前期最終週の金曜日に、打ち上げと懇親を兼ねて、ゼミ生9名とともに読売日本交響楽団の定期演奏会に出かけました。演奏はもちろん、会場であるサントリーホールの雰囲気も満喫しました。演目は次の三曲です。
- エトヴェシュ:セイレーンの歌(日本初演)
- メンデルスゾーン:ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調
- ショスタコーヴィチ:交響曲第12番 ニ短調 作品112 「1917年」
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サントリーホール前にて。 (撮影時のみ、マスクを外しています。) |
前期最終週の金曜日に、打ち上げと懇親を兼ねて、ゼミ生9名とともに読売日本交響楽団の定期演奏会に出かけました。演奏はもちろん、会場であるサントリーホールの雰囲気も満喫しました。演目は次の三曲です。
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サントリーホール前にて。 (撮影時のみ、マスクを外しています。) |
こんにちは。3年のRです。今回は毎週続けてきた、新書報告の前期最後の回になります。C班から全部で4冊の紹介がありました。それではご紹介していきます。
Tさん:菅屋潤壹『汗はすごい:体温、ストレス、生体のバランス戦略』(ちくま新書、2017年)
暑い季節に突入しましたが、本書は暑い環境に必ずつきまとう「汗」について、その本質や仕組みを説明した1冊です。汗そのものの成分は99%が水分で、残りの1%がアンモニアや塩素だそうです。水分が蒸発することで体が冷え、冷却効果をもたらすとのことです。暑い環境にいると、人はオーバーヒートして熱中症になってしまいます。汗は体温を下げ、熱中症を防ぐ効果があります。
また、人間は暑い環境に繰り返しいることによって「暑熱順化(熱に慣れること)」して、暑い環境でも長く生存できるようになるそうです。Tさんはこの本を読んで、サウナと暑熱順化は関係しているのではないか、夏の暑い環境でも過ごしやすくなるのではないかと考えたそうです。その他、冷や汗の存在や性別による汗の量の違いなどについても紹介がありました。
汗は人間とは切り話せない存在です。この季節にぜひ知りたい情報を得ることが出来ました。
Iさん:内山真『睡眠のはなし:快眠のためのヒント』(中公新書、2014年)
汗とともに、人間と切り離せない存在が睡眠でしょう。本書は、その睡眠についてメカニズムや関連する現象など、睡眠にまつわる様々なことを解説した1冊です。Iさんは寝付きが悪く、金縛りに遭うなど睡眠に関して困っているとのことで、改善方法が知りたいと思い、本書を選んだそうです。
発表では寝付きが悪くなる原因を2点挙げられていました。1つは温度・光・音などの外部からの刺激、もう1つは精神的理由です。精神的理由とは、脳が常に警戒する状態になっていて、リラックスできずに眠りが浅くなってしまうことを指しています。寝付けない日が続くと不眠恐怖症につながるとのことでした。対策として、ベッドや布団の上を「寝ない場所」として脳に誤った認識をさせないために、本当に眠くなるまでベッドに入らないという方法があるそうです。その他にも、夢や金縛りとレム睡眠・ノンレム睡眠の関係など、Iさんにとって役に立つ情報が多くあったそうです。
私は、わりとすぐに寝れてしまい、睡眠で困ったことはありませんが、日常生活でも重要な睡眠について向き合う良い機会となりました。
Mさん:宮武久佳『正しいコピペのすすめ:模倣、創造、著作権と私たち』(岩波ジュニア新書、2017年)
私たち大学生はコピペについて何度も注意されますが、社会においてもコピペは問題になっているそうです。コピペの問題点やコピペをしてしまう理由などをまとめた1冊です。
研究者の世界でコピペは気にかけなければならない問題です。また、大学の教員にとって、学生から提出されるレポートのコピペという問題があります。他にも近年、STAP細胞の論文不正や、東京五輪・パラリンピックのエムブレム類似問題など、コピペに関連する事象が社会的な話題となることが増えています。著者はこの理由として、類似したコンテンツを探し出す技術が向上しているためだとしています。
