では日本の教育レベルについて高くなっているか、低くなっているかについて触れられています。一般的には日本の教育レベルは低くなっているとされていますが著者はそうではないと批判しています。家庭の教育レベルは上がっているとされており、その原因として高度経済成長で家庭が豊かになり、使うお金が増えたからだと主張しています。それに加えて社会が家庭に求める教育レベルが上がったからともされています。


本書では直接、SNSの問題については触れられていませんが、現代ではインターネットが普及して教育レベルが低下したのではないかと指摘されています。この本が書かれたのは1999年で当時はあまり、インターネットは普及していませんでした。事情は大きく異なりますが、教育に関する価値観はそこまで変わっていないようです。


本書を通して教育の重要性について考えることができたと同時に今の教育レベルはどうなっているか気になりました。


Mさん 慎改康之『ミシェル・フーコー』 岩波新書 2019年


本書ではミシェル・フーコーの生涯を通し、フーコーの主張や理論について述べられています。フーコーはフランスの哲学者で20世紀に活躍した人物です。フーコーは、今と昔では考え方が異なっていることを示し、当たり前の常識をもう一度見つめなおすべきだと主張しています。


Mさんは『狂気の歴史』という著作に関する部分を報告してくれました。狂気とは17世紀ごろに貧しい人や犯罪者などを指していました。このような狂っているとされた背景には資本主義が形成されたことが大きいとされています。当時、「狂気」は今と違う意味を持っていました。フーコーは「変わっている」とは時代によって基準が異なり、社会によって変わってくるものだと主張しています。


また、本書では構造主義(社会が様々な物事を決める)と実存主義(自分で自分のことを決める)の2通りの考え方が出てきますが、フーコーは前者をとっています。それに対し、Mさんは後者をとっています。


このフーコーの考え方は正直、私自身には合わないと思いましたが。ですが、その時代によって様々な考えがあり、自分の主張や考え方が大事になると感じました。



今回は20世紀に書かれた本も登場し、その時代の価値観や今に繋がっていることをたくさん知ることができました。次回はB班の新書報告をご紹介します。

2024年5月22日水曜日

2024年度 前期第7回

キャンパスは緑が綺麗です。

 こんにちは。現代法学部4年のMです。ここ数日で夏日が続き、まだかろうじて5月であったことを忘れてしまいます。私は今週ついに半袖デビューをしました。素肌に風が通り、気持ち良いですね。水分補給も忘れずにこの暑さを乗り越えたいです。さて、今回はいつもの新書報告とは違い、上級生グループ、2年次生グループ、女子学生グループに分かれレクリエーションを行いました。

前半は、それぞれが感じた新書報告の悩みを話し合い、全体で共有するグループワークを行いました。先週のゼミで、新書報告が全員一巡し、各々感じたことがあったようです。

私のグループでは、

・「新書の内容を発表に向けてまとめることの大変さ」

・「読書時間を中々設けられない」

・「自分の報告に対してどのような質問が来るのか不安」

の3つが挙がりました。

他のグループからは、

・「内容を伝える際の語彙力」

・「発表の際のメモの作り方」

が挙げられました。グループによって悩みが異なり、私も共感しながら聞いていました。

共有された悩みについて、相澤先生が配布資料とともに回答してくださいました。今回は共有された悩みのうち、発表に直接関係するものを相澤先生の回答とともに2つ紹介します。 

 一つ目は、「内容を伝える際の語彙力」について。これは、文末がいつも同じ言葉になり、単調な印象になってしまうということです。確かに私も報告の時に、「〜と書いてありました。」、「〜と述べています。」の2つの言葉で乗り切った記憶があります...。この悩みに対して、先生は、「新書の内容を具体的に理解することで、説明も具体的になり、語彙の幅が広がる」と回答してくださいました。読んだ新書の全ての内容を理解できなくても、自分が一番興味深く感じたことを伝えれば、聞き手にとってもわかりやすくなります。

グループワークの様子

 二つ目の悩みは、「質問対応」についてです。新書の内容を理解し、まとめられたとしても、発表の際にどのような質問がくるのかは予測不能です。自分は理解しているつもりで話した事が、相手に上手く伝わっていなかった場合、どのように答えたらいいのか分からなくなります。私自身、初回の報告でどのような質問が来るのか不安でした。こちらの悩みに対して先生は、「でたとこ勝負。質問しする側も、報告者の答えやすい質問をしましょう。」と返答してくださいました。確かに報告を聞いている時、私も色々なことが気になって、ついたくさんのことを質問したくなってしまいます。しかし、なるべく本の内容に沿った質問をすることで、お互いに議論しやすくなるものだと思いました。

