こんにちは。経営学部3年のCです。6月に入り、東京では気温も30度近くまで急激に上がって、日差しの強い季節になりました。これから暑い日が続くと思いますので、皆さん熱中症にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。さて、今回はC班の新書報告です。
Iさん 辰濃和男『ぼんやりの時間』岩波新書、2010年
本書は、様々な作家の例を出しつつ「ぼんやりすること」を推奨しています。その中でも、Iさんは、例として「4時間労働の夢」を挙げていました。「4時間労働の夢」とはラッセルが書いた論文で、8時間労働は過重労働なので、4時間労働に減らすといった内容だそうです。4時間労働にすることで、残りの4時間で文化を豊かにする為に、各々で探究をすることが述べられていました。また、Iさんは発表の中で、現代に生きる人のアニメやSNSでの動画など受け身でぼんやりしていることにも言及していました。ぼんやりすることは、「目的を持つことなく周りを観察すること」で本書に定義付けられています。しかしここで注意してほしいことは、自分が受け身であると文化が豊かにならないので、五感で感じ取ることを大切にしつつも「ぼんやりすること」が重要だと述べていました。
現代人は情報社会と言われるほど、あらゆるところに脳を圧迫させる情報が転がっています。そんな時にこそ、自分の五感を大切にしてぼんやりすることが私たちに求められているのかもしれません。
Sさん 志村季世恵『大人のための幸せレッスン』集英社新書、2006年
本書は大人のための「幸せ」について論じています。まずSさんが挙げた最初の説明として、幸せには3つの種類があると述べています。
1つ目が、「プレゼントなどのギフト面においての幸せ」です。
2つ目が、「自分の頑張りによって得られる努力面においての幸せ」です。
3つ目が、「マイナスなことでも幸せに感じようとする思考面においての幸せ」です。
本書は、主に3つ目の幸せについて深掘りをする内容でした。そもそも、人間は考えながら物事を行い、マイナスの方向に思考が傾いてしまうそうです。そこで、コツとして、五感の幸せを感じながら物事を行うことが重要になります。例として挙げられていた、ご飯の話もご飯を食べている時にテストのことを考えるのではなく、食べているものの味や食感を感じることが幸せに繋がると述べていました。
私たちに備わっている五感は、幸せになるためには不可欠なものなのではないかと感じるようになりました。現代人は周りのことばかり気にしていて、自分のことに目を向けていない実状があると思います。そんな時こそ、振り返って自分自身を意識してみることが大切だと理解できました。
Tさん 四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書、2006年
本書は「かわいい」についての概念の話や社会的な文化や思想に基づいて、「かわいい」を考察する内容です。その中で、Tさんが挙げてくれた2つの印象的な話を紹介します。1つ目は、「人間は未成熟なものを好む」です。例えば、小さいものや保護しないといけないものは未成熟といえます。また、学生が主人公となっているアニメも一人前ではない点で未成熟だと思います。人間はこの点で「かわいい」を感じるそうです。2つ目は、「かわいいに近しいのはグロテスク」です。これが何故なのかというと、ちいかわのような人間ではないキャラクターを例にあげると、それがこの三次元に等身大として登場したときにあまりのリアルさにグロを感じてしまうからです。しかし、実際にはそのキャラクターも「かわいい」と評価されています。このようにグロテスクなのにもかかわらずかわいいと思われる理由があります。それは、人間がそれを保護しているから、或いは加害しない・無防備な存在だから、だそうです。
また、Tさんはかわいいをポジティブな言葉と定義しました。しかし、かわいいは意味やニュアンスが多面的であるため、未熟や支配欲のようなマイナスの使われ方もあると言及していました。
「かわいい」には人それぞれ背景や感覚があることを学びました。ただ、未熟なものをかわいいと感じる点においては人間に共通しているのではないかと思います。しかし、なぜ未熟なものが好きなのかと質問された時に、「支配できるから」というマイナスな考えであったり、「小さいものを保護したい」というプラスな考えであったり、感じ方はその人によって変わるのではないかと感じました。
今回も興味深い新書報告で、私自身も知識を深めることができました。次回は、歌詞解釈の授業を行います。ゼミ生の色々な解釈を共有できるので、非常に楽しみにしています。