2024年5月1日水曜日

2024年度 前期第4回

 こんにちは。経済学部3年のEです。今回は今年度初めての新書報告を行いました。各ゼミ生が前回の授業で学んだプレゼンの仕方、聴き方を踏まえて今回の授業に臨みました。以下はA班による新書発表です。


Kさん 波多野誼余夫/稲垣佳世子『無気力の心理学』中公新書、1981年

本書は教育心理学の観点から書かれています。著者は「自分にとって不都合な環境を自身の努力で変えられる実感が少ない状態」を無気力と定義します。これに対し、「自分の努力に対する信頼がある状態」を効力感と呼びます。著者は、現代社会では生産性を重視するため、効力感の欠如が見られると指摘しています。

効力感を得るためにはどうすれば良いのかを説明するために、著者は幼児期の例を挙げます。赤ちゃんの場合、「泣く」という行動を通じて自分のニーズを表現します。親が迅速に反応することで、赤ちゃんは自分の努力が報われるという経験を積むことができます。次に、学校の教育システムについてです。通知表のような数字による評価は競争を促しますが、効力感を育むことには繋がりにくいとされています。その代わりに、情報に基づいた評価が提案されています。数学の評価を例にとると、「計算はできるが図形の把握が不得意」と評価することが良いとされています。

著者は、評価には人を統制する側面と、行動の良し悪しを評価する側面があると述べています。学校の通知表のような数字による評価は人を統制する側面が強いです。その為、著者は行動の良し悪しを評価することが重要だと主張します。つまり、その人は何が得意で何が不得意なのかを明らかにすることです。この行動の良し悪しを評価する段階に移行しなければ、無気力な子供たちが増える可能性があると示唆しています。

私は、行動の良し悪しを評価するのは第三者ではなく自分でやれば良いと考えます。客観的な事実のもと自分の不得意なものを明らかにするのは確かに良いかもしれませんが、他人に不得意なものを決めつけられているようにも感じるからです。しかし、通知表のように数字で評価するのはやや味気ないように感じたので概ね同意です。


Tさん 松田純『安楽死・尊厳死の現在』中公新書、2018年

著者は生命倫理学の専門家です。本書では世界各国における安楽死の歴史、現状、問題、そして思想史について詳細に論じています。

安楽死にまつわる問題の一つは、「安楽死の法制化が死ぬ義務を発生させるのではないか」という点です。具体的には、本人が望まない安楽死が行われる可能性が懸念されています。

著者はまた、健康という考え方についても検討しています。世界保健機関(WHO)は、「身体的、心理的に完全に良い状態」を健康と定義していますが、この定義は長年議論の的でした。現代の医療では、障碍者や不治の病を患っている人々を完全に治すことは難しいため、「完全に良い状態」を目指すことが無意味になる場合があるからです。そのため、オランダの国際的な研究機関が健康の概念を再定義し、「病気や障害があっても、前向きに生きる能力を健康と定義した」ことを紹介しています。

この再定義を踏まえ、著者は、病気や障害に直面した場合、その時点での人々の支援を受け入れることが重要であるとまとめています。著者は更に、このようなポジティブな健康観が社会に普及することを期待しています。最後に、このポジティブな健康観が広まることで、「安楽死」がどのような影響を受けるかについての疑問が提示され、本書は結びつけられています。

 私は、仮に安楽死が制度化されたとしたら、安易に選択せず熟考する必要があると考えました。

 

Kさん 松田英子『今すぐ眠りたくなる夢の話』ワニブックスPLUS新書、2023年

 著者は東洋大学で心理学の教授であり、公認心理士と臨床心理士の資格を有しています。彼女は一万人以上の人々の夢を分析し、その影響について研究しています。本書では、夢が人々に与える影響について詳しく述べられています。

まず、夢はレム睡眠とノンレム睡眠の二つに分かれます。レム睡眠では、主に記憶の定着に時間が費やされ、この時に夢を見るとされています。この夢がトラウマや悪夢を見て気分が落ち込むことに繋がるとされます。レム睡眠で体験した記憶は6時間から8時間で定着すると言われており、その間に経験した悪い夢を定着させないための治療法が存在します。

夢を科学的に解析することで、夢が人に与える影響が分かります。例えば、睡眠時に発生する周波数を解析することで、精神的ストレスの負荷や、その影響を評価できるとされています。精神的なストレスの負荷が高まると、思い詰めて自殺をする人々もいます。科学的に解析すればこのような状況を防止し、解消することに繋がります。

夢は記憶の整理をする役割があると聞いたことがありました。私はそれ以外に夢がもたらす役割や影響を知らず、精神的ストレスにつながる事を知りませんでした。私は定期的にノンレム睡眠や金縛りにあうので、自分の睡眠状態しようと思います。


次回も新書報告を行います。担当はB班です。どんな本が紹介されるか楽しみです。