コピペや関連する事象が問題となる一方で、本のタイトルにある正しいコピペとして「引用」の存在を提示しています。他の人の文章をコピペしても、厳しいルールに基づいて記載すれば、問題のない正しいコピペである「引用」として認められます。
著者は、真似ること自体がタブー視される風潮があるものの、歴史を鑑みても、真似ること自体は悪いことではないとした上で、著作権の法律がプロのみに適用されていたときと変わらないために混乱が起きている。ネットの発達も鑑みて、みんなの著作権といえる仕組みが必要なのではないかと問題提起したとのことです。
私たちがレポートを書くときにも、引用とコピペの間には大きな差があると思います。その違いを改めて認識することができました。
Oさん:庵功雄『やさしい日本語:多文化共生社会へ』(岩波新書、2016年)
Oさんは、別の新書で登場した「やさしい日本語」に興味を持ち、本書を読んだそうです。
著者は日本語学の研究者で、本書では多文化共生における日本語教育の重要性や、日本の諸問題の解決策について論じています。
日本の諸問題として、両親かその一方が外国出身である人の子供、いわゆる「外国にルーツを持つ子どもたち」にとって日常生活で日本語を身につけることや日本語によるコミュニケーションが難しく、学校生活や学習に弊害がある実態が挙げられています。実際に彼らはクラスでの孤立など学校生活に問題が生じるほか、進学率も低下していて、高校の進学率も2割ほどにとどまるそうです。著者は、道具としての日本語を習得する機会がないと、自己実現を果たすことが難しくなってしまう現実があるとしています。
そのような、日本語が必ずしも得意ではない人々にも伝わりやすい日本語として「やさしい日本語」があるそうです。ルーツは、阪神淡路大震災のとき、日本語と英語でしか情報共有されず、情報を得ることが難しい人々がいたことから、考えられ始めたそうです。「やさしい日本語」の一例としては、「容器をご持参の上で中央公園にご参集ください。」を「いれるものをもって中央公園に あつまってください。」とすると理解しやすくなるとのことです。
著者は「やさしい日本語」の存在に加えて、お互い様の気持ちを持つことや先入観を取り払うことが、バイアスや偏見の解消につながり、多文化共生社会が実現できるのではないかと指摘したそうです。
私は日本語を難しい言語だと思っていますが、最低限の要素まで簡単にすることでコミュニケーションの壁が下げられるのではないかと感じました。
今回で、前期の新書報告は終了となります。前期にゼミ生が読み、全体あるいは小グループに報告した新書の冊数を数えてみると合計で130冊近くになるようです。みなさんお疲れ様でした。次回は、前期のゼミ最終回です。
こんにちは。4年のUです。あっという間に梅雨が過ぎ去り、一週間ごとに気温が上がる日々が続いています。アイスが美味しい季節ですね。皆さんはなんのアイスが好きですか?僕はピノが好きです。さて、今回はB班の新書報告を紹介していきたいと思います。
Kさん:吉野実『「廃炉」という幻想 福島第一原発、本当の物語』(光文社新書、2022年)
本書は、新聞社勤務時代からテレビ局に転勤した現在まで長年にわたって原子力発電所について取材している著者が執筆したルポータージュです。福島県出身で原発問題を自分ごととして考えてきたKさんが紹介をしてくれました。
2011年に、東日本大震災後に原子力発電所の事故が起きた事件は記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。事故後に30~40年を目安に廃炉にすると政府が声明を出しました。しかし、それは事故が起きていない普通の原子炉を廃炉にするのにかかる基準だそうです。事故の起きた福島の原子力発電所の場合は、専門家の間では少なくとも100年、長いと300年かかると言われているそうです。
私は、事故が起きて10年も経つと、原子力発電所のことを忘れかけていました。本書の紹介を聞いて、目を背けていてはいけない問題だとハッとしました。
Tさん:黒木登志夫『研究不正 科学者の捏造、改竄、盗用』(中公新書、2016年)
先月発覚した福井大学の研究不正のニュースを見たTさんは「なぜ研究不正は起こるのか」が気になり、本書を読んだそうです。
