こんにちは。経済学部2年のHです。今回はA班の新書報告をご紹介します。
Kさん 曽村保信『地政学入門‐外交戦略の政治学』 中公新書 1984年
本書では政治と地理が融合された地政学という学問について論じられています。地政学とは地球を1つの単位と見なし外交戦略に生かしたり、地理的要因を分析して、国際関係や国内外の情勢にどのような影響を与えるかといった問いを考察する学問です。
本書のタイトルである地政学は、イギリスのマッキンダ―が開祖であるとされています。マッキンダ―は「ハートランド」という考え方を提唱しました。ハートランドとは東欧に位置しています。これを大国がとってしまうと、国際関係に大きく影響が出て、最悪の場合は戦争に発展してしまうとマッキンダ―は主張しています。
Kさんは、シーパワーとランドパワーの関係にも触れました。シーパワーは海軍の強さを指していて、島国であるイギリスなどが得意としています。ランドパワーは陸軍を指していてロシアなどの陸面積が広い国などが得意としています。このシーパワーとランドパワーの関係は均衡していましたが、鉄道や情報技術の発展によりランドパワーが強くなりました。それにより国と国の間の関係が崩れ、第1次世界大戦が起きたとされています。
本書が書かれたのは1984年ですが、現在、ロシアによるウクライナ問題が起きています。一方的に他の国の領土を占領したり、攻撃したりすることは地政学に大きく関わっていると思います。自分には関係ないと思わず、こういった戦争が世界で起きている現実に向き合っていきたいです。
Tさん 小林亜津子『初めて学ぶ生命倫理』 ちくまプリマ―新書 2011年
本書は教科書的な役割をせず、様々な事例を紹介することを通じて、命とは何なのか考えるきっかけを作る内容となっています。その中からTさんは2つの例を取り上げて報告してくれました。
1つ目の事例は拒食症の10歳の女の子の話です。この女の子は拒食症で歩けなくなり、入院し余命半年と告げられました。だからと言ってご飯を食べるわけでもなく点滴も抜いてしまいます。そこで女の子の両親は治療を受けさせようと訴えたことで裁判になります。結果、裁判では認められ、治療が行われ2年かけて健康になることができました。健康になったことで女の子は両親に感謝するという話です。
2つ目の事例は白血病の15歳の男の子の話です。この男の子とその両親はキリスト教のエホバの証人の信者で、輸血を拒否します。そのため、治療を受けさせようと病院側が家族を訴えます。その結果、それが認められ治療をすることになります。しかし、18歳で治療を拒否できるようになるため、男の子は治療を拒否し、間もなく亡くなったといいます。
こういった生死の判断というのはとても難しいと感じます。自分だったらどうするかを考えながら、生命倫理というものについて考えることができました。
Kさん 広田照幸『日本のしつけは衰退したか』 講談社現代新書 1999年
本書では日本の教育レベルについて高くなっているか、低くなっているかについて触れられています。一般的には日本の教育レベルは低くなっているとされていますが著者はそうではないと批判しています。家庭の教育レベルは上がっているとされており、その原因として高度経済成長で家庭が豊かになり、使うお金が増えたからだと主張しています。それに加えて社会が家庭に求める教育レベルが上がったからともされています。
本書では直接、SNSの問題については触れられていませんが、現代ではインターネットが普及して教育レベルが低下したのではないかと指摘されています。この本が書かれたのは1999年で当時はあまり、インターネットは普及していませんでした。事情は大きく異なりますが、教育に関する価値観はそこまで変わっていないようです。
本書を通して教育の重要性について考えることができたと同時に今の教育レベルはどうなっているか気になりました。
Mさん 慎改康之『ミシェル・フーコー』 岩波新書 2019年
本書ではミシェル・フーコーの生涯を通し、フーコーの主張や理論について述べられています。フーコーはフランスの哲学者で20世紀に活躍した人物です。フーコーは、今と昔では考え方が異なっていることを示し、当たり前の常識をもう一度見つめなおすべきだと主張しています。
Mさんは『狂気の歴史』という著作に関する部分を報告してくれました。狂気とは17世紀ごろに貧しい人や犯罪者などを指していました。このような狂っているとされた背景には資本主義が形成されたことが大きいとされています。当時、「狂気」は今と違う意味を持っていました。フーコーは「変わっている」とは時代によって基準が異なり、社会によって変わってくるものだと主張しています。
また、本書では構造主義(社会が様々な物事を決める)と実存主義(自分で自分のことを決める)の2通りの考え方が出てきますが、フーコーは前者をとっています。それに対し、Mさんは後者をとっています。
このフーコーの考え方は正直、私自身には合わないと思いましたが。ですが、その時代によって様々な考えがあり、自分の主張や考え方が大事になると感じました。
今回は20世紀に書かれた本も登場し、その時代の価値観や今に繋がっていることをたくさん知ることができました。次回はB班の新書報告をご紹介します。