2026年9月30日水曜日

2026年度 後期第1回

 経済学部3年のOです。最近、雨が多いですね。私の傘は、出番の多さにくたびれています。いざ晴れたと思っても8月並みの暑さで、それはそれで困ります。厚手のカーディガンは「いつでも行けるぞ!」とベンチ(クローゼット)で肩を温めています。秋らしい気候はいつやってきて、どのくらい続くのでしょうか。これでは紅葉さんも迷子になってしまいますね。

今回はB班の発表です。

Yさん:腹巻猫『劇伴音楽入門』インターナショナル新書、2026年

 本書は劇伴音楽とは何かについて論じたものです。劇伴音楽とは映画やドラマ、アニメに差し込まれる音楽です。サウンドトラックに似ていますが、歌詞が無い曲に限定しているところが異なっています。著者の腹巻猫自身も劇伴の作曲家で400曲以上も出がけているようです。

 劇伴の特徴は、特定の音楽ジャンルに縛られることのない自由な作曲です。アニメ『COWBOY BEBOP』を例に挙げて劇伴の魅力を説明してくれました。このアニメは宇宙が舞台で、劇伴にはジャズが使用されているとのことです。宇宙にジャズのイメージはありませんが、何故ジャズを使ったのでしょうか。その答えは、とても策略的で作品に寄り添ったものでした。まず、『スターウォーズ』など宇宙を舞台にした名作との差別化です。過去の名作たちは壮大な音楽である場合が多いので、ジャズを使用することでアニメに個性が生まれます。次にアクションシーンと即興ジャズとの親和性です。私はこのアニメを観たことはありませんが、確かにジャムセッションはアクションシーンでの軽快なステップや連続攻撃が思い浮かびます。

 このように一つのアニメを例にしても、劇伴がその作品の印象や演出に大きな影響を与えていることがわかります。

 個人的には、『菊次郎の夏』の劇伴『summer』が印象的で好きです。夏の爽やかさと、菊次郎の自由なキャラクター性を表したような曲です。『summer』を聴くだけで、主人公の正男と菊次郎の冒険を思い出します。

Eさん:長谷川岳男『スパルタ 古代ギリシアの神話と実像』文春新書、2024年

 厳しい指導や訓練を“スパルタ教育”と表すことがあります。本書では今日使われているスパルタの元になった、古代ギリシアのスパルタで行われていた兵士教育の実態について論じられています。

 まず、スパルタの教育は6歳から始まります。しかし、この時点では歌やマナーなど基礎を学ぶ段階なため、さほど厳しい指導はなされません。この課程を修了してから本格的なスパルタ教育が始まります。スパルタの兵士教育は、一般の男子全員が対象となります。その中で病弱だったり、戦闘に不向きな体格の者は兵士になることはできず、崖から落とされてしまいます。教育すら受けさせてもらえないのです。教育を受けられる者は、合同食事会の参加が必須となります。そこは上層部に自分の優秀さをアピールする場でもあります。食事の時間さえも兵士教育に変わってしまうのです。兵士になると、同調圧力により命が尽きるまで戦ったものを評価するようになります。一方で生きて帰ってきた者は虐げられ、その家族までもが差別的な目線を向けられてしまいます。

 幼い頃から、戦争に適した人材に教育されるという歴史は、第二次世界大戦下の日本に共通する点があると思います。そのためスパルタの厳しさは、かつての日本と同様に戦争に勝つことが正しいという固定観念から生まれた産物なのだと感じました。

 今回の2冊は、歴史と音楽という別ジャンルでしたが、エンタメ性と知識の厚みを兼ね備えた新書だと感じました。単に専門的知識が詰め込まれただけの新書ではなく、強く興味を惹かれるようなテーマと説得力が十分にある内容のものを選んでおり、二人の新書選びは上手いなと感心しました。次回は私も彼らのような新書選びをできたらなと思います。