本書は、科学者が論文で行った不正について書かれたものです。不正を捏造、改竄、盗用という3つに分けた上で、実例の紹介から改善策の提案までなされます。
研究不正では、聞いていても「それはバレるだろう」思うような不正の事例が紹介されていて、興味深く感じました。例えば、白いネズミに黒いネズミの皮膚を移植するはずが、黒のマジックペンで塗って「皮膚を移植した」と主張する不正が行われたことがあるそうです。
さらに、改竄では予め立てた仮説を証明するために、実験の結果得られた都合の悪いデータが排除されることもあると言います。
著者は不正をなくすために、研究倫理教育をおこなったり、研究室の風通しをよくしたりすることを提案しています。
学生の私たちも、「不正なコピペなどのレポートは厳禁です」と大学1年生の頃から、耳にタコができるほど聞かされます。しかし論文の不正は研究者間でもなくなることのない点や、その不正の具体例まで知るのは、初めての機会でした。知らない世界の一端を覗いた心持ちになりました。
Hさん:原田隆之『サイコパスの真実』(ちくま新書、2018年)
サイコパスの定義は「良心を欠いた人」と定義しています。一般人口の1~3%が該当するそうです。
100人に1~3人もいるなんて、意外と多くの人が該当することが印象的でした。
さらに、「サイコパスは犯罪者になるのではないか」という一般的に持たれがちな認識は意外と間違っていて、犯罪者に占めるサイコパスの割合は15%に過ぎないそうです。つまり多くのサイコパスは、そもそも犯罪に関与していません。
サイコパスと会った時の対処法は、「できるだけ関わらず、個人的な話をしない」ことなどが挙げられます。そして、サイコパスである有名人としてスティーブ・ジョブズが紹介されています。
報告を聞いて私は、サイコパスの割合の高さに驚かされました。さらにスティーブ・ジョブズのような著名な人間もサイコパスだと聞くと、サイコパスを少し身近に感じるようになる報告でした。
Nさん:竹下大学『日本の品種はすごい』(中公新書、2019年)
本書はリンゴやジャガイモなど、栽培植物7種について紹介しています。
スーパーに行くとお馴染みの男爵芋は、明治の頃に強い品種を育てようという意図で、日本に導入されたそうです。川田龍吉男爵が個人的に導入したということで「男爵芋」と命名された、興味深いエピソードが紹介されました。もともと海外の名前があったはずなのに、流通した時に名前が分からなかったことが原因だそうです。
さらに、りんごについても、面白い紹介がありました。日本に輸入された当初はりんごの人気が不動だったといいます。しかし戦後になると、皮を簡単にむけて甘くて美味しいバナナやみかんが輸入されるようになったため、りんごの人気が下がってしまったそうです。バナナやみかんが当たり前にある時代に生まれた私にとって、印象に残りました。
著者は新しい品種の開発によって、それ以前に主流だった歴史ある品種が忘れられることを憂いて、本書を執筆したと言います。確かに、このような魅力的な男爵芋やリンゴの人気のエピソードが忘れ去られるのは悲しいと感じました。
Sさん:武田尚子『ミルクと日本人 近代社会の「元気の源」』(中公新書、2017年)
ミルクと福祉的関係というと、一見、関連がない言葉のように感じるのではないでしょうか。本書は、ミルクが日本でどのように一般に行き渡ってきたのかという歴史的経緯について紹介しています。
関東大震災の後、必要な人にミルクが届かなかったことをきっかけに、震災から9日後には東京市(現東京都)にて、約60万名の乳幼児を対象に牛乳の配給がおこなわれました。
さらに、ミルクの配給と並行して、保健所の併設が行われました。健康診断など、配給を受ける人を対象に生活をより良くするための指導も行われたそうです。一見、ミルクと健康診断は無関係に思われますが、配給に参加するのは、主に貧困者が多かったことから貧困者支援の役割も果たされたそうです。
文明開花で牛鍋などと同時に導入された当初は、牛乳に対して「こんな臭いもの、誰が飲むんだ」という反応も存在したそうです。しかし栄養価の高さゆえに、次第に広まっていったそうです。歴史の流れを知ることができる、貴重な発表でした。
今回の新書報告で紹介されたのは以上の5冊です。来週に控えているC班の新書報告も楽しみです。前期最後の新書報告となります。皆さん、お疲れ様でした。