 この後引き続き、新聞の書評を読み、どのような構成かをグループで、話し合うワークを行いました。プロの文章を読むことによって、私たちの新書報告の悩みの解決の糸口があると感じました。語彙力、表現方法やまとめ方などを、来週のゼミに向けてしっかりと振り返っていきたいと思います。

 後半は、ゼミ同士の親睦を深めるグループワークを行いました。私たちは前半に分かれたグループで、大学内にある進次郎池までお散歩をしました。ただのお散歩ではありません。教室からの道のり、グループ内で共通点を探し、その数が一番多かったグループの勝ちというゲームでそれぞれ盛り上がっていました。気持ちよく晴れた空の下、少し汗ばみながらキャンパス内をゼミ仲間と歩き、いい息抜きになったなあと感じました。


共通点探しに苦戦中
そして、この共通点探しは意外と難しく、中々大変でした。私たちのグループでは、「山派?海派?」「猫派?犬派?」など、2択でお互いに聞き合いました。私たちのグループが五つの共通点を見つけたのに対して、優勝したグループは六つも共通点を発見していました。出身地、実家暮らしであることや所属していた部活動が運動部であったことなどです。基本的にゼミの時間にだけ顔を合わせる仲間たちの、意外な一面を知ることができました。ゼミの中で学年、学部を超えて話すことができてとても楽しかったです。

東経大の憩いの場 新次郎池
(Mさん撮影)

 もう5月も終盤です。あっという間に過ぎていく1年、相澤ゼミでもっとたくさんのことを、ゼミ仲間たちと経験できたらいいなと思った日でした。来週からまた、新書報告を行います。それぞれ初回の新書報告の振り返りをもとに、2周目の報告はどのようになるのか楽しみです。



 


2024年5月15日水曜日

2024年度 前期第6回

 こんにちは。経済学部2年のKです。初夏を感じる気温となってきました。私は、可愛い冬服とお別れするのがさみしいです。今回は、C班の発表ををご紹介します。

Tさん 山田昌弘『モテる構造』ちくま新書、2016年 

本書は、社会学の観点から男女の生きづらさの違いについて明らかにするという内容となっています。著者は「モテる・モテないと生きずらさが結びついている」と論じています。それは、我々の社会は、女性か男性であるという、性のアイデンティティにより分類されているからです。女性か男性に属することで、社会の一員だと感じる仕組みになっていると著者は考えています。つまり、モテるとは、自身が異性として認識されているという実感に繋がると考えることができます。また、男性と女性では、モテ方の違いがあります。戦後、性別役割分業の思想が強く残る中で、男性は社会に出て稼ぎが求められ、女性は稼ぎが求められない代わりに、家事育児のような、家庭の仕事が求められています。つまり、男性は稼ぎがないとモテない、女性は稼ぎがあってもモテるわけではないという、それぞれの生きづらさがあるといいます。

男性と女性では、社会から求められていることが大きく異なります。求められていることに対して、いかに答えることができているかが「モテる」に繋がるという思想は、社会学の観点ならではだと感じました。現代の日本は、ジェンダーの考え方が注目されていますが、モテ方に変化はあるのでしょうか。

Kさん 岩月謙司『男は女のどこを見るべきか』ちくま新書、2004年

本書は、男性と女性の思考の違いから、男性はどのような女性を選ぶべきかを考察しています。男女の違いの一つとして、女性は感情で動くのに対して、男性は感情ではなく起こった事実を元に行動を起こすといいます。例えば、窃盗にあった時、女は窃盗に遭ったことを、男性は盗まれたものに重きを置くというような違いがみられるそうです。そして男性は、愛されている女性を選ぶべきだと論じています。具体的に、考え方がポジティブで、よく人を褒める人が当てはまります。つまり、女性が感情的に動くときに、その感情がプラスであることが、素敵な女性に当てはまると言えます。

女性に限らず、ポジティブ思考で明るい人は人間から好かれると感じます。人間が感情的になった時、本性が垣間見えると思うので、日々穏やかで、明るい気持ちでいることが大切ですね。

