こんにちは。経済学部4年のKです。10月に入り猛暑続きだった今年の夏もようやく終わりを見せています。秋の風を外で感じながら読書をしてみるのも良いかもしれませんね。さて、後期第1回目の新書報告はD班です。
Kさん 山岡淳一郎 『ルポ 副反応疑い死』ちくま新書、2022年
本書は、新型コロナウイルスワクチンの副反応で亡くなった遺族に対して著者が取材を行い、ルポとしてまとめられたものです。本書によれば、ワクチンの副反応で亡くなった人数は公表されているだけでも1900人います。しかし、その中の4人程度しか国から認められず、補償金も出されませんでした。補償金の高さや国の政策批判につながることが原因だろうと著者は述べています。
ワクチンの副反応で亡くなった方の中には若いプロのスポーツ選手もいると聞いてとても驚きました。その選手はいわゆるスポーツ心臓を患っていてワクチンにより症状が悪化しなくなってしまったようです。大きいメディアに踊らされるのではなく情報を吟味する審美眼を磨いていく必要があると、この発表を聞いて痛感しました。
Cさん 杉山尚子『行動分析学入門ーヒトの行動の思いがけない理由』集英社新書、2005年
本書は行動分析学について入門から応用まで幅広い内容が記されています。本書によれば、人の行動の要因は大きく分けて4つあるそうで、その一つをCさんは解説してくれました。それは、人は行動の結果良い反応が得られたときに、その行動を繰り返すということです。例えば、夫はいつも愚痴ばかり言うとしますそれに対して妻は毎回反応してしまいます。行動分析学的に言うと、妻が反応しているから夫は良い反応を得たとして愚痴という行動を繰り返してしまうのです。つまり何も反応しなければ、いつかは夫は愚痴を吐き出さなくなるのです。
他人を変えることは難しい事です。他人をみるより、まず自分が変えられる範囲のことを変えていけば少しは良い方向に物事が進むのかもしれません。C産の出してくれた例で言うと、妻が夫の愚痴を無視していれば夫は愚痴を吐かなくなり、少しは家庭内を良い雰囲気にすることができるかもしれません。そんな本書の本筋とは少しずれたことを、発表を聞いて感じ取りました。
Tさん 本田由紀『教育の職業的意義ー若者、学校、社会をつなぐ』ちくま新書、2009年
本書は、教育課程において職業的意義を説くことの重要性を論じています。
小、中、高と私たちが受けてきた教育課程では社会のことや仕事に関する教育が足りていないという主張です。そして本書によれば、最も教育の職業的意義を妨げているのがキャリア教育です。キャリア教育とは、チーム力やコミュニケーション力などの会社で役に立つといわれている力をはぐくむ教育です。しかし「チーム力、コミュ力が大切だ」といわれても学生はピンときません。とても抽象的だからです。著者はそういったフワフワしたキャリア教育ではなく、何か一つ専門性を学生に持たせることが重要であると主張しています。
著者の主張に共感する部分が多くありました。発表を聞いて、学生の内に専門性を持つことで確固たる自分を形成することにもつながるのではないかと思いました。
Mさん 山口仲美 『千年たっても変わらない人間の本質」幻冬舎新書、2024年
本書は、日本語学者である著者が古典を紹介し、その古典から現代にも通じる人間の本質を記したものです。今昔物語集にあるお話では、乱暴者がお坊さんに合い説法を聞いたことをきっかけに心を入れ替え修行をし、最後には見事な死にざまで亡くなったという話があるそうです。このお話から、人はきっかけがあれば変わるという教訓を学ぶことができます。著者はそれに加えて、変わるきっかけだけではなくそのきっかけを受け入れる素養がない人は変われないと付け加えています。
Mさんの報告を聞いて古典から多くの教訓を得ることができると思いました。一方でMさんも触れていたことでしたが、特に恋愛観は当時と今ではかけ離れた慣習、状況があり、現代に当てはめることは無理があると感じた部分もありました。
今回はワクチンという流行のものから教育、人の行動、人の本質と昔から語られているようなテーマの新書もあり、興味が尽きない発表ばかりでした。次回以降もどんな新書発表が行われるのか楽しみです。