Iさん 粂 和彦『眠りの悩み相談室』ちくま新書、2007年

本書は睡眠専門の医者である著者が、睡眠について解説しています。良質な睡眠が、私たちの健康に大きく影響することは周知の事実です。それでは、どうすれば良質をとることができるのでしょうか。今回は4つのポイントをご紹介します。

1,日中は活動的に:日中の活動量が多いほど、夜の睡眠に対する要求が高まります。運動不足は眠気を誘発しません。また、仕事や勉強、読書など、脳を使う活動を日中にしっかりと行うことで、夜は自然と脳が疲労し眠気が訪れます。

2,適度な体温低下を心がける:人間は、体温が下がる際に、眠気が発生します。そのため、温活動後の入浴で体温が下がるのを意識すると良いそうです。

3,就寝前のストレスを排除する:昼間の過剰なストレスは、夜の睡眠を妨げます。自分のストレスをコントロールすることが、良質な睡眠に繋がります。

4,朝は同じ時間に起きる:睡眠リズムを整えるため、可能な限り同じ時間に起床することが大切です。早寝早起きがベストです。

また、アルコールは睡眠に大きな影響を与えます。睡眠前にアルコールを接種すると眠くなる現象は、自然な体の仕組みではないそうです。アルコールを接種すると、眠くなるなるのは、気絶と同じような現象だと論じています。

睡眠は人間にとって欠かせないものです。自分の睡眠とよく向き合って、より良い睡眠を実現させることはとても大切だと感じます。

Eさん 春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』ちくま新書、2023年

本書は、毎日新聞記者である著者が、新宿歌舞伎町の路上売春を取材し、その実態に迫っています。最近話題となっている歌舞伎町にいる「立ちんぼ」という女性たちは、コロナ規制緩和後に急激に増えました。年齢層は若い傾向にあり、未成年が増えているといます。著者は、NPO法人を設立し、売春している女性の相談などをしている坂本さんに力を借り、売春の実態に迫ります。そこで、売春行為をしている女性のほとんどに共通しているのが、ホストの存在だと言います。ホストは依存性が高く、一度ハマってしまったら抜け出すことは難しいと言われています。そのため、売春から抜け出す事も容易ではありません。東京都ではそのような人を支援する取り組みがあり、資格や住居の援助を行う支援もあるそうです。しかし、すぐに売春に戻ってしまうのも現状です。売春している人が悪いという意見がありますが、著者は売春することによって、ギリギリ生活できているのも事実であり、仕方のない一面もあると言います。

近年話題となっている路上売春ですが、実態を知るほど事態の深刻さ、複雑さが見えてきます。路上売春を止めることは勿論、防ぐことにも力を入れる必要があります。特に、未成年の路上売春は深刻です。私たちは、この事態について、問題意識を持つことが大切です。

今回は、多種多様な新書報告でした。質問も多くされていて、充実した新書報告となりました。次回は、書評を読むグループワークを行います。

2024年5月8日水曜日

2024年度 前期第5回

 こんにちは。経営学部2年のMです。GWも過ぎ、夏の訪れのような暑さを感じる時期となりました。梅雨入りも間近のため、体調を崩さぬよう皆様お気をつけください。今回はB班の新書報告を紹介します。


Yさん 松原耕二『本質をつかむ聞く力』ちくまプリマー新書、2018年

本書は、TBSのニューヨーク市局長をしていた著者の経験を元に、デマやフェイクニュースを題材とした情報の受け取り方について論じたものです。

Yさんは、本書が指摘している「言い換えによる意識の方向性の決定」という問題を取り上げました。これは、メディアなどに情報が載る際、言葉の言い換えによって受信者の受け取り方が変化する事態を意味しています。

改善案:Yさんは、本書が指摘している「言い換えによる意識の方向性の決定」という問題を取り上げました。これは、メディアなどに情報が載る際、言葉の言い換えによって受信者の受け取り方が変化する事態を意味しています。

例えば、「戦闘」を「衝突」に言い換えたら、戦うまでには至ってないように映ってしまうかもしれません。言葉の裏に何があるかに注意すべきだと著者は述べています。

人々は得てして情報を受け取る際に、自分にとって都合のいいものばかりを取り入れてしまうと私は考えます。先入観を持たずに何が事実かを見極め、主体性を持って情報を受け取ることが重要だと思いました。


Hさん 源河亨『「美味しい」とは何か』中公新書、2022年

本書は、音楽や美術と同じく食も美学の一つして捉えることが出来るのでは無いか、と主張しています。

その裏付けとして二つの実験が紹介されました。一つ目は、二つのグループに分かれてポテチを食べる実験です。一つの班はそのまま食べるのですが、もう一方の班はマイクとイヤホンを設置して咀嚼音をより大きく聞こえるようにします。実験の結果、咀嚼音が大きく聞こえた班の方が美味しいと感じた人が多かったそうです。この実験により、味覚や嗅覚だけでなく聴覚も食に深く関連していることが分かります。

もう一つは、ワインの実験です。ワインに力を入れて学んでいる大学の生徒たちに、二つのワインを飲ませます。片方は白ワインで、もう片方は赤い着色料を混ぜた白ワインと、どちらも同じ味のワインになっています。しかし、生徒たちの多くはそのワインが同じ味だと見抜くことが出来なかったといいます。この実験により、飲食物の色や形といった視覚の情報も味に影響を与えていることが分かります。

食について美学の観点から解析する新しい視点に目から鱗でした。


Cさん 正高信男『天才はなぜ生まれるか』ちくま新書、2004年

本書は、数々の偉人たちが、各々の持つ知的障害とどのように向き合っていたかを解説しています。Cさんはその中からレオナルド・ダ・ヴィンチについて発表しました。

レオナルドは幼少の頃から記憶障害を持っており、覚えることが苦手だったそうです。掛け算の九九もままならず、日常生活にも支障がありました。しかし彼はそれに対処するべく、多くの事柄をメモしていたそうです。それも、左右反対の文字を書いてメモしていました。彼のこのメモこそが、ブレーンストーミングの先駆けになったそうです。そのようにして、彼は自分のやり方で知的障害と戦い人生を生き抜きました。

自身の弱点に嘆くのではなく、どのように向き合っていくかという指摘が印象に残りました。


Mさん 木曽崇『「夜遊び」の経済学』光文社新書、2017年

本書は、「ナイトタイムエコノミー」(夜17時以降に行われる経済活動)が生み出す経済効果について外国の例も混じえて論じたものです。

ロンドンでは、行政がナイトタイムエコノミーの活性化に取り組んでいるそうです。夜の街というのは危険なイメージがどうしてもついてくるものです。この負のイメージに対処するべく、行政が安全基準のようなものを作り、夜の街の安全を保証する仕組みを確立しました。また、ニューヨークの地下鉄は、線路を2本敷くことにより夜間に走る専用の電車を設置しているそうです。そうすることによって、終電の心配もなくいつでも帰ることが出来ます。このように、世界の主要都市ではナイトタイムエコノミーの振興を図っていることが分かります。

現在の日本では、夜の街にはネガティブなイメージを持つ人が多いと思います。しかしその認識を改め、都市部での楽しみ方のバリエーションを増やすことによって、より良い経済効果を生み出すという本書の主張に興味が湧きました。


今回は我々の生活に身近な分野の報告が多かったので、報告を聞いていてとても興味深かったです。次回のC班の新書報告も楽しみです。


2024年5月1日水曜日

2024年度 前期第4回

 こんにちは。経済学部3年のEです。今回は今年度初めての新書報告を行いました。各ゼミ生が前回の授業で学んだプレゼンの仕方、聴き方を踏まえて今回の授業に臨みました。以下はA班による新書発表です。


Kさん 波多野誼余夫/稲垣佳世子『無気力の心理学』中公新書、1981年

本書は教育心理学の観点から書かれています。著者は「自分にとって不都合な環境を自身の努力で変えられる実感が少ない状態」を無気力と定義します。これに対し、「自分の努力に対する信頼がある状態」を効力感と呼びます。著者は、現代社会では生産性を重視するため、効力感の欠如が見られると指摘しています。

効力感を得るためにはどうすれば良いのかを説明するために、著者は幼児期の例を挙げます。赤ちゃんの場合、「泣く」という行動を通じて自分のニーズを表現します。親が迅速に反応することで、赤ちゃんは自分の努力が報われるという経験を積むことができます。次に、学校の教育システムについてです。通知表のような数字による評価は競争を促しますが、効力感を育むことには繋がりにくいとされています。その代わりに、情報に基づいた評価が提案されています。数学の評価を例にとると、「計算はできるが図形の把握が不得意」と評価することが良いとされています。

著者は、評価には人を統制する側面と、行動の良し悪しを評価する側面があると述べています。学校の通知表のような数字による評価は人を統制する側面が強いです。その為、著者は行動の良し悪しを評価することが重要だと主張します。つまり、その人は何が得意で何が不得意なのかを明らかにすることです。この行動の良し悪しを評価する段階に移行しなければ、無気力な子供たちが増える可能性があると示唆しています。

私は、行動の良し悪しを評価するのは第三者ではなく自分でやれば良いと考えます。客観的な事実のもと自分の不得意なものを明らかにするのは確かに良いかもしれませんが、他人に不得意なものを決めつけられているようにも感じるからです。しかし、通知表のように数字で評価するのはやや味気ないように感じたので概ね同意です。


Tさん 松田純『安楽死・尊厳死の現在』中公新書、2018年

著者は生命倫理学の専門家です。本書では世界各国における安楽死の歴史、現状、問題、そして思想史について詳細に論じています。

安楽死にまつわる問題の一つは、「安楽死の法制化が死ぬ義務を発生させるのではないか」という点です。具体的には、本人が望まない安楽死が行われる可能性が懸念されています。

著者はまた、健康という考え方についても検討しています。世界保健機関(WHO)は、「身体的、心理的に完全に良い状態」を健康と定義していますが、この定義は長年議論の的でした。現代の医療では、障碍者や不治の病を患っている人々を完全に治すことは難しいため、「完全に良い状態」を目指すことが無意味になる場合があるからです。そのため、オランダの国際的な研究機関が健康の概念を再定義し、「病気や障害があっても、前向きに生きる能力を健康と定義した」ことを紹介しています。

この再定義を踏まえ、著者は、病気や障害に直面した場合、その時点での人々の支援を受け入れることが重要であるとまとめています。著者は更に、このようなポジティブな健康観が社会に普及することを期待しています。最後に、このポジティブな健康観が広まることで、「安楽死」がどのような影響を受けるかについての疑問が提示され、本書は結びつけられています。

 私は、仮に安楽死が制度化されたとしたら、安易に選択せず熟考する必要があると考えました。

 

Kさん 松田英子『今すぐ眠りたくなる夢の話』ワニブックスPLUS新書、2023年

 著者は東洋大学で心理学の教授であり、公認心理士と臨床心理士の資格を有しています。彼女は一万人以上の人々の夢を分析し、その影響について研究しています。本書では、夢が人々に与える影響について詳しく述べられています。

まず、夢はレム睡眠とノンレム睡眠の二つに分かれます。レム睡眠では、主に記憶の定着に時間が費やされ、この時に夢を見るとされています。この夢がトラウマや悪夢を見て気分が落ち込むことに繋がるとされます。レム睡眠で体験した記憶は6時間から8時間で定着すると言われており、その間に経験した悪い夢を定着させないための治療法が存在します。

夢を科学的に解析することで、夢が人に与える影響が分かります。例えば、睡眠時に発生する周波数を解析することで、精神的ストレスの負荷や、その影響を評価できるとされています。精神的なストレスの負荷が高まると、思い詰めて自殺をする人々もいます。科学的に解析すればこのような状況を防止し、解消することに繋がります。

夢は記憶の整理をする役割があると聞いたことがありました。私はそれ以外に夢がもたらす役割や影響を知らず、精神的ストレスにつながる事を知りませんでした。私は定期的にノンレム睡眠や金縛りにあうので、自分の睡眠状態しようと思います。


次回も新書報告を行います。担当はB班です。どんな本が紹介されるか楽しみです。


2024年4月24日水曜日

2024年度 前期第3回

経営学部二年生のSです。3回目のゼミはF302の教室で行われました。今回はプレゼンの仕方、聴き方とわかりやすい文章の書き方を学びました。最初に相澤先生からレクチャーを受けた後、その内容をふまえてグループワークを行いました。

まずプレゼンをするうえでの、わかりやすく伝えるコツを6つ学びました。「大きい声ではっきり話す」「難しい言葉は使わない」など、どのようにすれば相手に伝えられるのかを知ることができました。中でも、「相手が複数いる時は、みんなに視線を配る」は特に大切だと思いました。特定の一人に話すのではなく、みんなに視線を配ることで、聞き手は自分に話してくれてることを確認でき、より分かりやすいプレゼンになると学びました。

先生は、プレゼンは準備が大切であると強調されました。準備をしないと相手にも失礼になります。先生には、鏡の前でプレゼンの練習をすると良いと教えていただきました。自分では思いつかない、新しい練習方法を知ることができました。

次にわかりやすい文章の書き方を教えていただきました。「~こと」「~もの」「~という」は使わなくても意味が通じることがわかりました。また、だらだらと長い文章にするのではなく、短くスッキリすることを学びました。このブログを書いている今でも、不要な部分がないのか、文章は長くなっていないかを気を付けて書きました。これから何回も文章を書いて、わかりやすい文章を書けるようになりたいです。

授業の最後の時間は3つのグループに分かれ、読みにくい文章サンプルを適切な文章に書き直すワークを行いました。グループ内で学んだことを生かし、文章を書き直しました。ここでも不要な表現の扱いに苦しみました。各グループで作業をした後、書き直し案を共有しました。先生の回答や他グループの回答を見ると、自分では思いつかなかった表現の仕方があり、表現方法は一つではないと学べました。これからのゼミ活動で様々な表現に出会い、自分の文章を書く力を伸ばしていきたいと思いました。

今回のゼミでは、プレゼンの仕方と適切な文章の書き方について学びました。今回学んだことを、ゼミ活動やプレゼンの機会に生かしていきたいです。

2024年4月17日水曜日

2024年度 前期第2回

新緑のキャンパス
 担当教員の相澤です。本ゼミのメインの活動は、毎週新書を読んで報告、ディスカッションすること(新書報告)です。新書といっても玉石混交。ゼミでは一定の学術的な水準を満たしたものを読み、報告してもらいたいと思います。そこで、第2回のゼミでは、新書の選び方を私がレクチャーした後、実際に新書を選んでみました。

今日はいつもの教室ではなく、図書館二階のグループ学習室に集合です。前半は新書の選び方レクチャーです。よい新書を選ぶ簡単な手がかりとして、出版社や著者のプロフィールに注目すること、著者の専門性と新書のテーマがあっているか確認することを伝えました。また、面白い本に出会うためには、何よりも自分の興味惹かれた本を選ぶのが近道だとも話しました。

次は実践です。図書館一階の新書コーナーに行き、自由に本棚を眺めて、読んでみたいと思う本を3冊ピックアップする課題を出しました。本が選べたら、小グループに分かれて、選んだ三冊を紹介し「なぜ自分がその本を選んだのか」を話し合うワークを行いました。選んだ本は、互いを知るよいきっかけになります。各グループ、話が広がっていました。

最後に、全員の前で一人ずつ選んだ本を簡単に紹介しました。13人が三冊ずつ選んだので、39冊の本に(タイトルだけでも)触れたことになります。ゼミのメンバーが多様な関心を持っていることがわかりました。

来週はいつものゼミ室に戻り、報告の仕方や報告の聴き方、そして文章の書き方を勉強します。

2024年4月10日水曜日

2024年度 前期第1回

 担当教員の相澤です。4月になり、ゼミも開講しました。今年度は13人の学生と一緒に読書を楽しみたいと思います。

桜満開での新学期
初回のゼミ前半は、ゼミの目標や進め方を確認したり連絡網を作ったりと、今後の授業の準備をしました。後半は、小グループに分かれて、自己紹介ワークを行いました。本ゼミでは、毎回グループワークやディスカッションを行います。ゼミ生同士が互いによく知り合うことで、話しやすくなるでしょう。

自己紹介では、学部学年など基本的なプロフィールとともに、自分の好きなこと・ものを具体的に話すよう指示しました。誰でも好きなことなら容易に語れますし、どんな人なのかがよく伝わるテーマだからです。各グループ、自己紹介を経て雑談へと発展。おしゃべりが弾み、上々の滑り出しとなりました。


一年を通じてどんなゼミ活動になるのか、とても楽しみになる初回でした。

2024年2月7日水曜日

2024年度のお知らせ

 2024年度はゼミを開講します。履修を検討する方は、ぜひ本ブログに目を通してゼミの活動内容や雰囲気を感じてほしいと思います。